今回は「PLまとめ」です。
PLのポイントは売上拡大より売上総利益を増益させることです!
1 売上高
①売上高は毎年増収させることが基本ですが、それを追い求め過ぎないことも大切です。
あまり増収に拘り過ぎると、いつしか、未確定の売上を先立って計上してしまうなど
歯止めがかからなくなり、それがいつしか架空売上につながり、よくニュースでも聞く
不正会計に陥る危険性が高くなるからです。
②売上は得意先別に管理することが当たり前です。
※一般消費者を相手に販売している業種の場合は、商品別などに管理します。
③さらに、得意先別管理と併せて、部門別などを利用して、継続売上と新規売上に分けて
管理することも大事です。
※単純にいえば、増収目標が新規売上目標になります。
④売上高の読み方は、次の4点が基本です。
1、前年と比べてどうかを読む
2.得意先別(または商品別)にはどうかを読む
3.経営計画に対してどうかを読む
4.継続・新規ではどうかを読む
2 売上原価
①売上原価とは、商品仕入と製造原価の合計です。
この考え方を『全部原価』ともいいました。
②製造原価は、材料費・労務費・外注加工費・その他製造原価に分かれます。
③売上から売上原価を差引したものを「売上総利益」といいます。
売上総利益は売上総利益率も大事ですが、成熟社会である現代では、
売上総利益額の増益が一番大事です。
④売上原価の中で、商品仕入と材料費だけを『直接原価』といいました。
また、売上高から直接原価を引いたものを『限界利益』あるいは『付加価値額』と
いいました。
⑤売上原価を抑えることが、売上総利益を増益に導く基本です。
その売上原価を抑えるためには、「在庫」という大道具部屋の整理整頓が
大変大事です。
⑥実地棚卸は、不良在庫を少なくするためにも、また売れ筋を掴むためにも
非常に大事な作業です。
⑦またここでも売上総利益の増益に拘り過ぎると、在庫調整に手を付けることになり、
不正会計につながりますので注意しましょう。
3 人件費
①人件費とは、役員報酬と給与・賞与及び社会保険料の法定福利費などの合計です。
②特に中小企業の場合は「人件費が低い」と指摘され続けています。
したがって、「人件費の増額」自体が、ひとつの大きな経営課題となります。
③人件費は従業員の生活基盤を成すものです。
その意味では企業としての”社会的使命”の一丁目一番地であり、かつ士気向上の基盤
でもあります。
人件費をできる限り増やす経営努力を実際に行い(考えるだけではダメです)、
かつその努力を従業員に見せて、活力ある職場にします。
④人件費の読み方は『労働分配率』です。
ただし、一括りで読むのではなく、正社員・パート・アルバイトそして役員など、
それぞれのカテゴリーごとに確認し、そのバランスや昇給を考える必要があります。
⑤売上総利益又は限界利益から人件費を除いたものを『可処分利益(処分可能な利益)』
といいます。
4 その他販管費(固定費)
①その他販管費とは、総費用から売上原価又は直接原価と人件費を除いた費用です。
②その中で減価償却費は特殊で、支払を伴わない費用であることを理解します。
また、減価償却費は次回の設備投資資金であることも認識しましょう。
したがって、支払を伴わない減価償却費で捻出された資金を、運転資金に回して
使ってしまうのではなく、設備投資資金として積み立てすることが大事です。
③その他販管費を抑えることが人件費へ回せる資金などを増加させることにもなります。
ですから、全員で「冗費節減」を心がけます。
④可処分利益からその他販管費を差引したものを『営業利益』といいます。
この営業利益が本業による利益ですので、手元資金を増やすためにも増益させたいもの
です。
5 営業外損益
①営業外損益とは、本業以外で生じた営業外収益と営業外費用のことです。
②営業外収益は『定款』によって決まります。
定款で定められた事業以外による収益が、営業外収益となります。
③営業利益から営業外損益を足し引きしたものを『経常利益』といいます。
④よく『節税対策』という名のもと、経常利益の状況によって専門家から期末に必要と
思われるものを購入することを勧められる場合がありますが、これを繰り返している
限り、安全性の高い経営は実現出来ません。
本当に必要なものを購入することはいいのでしょうが、必要以上のものを購入すること
は「浪費」です。
また、資金繰りを改善していくためには、必ず相応の納税をしないとできないことも
知りましょう。
納税ナシで資金を貯める、そんなことはできません!
