会計で経営力を高めるシリーズ 買入債務

第6回会計で経営力を高めるシリーズ『買入債務』

 

 今回から「会計で経営力を高めるシリーズ」は、他人資本へテーマを移します。

他人資本とは、会社が自社以外から調達している「資金」のことを指し、

会計では『負債』といいます。

 今回はその中で、『買入債務』について説明をします。

なお、ここからは簿記形式の説明も加えることにします。

 

1 買入債務とは支払手形と買掛金

(1)買掛金とは

 多くの事業では仕入れした際、その都度代金を支払うのではなく、

「掛け」で仕入を行います。

  ⇒(借方)商品仕入 / (貸方)買掛金

仕入先では取引先ごとにまとめ、月末なり、翌月月初なりに「請求書」という形で

支払代金をまとめて取引先へ請求します。

その代金を支払うまでの間の仕入で発生した債務を『買掛金』といいます。

仕入をした会社から見れば、仕入れ商品を受領しているにも関わらず代金を支払っていない

のですから、仕入代金分を無利子で仕入先から借りているのと同じ状況です。

 

だから買掛金は資金の調達である『負債』に記載されます!

 

 

(2)支払手形とは

 会社は仕入先から届いた請求書に対して

(a)現金で支払う (b)銀行振込する (c)手形で支払う のいずれかの方法で決済します。

  ⇒(a)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)現金

   (b)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)預金

   (c)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)支払手形

現金支払ならびに銀行振込の場合は、支払った時点で「手元資金」は減ります。

それに対して手形で支払った場合は、手形期日までは手元資金は減らず、手形期日になって

初めて預金が減ることになります。

 つまり、請求書が届いてからさらに無利子で仕入先から借りる期間が延びることに

なりますので、手形を使えば「資金繰り」はラクになります。

 

 ■ここに注意!

 支払手形による決済は、無利子による借入期間が延びることになりますが、

良いことばかりかといえば「そうではない!」ということです。

なぜなら、手形期日が到来すると、有無を言わせず銀行口座からその金額が引き落とされ

ますので、もし口座にそれを引き落せるだけの残高がなければ『不渡り』になるからです。

この不渡りが6ヵ月間に2度あると『銀行取引停止』となります。

銀行取引停止になると、当然、会社は倒産に追い込まれます。

 「うちはそんなことはないよ」と言われるかもわかりませんが、

多くの倒産の直接原因は『銀行取引停止』なのです。

現金支払や銀行振込であれば「チョッと忘れていた、すぐに払います!」とか「少し待って

くださいますか」で済みますが、支払手形は『待ったナシ!』です。

不注意でも2回続けば、それで「倒産」です。

 この『手形取引』という商慣行は日本独自のものなので、海外との取引が普通になって

いる中で『手形取引』は少なくなっていることも事実です。

 

経営の安全性から考えれば、ともかく手形取引はなるべく控える!

 

 

2 買入債務の読み方

 ここで大事なことをご紹介しましょう。

それは月次試算表で自社の経営を読む『3つのポイント』です。

 ポイント1 過去と比べる     ⇒もっともらしく表現すると「時系列比較」です。

 ポイント2 計画と比べる     ⇒「目標値比較」です。

 ポイント3 関連する項目と比べる ⇒「経営分析」といいます。

特に自社の経営状況やバランスを読むにはポイント3「経営分析」が大切になります。

そのために用意されているのが標準的な経営分析体系ですが、覚えられたら覚えた方がよいのでしょうが、実務では覚える必要はありません。

考えればいいのです・・「この項目(科目)に関係のある他の項目(科目)はどれか?」ということです。自社に意味ある見方ができればそれでいいのです。

それがノウハウになっていきます。

 チョット横道にそれましたので戻ります。

(ただそのことを頭においてお読みください・・)

 

