働き方改革 その背景と目的とは?

これまで『働き方改革』の8つのポイントとその対応の前提となる36協定について

見てきました。

これからは働き方改革への対応策を考えてみたいと思いますが、そのためにも働き方改革の

背景と目的を考えてみたいと思います。

これがわかれば対応策も明確になると思われます。

 

第7回『働き方改革 その背景と目的とは?』

 

2018年6月29日に「働き方改革関連法案」と呼ばれる、一連の労働法改正が成立しました。

一連の労働法とは次の8労働法です。

 1.労働基準法

 2.労働安全法

 3.労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

 4.じん肺法

 5.雇用対策法

 6.労働契約法

 7.短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 8.労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

これらの改正によって、これまで説明してきた8つが改正のポイントとなります。

 1.本年4月から時間外労働すなわち残業時間の上限が中小企業に対しても規制されます。

 2.昨年4月から有給休暇を最低でも年5日以上取らせることが義務付けられました。

 3.昨年4月から当日と翌日の勤務間は10時間程度は取る努力が義務付けられました。

 4.3年後の2023年4月からは中小企業も時間外割増率を法定割増賃金率にしなければ
  なり
ません。

 5.昨年4月から従業員の健康を守るために産業医による健康管理が義務付けされました。

 6.大企業は今年4月から中小企業は来年4月から、同じ仕事であれば雇用形態に関係なく

  賞与などを同じ待遇にしなくてはなりません。

 7.昨年4月から本人と労使委員会の承諾を得れば、時間等に囚われない

  高度プロフェッショナル制度が導入できるようになりました。

 8.昨年4月からフレックスタイムの清算期間が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。

では、その背景には何があるのでしょうか?

それによって自ずと対策も見えてくるはずです。

 

1 働き方改革の背景

(1)人口の減少

 もうこれはハッキリしています。それは「日本の人口が減る」ということです。

2015年の国勢調査で初めて1億2709万5千人と、前回2010年の国勢調査と比べて

96万3千人、人口が減りました。

これは大正9年(1920年)に国勢調査を実施して以来、初めてのことだったそうです。

以来、このままでは2048年には1億人を割り込み、40年後の2060年には8700万人まで

減るということです。

同時に高齢化率(65歳以上の割合)も高まり、2060年には40%に達するという状況です。

すると様々な問題が起こり始め(すでに起こっていますが)、それを解決していく打開策を

講じるためにも「経済力の維持」という課題が重要になって来ます。

経済力とは 一人当たりの生産性×人口 です。

つまり、人口が激減するのですから、一人当たりの生産性を上げなくてはなりません。

(2)生産年齢人口の減少

 人口が減れば、それに連れて生産年齢人口も減ります。

生産年齢人口とは現在、15歳以上65歳未満の年齢に該当する人口のことを指します。

生産年齢人口は上図の通りに今から25年前の1995年をピークにすでに減少しています。

1995年の8716万人をピークにこのままでは2030年には6773万人、2060年には4418万人までに減少すると予測されています。

このままでは40年後には1995年の約半分になるということですから、当然のことながら

生産性を上げなければなりません。

(3)労働力の不足が露呈

 したがって、AIなどによって生産性を向上させたとしても、このままでは労働力不足が

露呈することは避けられません。

そうなるとやはり生産性を上げるということになりますが、それだけでは対策にならず、

労働力自体を増やすとか、労働力の適正配置も促していかなくてはなりません。

 労働力を増やすとは、生産年齢人口の上限定義を上げるとか、女性の活躍を促していく

ということです。

 また労働力の適正配置とは、生産性の高い企業に労働力を配置するということです。

このあたりにも今回の働き方改革の背景はあると考えられます。

 

2 働き方改革の目的

 そこで働き方改革の目的として、首相官邸では次のように述べています。

☆働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。

 多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、

 成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。

 

 また所轄官庁である、厚生労働省でもそれを受けて次のように述べています。

☆一億総活躍社会の実現に向けて、働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択

 できる社会を実現する働き方改革を、総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で

 柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じま

 す。

 

