会計の読み方 固定負債

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新型コロナ感染拡大、第2回目の緊急事態宣言と、

経営環境は大きく変化し、そして厳しくなって来ています。

そんなときに必要になるのが経営状況の羅針盤である「会計」を読み解きながら、

経営の舵取りをすることです。

ぜひ、実務的な会計の読み方を習得してください。

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 さて、いよいよ「負債の読み方」も終わりに近づいてきました。

今回のテーマは「固定負債」です。

固定負債とは、長期(1年超)にわたって返済できる負債です。

したがって、長く運用する資産の調達資金として最適です。

そんな「固定負債」について、実務的な読み方を理解しましょう。

 

第11回 固定負債の読み方

1.固定負債とは

(1)長期借入金

 固定負債とは、固定性の負債という意味です。

会計では「ワン・イヤー・ルール」に基づき、流動性と固定性に分けています。

そんな固定性負債である他人資本の主なものとして、「長期借入金」と「役員借入金

(あるいは長期未払金)」があげられます。

 ただし、長期借入金についてはその中に1年以内に返済する部分がありますので、

しっかりとした企業経営をするためにも、その部分は流動負債の「1年以内返済長期

借入金」に区分することが、すでに説明したとおり大事です。

いまだに「長期借入金」があるのに、「1年以内返済長期借入金」が計上されていない

場合は、企業会計志向でない証左だともいえます。

しっかりとした経営をするためにも

長期借入金の1年以内返済部分を「1年以内偏在長期借入金」で

管理することが大切です!

 

(2)役員借入金

 役員借入金とは、事業資金不足をオーナー経営者が資金提供しているものです。

したがって会社にとっては金利負担がなく、また契約書に基づく返済期間や毎月の返済額も

定められていないことが多く、一部金融機関などでは「自己資本」と見做してくれるところ

も多いのですが、しかし一方、オーナーが資金提供しなければならないほど資金繰りが苦し

いのかという見方もありますので、けっして良い評価ばかりが得られると限りません。

 そこで、役員借入金を「長期未払金」と表示している場合もありますが、実態に変わるこ

とはありませんから、ほめられたものではありません。

 問題の本質は「資金繰りが苦しくなっている」という事実です。

事業から得られる資金だけでは足りなく、オーナー経営者が資金提供しているわけですから

まさに「赤信号が点滅している」ということを自覚しなくてはなりません。

すぐにでも経営改善の方向性を明確にし、経営改善を着手することが大切です。

 なお、役員借入金が多いパターンは、一部、創業間もない企業が当初資金だけでは不足し

その不足部分をオーナーが補っている場合もありますが、その多くは戦後まもなく創業し、

高度経済成長の波に乗り、成長した創業50年前後の企業に多く見られます。

高度経済成長期で得た財産を、経営環境の変化に対応できない現在の経営に投げ出している

状況です。一時、大きな成功を収めたばかりに、その思いが経ち切れず、経営の舵を切れない状況が続いているという状況です。

 以前の成功は大いに称えられるものですが、それはそれとして、いつまでも過去の成功体

験を元にした経営では現代には通じないことを客観的に知ることが大事です。

昔やって来られたように、いまも変革に挑戦しなければならないということです。

役員借入金は「変革に挑戦しなくてはならない」ことを伝えています!

 

 さて、そんな固定負債ですが、それをどのように読めばよいのでしょうか?

「いま固定負債はいくらある」、「昨年より減っているあるいは増えてしまった」だけでは

読んだことになりません。

多角的に他の項目と比較して現状の状況を知り、経営的な判断をすることが大切です。

 

 

2.設備投資と固定性調達資金を比べる

 固定負債とは長期にわたって返済できる負債であることは説明しました。

したがって、長く運用する資産の調達資金として最適であることも説明しました。

そこに読み方のヒントがあります。

 では、長く運用する資産とは何んでしょうか?

