働き方改革 その対応策

さて、これまで7回『働き方改革』について見てきましたが、今回がいよいよ最後と
なります。 
最後は「働き方改革の対応策」です。

 

第8回『働き方改革 その対応策』

 

今回の「働き方改革」で、変えていかなければならないことは次の8点でした。

 1.今年4月から 中小企業も残業時間を減らして、『時間外労働の上限』
  守らなければなりません。

 2.昨年4月から 『有給休暇』は最低でも年5日以上は取らせるように
  努力しなければなりません。

 3.昨年4月から 当日と翌日の勤務時間の『インターバル』
  それ相当の時間(10時間程度)取らせなければなりません。

 4.2023年4月から 中小企業もいよいよ『法定割増賃金率』
  遵守する必要があります。

 5.昨年4月から 従業員の健康を守るために『産業医』による健康管理を
  しなければなりません。

 6.大企業は今年4月から、中小企業も来年4月から 『同一労働同一賃金制度』
  しなくてはなりません。

 7.昨年4月から 本人と労使委員会の承諾があれば『高度プロフェッショナル制度』
  導入できるようになりました。

 8.昨年4月から 『フレックスタイム制度』の清算期間が
  1ヵ月から3ヵ月に延長されました。

 

1 働き方改革の目的

これら働き方改革の目的をもう一度振り返りましょう。

(1)経済力の低下を防ぐ

まず1点目は「経済力の低下を防ぐ」とことでした。

いま、日本の人口は恐ろしいスピードで減少しています。

経済力とは『一人当たりGDP×人口』ですから、日本の経済力が低下していくことは
確実です

それを少しでも防ぐには、人口は減るのですから、生産性(一人当たりGDP)を高める

しかないわけです。

そのために、働き方改革で従業員のモチベーションを上げて、生産性の高い職場に変えて

いくということです。

モチベーションを上げて生産性を上げるためには、同時に賃金を上げることが必要です。

この政策のウラには「生産性の高い企業に労働力を集約させる」という本音もあります。

したがって、中小企業が生き残っていくためには「生産性を上げて賃金も上げる」という

ことを成し遂げなければなりません。

(2)労働人口の減少を食い止める

第2に人口が激減し生産年齢人口もすごい勢いで減って来ているということでした。

それを少しでも食い止めるには、今まで以上に女性や高齢者の働きやすい労働環境を作る

必要があります。

そのためには長労働時間を無くして、休みもきちんと取れるようにし、

そして、より柔軟なフレックスタイム制度やテレワーキングなどの多様な働き方を導入して

いく必要があります。

(3)人口減少を食い止める

第3に、根本的には人口減少を食い止めるということでした。

安倍総理の「50年後でも1億人」という発言の主旨もそこにあります。

そのためには、安心して子供を産める社会環境や労働環境を作り、子供も育てやすい

労働環境・社会環境を作らなければなりません。

 

つまり働き方改革の目的は

割増賃金率や給料を上げられる企業へ人を集約し、生産性向上を図るとともに、

多様な働き方の実現や正規・非正規の待遇差解消、長期間労働の是正などよる

女性にとっても高齢者にとっても、さらには男性にとっても働きやすい労働環境を

つくることにありました。

 

2 働き方改革の対応策

では、働き方改革の対応策として何が考えられるのでしょうか。

(1)管理の強化だけではダメ

一般的に言われる、残業時間を減らしたり有休を取らせるための勤怠管理や残業管理、

あるいはどうすれば人件費を増やさずに済ませるのかということでは対応策とはなり

ません。

労働はスーパーマーケットの袋詰め競争ではありません。できるだけ「基準内労働時間」に

多くの仕事を詰め込むという姿勢では、袋は伸びて、やがて破けてしまうように、従業員の

皆さんは疲れ果てて生産性が上げられるはずがありません。

そんなことをすれば逆にモチベーションは下がり、従業員の離脱を招き、生産性向上どころ

か、やがて廃業するしかありません。

(2)働き方改革は生産性をあげて給料を増やしていく仕組みです!

働き方改革はもっと前向きなものであり、それは時短を実現して、多様な働き方が選択でき

て、そして生産性を向上させて、給料を上げていく仕組みです。

そのためには、従業員のモチベーションを上げることが大きなポイントです。

それには、まず管理職に働き方改革の正しい理解を促す必要があります。

そのためには次のようなことが重要です。

 1.経営陣として「働き方改革」の正しい主旨を理解する

  まず、経営に携わる者が率先して働き方改革を理解する必要があります。

  働き方改革の目的は、何度も申しあげるとおり、単に労働時間等の削減だけではなく、

  生産性の向上と従業員の待遇(拘束時間と給料)改善です。

  そのことを経営に携わる経営陣が正しく理解しましょう。

 2.「働き方改革」の正しい主旨を管理職に周知徹底する

  働き方改革を行っていくのは「現場」です。その現場を統括しているのは管理職です。

  その意味で管理職が働き方改革の目的と内容を正しく経営陣と共有することはとても

  大切です。

 3.待遇が改善されていくことを中期経営計画で従業員に示す

  そして従業員に一連の「働き方改革」でどのように待遇が改善されていくのか、

  中期経営計画で示す必要があります。

  そのうえで、そのために勤怠管理などの強化が必要なら、その説明をします。

 4.単年度経営計画で「働き方改革」の成果を埋め込む

  一人当たりの生産性向上や一人当たりの付加価値額向上、さらには給料引き上げの

  目標の提示など、単年度経営計画に埋め込み、全社員共通の目標として表明します。

  特に給料については最低でも、残業が減っても支給総額は同等以上になるようにし、

  それを実現するための粗利の設定や売上の設定などをします。

 