 また安倍総理は2015年10月29日の第1回一億総活躍国民会議において

「50年後も人口は1億人を維持する」とも述べています。

 

これらを紐解くと今回の働き方改革の目的として、次のことが想像できます。

 1.経済力の低下を防ぐ      →生産性を高める、生産性の高い企業に

                  労働力を集約させる

 2.労働人口の減少を食い止める  →女性や高齢者が働きやすい労働環境を作る

 3.人口減少を食い止める     →出生率が向上する育児環境を作る

 

つまり、働き方改革の柱は、割増賃金率や給与を上げられる企業に人を集約し、生産性を

向上させるとともに、多様な働き方の実現や正規非正規の待遇差解消、長期間労働の是正

などよる、女性でも高齢者でもさらに男性にとっても働きやすい労働環境の是正だと思わ

れます。

 

 

いかがでしょうか、

『働き方改革』に対応するのは非常に大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、

足元の奥深くでマグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためにはも、まずは会計による経営管理をしっかりすることが

大切だと思います。 そうは思われませんか?

 

 

 


掲載日:2020年1月22日 |カテゴリー:トピックス

働き方改革 36(サブロク)協定

『働き方改革』の第6回目は

働き方改革対応の前提となる「36(さぶろく)協定」について考えましょう。

 

第6回『36(さぶろく)協定』

 

1 36協定とは

そもそも「36協定」とは

労働基準法第36条に規定されていることから「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。

 労働基準法では、法定労働時間は1日8時間1週間で40時間以内と定められており、

さらに法定休日についても毎週1日は取らなければならないと定められています。

例えば、1日の法定労働時間が9時~18時で、昼休み1時間の8時間の場合であれば、

週休2日が必然となります。 週休2日はもう当たり前のことなのです。

そして36協定では法定労働時間や法定休日を超えて働く場合には、労使協定を結び、

行政に届け出ることを求めています。 もし届け出ていなければ『法定違反』となります。

 働き方改革関連法案が可決され、昨年4月から順次適用開始となり、

いよいよ本丸の「時間外労働の上限規制」が中小企業でも本年4月1日から適用開始

なります。

これによって、これまで青天井だった残業時間の上限規制が、年間720時間までと規制

され、さらに単月では100時間未満(但し、複数月平均は80時間)と規制されます。

原則は月間残業時間45時間、年間残業時間360時間(月平均30時間)ですから、

これを超えて上限規制内で残業する場合には「36協定」に基づいて届け出を提出する必要が生じてきます。

したがって「36協定」は原則どの企業においても締結しておかなければなりません。

なお、この「36協定」の対象者は常時使用する労働者なので、正社員だけでなく、パート・

アルバイトも含まれます。

 

2 36協定の締結状況等

では、企業の36協定締結状況はどのような状況なのでしょうか?

連合が2017年に実施した「36協定」の締結状況等によれば、次のとおりです。

大企業は94%の企業が36協定を締結していますが、中小企業は43.4%の企業しか

36協定を締結してしていません

しかしながら66.3%の中小企業が「月間45時間以上」の残業をさせています。

さらに年間360時間以上の残業をさせている中小企業は72.1%であり、

大企業においてもナント81.8%の企業が年間360時間以上の残業をさせているというのが

実情です。

 また、2023年4月からは中小企業に対しては「時間外割増率猶予措置の廃止」が

実施されますが、その「法定時間外労働」に対する割増賃金率についても見てみましょう。

この表によれば、割増賃金を支払っていない中小企業は64.4%という驚くべき実態です。

さらに支払いがある35.6%の中小企業における「平均割増賃金率」は27.7%という状況で

あり、大企業と比べて大きく見劣りします。

 

3 10人未満の中小企業でも「36協定」の締結は必要か?