(1)買入債務から仕入の状況を読む

 仕入について再検討が必要かどうかは、買入債務の残高から読み取れます。

具体的には売上高と比べるとその判断ができます。それが『買入債務回転期間』と呼ばれる

ものです。

 ⇒ 買入債務回転期間      = (支払手形+買掛金) ÷ 1日あたりの売上高

又は 支払基準の買入債務回転期間 = (支払手形+買掛金) ÷ 1日あたりの仕入高

 

1日あたりの売上何日分に相当する買入債務があるのかを確認することで、

仕入に関する検討できます。

また、売上には粗利が含まれていますから、1日あたり仕入で比べると

より正確に判断できるようになります。

あまりにもこの期間が長すぎると、仕入先からの「信頼」に問題を生じさせているかも?

という疑念もありますし、また仕入自体が多すぎるのではということもあるのかもわかり

ません。

 なお「経営に活かす」という観点から考えれば、仮に複数の仕入先があると仮定した場合

全体で検討してもあまり具体的な対策は見えて来ません。

各仕入先ごとの買入債務や1日あたりの仕入高などがわかるようになると、かなり明確な

対策を立てることができます。

 

各仕入先ごとの買入債務や仕入高がわかること、
それが”管理会計”といわれるものです

 

(2)買入債務の決済分析

 買入債務は仕入よる債務ですが、その対照的なものとしては売上債権が挙げられます。

売上債権は買入債務が発生した後に生じるものであり、また粗利益も含まれていますので、単純化するとその関係は買入債務1に対して売上債権は2程度の関係となります。

 ⇒  売買比率       = 売上債権 ÷ 買入債務

さらに買入債務の支払に関して考えれば、手元資金はそれ以上あることが必要です。

 ⇒  手元資金買入債務比率 = 手元資金 ÷ 買入債務

 このように、買入債務を売上債権や手元資金などと比べてみると、さまざまな検討が

できます。

ただその判断尺度に関しては、企業によって取引条件や経営状況による保有すべき手元資金の額も違いますので、各社で考える必要があります。

 

買入債務は売上債権や手元資金と比べると様々な検討ができる

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると会計で会社が徐々に強くなってきます。

どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのならそれだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。

会計業務を楽しみながら荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?


掲載日:2020年3月18日 |カテゴリー:トピックス

会計で経営力を高めるシリーズ 総資産

第5回会計で経営力を高めるシリーズ『総資産』

 

 ここまで「手元資金→売上債権→棚卸資産→固定資産」という流れで、会計で経営力を

高めるための説明をしてきました。手元資金などこれらすべては、『総資産』を構成する

重要な項目です。

ここでチョッとひと息ついて、総資産全体の外観を見てみましょう。

これを理解されると、さらに「会計で経営力を高める力」がぐっと身につきます。

 

1 総資産と総資本

 総資産とは、事業で調達した資金、つまり他人資本と自己資本で運用しているモノの形を

示しています。

 

 他人資本とは、自社以外から調達している資金です。

例えば・・

 1.仕入をしたのにまだ支払っていない代金

 2.すで使っている(電気やガスあるいはガソリンなど)のに未払の費用

 3.従業員から預かっている本人負担分の社会保険料や源泉所得税

 4.銀行から融資を受けた借入金

 5.経営者等が提供している役員借入金

  ※役員借入金については、中小企業の場合には実質自己資本と考えて良いという

   考え方もあることを知っておきましょう。

など、さまざまな形で資金であるおカネを調達しています。

 自己資本とは、自社で調達している資金です。

それは二つあります・・

 1.会社を始めたときの資本金

 2.事業を開始して毎期毎期溜めてきた繰越利益

この他人資本と自己資本を財源にしていろいろな形で運用しているのが「総資産」です。

 

他人資本・自己資本をもとに運用しているモノの総称を『総資産』という

 

 