それは事業における設備である固定資産ですね。 それと比べてみることが大切です。

 また、設備投資資金に適した資金は、固定性調達資金ですが、固定性調達資金とは、

固定負債の他に自己資本つまり純資産があります。したがって、それを加えて比べます。

    固定資産2500万円÷(固定負債2000万円+純資産1200万円)

   =固定長期適合率78.1%

 「固定長期適合率」という名称は大変難しい名称ですが、

名称に惑わされなずに考え方を学びましょう。

要は「設備投資は自己資本と長期返済ができる調達資金内で行いなさい」ということです。

 設例の場合、8割内程度で設備投資を行っていますから、資金調達に関してはまずは適切

だと判断できます。

これが100%を超えてしまうと、超えた部分は短期返済資金で投資を行っていることになりますから、資金の運用としては問題です。

 

 

3.設備投資と自己資金を比べる

 念には念を入れて、設備投資と自己資金を比べてみることも大切です。

自己資金とは、つまり純資産ことですね。

固定資産2500万円÷純資産1200万円=固定比率208.3%

 これだと自己資金の2倍以上の設備投資をしていることになります。

たとえば一生住み続ける住宅でも、頭金は最低でも20%程度は必要だと言われています。

つまり、固定比率500%ということになります。

しかし、事業設備は住宅のようにずっとは使い続けられませんので、そこから類推すれば

最大でも200%程度と考えるべきかと思います。

とすると、いまの状況は目一杯と判断できます。

 

 

4.固定負債を改善する方法

(1)自己資金を増やす

 自己資金を増やすとは、具体的に言えば、繰越利益剰余金を増やすということです。

繰越利益剰余金を増やすには、やはり経営の「黒字経営化」が大前提です。

 

(2)遊休固定資産の処分

 設備の稼働状況は思いのほか、変化がはげしいものです。

もう動いていない設備、稼働の低い設備は思い切って処分することが大切です。

経営は、黒字経営なくして経営ナシ! 

 

 

5.まとめ

①固定負債とは、長期(1年超)にわたって返済できる負債です。

 したがって、長く運用する資産の調達資金として最適であることを理解しましょう。

②長期借入金には1年以内に返済する部分が必ずあります。

 しっかりとした企業経営管理をするために、その部分は流動負債の「1年以内返済

 長期借入金」に区分して管理しましょう。

③役員借入金があるということは「変革に挑戦しなくてはならない」ことを伝えています。

④固定長期適合率(固定資産と固定性資金調達額の比較)は100%が限度です。

⑤固定比率(固定資産と自己資本の比較)は200%が限度です。

 

 

 

何度も申しあげていますが、

会計は決算・税務申告のためだけにしている「事務」ではありません。

会計は経営判断を行うために、日々行っている「経営管理(マネジメント)業務」です。

いまほど経営に手腕が求められている時代はありません。

会計とマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続く経営を目指しましょう。

 

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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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掲載日:2021年2月3日 |カテゴリー:会計識字率

会計の読み方 未払いおよび預り

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新型コロナ感染拡大・第2回目の緊急事態宣言と、

経営環境は大きく変化しそして厳しくなっています。

そんなときに必要になるのが経営状況の羅針盤である会計を読み解きながら

経営の舵取りをするということです。

ぜひ、実務的な会計の読み方を習得してください。

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 今回のテーマは、『未払いおよび預り』です。

企業には前々回で見てきた仕入れに関する未払のほかに、

経費等に関する未払いがあります。 それが今回のテーマです。

そんな未払いと預りについて、中小ビジネスにとっての実務観点から見ていきましょう。

 

第10回 未払いおよび預りの読み方

 『未払いおよび預り』は負債中の「流動負債」に表示されています。

ということは『未払いおよび預り』はこれから近々に決済しなければならないものですが、

「運転資金」として調達している資金という性格もあるということです。

 まず、このことを再度認識しながら未払いと預りの運用と返済のマネジメントをしていき

ましょう。

 

1 事業における「未払い」と「預り」とは

(1)中小ビジネスにおける「未払い」とは

 中小ビジネスにおける「未払い」は次の3つに分類されます。

その1つが前々回に説明した、仕入れにおける「未払」です。

これには『支払手形』と『買掛金』がありましたね。

2つめは仕入れ以外でいちいち契約するのではなく単発的に発生する、支払期限が短い

「未払」です。 これを『未払金』といいます。

3つめは同じく仕入以外ではありますが、契約に基づいて継続的に発生する支払期限が短い

「未払」です。 これを『未払費用』といいます。

 