「36協定」は従業員数の多少に関係はありませんので、締結及び届出は必要です

 労働基準法第36条には、従業員数に関わる定めがありません。

定めがないということは「適用」されるということです。

もちろん、法定時間外労働及び休日労働等が一切ないのであれば、36協定を締結する義務は

ありませんが、しかし現実問題として、残業も休日出勤も絶対ないという条件はありえない

とも言えますので、やはり36協定の締結はすべて企業において必要と言えます。

 なお、就業規則は労働基準法第89条で「常時10人以上の労働者を使用する使用者」と

限定されていますので、10人未満の事業所には作成義務はありません。

但し、必要ないということではありませんので、誤解しないようにしましょう。

 

4 「36協定」の違反と罰則

「36協定」を締結しないで残業をさせることはもちろん、協定を結んでいても限度時間を

超えると、労働基準法違反です。

 さらに今回の働き方改革関連法で「時間外労働に上限」が設けられましたので、

各経営者にはこれまで以上に厳しい労働管理が求められるようになります。

罰則は、6カ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金となります。

 これからは上限時間を超える残業、残業・休日出勤の際の明確な理由、労働環境の整備

(インターバルや産業医など)などに、これまで以上に気を配る必要があると思われます。

 

 

いかがでしょうか、

『働き方改革』に対応するのは大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元深くで

マグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためには、会計による経営管理をしっかりすることが大切です。

そうは思われませんか?

 

 

 


掲載日:2020年1月15日 |カテゴリー:トピックス

働き方改革 高度プロ制とフレックス

『働き方改革』の第5回目は

「高度プロフェッショナル制度の創設」と「フレックスタイム制の拡充」について
考えましょう。

 

第5回『高度プロフェッショナル制度の創設と

               フレックスタイム制の拡充』

 