6 変動損益計算書分析
①変動費とは、売上高の増減に比例して増減する費用のことであり、
基本的には直接原価のことです。
たとえば、商品仕入や材料費はよく売れるものに関しては仕入を増やしますし、
あまり売れないものは仕入を控えます。
つまり、直接原価は売上高の増減に「比例する」ということです。
②固定費とは、売上高の増減に関係なく、固定的に発生する費用のことであり、
変動費を除いたすべての費用のことです。
たとえば、人件費は売上が減ったからといって、従業員の生活を守る意味からも
減らすわけにはいきません。
水道光熱費は少しは減少するかもわかりませんが、基本的には基本料金なども発生
しますので、あまり変化はありません。
つまり直接原価以外は、売上の増減に関わらず「固定的に発生する」ということです。
③損益分岐点売上高とは、「損」と「益」が分岐する売上高、収支トントンの売上高と
いうことです。
収支トントンの売上高とは、人件費や固定費はなんとか賄うことが出来る、利益ゼロの
売上高ということです。
その損益分岐点売上高は、固定費を限界利益率で割ることで求められます。
固定費÷限界利益率=損益分岐点売上高
※固定費 =売上高ー(変動費+経常利益)
限界利益率=(売上高ー変動費)÷売上高×100
④損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高が実際の売上高に対して、どのくらいかという
ことです。それによって、損益分岐点売上高に対する余裕度も確認できます。
損益分岐点売上高÷売上高×100=損益分岐点比率
※損益分岐点比率は低いほど良く、100%を超える場合は赤字経営です。
④経営安全率とは、損益分岐点売上高に対する余裕度です。
100%ー損益分岐点比率=経営安全率
※仮に経営安全率50%であれば、売上高が半減しても赤字にはならないということです。
経営安全率が低いと「経営安全性も低い」ということになり、この経営安全率分だけの
売上が下がれば、赤字経営に転落します。
⑤限界利益率とは、自社の付加価値率とも言えるものです。
限界利益÷売上高×100=限界利益率
又は100%ー変動費比率 =限界利益率
⑥変動費比率とは、自社の直接原価率とも言えるものです。
変動費比率を下げることが出来れば、限界利益率は上がることになりますので、
経営により安全性を持たせられることになります。
変動費÷実売上高×100=変動費比率
⑦労働分配率とは、限界利益の内、どのくらい人件費に充てているかということです。
表現を変えれば「従業員士気向上策率」ともいえなくもありません。
人件費÷限界利益×100=労働分配率
※人件費=従業員給与賞与+役員報酬+法定福利費
この労働分配率は、従業員・パート・アルバイト・役員など、それぞれに分けて
把握すべきものです。
⑧ここまで数値が揃うと、来期の必要売上高シミュレーション(試算)もできます。
来期の必要利益や人件費・その他固定費のグランドデザインができれば、必要売上高を
試算することが出来ます。
(必要利益+固定費)÷限界利益率=必要売上高
*注1:必要利益は、内部留保資金+借入返済資金+納税資金などから求めます。
*注2:固定費は、昇給込みの人件費と各経費の予算から求めます。
このように、会計の理解が深まれば、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
会計のルールには、健全な経営をしていくための仕組みが隠されているからです。
したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるように
なります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。
いまは、管理会計と会計で読む力が問われているのです。 会計はたのしい!
