経営計画(予算)の作り方 前編

2021年もいよいよ終わろうとしています。

この1年も新型コロナウイルスに振り回された1年でしたが、

このコロナ感染拡大時の経営で、経営計画に基づく経営がいかに大切かと感じられた

経営者の方も多かったのではないのでしょうか。

経営計画があれば、経営の狂いに一早く気付くことができます。

したがって、打ち手もそれだけ早く講じられることになります。

コロナ感染拡大だけに限らず、近年は国内問題や国際関係あるいは温暖化問題など、

以前より数段早く、経営に影響を与えるようになってします。

それだけに経営計画や予算立案の重要性は格段に高まっており、それも経営規模に関係なく

経営計画の必要性は増しています。

そこで今回から、これまでの財務に関する知識に基づいた実務的な経営計画(予算)の

作り方を2回に渡ってご紹介します。

 

1 経営計画策定に際して準備する材料

料理を作るのにも材料が必要なように、経営計画を策定するにも準備する材料があります。

それは次のとおりです。

 ①今年の売上高

 ②今年の限界利益率

 ③今年の人件費合計

 ④今年の経費合計

 ⑤来年の借入金返済額

 ⑥来年の目標利益額

この6点が準備できていれば、大枠の経営計画は策定出来ます。

では、その策定の要領を紹介しましょう。

 

2 最初に来年の必要利益を考える

経営計画策定の要領は底から作り始めるということです。

建物でもまず基礎からか作りますが、それと同じです。

その経営計画の基礎とは『必要利益』です。

来期の目標を売上高に置く売上志向の経営者が多くおられますが、

売上高はプロセスの目標であり、あくまでも最終の目標は『利益の確保』です。

このことを忘れないようにしましょう。

経営計画の目標は売上高達成ではなく『利益の達成』です!

 

その来年の必要利益には「借入金の返済額」を加えねばなりません。これがポイントです!

何故なら当コラムでも何回も説明しているとおり、借入返済は利益の中からするからです。

もし利益より借入返済額の方が大きければ、それは手元の現預金から不足額を支出すること

になります。よって、資金繰りを苦しくすることになります。

仮に、目標とする利益額が100万円、年間の返済金額が240万円とすれば、

来年の必要利益は340万円となります。

 

3 次に来年の必要固定費を考える

来年の必要固定費は「人件費と経費の合計」です。

人件費は役員報酬と従業員の給与と賞与からなります。

それに忘れてならないのは社会保険料です。

役員報酬はともかく、従業員の給与・賞与は昇給させたいものです。

なぜなら従業員の給与・賞与は、従業員同士が協働し、組織で目標を達成するための行動で

ある職場のモラールの大きな源泉のひとつだからです。

従業員の給与・賞与は職場のモラールの大きな源泉の一つです!

 

仮に今年の役員報酬が800万円、従業員が3人いて給与・賞与が1800万円であれば、

役員報酬を800万円の据え置きで、従業員の給与・賞与の昇給を6%とすれば、

給与・賞与は1908万円となります。

それに社会保険料を15%と見積もれば406万円となりますので、

総人件費は3114万円となります。

経費は今年の実績1000万円で、費目別に増減があったとして同額にすることを目標と

するならば1000万円ですので、来年の必要固定費は4114万円となります。

 

4 そして来年の売上高目標を考える

ここまで考えれば、もう来年の売上高目標は計算できます。

計算する算式は次のとおりです。

来年の売上高目標=(必要固定費+必要利益)÷限界利益率

 

ここで注意することは売上総利益率ではなく、『限界利益率』ということです。

売上総利益率は全部原価計算の売上原価を除いた利益率という意味ですが、

限界利益率は直接原価計算の直接原価だけを除いた利益率ということに気をつけましょう。

限界利益率は「直接原価÷売上高」である!

 

仮に今年の限界利益率が55%であれば、来年の限界利益率は少なくとも同率か、

あるいは少しでも付加価値を上げるという方針を反映させて2%上げるとか考えます。

ここでは後者を採用し57%とします。

そうすると、

 来年の売上高目標=

(必要固定費4114万円+必要利益340万円)÷目標限界利益率57%=7814万円

となります。

 

因みにこの事例から、人件費や限界利益率が今年と同じとした場合の売上高を推測すると、

次のようになります。

(今年の固定費3990万+必要利益340万円)÷今年の限界利益55%=7872万円

*今年の固定費3990万

  =役員報酬・給与・賞与2600万+社会保険料390万+その他固定費1000万

 

ほぼ、同額の売上高が必要になることがわかります。

これによって、如何に限界利益率を改善することが、従業員への分配を増やすことや

必要利益を増やすことを実現させることを可能にさせるか、理解できるかと思います。

 

営業成績の改善には固定費を下げることも大事ですが、

限界利益率を上げることがさらに重要です!