2 総資産の構造

 総資本の構造はおおまかにいうと、次のようになります。

 1.当座資産    手元資金(現金・預金)と売上債権の総称です。

 2.棚卸資産    在庫です。

 3.その他流動資産 上記以外の前渡金や前払費用、仮払消費税などです。

   ※仮払消費税とは仕入代や経費支払い時に支払った“消費税”のことです。

 4.流動資産    1~3の合計です。

 5.固定資産    会社で保有している建物や設備、車両あるいは土地などです。

   ※固定資産にはそのほかに無形固定資産や投資その他の資産がありますが、

    ここでは割愛しています。

 ※この5つの他に繰延資産もありますが、割愛しています。

 

これらを図示すると次のようになります。

 

 

3 それぞれの資産の意味

ここで理解しておきたいことは、左側にルビされている注釈です。

(1)総資産

 総資産は「調達した資金で運用しているすべての資産(モノ)である」ということです。

あくまでも事業のために「活かすモノ」ということですから、よく「企業の財産」とも表現

されがちですが、財産は置いておいても良いわけですが、資産は活かさなければなりませんので、その意味では資産と財産は少し意味が違います。

 

(2)固定資産

 固定資産は総資産の中で「設備として運用している資産」です。

設備ですから、長い期間、運用します。

ですからその財源は、自己資本又は他人資本でも長い期間で返済してよい資金が大原則と

なります。 このことは覚えておきましょう。

 

(3)流動資産

 流動資産は総資産の中で「支払手段として運用している資産」とも言い換えられます。

従って、その財源としては短い期間で返済しなければならない他人資本であっても良い

ということになります。

もちろん、流動資産の財源も”自己資本”であればもっと安全性は増すわけですが、

その状態を『無借金経営』と言います。

 

(4)当座資産

 流動資産の中でも「当座の支払手段として運用している資産」のことを当座資産と

いいます。

従って、この当座資産と短い期間で返済する必要がある他人資本とのバランスが重要と

いうことになります。

 

(5)手元資金

 最後に当座資産の中の手元資金は「確実にいつでも支払手段として運用できる資産」と

言えます。現金はもちろんすぐに支払手段となりますし、預金も金融機関へ行けばいつでも

現金として引き出すことができます。

 それに対し、売上債権は取引先が入金してくれないと手元資金にはなりません。

 棚卸資産はさらに売れることが前提となります。

その様に考えると、手元資金が豊富であれば豊富なほど、安定した経営ができます。

また多くあれば設備投資も手元資金だけで行えますので、余剰資産という表現もできます。

 

 いま、新型コロナウィルスの関係で中小企業は売上が激減し、資金繰りに支障が出ている

ところが多くあります。

大企業であれば、そんなときでも市場あるいは金融機関からいつでも資金供給を受けること

ができますが、中小企業はそういうわけには行きません。

だから中小企業においては大企業とは違い、「手元資金が多ければ多いほど良い」と言って

いる所以です。

 

 この資産それぞれの意味や調達資金との関係が分かってくると、会計を経営に活かす力がぐ~んと増してきます。

 

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると会計で会社が徐々に強くなってきます。

どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。

会計業務を楽しみながら荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?


掲載日:2020年3月11日 |カテゴリー:企業統計

会計で経営力を高めるシリーズ 固定資産

第4回会計で経営力を高めるシリーズ『固定資産』

 

1 固定資産とは

 固定資産とは、事業で用いている「設備」などのことをいいます。

設備などのことを会計では「有形固定資産」といい、建物、機械・装置、車両・運搬具、

工具・器具・備品、土地などに分けられています。

それにチョッと特殊な「減価償却累計額」という、経営上は大切な科目もあります。

※そのほかにも「無形固定資産」や「投資その他の資産」がありますが、重要性の原則を

 考え、それほど使用されることはないと思われますので、ここではそれらの説明を割愛

 します。

 

 

2 固定資産(設備)の目的を再度確認し、投資採算計画を立案しよう

 固定資産、特に新しい工場を建てる、新しい機械や設備を導入するその目的は何だった

のでしょうか?