掲載日:2022年6月8日
|カテゴリー:会計識字率, 経営技術
今回は前回の続き、「BSまとめ 2/2」です。
まず、次のことに注意しましょう。
資産は着ぶくれになることがあるが、負債は正味負債です!
1 買入債務
①買入債務とは、支払手形と買掛金のことです。
②支払手形は使わないことが賢明です。
理由は、支払期日が待ったナシのため、融通が利かないからです。
③買入債務は運転資金の面から見れば、「運転資金の資金調達」となります。
資金繰りをラクにする半面、支払までの期間が短いことや在庫などの関係もあり、
多くすることはできません。
④買入債務は1日当りの平均売上原価と比べることで、仕入れの分量を読むことが
出来ます。
そのことを『買入債務回転期間』(=買入債務÷1日当りの平均売上原価)と
言います。
この回転期間は業種・業態によって違いはありますので、一概にはどの程度とは
いえませんが、しかし2週間程度に抑えたいものです。
2 消費税
①消費税に関する科目は、税抜き処理をしていれば、
流動負債に「仮受消費税」が、流動資産に「仮払消費税」が表示されます。
②「仮受消費税」とは、国に代わって、顧客から預かっている消費税のことです。
したがって、納付するまでの間は、資金調達していることになりますので、
流動負債に表示されているわけです。
③「仮払消費税」とは、国に代わって仕入先に仮払している消費税のことです。
したがって、納付するまでは仮払消費税として資金運用していることになりますので、
流動資産に表示されるわけです。
④基本的に、仮受消費税から仮払消費税を差引した消費税額が消費税納付額となります。
この考え方を『本則課税方式』と呼びます。
⑤ただし、課税売上高が5000万円以下の事業者には、『簡易課税方式』も認められて
いますので、『みなし仕入れ率』で簡単に納付消費税額を計算することも出来ます。
《事業区分とみなし仕入率》
(1)第一種事業(卸売業) 90%
(2)第二種事業(小売業) 80%
(3)第三種事業(製造業) 70%
(4)第四種事業(飲食店業・その他(1)(2)(3)(5)(6)以外の事業) 60%
(5)第五種事業(金融業・保険業・運輸通信業・飲食店業を除くサービス業)50%
(6)第六種事業(不動産業) 40%
簡易課税方式で消費税額を計算するためには、「簡易課税制度選択届出書」を税務署に
提出する必要があります。
また「簡易課税」を一旦選択すると、2年間は変更できません。
⑥消費税の納付は理屈で考えると、顧客から納付額を預かっているわけですから、
必ず納付できるはずのものです。
しかし、現実には多くの事業者が「滞納している」という事実があります。
なぜ、そのようなことに陥るのかと考えれば、
それは、預かっている消費税額を運転資金とごちゃ混ぜにして、運転資金として
使ってしまっているからです。
したがって、預かった消費税を、別途、預金に積み立てしておくことが大切です。
⑦消費税の読み方は、常に仮払消費税と仮払消費税の差額を確認し、それと手元資金を
比べることが大事です。
⑧また、2023年(令和5年)10月から『インボイス制度』に移行されますので、
さらなる注意が必要です。
3 借入金
①借入金には、流動負債に分類される「短期借入金」「1年以内返済長期借入金」と、
固定負債に分類される「長期借入金」の3種類があります。
②短期借入金は、運転資金目的で金融機関から融資を受けた借入金のことです。
③長期借入金は、設備投資目的で金融機関から融資を受けた借入金のことです。
しかし長期借入員の中にも、1年以内に返済する部分はありますので、
債務状況を正しく読むため「1年以内返済長期借入金」と長期借入金と区分けし、
流動負債に分類します。
このように経営管理上、「1年以内返済長期借入金」に分ける意味がありますので、
税務上はともかく、経営面からは分ける必要があります。
④借入金は債務でもあり、さらに金利も負担し、返済期日厳守の「他人資本」ですが、