 

これで大枠の経営計画は出来上がったわけですが、

次回は経営計画を細部に掘り下げ、経営計画策定のポイントをお届けします。


掲載日:2021年12月15日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

新.財務諸表9 まとめ

全8回に渡って「新.財務諸表」を掲載してきましたが、

財務諸表を経営に活かすヒントになったでしょうか? 少しで参考になれば幸いです。

今回はそのまとめをお送りします。

もしわからないところがあれば、各コラムを振り返ってください。

 

1 財務諸表の概要(詳しくは、新.財務諸表1を参照)

 ①財務諸表は自社の経営成績を表し、

  P/Lはこの1年でいくら儲けたのか、B/Sは自社の財政状況を明らかにします。

 ②上場企業においては、財務諸表は利害関係者に報告するものですが、

  一般中小企業においては経営者に向けた報告書です。

 ③作成にあたってはその客観性を保つためにも、

  企業会計原則に沿って7つの原則を守らねばなりません。

 

2 貸借対照表が表すもの(詳しくは、新.財務諸表2を参照)

 ①B/Sは、資金の運用と資金の調達を表します。

 ②資金の運用は総資産と呼ばれ、

  1年基準によって、流動資産と固定資産に分けられています。

 ③流動資産はその流動性(換金性)によって、

  さらに当座資産、棚卸資産、その他流動資産に分けられています。

 ④固定資産はその形状によって、

  有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分けられています。

 ⑤資金の調達は負債・純資産と呼ばれ、

  負債は他人資本であり、純資産は自己資本を示します。

 ⑥負債も1年基準によって、流動負債と固定負債に分けられています。

 ⑦純資産は資本金と、P/Lの利益を積み上げた繰越利益剰余金のことです。

 

3 負債が表すもの(詳しくは、新.財務諸表3を参照)

 ①負債とは、資金調達の出所を示し、そのすべてが他人資本です。

 ②流動負債とは、日々の営業活動を通じて得た資金調達であり、

  1年以内に返済する他人資本の集まりです。

  したがって、営業負債と呼ぶこともできます。

 ③固定負債とは、基本的には設備投資のために得た資金調達であり、

  1年以上をかけて返済する他人資本の集まりです。

 

4 純資産が表すもの(詳しくは、新.財務諸表4を参照)

 ①純資産とは、昔は資本と呼ばれていましたが、そのすべてが自己資本です。

 ②自己資本は最初は資本金だけから始まりますが、

  その後、事業を続けて得た利益である繰越利益剰余金が加わります。

 

5 資産が表すもの「前編」(詳しくは、新.財務諸表5を参照)

 ①当座資産は、現金、預金、受取手形、売掛金などから構成されます。

 ②現預金は資金の運用というよりも余剰資金という色彩が強く、

  手元資金とかキャッシュとも呼ばれるものです。

 ③現金は企業にとってポケットマネーです。

  多額の現金を手元に置いておくものではありません。

 ④預金は将来の使途(賞与、納税、設備投資など)別に分けて管理することが、

  資金繰りに強い会社にできます。

 ⑤受取手形と売掛金は合わせて売上債権と呼ばれますが、

  受取手形はなるべく無くすようにします。

 ⑥売掛金は月々そんなに大きく変動するものではありません。

  もし、大きく変動するようなら、

  それは何らかの問題があることを示していますので、調査します。

  また、売掛金は期日通りに回収することが、不良債権化させない秘訣です。

 

6 資産が表すもの「後編」(詳しくは、新.財務諸表6を参照)

 ①固定資産は、基本的には生産に関係する設備のことです。

 ②また、減価償却できる償却資産と、できない非償却資産に分けることもできます。

 ③減価償却費に相当するキャッシュは運転資金として使うのではなく、

  積み立てて次回の設備投資資金に充当するマネジメントが大切です。

 ④10万円未満の機器類は消耗品費、10万円以上20万円以下のものは

  一括償却資産として経費計上することが可能です。

 ⑤固定資産は回転率と固定長期適合率でマネジメントすることが重要です。

 

