会計で経営力を高めるシリーズ 未払関係

第8回会計で経営力を高めるシリーズ『未払金、未払費用』

 

1 未払金と未払費用の違い

 どちらの用語も「未払」で始まっていますが、どう違うのでしょうか。

 また、分けることにどのような意味があるのでしょうか。

 会計学的にはその違いについて、難解に詳しく説明されていますが、
 ここでは実務的な説明を行います。

 

(1)未払とは未だ代金を支払っていないもの

 まずひとつは、どちらも役務の提供を受けていながら、代金を支払っていない状況
 のことを指します。

 例えば・・ 事業用の車両を購入し、納車されているが、まだ代金は支払っていない。

       水道や電気・ガスを使い、その請求書は届いているが、まだ引落されて
       いない、あるいはまだ支払ってない。

 いろいろあります。

 

(2)いずれも負債の流動負債に表示される

 いずれも負債の科目であり、かつ流動負債に属して表示します。

 つまり未払の分は、他人から資金を調達している状態であり、
 かつ早々には支払わなければならない債務ということです。

 

(3)未払金と未払費用の区別

 未払金と未払費用との区別は、一過性のモノか、それとも継続性のモノかで判断します。

 ・一過性のモノの例

  車両など固定資産の購入、事務用品や消耗品の購入、ウェブサイトの制作費、
  役員からの借入、などは「未払金」です。

  ただし、支払が未確定(役員借入など)の場合や1年を超える場合(固定資産の購入
  など)には、固定負債に属する「長期未払金」に計上します。

 ・継続性のモノの例

  給料(月末締め翌15日支払など)、社会保険・労働保険料(当月分を翌月納付する
  ため)、借入利息(当月分を翌月に支払うため)、水道光熱料(当月分を翌月に支払う
  ため)、通信料(当月分を翌月に支払うため)、リース代(当月分を翌月に支払う

  場合)、広告宣伝料(当月分を翌月に支払う場合)、などは「未払費用」です。

 ただし、コピーなどのレンタルは「賃借料」として計上します。

 また、売上原価に関係するものは「買掛金」に計上します。

 

「未払金」か「未払費用」かは

一過性のモノか、継続性のモノか、で判断する

 

 

(4)未払金と未払費用に分けることにどのような意味があるのか

 税金のための会計(税務会計)や金融機関等に提出する決算書のための会計(財務会計)

 であれば、未払金と未払費用を区別しても利益や所得は同じですから意味はありません。

 しかし、

 会計で経営力を高めようとする会計(管理会計)をするのであれば、区別しなければ

 なりません。 何故なら、そうしないと「読み取れる情報」が少なくなるからです。

 

「未払金」と「未払費用」に分ける意味は

会計で経営力を高めるためにある!

 

 

2 未払金・未払費用の管理の仕方

   未払金  残高1,000,000円

   未払費用 残高2,000,000円

 これだけで何か掴めますか?

 もちろん、未払金が100万円あることはわかります。

 同じく、未払費用も50万円あることがわかります。  ただ、それだけです。

 未払金や未払費用の中に具体的に何がいくらあるのかとか、

 前年と比べてそれぞれが増えているのか減っているのかなどは全くわかりません。

 それで「経営をコントロールする」といっても土台、無理な話です。

 船舶で例えれば、こんな海図では安全な航海をすることはできません。

 

 そこで前回の「借入金」と同様、内訳管理をすることが、経営管理上、大切なのです。

 こんなイメージです。

 (イメージ例) 流動負債 未払金      1,000,000円  前年同月 300,000円

         〔内訳〕事務用消耗品費      200,000円   〃   200,000円

             備品・消耗品費    300,000円     〃   100,000円

             サイト制作費       500,000円   〃       0円

 

         流動負債 未払費用     1,750,000円  前年同月1,530,000円

         〔内訳〕給料        1,000,000円   〃   950,000円

             社会保険料      140,000円   〃   120,000円

             労働保険料        10,000円   〃    10,000円

             借入金支払利息      20,000円   〃    20,000円

             水道光熱料        40,000円   〃    30,000円

             通信料          30,000円   〃    20,000円

             リース代       130,000円   〃    100,000円

             広告宣伝料        90,000円   〃    30,000円

             地代家賃       250,000円   〃    220,000円

             ガソリン代        40,000円   〃    30,000円

 これであれば、何が具体的に増減しているのかわかりますので、コントロールすることが

 できます。

 

未払金・未払費用は「内訳管理」で経営力をアップさせる!