しかし、自己資金だけでは実現できない、大きな事業を展開することを可能にして
くれる調達資金でもあります。
したがって、過度に恐れないで、借入金を有効活用することが大切ですが、
一方で返済管理をきちんとすることも重要です。
⑤その返済管理のため、借入金の読み方が重要なのですが、基本的には借入金額の
ボリュームと返済期間の予測から読みます。
⑥借入金額のボリュームは『借入金月商倍率』(=借入金合計÷平均月商)で読みます。
安全な経営を重要視するならば、常に3ヵ月以内であるように借入総額を抑えます。
⑦借入金返済期間の予測は『債務償還年数』(=借入金総額÷営業利益)で読みます。
これは最長でも、10年以下になるようにマネジメントしましょう。
債務償還年数は最大の返済返済原資で計算していますので、あくまで机上の計算です。
しかし、これが10年以上になるということは、「返済について先が読めない状態」と
理解することが大切です。
4 その他の流動負債
①その他の流動負債には多くの科目がありますが、
基本的な科目は、未払金・未払費用・預り金・賞与引当金などです。
②未払金とは、単発的に発生する債務です。
もし、1年を超えて返済する場合は、固定負債の長期未払金にします。
③未払費用とは、常時発生する債務で、通信費・水道光熱費・地代家賃・新聞代などを
指し、基本的に、毎月、翌月に支払する費用です。
④預り金とは、自社の役員・従業員などが負担すべき費用を、一時的に預かる科目です。
具体的には、本人負担分の社会保険料や源泉税・市区町村民税などがあり、納付漏れが
生じないように気をつけます。
⑤賞与引当金とは、夏と冬などに支給する賞与を、月次費用化する科目です。
大切なことはただ計上するだけでなく、賞与引当金に見合う手元資金を持つことです。
⑥これらその他流動負債の読み方で大切なことは、
『流動比率』(流動資産÷流動負債×100)よりも、『当座比率』(当座資産÷流動負債
×100)、さらには『手元資金比率』(手元資金÷流動負債×100)で読むことです。
5 固定負債
①固定負債とは、返済期間が1年以上に猶予されている他人資本のことをいいます。
この他人資本の運用目的は、設備投資(固定資産)です。
さらに、まだ余裕があって、営業資産にも回っているなら、より結構なことです。
②固定負債の主な科目としては、長期借入金とか、長期未払金・役員借入金・退職給付
引当金などがあります。
③固定負債の読み方は、主にその運用状況から読みます。
『固定長期適合率』(固定資産÷(長期借入金+純資産)×100)は、
設備投資が設備投資目的の資金だけで運用されているのかを読むことが出来ます。
100%近いあるいは100%超えているようなら、資金的に無理な設備投資をして
いることを示しています。
早急に、追加の長期借入金融資を受ける必要があります。
『固定比率』(固定資産÷純資産×100)は、自己資本で設備投資の何割程度を賄って
いるのか読むことが出来ます。
金利負担を減らすためにも、半分程度は自己資本での投資でありたいものです。
6 純資産
①純資産とは、自己資本のことです。
具体的には、資本金とこれまで稼いだ繰越利益剰余金です。
②経営のフリーハンドを多く持つためには、繰越利益剰余金はなるべく手元資金で持つ
ことが大切です。
そうできれば、さまざまな資金需要に対して、対応することが可能となります。
③なお、会社が倒産するのは、売上が減少するからでもなく、借入金が多くあるからでも
ありません。返済(特に金融機関に対する返済)が出来なくなるからです。
その意味では、売上減少も借入増加もその引き金になるわけです。
このように、会計の理解が深まれば、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるように
なります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。
管理会計と会計で読む力が、いま問われているのです。 会計はたのしい!