7 損益計算書が表すもの(詳しくは、新.財務諸表7を参照)

 ①P/Lは1年間の事業活動の純利益を表すとともに、

  どこでその増減が生じているのか、プロセスがわかります。

 ②プロセスとは、

  売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益です。

 ③そのプロセスの増減をもたらすのが、

  営業活動、売上原価、販管費、営業外損益、特別損益、法人税等です。

 ④売上高とは、事業資金の源泉であり、

  顧客の支持や取扱い商品等の価値評価を表します。

 ⑤売上原価や販管費は事業資金の使途であり、

  それを少なくできれば資金は多く残せることになります。

 ⑥P/Lを作成するにあたっては、

  3つの原則(発生主義・総額主義・費用収益対応)を守ることが大事です。

 ⑦P/Lは、営業損益、経常損益、純損益の3つの枠組みから出来ています。

 

8 損益計算書を読む知識(詳しくは、新.財務諸表8を参照)

 ①全部原価計算と直接原価計算の違いを知りましょう。

 ②管理会計P/Lの基本フォーマットは、

  売上高、限界利益、可処分利益、営業利益、経常利益です。

 ③その増減をもたらすものが、

  マーケティング、直接原価(変動費)、人件費、固定費、営業外損益です。

 ④棚卸資産の増減は、売上総利益の増減に大きな影響を及ぼします。

  したがって、棚卸資産を支障のない限り減らすマネジメントが

  黒字経営と赤字経営の岐路となります。

 ⑤従業員の士気を高めるにはいろいろな要素がありますが、その基本は労働分配率です。

  経営方針は、企業が良くなるための方針だけではなく、

  同時に従業員が良くなる方針を明示することが大切です。

 ⑥減価償却費は資金の流出を伴いませんが、

  それを次回の設備投資資金として蓄積することが大切です。

 ⑦損益の改善策は、

  売上拡大、付加価値アップ、人件費拡大、固定費削減、マーケティングの組合せです。

 ⑧管理会計P/Lを活用して、必要売上高の試算をすることが大切です。

  算式は、『必要固定費(総経費+人件費+利益+返済額)÷見込み限界利益率』です。

 

 

これらの基本知識をベースに体験で蓄積された知識と知恵を駆使して経営技術を磨けば、

どのような経営環境が訪れようとも、それらの荒波を乗り越えられる経営ができるように

なります。

 

 


掲載日:2021年12月8日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

新.財務諸表8 損益計算書を読む知識

前回は「損益計算書の概要」を説明しました。

大切なことはここからで、

P/Lの概要を理解したうえで「損益計算書を読む知識」を修得することです。

今回はそんなP/Lを読む知識について説明をしますので、是非、理解してください。

 

 

1 全部原価計算と直接原価計算のちがい

いきなり難しいそうな会計用語が出て来ましたが、

実務的に用語を理解すると、さほど難しいことではないことがわかります。

先入観は捨てて「全部原価計算と直接原価計算のちがい」を理解しましょう。

 

(1)全部原価計算とは

『全部原価計算』とは、

その字面のとおり「すべての原価を原価として計算する」ということです。

すべての原価とは、会計が要求するすべての原価です。

会計では原価として、商品の仕入・材料費や労務費、さらに外注費を含む製造経費を

要求しています。

したがって、売上原価として販売した商品の代金や材料費に加え、

製品に仕上げるために要した人件費を労務費と、同じく製造のために要した外注費や

電力代などを製造経費を計算します。

そして販売できなかったものは『棚卸資産』として次期に繰越します。

この原価の計算の仕方を『全部原価計算』といい、

この計算方法に従って申告書は作成しなければなりませんので、決算書も同じ考え方で

作成します。

 

全部原価とは会計が要求する原価であり、

商品・材料・労務・外注・製造経費を指す!

 

(2)直接原価計算とは

一方、企業として『管理会計』的に原価を捉えるとそうではなく、

自社の付加価値を計算するうえでは商品仕入や原材料だけを原価として計算して、

常に付加価値を高めていくために原価計算をしたいところです。

そこで出てきた考え方が『直接原価計算』なのです。

『直接原価計算』とは、

その字面のとおり「直接の原価だけで原価を計算をする」ということです。

 

直接原価とは、外部から購入したものだけで、

全部原価のうちの商品仕入と材料費だけです!