 詳しくは企業会計のルールである「企業会計原則」で定められていますので、

ご興味のある方はそちらを参照してください。

このルールは利害関係者が正しく投資している会社の状況を判断するために定められている

のですが、しかし一般の中小企業は上場企業のように直接市場から資金調達していません。

したがってあまりそれに準じて会計処理をする必要はないともいえます。

つまり、どちらでも構わないということです。

 むしろそれよりも中小ビジネスにおいては、未払いの内容に応じて、内訳を管理する

ということが大事です。

なぜなら、それによって何が計画よりも増えているのか、資金繰り的にはどうなのかなど、

多くのことが判断できるからです。

未払いには『買入債務』と『未払金』『未払費用』の3種類がある

未払金と未払費用は内容に応じて内訳管理することが大事である!

 

(2)中小ビジネスにおける「預り」とは

 「預り」とは、他人資本ですから負債ではありますが、借金とは少し違ったのもです。

本人が支払う代わりに一時的に預り、期日が来れば本人に変わって支払うという性格のもの

です。 これには次の2つがあります。

 

 1つは本人代わって納付する社会保険料や源泉所得税である「預り」です。

これを『預り金』といいます。これは必ず期日内に納付しなければなりません。

 2つめは顧客から売上代金と一緒に預り、顧客に代わって納付する「消費税」です。

これを『仮受消費税』といいます。

この金額を把握するためには会計を税抜き経理しなくてはなりません。

預りには『預り金』と『仮受消費税』があり、

両方とも期日内に支払うことが預かった企業の義務です!

 

 さて、そんな『未払いおよび預り』ですが、それをどのように読めばよいのでしょうか。

読むといっても「いま未払・預りがいくらある」とか、「昨年よりは減った・増えた」では

読んだことになりません。ただ計算しただけに過ぎません。

 では、どのように読めばよいのでしょうか? それは、多角的に『未払いおよび預り』を

比較することです。

多角的に比較して会社の未払い・預り状況を読み、経営的な判断をすることです。

未払い・預りを読むとは多角的に比較し、

その運用と決済について良し悪しを判断することです!

 

 では、どんなものと比較して、読めばよいのでしょうか?

 

2.未払いの増減をチェックする

 まず、未払いの増減状況をチェックしましょう。

未払いは仕入れを除く「費用の未払額」ですから、基本的には前年と同様か、

できれば経営環境が不透明な中ですので、少しでも減らしたいものです。

当月未払い額90万円-前年同月未払い額80万円=増減額+10万円 

 しかし「昨年より10万円増えているのか・・」で終わってはいけません。

ここで活きてくるのが、未払の内容に応じた「内訳管理」です。

未払の内訳管理をしていると、何が増えて、何が減っているのか、一目瞭然となります。

具体的にわかるわけですから、検証が可能になります。

 増えるべき経費が増えているのか?

 減らすべき経費が増えているのか?

それによって、同じ増加でも見え方が違ってきますね。それが未払の内訳管理の効果です。

未払を内訳管理すると、その状況がクリアに見てくる!

 

3.預り金の増減と、手元資金と比べる

 次に預り金ですが、預り金は社会保険料と源泉所得税を本人から預かっている金額です。

(1)増減を見る

 まず、その増減を確認しましょう。

当月預り額100万円-前年同月預り額110万円=増減額△10万円

 昨年と比較すると、10万円減っています・・。 この状況をどう読みますか?

経営は厳しい状況ですが、しかし、この状況は喜んではいられません。

なぜなら、預り金が減っているということは、給与支給額が減っているということだから

です。

今は人件費をできれば高めていくことが、各経営者に求められている使命でもあります。

それをテコに「士気」も高めたいところです。

預り金の減少は人件費の減少を示している

できれば上げることが経営者の使命です!