 

 

3 未払の状況を判断する 

(1)売上高と比較して判断する

 未払金・未払費用とも結局コストですので、コストパフォーマンス(コスパ)を上げる

 必要があります。

 つまり、売上高に対してどのくらいなのかということです。

    (未払金+未払費用)÷ 売上高 =未払金・未払費用対売上高比率

 基本的には「未払金・未払費用対売上高比率」は増加させないことが大事です。

 

(2)未払金は事前確認が必要

 未払費用は継続的に発生するという特徴があり、年ごとの金額変動は少ないと言えます。

 しかし、未払金は一過性の性質がありますから、年度によって大きく金額が変動すると

 考えられます。

 したがって、未払金を計上するような取引に関しては、事前に経営状況などを踏まえて

 「いま購入しなければならないのか?」と再確認する必要があります。

 

未払金を計上する取引は実行する前にいま一度確認してみる「必要か?」

 

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると、会計で会社を徐々に強くすることが

できます。

どうでしょうか? 会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。

会計を楽しみながら、荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?


掲載日:2020年4月1日 |カテゴリー:会計識字率

会計で経営力を高めるシリーズ 借入金

第7回会計で経営力を高めるシリーズ『借入金』

 

1 借入金には3種類あり、4つの科目に分けて管理する

(1)短期借入金

 ひとつは「短期借入金」です。

 短期借入金とは「運転資金目的で調達した融資」を指します。

 そして会計上は流動負債の「短期借入金」科目で管理します。

 ただし、運転資金目的であっても、返済期間が1年以上に及ぶ場合は、

 固定負債の「長期借入金」科目で管理します。

 単に会計処理するだけならどちらで管理してもかまいませんが、

 しかし、管理会計(経営に役立てる会計)目的で会計をするなら、

 必ず「短期借入金」で処理します。

 この区分けは管理会計上、大変な重要ことですので、しっかり区分けしましょう。

 

(2)長期借入金

 長期借入金とは、そもそも「設備投資目的で調達した融資」を指します。

 この借入金は、会計上、固定負債の「長期借入金」科目で管理します。

 ただし、この場合も返済期間が1年以内なら、逆に「短期借入金」で処理をします。

 

(3)1年以内返済長期借入金

 上記の長期借入金の中には必ず1年以内で返済する返済金部分があります。

 この1年以内で返済する部分は、会計上、流動負債の「1年以内返済長期借入金」で

 処理します。

 

(4)役員借入金

 役員借入金とは、不足する事業資金を「経営者自ら会社に貸出しした資金」を指します。

 これは銀行からの借入金のように契約で返済期間を定められているのではなく、

 経営状況に応じて返済する場合が多いので、固定負債の「役員借入金」で処理をします。

 この役員借入金は経営分析上、自己資本扱いされる場合もあります。

 しかし、「役員借入金」と表示すると、資金繰りが厳しいと見られることもあります。

 それを避ける意味で、「長期未払金」として表示している場合もあります。

 さらにこの役員借入金の場合も1年以内に返済する場合は、流動負債の「未払金」で

 処理します。

 

借入金は次の4つに分けて管理する

 短期借入金、長期借入金、1年以内返済長期借入金、役員借入金 

 

 

2 借入金の管理の仕方

 借入金の管理は、経営管理上、重要なことです。

 したがって、借入金は必ず、返済終了年月を用いて、融資ごとに内訳管理します。

 例えば、次のようなイメージです。

 (イメージ例) 流動負債 短期借入金           5,000,000円

             〔内訳〕2020.12返済完了分  1,000,000円

                 2021.03返済完了分  4,000,000円

         流動負債 1年以内返済長期借入金     1,500,000円

             〔内訳〕2022.12返済完了分       500,000円

                 2025.12返済完了分     1,000, 000円

         固定負債 長期借入金             5,000,000円

             〔内訳〕2024.12返済完了分    1,000,000円

                 2026.12返済完了分    4,000,000円

         固定負債 役員借入金             2,000,000円

             〔内訳〕役員A          1,000,000円

                 役員B          1,000,000円

 

借入金は融資ごとに「内訳管理」をしましょう!

 

 

3 借入状況の判断の仕方 

(1)借入過剰かどうかを判断する

 借入返済の「原資」とは一体何でしょうか?