掲載日:2022年6月1日
|カテゴリー:会計識字率, 経営技術
これまで17回に分けて、『科目の読み方』について説明をして来ました。
最後にB/SとP/Lについての読み方を再度まとめ、終了にしたいと思います。
まず、今回は「BSのまとめ 1/2」です。
はじめに
最初に、B/S・P/Lについて、次のことを理解してください。
1.「資産」とは運用資産
①現預金を除く資産は「財産ではなく、運用資産である」ということです。
したがって、「現金と預金以外は100%回収できる保証はない」ことを理解して
おきましょう。
②資産は「実際以上に膨らむ傾向がある」ということです。
特に、売上債権・棚卸資産・固定資産の中には、
すでに貨幣価値がないものが含まれていることが往々にあり、
「資産の額=貨幣価値とはならない場合も多い」ということを理解しましょう。
③したがって、資産を貨幣価値で評価し直すと、帳簿よりも下がる場合が多いのです。
2.負債とは調達資金
①負債は、確かに「借金」ですが、一方、「調達資金」でもあります。
②したがって、負債はうまく活用すれば、
自己資金だけでは実現出来ない、大きな事業をすることが可能となります。
③負債は、うまく活用することと、きちんと返済することが大事なのです。
3.純資産とは自己での調達資金
①純資産は、自社自身が調達した「調達資金」です。
②しかし、その金額すべてが、資金(現預金)であるわけではありません。
③したがって、純資産をなるべく現預金で持てれば、柔軟な経営を可能にします。
4.売上とは資金の源泉
①売上は資金の源泉、つまり、おカネになる元です。
②現金商売では違いますが、その他の商売では「売上=資金」ではありません。
③売上は売掛金を回収して初めて、資金(おカネ)となるものです。
④したがって、売上は売掛金を回収することが非常に大切なのです。
5.費用とは資金の使途
①売上原価・販管費など多くの費用科目がありますが、
それらはすべて「資金の使途」といえます。
②いろいろな費用は、いずれ資金(おカネ)を社外に流出させます。
③したがって、費用を抑えられれば、資金繰りは良くなります。
この運用・調達・源泉・使途の4つことを理解できれば
あなたの『経営技術』は向上します!
1 手元資金
①手元資金とは、現金と預金の合計です。
②現金は、あまり多く、手元で持つものではありません。
企業規模や業種にもよりますが、通常は数万円から十数万円もあれば十分です。
それ以上に現金があると、リスク上の問題も発生しますし、
ついつい現金管理もゆるくなってしまいます。
③「資金管理」といえば、『資金繰り表』や『キャッシュフロー計算書』を思い浮かべる
経営者が多いですが、それらは結局のところ、いま、いくらの現預金があるのかという
ことを表します。
つまり、表現の仕方は違いますが、結論は現預金残高と同じなのです。
その意味で、手元資金の管理さえしっかり行えれば、過去管理や資金収支分析である
資金繰り表やキャッシュフロー計算書による資金管理は不要です。
④今期末の資金有高を常に予測管理したいというならば、
前年の現預金出納帳をEXCELシート化し、そのシートを今年の実績で更新します。
そうすれば、常に期末までの資金繰り予測ができるようになります。
※企業活動は毎年ほぼ同じ活動の繰り返しです。
したがって、これで十分、資金繰り予測や資金管理ができることになります。
⑤手元資金有り高を評価するためには、『平均月商』と比較することが有効です。
平均月商とは、会社の生活費です(赤字は足りないという意味です)。
その平均月商何か月分の手元資金があるのかで、評価をします。
これを『手元流動性比率』と呼びますが、
最低でも常に平均月商の3カ月以上の手元資金があるように経営することが大事です。
2 売上債権
①売上債権とは、受取手形と売掛金の合計です。
②受取手形はなるべく受け取らないで済むように、得意先と交渉します。
受取手形は持たない、それが現在のトレンドです。
③売上債権は多ければ多いほど「良い」というものではなく、適切な量があります。
適切な量とは、「前月の売上高」であり、通常の企業取引では1カ月分程度です。
つまり、「翌月には回収する」ということです。
※建設業界など古い体質の業界では、もっと回収期間は長いかもわかりませんが、
そこを如何に短くするか、これが経営の要諦です。