 

(2)手元資金と比べる

もし、経営状況が苦しい状況であれば、手元資金とも比べておきましょう。

手元資金510万円÷(当月預り額100万円×2)=2.55倍

 ポイントは、社会保険料は会社負担分も別途ありますので、ザックリ2倍にするという

ことです。源泉所得税は2倍になりませんが、あまり細かく考えないで、それは安全性と

捉えザックリと見てみましょう。

これはどのくらいあれば良いとかいうことはありませんが、この事例の2.5倍程度では、

「かなり資金繰りは厳しい」ということが自覚でき、判断できます。

 

4.仮受消費税は納付額の試算と、手元資金と比べる

 仮受消費税とは、顧客から預かっている消費税です。

(1)納付額の試算をする

 会計を「税抜き経理」していると、この『仮受消費税』と仕入や経費などで支払っている

『仮払消費税』が常に計算できます。

そして、『仮受消費税』から『仮受消費税』を引き算すると、おおよその消費税納付額が

計算できます。

仮受消費税960万円-仮払消費税480万円=概算消費税納付額480万円

 最終的には決算整理や消費税の計算方式によっても若干異なってきますが、概算はこの

計算をすることでいつでも確認できます。

 

消費税率は現在10%ですので、納付額は想像以上に多く、中小企業の中では無意識の内に

仮受消費税を運転資金として運用してしまい、消費税納付時に困っている企業が多いことも

事実です。

そうはならないためにも、経理は税抜き経理を行って、常に概算の消費税納付額を確認して

おくことは大事なことです。

消費税率10%時代、常に概算納付額を把握しておくことは

最重要マネジメントのひとつです!

 

(2)手元資金と比べる

 概算消費税納付額が把握できれば、次にマネジメントすべきことは納付資金状況です。

(手元資金510万円÷概算消費税納付額480万円)-100

      =消費税納付余裕率6.25%

 消費税納付余裕率が6.25%ということは、

いまの手元資金ではなんとか消費税は納付できますが、納付したなら、たちまち手元資金が

無くなってしまうことを示しています。 つまり手元資金は不足しているということです。

この状況では、納税資金手当てを考える必要があることを示しています。

ある程度の企業はここまでは考えますが、さらに大事なことはそのあとのことです!

そのあとのことを考えないために、厳しい経営を繰り返している企業が多くあります。

 そのあとのこととは「借入金の返済計画」であり、かつ「増収計画」です。

納税資金手当とは、「借入と返済」と「増収計画」がセットです!

 

5.未払いおよび預りを改善する方法

 最後に、これら『未払いおよび預り』を改善する方法について、簡単に触れます。

(1)未払金および未払費用

  1.内訳管理をして、それぞれの状況を掌握する。

  2.基本的には前年維持または前年削減とする。

  3.執行する経費はメリハリをつける。

(2)預り金

  1.預り金の方向性は、前年比アップそして人件費の増額です。

  2.士気の向上とは、付加価値(粗利)の向上であり人件費増額の余地を作ることです。

(3)仮受消費税

  1.常に概算の消費税納付額を把握する。

  2.概算の消費税納付額と手元資金とを比べる。

  3.毎月の概算消費税納付額分を積立預金すれば、納税資金に困ることはなくなる。

  4.納税資金手当は借入と返済、増収計画をセットで考える。

(4)経営の黒字化、高付加価値化

  1.やはり、経営の「黒字経営化」が基本中の基本です。

  2.さらに、経営の「高付加価値化」を実現する必要があります。

 

 

 これまでも何度か申しあげてきましたが、会計は決算や税務申告のためだけにしている「事務」では、決してありません。

むしろ会計は会社経営の判断をするために日々行っている「経営管理、マネジメント業務」なのです。いまほど経営者の『経営手腕』が問われているときはありません。

会計とそしてマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続けられる企業経営を目指しましょう。

 

 

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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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掲載日:2021年1月27日 |カテゴリー:会計識字率

会計の読み方 短期・長期借入金

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新型コロナ感染拡大・第2回目の緊急事態宣言と、

経営環境の変化は大きく、そして厳しくなっています。

そんなときに必要になるのが、経営状況の羅針盤である会計を読み解きながら

経営の舵取りをすることです。

実務的な会計の読み方を習得しましょう。

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 『借入金』とは、普通に言えば「融資」と呼ばれる銀行借入金です。