 そうです、「経常利益」です。(もっと正確に言えば「税引後当期純利益」です)

 

 では、自社の売上高に占める経常利益率はどの程度なのでしょうか?

 経常利益をすべて返済に回すわけにはいきません。

 経常利益から納税をしなければなりませんし、またいくらかは内部留保したいものです。

 そこで、仮に「月次経常利益の半分」を返済原資に充てるとします。

 仮に月次売上高経常利益率が10%とすれば、5%を借入金の返済原資に充てるという

 ことです。

 7年間で借入金を返済するとすれば、7年=84カ月ですから、

 5%×84ヵ月=月商4.2カ月分の借入金額が返済に無理のないMAXの借入金額と

 なります。そこで自社の借入総額と平均月商で次の計算をしてみます。

    借入金合計 ÷ 平均月商 =平均月商額〇〇カ月分

 この値が4.2ヵ月以上であれば、少し過剰な借入をしていると判断できます。

 もし、倍の平均月商8.4カ月分を超える借入金があるのであれば、それは相当過剰な

 借入状況であり、早急になんとか借入金を減らす対策や返済財源を増やす施策を講じな

 ければなりません。

 

借入総額が月商8.5カ月以上あるのなら、

立派な「借り入れ依存体質」です!

 

 

(2)借入金の返済期間を掴む

 借入金返済能力のMAXは、経常利益あるいは営業利益すべてを借入返済に回すという

 ことでした。

 金融機関では「債務償還年数」という、融資申込企業の現在の借入金の最短返済期間を

 計算し、追加融資できる余裕があるのかをどうか判断します。

 その考え方は次のとおりです。

    債務償還年数 = 借入金合計 ÷(営業利益+減価償却費)

 企業最大の返済額はさきほどの経常利益や営業利益に「減価償却費」を加えたものです。

 減価償却費は経費として計上していますが、他の経費とは違い、実際には支払いが伴い

 ませんので、それを加えて、減価償却前経常利益(あるいは営業利益)を計算します。

 いわゆる大甘の、企業最大の返済能力が「営業利益+減価償却費」なのです。

 それでいまの借入金を何年で返済できるのか、試算しています。

 

 したがって、営業利益が赤字では論外ですが、それ以外であってもその結果が10年以上

であれば融資する枠は「無い」という判断になります。

 

債務償還年数は常に5年以下程度になっているように経営の舵を切る!

 

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると、会計で会社が強くなってきます。

どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。

会計を楽しみながら、荒波にも強い会社になるように取り組みをしませんか!?


掲載日:2020年3月25日 |カテゴリー:会計識字率

会計で経営力を高めるシリーズ 買入債務

第6回会計で経営力を高めるシリーズ『買入債務』

 

 今回から「会計で経営力を高めるシリーズ」は、他人資本へテーマを移します。

他人資本とは、会社が自社以外から調達している「資金」のことを指し、

会計では『負債』といいます。

 今回はその中で、『買入債務』について説明をします。

なお、ここからは簿記形式の説明も加えることにします。

 

1 買入債務とは支払手形と買掛金

(1)買掛金とは

 多くの事業では仕入れした際、その都度代金を支払うのではなく、

「掛け」で仕入を行います。

  ⇒(借方)商品仕入 / (貸方)買掛金

仕入先では取引先ごとにまとめ、月末なり、翌月月初なりに「請求書」という形で

支払代金をまとめて取引先へ請求します。

その代金を支払うまでの間の仕入で発生した債務を『買掛金』といいます。

仕入をした会社から見れば、仕入れ商品を受領しているにも関わらず代金を支払っていない

のですから、仕入代金分を無利子で仕入先から借りているのと同じ状況です。

 

だから買掛金は資金の調達である『負債』に記載されます!

 

 

(2)支払手形とは

 会社は仕入先から届いた請求書に対して

(a)現金で支払う (b)銀行振込する (c)手形で支払う のいずれかの方法で決済します。

  ⇒(a)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)現金

   (b)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)預金

   (c)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)支払手形

現金支払ならびに銀行振込の場合は、支払った時点で「手元資金」は減ります。

それに対して手形で支払った場合は、手形期日までは手元資金は減らず、手形期日になって

初めて預金が減ることになります。

 つまり、請求書が届いてからさらに無利子で仕入先から借りる期間が延びることに

なりますので、手形を使えば「資金繰り」はラクになります。

 

 ■ここに注意!