 

この原価を元に、社内でいろいろな作業などを加えたうえで販売しているわけですから、

売上高から直接原価を差引したものが、いわゆる自社で付けた『付加価値額』となります。

このことを売上総利益と区別して、『限界利益』と呼びます。

 

全部原価を差引したのが『売上総利益』、

直接原価だけを差引したのが『限界利益』といいます!

 

このあと、人件費やかけた費用を差引したものが『営業利益』となり、

全部原価計算の営業利益とも一致します。

 

仮に、それで赤字(営業損失)になっているのであれば、

それはかけた手間ひまに対して付加価値額が低いことを示しています。

したがって、さらに付加価値額を上げていくための創意工夫をしなければならないという

発想に繋がっていきます。

この考え方が『直接原価計算』であり、だから『管理会計』と呼ばれる所以なのです。

 

いかがですか? そんなに難しい話ではなかったかと思います。

さらにこの『直接原価計算』の素晴らしいところは、

付加価値額を上げるためのさまざまな分析やシミュレーションができるところなのです。

 

 

2 管理会計としてのP/Lフォーマット

『管理会計』とは、

「会社の経営に有益になることを一番に考える会計」という意味でもあります。

通常の損益計算書は、会計原則や税務申告を前提に、書式は決められていますが、

管理会計の損益計算書は、自社の経営に最も役立つ書式にすることが重要なので、

定められた書式はありません。

自社で役立つと思われる書式でP/Lを作成すればよいわけです。

 

これまで説明してきた、制度会計上のP/L書式は、次のとおりとなっています。

  売上高

  △売上原価(商品仕入、材料費、労務費、製造経費)

  売上総利益

  △販売費及び一般管理費

  営業利益

  ±営業外損益

  経常利益

  ±特別損益

  税引前当期純利益

  △税金等 

  当期純利益

 

この売上と利益が、よく書籍で書かれている『収益と5つの利益』です。

しかし、これでは直接原価や間接原価(共通原価)また人件費や経費がいろいろな箇所で

計上されているので、シャープに会社の営業成績を示すことができません。

そこで、例えば、次のような工夫をするわけです。

  売上高

  △直接原価(商品仕入、材料仕入)

  限界利益(付加価値額)

  △人件費(役員報酬・給与・賞与・法定福利費)

  可処分利益

  △固定費(販管費、労務費。製造経費)

  営業利益

  ±営業外損益

  経常利益

 

これならば、営業の総収益、付加価値額、人件費の分配、かかった総経費などがわかります

ので、どこに問題が潜んでいるのか、シャープに捉えることができます。

 

 

3 売上総利益と棚卸資産(在庫)の関係

売上総利益は、「売上高ー売上原価」で計算されます。

また、売上原価は「期首棚卸高+期中仕入高ー期末棚卸高」で計算されます。

原価計算は難しそうに思われていますが、その本質は単純です。

ロジックは「初めからあったものと仕入れたものを足して、そこから残ったものを引く」

ということです。

 

原価計算の本質は「初めからあったもの+増えたものー残ったもの」です!

 

したがって、期首棚卸高と期中仕入高が変わらない(確定している)のであれば、

「期末棚卸高が増えれば売上原価は下がる」

「期末棚卸高が減れば売上原価は上がると」ということになります。

そうすると、売上高も変わらないとしたら、在庫を増やすことで売上総利益は増えて、

在庫を減らすことで売上総利益は減るという、「在庫が売上総利益増減の弁である」ことに

気づきます。

 

在庫が増えれば利益は増加し、在庫が減れば利益は減少するという

在庫は利益の増減に関係する!

 

だから、在庫が『決算調整』に使われるわけです。

しかし、ここで理解していただきたいことはそんな利益調整の話ではなく、

「在庫次第で黒字化できる大きな可能性がある」ということです。

ここに、再三再四ご紹介している「優良企業とそうでない企業の岐路がここにある」という

意味です。

 

販売に支障が出ない限り、在庫を減らすことが黒字経営の鉄則です!