この基本的なことを顧みず、ひたすら設備資金の調達に終始している経営者を多く見かけ

ます。つまり、金融機関からの融資さえ下りれば、ホッとするということです。

しかし、設備投資の目的は言うまでもなく「事業収入を増やす」ことにあるわけです。

この当たり前のことに気づけば、まず最初に大切なことは「固定資産採算計画」を立てな

ければならないことです。

 つまり、この設備投資を行ってどれだけ収入を増やし、かかる費用を賄って利益を残し、

そして借入金を返済していけるのか、ということです。

ところが設備投資のために借入れた長期借入金の返済に苦しむ中小企業には、そこの部分が

欠落しているという事実があります。

 単に設備が古くなった、この設備では現代のニーズには対応できない、増産したいなど、

目の前の問題で感じた必要性によって資金手当てを行い、設備投資をするということです。

 

設備投資の際には事前に「採算計画」を立案することが大事

 

 

3 固定資産(設備)の資金を考える

 事業の設備投資は家計で考えてみると、住宅を建てるとか、大きな家電を購入するとか、クルマを購入するというようなことに例えられます。

 たとえば、住宅を建てる場合、住宅ローンだけで建てるのでしょうか?

なるべく自己資金を多くして、住宅ローンを極力少なくし、住宅ローン返済と将来収入との

バランスを考えると思います。大きな家電やクルマの場合も同様です。

 事業における設備投資も同じです。

いくら金融機関から融資が受けられるとしても、自社の自己資金をなるべく多くして借入金を少なくすることが「安定した経営」をする秘訣です。

 

設備資金は自己資金と借入金のバランスが重要

 

 

4 固定資産(設備投資)の適正度をチェックする法

 自社の固定資産が無駄なく活かせているのか、資金繰り的には無理がないのかなどは、

設備の操業度や投資資金の調達源から検証することが大事です。

 

(1)固定資産(設備)の操業度チェック

 固定資産の操業度とは、いま固定資産で何倍ぐらいの売上高を上げているのか?

ということです。総資産とのバランスから考えると、少なくとも固定資産の4倍以上の

売上高は確保したいところです。

 4倍というと、仮に2千万程度の固定資産があるのであれば、1億前後の売上が上げられているということです。そのことを「回転率」と呼んでいます。

 

固定資産回転率=年間売上高÷固定資産金額 ←4回転以上を確保する

 

(2)固定資産(設備)の資金の出どころをチェック

 固定資産財源の一番の理想は、固定資産の購入はすべて自己資金で行っているということ

です。ということは、会計的に言えば固定資産の額は純資産額以内にあるということです。

※実は「優良」と言われる企業はそのようにしています!

 そこまでは無理としても、少なくとも、自己資本と長期借入資金で固定資金は投資すべき

ということです。これは必ず遵守したい「経営の秘訣」です。

 つまり、固定資産の額は「純資産と長期借入金の合計以内」ということです。

もしそうでないならば、住宅資金が自己資金と住宅ローンだけでは足りなくて、クレジット

カードの借入枠内のローンなども当てているということになります。

このように説明すると滑稽なように感じられるかもわかりませんが、実は多くの中小企業は

そのような状況です。

 その見方は次のとおり。比率の名称はともかく、その見方は覚えておきましょう。

 

  固定比率(固定資産と自己資本を比べる)

   =固定資産÷純資産 ←純資産の方が大きければ理想的

 

  固定長期適合率(固定資産と本来その財源とすべき資金とを比べる

   =固定資産÷(純資産+長期借入金) ←絶対100%未満となるよう

                      経営する

 

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると会計で会社が徐々に強くなってきます。どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのならそれだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。 会計業務を楽しみながら荒波に強い会社になるよう取り組みましょう!


掲載日:2020年3月4日 |カテゴリー:会計識字率

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