働き方改革でやり甲斐があり、それぞれが活躍できる良い職場を作りましょう。

 

 

いかがでしょうか、

『働き方改革』に対応するのは非常に大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、

足元の奥深くで、マグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためには会計による経営管理をしっかりさせることが大切です。

そうは思われませんか?

 

 

 


掲載日:2020年1月29日 |カテゴリー:トピックス

働き方改革 その背景と目的とは?

これまで『働き方改革』の8つのポイントとその対応の前提となる36協定について

見てきました。

これからは働き方改革への対応策を考えてみたいと思いますが、そのためにも働き方改革の

背景と目的を考えてみたいと思います。

これがわかれば対応策も明確になると思われます。

 

第7回『働き方改革 その背景と目的とは?』

 

2018年6月29日に「働き方改革関連法案」と呼ばれる、一連の労働法改正が成立しました。

一連の労働法とは次の8労働法です。

 1.労働基準法

 2.労働安全法

 3.労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

 4.じん肺法

 5.雇用対策法

 6.労働契約法

 7.短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 8.労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

これらの改正によって、これまで説明してきた8つが改正のポイントとなります。

 1.本年4月から時間外労働すなわち残業時間の上限が中小企業に対しても規制されます。

 2.昨年4月から有給休暇を最低でも年5日以上取らせることが義務付けられました。

 3.昨年4月から当日と翌日の勤務間は10時間程度は取る努力が義務付けられました。

 4.3年後の2023年4月からは中小企業も時間外割増率を法定割増賃金率にしなければ
  なり
ません。

 5.昨年4月から従業員の健康を守るために産業医による健康管理が義務付けされました。

 6.大企業は今年4月から中小企業は来年4月から、同じ仕事であれば雇用形態に関係なく

  賞与などを同じ待遇にしなくてはなりません。

 7.昨年4月から本人と労使委員会の承諾を得れば、時間等に囚われない

  高度プロフェッショナル制度が導入できるようになりました。

 8.昨年4月からフレックスタイムの清算期間が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。

では、その背景には何があるのでしょうか?

それによって自ずと対策も見えてくるはずです。

 

1 働き方改革の背景

(1)人口の減少

 もうこれはハッキリしています。それは「日本の人口が減る」ということです。

2015年の国勢調査で初めて1億2709万5千人と、前回2010年の国勢調査と比べて

96万3千人、人口が減りました。

これは大正9年(1920年)に国勢調査を実施して以来、初めてのことだったそうです。

以来、このままでは2048年には1億人を割り込み、40年後の2060年には8700万人まで

減るということです。

同時に高齢化率(65歳以上の割合)も高まり、2060年には40%に達するという状況です。

すると様々な問題が起こり始め(すでに起こっていますが)、それを解決していく打開策を

講じるためにも「経済力の維持」という課題が重要になって来ます。

経済力とは 一人当たりの生産性×人口 です。

つまり、人口が激減するのですから、一人当たりの生産性を上げなくてはなりません。

(2)生産年齢人口の減少

 人口が減れば、それに連れて生産年齢人口も減ります。

生産年齢人口とは現在、15歳以上65歳未満の年齢に該当する人口のことを指します。

生産年齢人口は上図の通りに今から25年前の1995年をピークにすでに減少しています。

1995年の8716万人をピークにこのままでは2030年には6773万人、2060年には4418万人までに減少すると予測されています。

このままでは40年後には1995年の約半分になるということですから、当然のことながら

生産性を上げなければなりません。

(3)労働力の不足が露呈

 したがって、AIなどによって生産性を向上させたとしても、このままでは労働力不足が

露呈することは避けられません。

そうなるとやはり生産性を上げるということになりますが、それだけでは対策にならず、

労働力自体を増やすとか、労働力の適正配置も促していかなくてはなりません。

 労働力を増やすとは、生産年齢人口の上限定義を上げるとか、女性の活躍を促していく

ということです。

 また労働力の適正配置とは、生産性の高い企業に労働力を配置するということです。

このあたりにも今回の働き方改革の背景はあると考えられます。

 

2 働き方改革の目的

 そこで働き方改革の目的として、首相官邸では次のように述べています。

☆働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。

 多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、

 成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。

 

 また所轄官庁である、厚生労働省でもそれを受けて次のように述べています。

☆一億総活躍社会の実現に向けて、働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択

 できる社会を実現する働き方改革を、総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で

 柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じま

 す。

 

 また安倍総理は2015年10月29日の第1回一億総活躍国民会議において

「50年後も人口は1億人を維持する」とも述べています。

 