事業には常に事業資金が必要ですが、いつも自己資本だけで賄えるわけではありません。

しかし現実はそうも行かないことも多く、そんな時に資金調達する方法が銀行借入です。

そのような借入金ですが、有効にかつ安全に活用したいものです。

 今回はそんな『借入金』についての実務的な読み方です。

 

第9回 短期・長期借入金の読み方

 負債の中でも重要な資金の調達の一つが「借入金」です。

賞与支給や納税などで運転資金が足りないとき、設備投資を自己資金だけでできないとき

など、大変重宝する資金調達の一つです。

しかし借入金は長期間に渡って、元金に金利を加えて毎月返済しなければなりませんので、

その管理は経営において大変重要なのです。

 また借入金は大企業が増資などで直接、市場から資金調達を行う「直接金融」に対して、

「間接金融」とも呼ばれます。

 

1.管理すべき借入金の種類

 まず、管理すべき『借入金』の種類を勉強しましょう。

借入金は一般的には金融機関からの融資ですが、会計では「ワン・イヤー・ルール」に

則って、『短期借入金』と『長期借入金』に分けて管理するように仕組まれています。

この「短期」「長期」という言葉は、一般的に使用する短期・長期という意味だけはなく、

”企業経営のマネジメントに必要なため”、次のように、返済期間で厳格に分けるように

ルール付けされています。

  1.返済期間が1年以内であれば「短期借入金」に区分します。

  2.返済期間が1年超であれば「長期借入金」に区分します。

したがって、賞与支給や納税目的などの場合を除き、借入金のほとんどは『長期借入金』に

区分されると思われます。

 しかし、長期借入金であっても、1年以内に返済する部分は必ずあります。

最近では経営マネジメントに資する観点から、長期借入金うち、1年以内に返済する部分を

「1年以内返済長期借入金」に分けるようにルール化されています。

 *自社の試算表を見て、長期借入金はあるのに1年以内返済長期借入金がない場合は、

  依頼している会計事務所に問題があるのかもわかりません。

借入金には「短期借入金」と「長期借入金」

それに「1年以内返済長期借入金」の3種類がある!

 

2 借入金の運用目的

 上記の説明で、『借入金』には3種類あることはわかりました。

では、それぞれに標準的な運用目的の違いはあるのでしょうか?

それは次の表示区分がヒントになります。

仮に、短期借入金が900万円、長期借入金が2000万円(うち1年以内返済分が

400万円)だとすると、表示は次のとおりになります。

 短期借入金900万円+1年以内返済長期借入金400万円+長期借入金1600万円

 =借入金総額2900万円

 流動負債 短期借入金900万円+1年以内返済長期借入金400万円=1300万円

 固定負債 長期借入金1600万円=1600万円

つまり、ワン・イヤー・ルールに則って、流動負債と固定負債に分けられて表示されます。

 

 そうすると、流動負債は返済期間が短い他人資本ですから、『短期借入金』は資金化が

早い流動資産で運用すべきこととが基本となります。

間違っても、短期借入金を固定資産に運用することがないように、マネジメントしなければ

なりません。

 一方、『長期借入金』は固定負債ですから、固定資産(設備投資)に運用してもよいこと

になりますが、しかしそれにも限度というものがあります。限度を超えない範囲で、つまり

無理な設備投資とならないように、マネジメントしなければなりません。

短期借入は流動資産で、長期借入は固定資産で運用することが基本!

 

 さて、そんな『借入金』ですが、それをどのように読めばよいのでしょうか。 

読むといっても「いま借入が2900万円ある」とか、「昨年よりは減った・増えた」では

読んだことになりません。 ただ計算しただけに過ぎません。

 では、どのように読めばよいのでしょうか?

それは多角的に借入金を比較することです。多角的に比較して会社の借入状況を読み、

経営的な判断をすることです。

借入金を読むとは多角的に比較し、その使い方・残高の良し悪しを

判断することです!

では、どんなものと比較して読めば良いのでしょうか?