 支払手形による決済は、無利子による借入期間が延びることになりますが、

良いことばかりかといえば「そうではない!」ということです。

なぜなら、手形期日が到来すると、有無を言わせず銀行口座からその金額が引き落とされ

ますので、もし口座にそれを引き落せるだけの残高がなければ『不渡り』になるからです。

この不渡りが6ヵ月間に2度あると『銀行取引停止』となります。

銀行取引停止になると、当然、会社は倒産に追い込まれます。

 「うちはそんなことはないよ」と言われるかもわかりませんが、

多くの倒産の直接原因は『銀行取引停止』なのです。

現金支払や銀行振込であれば「チョッと忘れていた、すぐに払います!」とか「少し待って

くださいますか」で済みますが、支払手形は『待ったナシ!』です。

不注意でも2回続けば、それで「倒産」です。

 この『手形取引』という商慣行は日本独自のものなので、海外との取引が普通になって

いる中で『手形取引』は少なくなっていることも事実です。

 

経営の安全性から考えれば、ともかく手形取引はなるべく控える!

 

 

2 買入債務の読み方

 ここで大事なことをご紹介しましょう。

それは月次試算表で自社の経営を読む『3つのポイント』です。

 ポイント1 過去と比べる     ⇒もっともらしく表現すると「時系列比較」です。

 ポイント2 計画と比べる     ⇒「目標値比較」です。

 ポイント3 関連する項目と比べる ⇒「経営分析」といいます。

特に自社の経営状況やバランスを読むにはポイント3「経営分析」が大切になります。

そのために用意されているのが標準的な経営分析体系ですが、覚えられたら覚えた方がよいのでしょうが、実務では覚える必要はありません。

考えればいいのです・・「この項目(科目)に関係のある他の項目(科目)はどれか?」ということです。自社に意味ある見方ができればそれでいいのです。

それがノウハウになっていきます。

 チョット横道にそれましたので戻ります。

(ただそのことを頭においてお読みください・・)

 

(1)買入債務から仕入の状況を読む

 仕入について再検討が必要かどうかは、買入債務の残高から読み取れます。

具体的には売上高と比べるとその判断ができます。それが『買入債務回転期間』と呼ばれる

ものです。

 ⇒ 買入債務回転期間      = (支払手形+買掛金) ÷ 1日あたりの売上高

又は 支払基準の買入債務回転期間 = (支払手形+買掛金) ÷ 1日あたりの仕入高

 

1日あたりの売上何日分に相当する買入債務があるのかを確認することで、

仕入に関する検討できます。

また、売上には粗利が含まれていますから、1日あたり仕入で比べると

より正確に判断できるようになります。

あまりにもこの期間が長すぎると、仕入先からの「信頼」に問題を生じさせているかも?

という疑念もありますし、また仕入自体が多すぎるのではということもあるのかもわかり

ません。

 なお「経営に活かす」という観点から考えれば、仮に複数の仕入先があると仮定した場合

全体で検討してもあまり具体的な対策は見えて来ません。

各仕入先ごとの買入債務や1日あたりの仕入高などがわかるようになると、かなり明確な

対策を立てることができます。

 

各仕入先ごとの買入債務や仕入高がわかること、
それが”管理会計”といわれるものです

 

(2)買入債務の決済分析

 買入債務は仕入よる債務ですが、その対照的なものとしては売上債権が挙げられます。

売上債権は買入債務が発生した後に生じるものであり、また粗利益も含まれていますので、単純化するとその関係は買入債務1に対して売上債権は2程度の関係となります。

 ⇒  売買比率       = 売上債権 ÷ 買入債務

さらに買入債務の支払に関して考えれば、手元資金はそれ以上あることが必要です。

 ⇒  手元資金買入債務比率 = 手元資金 ÷ 買入債務

 このように、買入債務を売上債権や手元資金などと比べてみると、さまざまな検討が

できます。

ただその判断尺度に関しては、企業によって取引条件や経営状況による保有すべき手元資金の額も違いますので、各社で考える必要があります。

 

買入債務は売上債権や手元資金と比べると様々な検討ができる

 

 

このようなことを考えながら会計資料を見ていると会計で会社が徐々に強くなってきます。

どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのならそれだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。

会計業務を楽しみながら荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?


掲載日:2020年3月18日 |カテゴリー:トピックス

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