 

 

4 労働分配率とは

『労働分配率』という言葉も難しいそうな言葉ですが、冷静に見ていきましょう。

「労働」とは、労働者の給料と賞与、そして法定福利費のことを意味しています。

したがって、『労働分配率』とは、給与・賞与・法定福利費として分配している割合という

ことです。

 

問題は、分配率を計算するにあたり「その分母は何が一番適切なのか?」ということです。

 売上高ですか? もちろんそれも意味がありますね。

         売上高の何割を社員・従業員に還元しているのか、把握できます。

 総利益ですか? もちろんそれも意味があることです。

         粗利の何割を社員・従業員に還元しているのか、把握できます。

しかし、これらの分母にはいずれも「真水でない」という問題があります。

 

真水とは、『利益の大元』ということであり、それは『限界利益』にあたります。

この限界利益を算出するためにも、すでに説明した『直接原価計算』が重要です。

なぜならば、『限界利益』は「売上高ー直接原価」という真水であるからです。

 

労働分配率とは限界利益(真水)に対する

社員・従業員の総人件費への分配割合です!

 

これで分配率をマネジメントすると、

付加価値額の何割を社員・従業員に還元しているのか、あるいは還元するのかを

ハッキリさせることができます。

ハッキリさせることで、社員・従業員も「なぜ付加価値を高めなければならないのか?」と

いうことがすんなりと理解できます。

 

この労働分配率が全社一丸態勢を敷く秘訣です!

 

さらに、『労働分配率』にも種類があります。

経営を担う者としては、知っておきたいところです。

 一つは『全社の労働分配率』です。

  →総人件費÷限界利益×100

 二つめは『社員・従業員だけの労働分配率』です。

  →(給与・賞与+従業員法定福利費)÷限界利益×100 

 三つめは『役員報酬の労働分配率』です。

  →(役員報酬+役員法定福利費)÷限界利益×100

さらにパート・アルバイト・契約社員などが貴重な戦力となっている場合は、

契約社員労働分配率も重要な指標となります。

 

社員・従業員の納得感を高めるためには

「労働分配率」をマネジメントすることが大事!

このことが「公明正大な分配管理」にもあり、社内のモラールも上がってくる!

 

 

5 減価償却費と設備投資資金の関係

『減価償却費』は計算できなくでも、おおよその意味はなんとなく理解されているかと

思います。

ただ、知っておきたいことは、減価償却費は「費」と付いているとおり費用の一つですが、

利益は減価償却費を引き算して計算されていますが、おカネは支出は伴っていないという

ことです。

少しカッコつけて言えば「減価償却費はキャッシュアウトされていない」ということです。

 

減価償却費はキャッシュアウトを伴わない費用です!

 

たとえば、売上が1,000、費用が800(うち減価償却費100)とします。

 すると、利益は1,000-800で「200」となります。

 しかし、キャッシュは、利益の200と減価償却費の100が残ることになります。

 したがって、手元資金が利益以上にあることになるので「資金繰りは楽になる」のでは

 ないのです!

この減価償却費の分100を使ってしまうと、どうなるのでしょうか?

 

設備は使い始めた途端に、次回の入れ替えが始まっているともいえます。

人間の寿命と同様、設備の寿命も「永遠」ではありません。

減価償却費とは、購入した設備の毎月・毎年の使用料と同じですから、

使うのではなく、積み立てていくことが大切です。

そうすることで、次回の入替え時の『設備投資資金』が貯まることになるのです。

 

減価償却費による「資金」は使うのではなく、積み立てていくことが大事です!

 

 

6 P/Lの基本戦略

このように、P/Lの読む知識はいろいろありますが、

ここまででも基本的な『戦略志向』を持つことができます。

(1)資金の源泉である『売上高』

売上高を「取引先や顧客からの支持である」と理解すると、

売上高が下がっているということは、「危険信号の点滅」だと理解できます。

また、社員・従業員の一人当たり売上高は、社員・従業員の生活を守るための

『資金の源泉』です。

したがって、これが下がるようでは、社員・従業員の生活費を増やしていくことに

応えてはいけなくなるということになります。

このように理解することで、「売上高を減らさない方法」や「少しでも増やす方法」を

全社一丸で考えることを可能にします。

 

(2)付加価値額である『限界利益』

限界利益の減少とは「価値の減少」です。

自社の商品や製品、サービスの魅力が下がったということです。

そう理解すると、再び付加価値に磨きをかけることや新しい付加価値を創造していくこと

への発火点につながります。

 