これらを紐解くと今回の働き方改革の目的として、次のことが想像できます。

 1.経済力の低下を防ぐ      →生産性を高める、生産性の高い企業に

                  労働力を集約させる

 2.労働人口の減少を食い止める  →女性や高齢者が働きやすい労働環境を作る

 3.人口減少を食い止める     →出生率が向上する育児環境を作る

 

つまり、働き方改革の柱は、割増賃金率や給与を上げられる企業に人を集約し、生産性を

向上させるとともに、多様な働き方の実現や正規非正規の待遇差解消、長期間労働の是正

などよる、女性でも高齢者でもさらに男性にとっても働きやすい労働環境の是正だと思わ

れます。

 

 

いかがでしょうか、

『働き方改革』に対応するのは非常に大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、

足元の奥深くでマグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためにはも、まずは会計による経営管理をしっかりすることが

大切だと思います。 そうは思われませんか?

 

 

 


掲載日:2020年1月22日 |カテゴリー:トピックス

働き方改革 36(サブロク)協定

『働き方改革』の第6回目は

働き方改革対応の前提となる「36(さぶろく)協定」について考えましょう。

 

第6回『36(さぶろく)協定』

 

1 36協定とは

そもそも「36協定」とは

労働基準法第36条に規定されていることから「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。

 労働基準法では、法定労働時間は1日8時間1週間で40時間以内と定められており、

さらに法定休日についても毎週1日は取らなければならないと定められています。

例えば、1日の法定労働時間が9時~18時で、昼休み1時間の8時間の場合であれば、

週休2日が必然となります。 週休2日はもう当たり前のことなのです。

そして36協定では法定労働時間や法定休日を超えて働く場合には、労使協定を結び、

行政に届け出ることを求めています。 もし届け出ていなければ『法定違反』となります。

 働き方改革関連法案が可決され、昨年4月から順次適用開始となり、

いよいよ本丸の「時間外労働の上限規制」が中小企業でも本年4月1日から適用開始

なります。

これによって、これまで青天井だった残業時間の上限規制が、年間720時間までと規制

され、さらに単月では100時間未満(但し、複数月平均は80時間)と規制されます。

原則は月間残業時間45時間、年間残業時間360時間(月平均30時間)ですから、

これを超えて上限規制内で残業する場合には「36協定」に基づいて届け出を提出する必要が生じてきます。

したがって「36協定」は原則どの企業においても締結しておかなければなりません。

なお、この「36協定」の対象者は常時使用する労働者なので、正社員だけでなく、パート・

アルバイトも含まれます。

 

2 36協定の締結状況等

では、企業の36協定締結状況はどのような状況なのでしょうか?

連合が2017年に実施した「36協定」の締結状況等によれば、次のとおりです。

大企業は94%の企業が36協定を締結していますが、中小企業は43.4%の企業しか

36協定を締結してしていません

しかしながら66.3%の中小企業が「月間45時間以上」の残業をさせています。

さらに年間360時間以上の残業をさせている中小企業は72.1%であり、

大企業においてもナント81.8%の企業が年間360時間以上の残業をさせているというのが

実情です。

 また、2023年4月からは中小企業に対しては「時間外割増率猶予措置の廃止」が

実施されますが、その「法定時間外労働」に対する割増賃金率についても見てみましょう。

この表によれば、割増賃金を支払っていない中小企業は64.4%という驚くべき実態です。

さらに支払いがある35.6%の中小企業における「平均割増賃金率」は27.7%という状況で

あり、大企業と比べて大きく見劣りします。

 

3 10人未満の中小企業でも「36協定」の締結は必要か?

「36協定」は従業員数の多少に関係はありませんので、締結及び届出は必要です

 労働基準法第36条には、従業員数に関わる定めがありません。

定めがないということは「適用」されるということです。

もちろん、法定時間外労働及び休日労働等が一切ないのであれば、36協定を締結する義務は

ありませんが、しかし現実問題として、残業も休日出勤も絶対ないという条件はありえない

とも言えますので、やはり36協定の締結はすべて企業において必要と言えます。

 なお、就業規則は労働基準法第89条で「常時10人以上の労働者を使用する使用者」と

限定されていますので、10人未満の事業所には作成義務はありません。

但し、必要ないということではありませんので、誤解しないようにしましょう。

 

4 「36協定」の違反と罰則

「36協定」を締結しないで残業をさせることはもちろん、協定を結んでいても限度時間を

超えると、労働基準法違反です。

 さらに今回の働き方改革関連法で「時間外労働に上限」が設けられましたので、

各経営者にはこれまで以上に厳しい労働管理が求められるようになります。

罰則は、6カ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金となります。

 これからは上限時間を超える残業、残業・休日出勤の際の明確な理由、労働環境の整備

(インターバルや産業医など)などに、これまで以上に気を配る必要があると思われます。

 

 

いかがでしょうか、

『働き方改革』に対応するのは大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元深くで

マグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためには、会計による経営管理をしっかりすることが大切です。

そうは思われませんか?

 

 

 


掲載日:2020年1月15日 |カテゴリー:トピックス

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