④売上債権は長く持っていれば持っているほど、『不良債権化』していきます。
それの理由は「なぜ、支払われないのか」考えれば、わかります。
答えは「資金繰りが苦しい」からです。
だから支払期日には必ず入金していただくように、催促することが大事なのです。
催促をすることは相手に失礼なことではなく、むしろ相手からの信用につながる
ことを知りましょう。
必ず、しっかり管理している会社だと評価され、やがて、支払もきちんとされるように
なります。
⑤大事なことは、売上債権は財産でも何でもなく、単なるペーパー状態の運用資産である
と理解することです。
極端にいえば、売上債権が多くある経営ほどリスクは高く、適正であればリスクは低い
ということです。
しかしまた、少な過ぎても、売上が少ないなどの経営リスクが生じて来ます。
3 棚卸資産
①棚卸資産とは、「在庫」のことです。
②在庫とは、これからまだ売れるかもしれない商品であると同時に、
売れ残った商品でもあります。
③したがって、売れ残った商品である過剰在庫を少なくすることが、
売上原価を抑えて、粗利益率を向上させる秘訣です。
④より正確な月次損益を把握するためには、毎月、棚卸高を洗い替える必要があります。
※棚卸高の洗い替えとは、期首月には期首棚卸高と月末棚卸高を計上し、
翌月からは、月初には月末棚卸高を戻し、月末に再計上することをいいます。
⑤棚卸資産の適正高は業種によって異なりますが、一般的には売上14日分程度と考え
られます。
4 運転資金
①運転資金とは、売上債権と棚卸資産の合計金額です。
この金額が、販売活動のために運用している資金合計です。
②それに対して運転資金調達高は、買入債務(支払手形+買掛金)の合計金額です。
この金額が、販売活動を通じて調達している資金合計となります。
③したがって、この両者のバランスが取れていれば、運転資金は回っていきます。
④その算式は、「要調達運転資金=(売上債権+棚卸資産)ー買入債務」です。
この『要調達運転資金』は、運転資金の不足額を示しています。
なお、この不足額は手元資金で補うことになりますので、
手元資金が不足する場合は、金融機関から借り入れることになります(短期借入金)。
⑤さらにこの要調達資金を年商で割り算すると、『運転資金要調達率』がわかり、
売上を増やす場合の必要運転資金(=増加目標売上高×運転資金要調達率)が、
推測できます。
5 固定資産
①固定資産とは、製造するため設備機器などのことです。
②固定資産を最大限に活かし、設備投資を最小に抑えることが出来れば、
高効率な経営体質に変貌させることが出来ます。
③そのためには常に「売上高÷固定資産」という算式で『固定資産回転率』を知り、
固定資産の生産性を測る必要があります。
この固定資産回転率も業種によって違いますが、最低でも4回転はさせたいものです。
④固定資産の導入には多額の資金が必要となりますが、その資金の出所もしっかり押さえ
たいところです。
固定比率 =固定資産÷純資産×100
固定長期適合率=固定真÷(固定負債+純資産)×100
固定比率は、できれば200%以内に抑え、固定資産購入資金の約半分は
自己資金で賄いたいところです。
固定長期適合率は、100%未満でなければ、絶対いけません。
これが100%を超えるということは、自己資本と長期借入金だけは資金が足りず、
無理無謀な固定資産投資をしていることになります。
このような言い方ではピンと来ないかもわかりませんが、
たとえれば、住宅を一部、サラ金も入れて購入しているようなものです。
このように言い換えると、如何に無理な固定資産投資をしているのかが理解できます。
このように会計の理解が深まれば、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
会計ルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるように
なります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。
管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。 会計はたのしい!
掲載日:2022年5月25日
|カテゴリー:会計識字率, 経営技術
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