(3)全員で付加した価値の分配である『人件費』

いま、いろいろ議論されていますが、日本の人件費は安すぎることは確かです。

欧米と比べて、どうのこうのというのではなく、国内事情の過去から振り返ると

明らかにそうです。

いま、そんな状態であっても豊かな生活が送れているのは、世帯所得の標準が『共稼ぎ』に

なっているからです。

このことを中小企業に限ってみれば、ますます顕在化しています。

これでは、「いい人材を集めたい」と願っても、とても無理な話です。

人件費を上げられない理由を経営者側から見れば、売上が上がらない、儲けが少ないなど

いろいろあるかもわかりません。

しかしまず改めるべきことは、方向付け(経営革新)をして、そして結果よりも先に、

『成果』を社員・従業員に見せることではないのでしょうか。

よく「いろいろ工夫をしようとしているのだけれど、社員が思ったように動いてくれない」

という社長の声を聞きますが、当たり前です。

それで会社は良くなるかもわかりませんが、社員・従業員はどれだけ良くなるのか見えない

からです。

どの経営方針も、やることや方向性は明示されていますが、そうなったら

どう待遇改善されるのか、ほとんど示されていません。

それは立場を変えて考えてみると、よくわかるかと思います。

 

まず待遇が改善されることを示し給料を上げる!

そして改善に取り組むという順序がいま大事なのです!

 

(4)固定費である『経費』

経費を削減することに抵抗を示す人はいるかもわかりませんが、

異議を唱える人は社内にはいません。

この経費を少しでも抑えられれば、社員・従業員の分配に回せる部分も多くなり、

利益の積み増しもでき、資金繰りがラクになります。

このことを全員で理解することが大切です。

単なるケチケチ作戦ではなく、不必要なところは削って必要なものには使う、

そして少しでも分配を増やすということです。

 

(5)一番すぐにでも使える『戦略論』

経営戦略論にもいろいろありますが、

『アンゾフの製品市場戦略』が最もポピュラーな考え方で、取り組みやすい考え方です。

詳しくは『マーケット戦略 アンゾフ成長マトリクス』を参照してください。

 

 

7 必要売上高のシミュレーション

売上高のシミュレーションを行う時にも『直接原価計算』が役に立ちます。

直接原価は表現を変えると、売上高の増減に比例する『変動費』と言い換えられます。

また、変動費を除く費用は、売上高の増減に関係なく固定的に発生する『固定費』

言い換えられます。

そして、売上高から変動費を除いた部分が『限界利益』でした。

この『変動費』『固定費』『限界利益』の3つを活用して、売上高のシミュレーションが

行えます。

 

売上高とは「変動費+限界利益」です!

限界利益とは「固定費(人件費+経費)+営業利益」です!

 

そうすると、次のような計算式が成立します。

 限界利益=固定費

  ←限界利益と固定費が同額とは、営業利益はゼロです。

   つまり、『損益分岐点』を示します。

 限界利益率=限界利益÷売上高×100

したがって、

 固定費÷限界利益率=『損益分岐点売上高』

  ←固定費を限界利益率で割ると、固定費だけを賄える売上高が求められます。

   これが自社の「利益ゼロの売上高」です。

   実際の売上高がこれを超えてれば『黒字』、これ未満であれば『赤字』です。

さらに

 損益分岐点売上高÷自社の売上高×100=『損益分岐点比率』

  ←実際の売上高の状況を示します。

   100%であれば、収支トントンです。

   100%を超えているようであれば、赤字です。

   100%未満であれば、黒字です。

 100%ー損益分岐点比率=『経営安全率』

  ←赤字になるまでの余裕率です。

   プラスであれば、損益分岐点までの「売上減少幅」を示します。

   マイナスであれば、損益分岐点までの「必要売上高増加率」を示します。

 

これらを応用して次期の必要売上高が試算できます。

 『必要固定費』=来期見込み固定費+来期目標繰越利益額

  ←目標売上高試算のための利益を含めた総固定費を求めます。

   これに借入金返済額を算入する場合もあります。

 必要固定費÷来期見込み限界利益率=『来期目標売上高』

  ←必要固定費を来期の見込み限界利益率で割ると、来期の目標売上高が算出できます。 

 

 

 

以上、今回は「損益計算書を読む知識」と題して

P/Lの読み方や見方などを説明しました。

ぜひ、損益計算書をただ読み飛ばすだけでなく

その中に表れているものを読み取りましょう。


掲載日:2021年12月1日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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