 

3.借入総額の適正をチェックする

 自社の借入金総額の適正をチェックする尺度は何だと思いますか?

それは資金の源泉である売上高です。

この資金源泉の量と借入の量を比較すれば、借入金総額をチェックする適正な指標と

なりそうです。

借入金総額2900万円÷平均月商800万円=借入金月商倍率3.63カ月分 

 

 借入金が平均月商の3.63カ月分とはどういうことでしょうか?

たとえば理想的な経常利益率が10%として、半分は納税と内部留保へ回すと考えると、

借入金返済には最大毎月の売上高の5%が回せるということになります。

3.63カ月をこの5%で返済すると(363÷5=)72.6カ月、つまり、約6年間

返済にかかると計算できます。

現在の長期借入金の返済期間は最大7年間程度ですから、その枠の中に入っていますから

「なんとか適正の範疇にある」と判断できます。

これまで売上高3カ月分から4カ月分程度の借入金額が適正と言われてきました、

現在はコロナ禍で返済期限が伸びていますから、12カ月分程度でも適正と考えられます。

借入総額と平均月商を比べれば、借入総額の適正が判断できる!

 

4.借入総額の返済期間を試算する

 次に自社の現状で、借入金返済期間を考えてみましょう。

借入金の返済原資は何ですか?

それは「営業利益」です。借入返済は利益からするからです。

しかし営業利益には「減価償却費」が差し引かれていますので、それを戻して考えます。

なぜなら減価償却は現預金支出を伴わないからです。

したがって、最大の自社の返済原資は「営業利益+減価償却費」となります。

営業利益480万円+減価償却費100万円=償却前営業利益580万円

 *営業利益ではなく、経常利益でも良いのですが、正確には経常利益は支払利息が

  差引かれていますので、正しくは営業利益となります。

 

それを極論ですが、「全額返済に充てる」と考えます。そうするとどうなりますか?

借入金総額2900万円÷償却前営業利益580万円=債務償還年数5.0年

これは極論の試算ですが、「1年間の儲けた利益をすべて返済に充当する」と考えると

5年間で返済できることになります。

実際は「1年間に儲けた利益の半分で返済する」と考えると、10年間となります。

 

 現在、金融機関では極論の試算で債務償還年数を見てくれていますので、

5年間であれば、まだ借入の枠はあると判定されます。

しかし、これが10年を超えてしまうと、10年先はもう企業存続自体が不透明ですので、

追加融資は厳しくなります。

 現在はコロナ禍のため、その判断基準は緩んでいますが、しかし企業の健全性から考え

れば、債務償還年数は5年程度がMAXとして判断したほうが良いと思います。

 

5.借入金を改善する方法

 最後に、借り入れ状況を改善する方法について簡単に触れます。

(1)経営の黒字化、黒字化の拡大

 やはり、ここでも経営の「黒字経営化」、あるいは「黒字幅の拡大」になります。

黒字経営を続けていればそもそも借入をすることも少なくなり、また仮に借入したとしても

その額は小さくなります。

そうすると『月商倍率』や『債務償還年数』も当然のことながら低くなります。

 ただし同じ黒字経営でも、「適正な黒字経営」がこれからは大きな課題となってきます。

適正な黒字経営とは、従業員の人件費もしっかり上げて、それできちんとした営業利益率を

確保するということです。

 

(2)リスケジュール

 略して「リスケ」と呼びますが、現在の返済状況を改善(楽に)するには、

金融機関に相談して、返済期間を延ばすことが有効です。

 

6.まとめ

 以上をまとめますと、次のようなイメージとなります。

ぜひ、借入金をコントロールし、経営の安全性を高めるとともに、荒波に強い経営を

しましょう。

 

 

 これまでも申しあげて来ているとおり、会計は決算や税務申告のためだけにしている

「事務」では、決してありません。

むしろ会計は会社経営の判断をするために日々行っている「経営管理、マネジメント業務」

なのです。いまほど、経営者の『経営手腕』が問われているときはありません。

会計とそしてマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続けられる企業経営を

目指しましょう。

 

 

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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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掲載日:2021年1月20日 |カテゴリー:会計識字率

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