1 高度プロフェッショナル制度の創設

(1)高度プロフェショナル制度とは

厚労省では次のように説明しています。

「高度プロフェッショナル制度とは、

 高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で、一定の年収要件を満たす労働者を

 対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、

 年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を

 講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金

 に関する規定を適用しない制度です。」

つまり、

 ①高度な専門知識を有していること

 ②職務の範囲が明確であること

 ③一定の年収要件を満たしていること

 ④労使委員会と本人の同意を得ていること

 ⑤年間104日以上の休日確保、健康・福祉確保をされていること

これらを満たしていることを前提に、労働基準法の規定は適用しないでよろしいという

制度です。

あまり、通常の企業では関係がないといえる法案です。

(2)対象業務

しかし具体的にどのような業務が「高度プロフェショナル制度」に適用するのでしょうか。

次のような事例が挙げられています。

 1.金融工学等の知識を用いて行う「金融商品の開発業務」

 2.資産運用業務、又は有価証券売買その他の取引の業務のうち投資判断に基づく資産

  運用業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引業務、

  又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引業務などの

 「資産運用業務全般」

 3.有価証券市場における相場等の動向、又は有価証券の価値等の分析・評価、又はこれ

  に基づく「投資に関する助言業務」

 4.顧客の事業運営に関する重要な事項についての調査又は分析、及びこれに基づく当該

  事項に関する考案、又は助言業務などの「アナリスト業務全般」

 5.新たな技術・商品又は役務の「研究開発業務」

つまり、金融商品の開発業務やリーディング業務、アナリスト、資産運用業務、経営コンサ

ルタント業務、研究開発業務などが該当するということで、証券会社や経営コンサルタント

会社あるいは何らかの研究職が対象ということになります。

(3)対象業務の要件

対象となる業務の要件は、対象業務に従事する時間に関して使用者から具体的な指示を受け

て行うものは含まれないとなっています。

つまり、労働時間に関しては自由裁量権があるということです。

(4)対象労働者の要件

さらに対象者の要件として、次の2つが挙げられています

 1.使用者との間の合意に基づいて「職務が明確に定められている」こと。

 2.使用者から支払われると見込まれる賃金額が基準年間平均給与額の3倍の額(1075

  万円以上?)を相当程度上回る水準として、厚生労働省令で定める額以上であること。

(5)高度プロフェショナル制度導入の流れ

「高度プロフェッショナル制度」を導入するための流れとしては、厚労省は次のように

説明しています。

 ステップ1.労使委員会を設置する

 ステップ2.労使委員会で決議する

 ステップ3.その決議を労働基準監督署に届ける

 ステップ4.対象者の同意を書面で得る 

 ステップ5.対象者を対象業務に就かせる

 ステップ6.決議の有効期間の満了

      ※さらに継続する場合はステップ2.からの繰り返しとなります。

(5)解説

 ここまでになると「高度プロフェッショナル制度」を活用できる中小企業はあまりない

ように思われますが、ただし「働き方改革は、働く人々がそれぞれの事情に応じて、多様

で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革である」ということは理解して

おくことは大切です。

仕事を通じて「自己実現」したい人たちは、自分の判断で制限なく、思いっきり働けると

いうことでしょうか。

 この制度は大企業・中小企業を問わず、すでに昨年2019年4月から施行されています。

 

2 フレックスタイム制の拡充

(1)概要

 これまでフレックスタイム制による労働時間の清算期間は最大「1か月間」でしたが、

今回の法改正により最大「3か月間」となります。

 例えば、今回の拡充により4月1日から6月30日までの3か月間(91日)を清算期間として定められます。

そうすることで、労働者は清算期間の総労働時間520時間(=週40時間×91日÷7日)を

フレキシブルタイムやコアタイムを守れば、自由に分配して働くことが可能となります。

(2)フレックスタイム制とは

そもそもフレックスタイム制とは、ルールの中で働く人が毎日の始業時間と終業時間を

自ら決められることで、プライベートとワークタイムのバランスを図りながら、効率的に

働くことができる制度とされています。

厚労省では、次のような図でフッレクスタイム制を説明しています。

このようにフレックスタイム制は、

働く人たちにとって日々の都合に合わせて「時間という限られた資源」をプライベートと

仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすく

なるというとです。

やはり「多様で柔軟な働き方」というのがキーワードのようです。

(3)清算期間の延長とは

清算期間の延長についても厚労省は次のような図で説明しています。

 ①これまでは超過した勤務時間を、翌月なり翌々月に充当することはできませんでした。

 ②これからは翌月または翌々月までに限り、充当できるようになります。

これによって、来月あるいは再来月にはいろいろな予定があるので今月は余分に働いておく

など、やはり「多様で柔軟な働き方」が実現できるようになります。

(4)フレックスタイム制導入のための基本的ルール

要件は、「就業規則等への規定」と「労使協定の締結」の2つが必要です。

 1.終業規定等への規定

  就業規則等に始業ならびに終業の時間を労働者の決定に委ねる旨を定めます。

  例えば、就業規則上の始業終業時刻等に「フレックスタイム制が適用される従業員の

  始業・終業時刻については従業員の自主的決定に委ねる」と記載し、フレキシブル

  タイムやコアタイムなどを規定します。

 2.労使協定の締結

  労使協定で、対象労働者の範囲、清算期間における総労働時間、1日の労働時間や

  コアタイム・フレキシブルタイムなどを規定します。

  但し、コアタイム・フレキシブルタイムは任意とされています。

(5)解説

 フレックスタイム制はうまく活用できれば、社内士気を高め、生産性の向上や効率化

アップなどメリットも大きい制度です。

一方、労働時間の配分を社員の裁量に委ねることになりますので、ときには軋轢なども

生じるリスクがあります。

しかし新しい制度導入には必ずそれなりのリスクはついて回るものですので、活用でき

るものであれば、積極的に活用すべきだと思います。

なおこの制度は大企業・中小企業を問わず、すでに昨年2019年4月から施行されています。

 

 

いかがでしょうか、

『働き方改革』に対応するのは大変だと感じられたのではないのでしょうか?

いま中小企業を取り巻く大変革はハッキリとは見えないかもしれませんが、足元深くで

マグマのように渦巻いています。

それらに対処していくためには、会計による経営管理をしっかりすることが大切です。

そう思われませんか?

 

 

 


掲載日:2020年1月8日 |カテゴリー:トピックス

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