さて、科目の読み方も最後となりました。
最後は、営業外収益と営業外費用を合わせた『営業外損益』です。
1 営業外損益とは
『営業外損益』とは、「営業外収益」と「営業外費用」を合わせた概念です。
この営業外損益と、販管費までを賄った利益である「営業利益」を加えた利益を
『経常利益』と呼びます。
『営業外収益』は、本業の営業種目以外による収益を意味しますが、
何が本業で、何が本業以外なのかは、「定款」よって決まります。
ここで、前回の小売業・製造業の経済産業省「企業活動基本調査」を見ると
このようになっています。


どちらの場合も、営業利益よりも経常利益の方が高いことがわかります。
これは、本業外の営業外損益によって、利益を増やしているからです。
その主な理由は、景気後退により設備投資を抑える企業が増え、借入金が少なくなった
ためだと言われています。
また、バブルの頃は「財テク」と呼ばれた本業以外の投資活動が盛んで、
本業以上の利益をこの営業外損益で稼ぎ、本業を疎かにする企業が非常に多くありました。
それ以降、日本企業の経営はおかしくなったとも言われ、赤字企業が増大しました。
下図を見れば、そのことがよくわかります。
「バブルの崩壊」と言われた、1990年以降から急激に赤字企業が増え出しています。

2 経常利益を読む
「営業外損益を読む」ということは、結局、「経常利益を読む」ということになります。
その一般的な読み方は、『売上高経常利益率』です。
経常利益 ÷売上高 ×100 =売上高経常利益率
この『売上高経常率』を、決算のときにだけに見るのではなく、
常日頃から、単月経常利益率と累計経常利益率を前年同月および前年同期と比べることが
大切です。
なぜなら、決算のときにだけ見ても、是正することができないからです。
毎月毎月、前年同月と前年同期の経常利益率と比較して、経常利益率をたとえ少しだけでも
改善していく対策を講じ続けることが大切です。
その積み重ねが、「経常利益率の改善」に結び付きます。
このように会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが
出来ます。
会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているからです。
だから、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてきます。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。
管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。 会計はたのしい!
掲載日:2022年5月18日
|カテゴリー:会計識字率, 経営技術
ここまで、人件費、減価償却費、租税公課について説明して来ました。
今回はそれらを除いた『その他販管費』の読み方です。
その他販管費は『その他固定費』とも呼ばれますが、
固定費を抑えれば、黒字経営化へのハードルを下げることにつながります。
「556.科目の読み方⑫売上原価」で説明した『損益分岐点売上高』を思い出してください。
損益分岐点売上高は「固定費 ÷ 限界利益率」で計算できました。
つまり、限界利益率が同じだとすれば、固定費が少なければ少ないほど、
損益分岐点売上高は下げられ、黒字経営にしやすい体質に変えられるということです。
固定費が少なければ少ないほど黒字経営にしやすい体質に改善できる!
このことは『固定費』の削減が、経営体質改善につながることを示しています。
その『固定費』は人件費とその他固定費から成り立ちますが、人件費は下げるどころか、
上げることが求められている現代です。
ということは、『その他固定費』を抑えることが、なるべく損益分岐点売上高を上げない
最善のソリューションなのです。
したがって、『その他固定費』のマネジメントが非常に大切な時代となっています。
その他固定費のマネジメントが非常に大切な時代となっている!
そんなその他固定費である『その他販管費』について、読み方を考えてみましょう。
1 その他販管費とは
販管費とは『販売費及び一般管理費』の略語であることはご存知の方も多いと思います。
「販売費」とは商品販売やサービス提供をするために直接かかる経費のことをいいます。
実際に商品を販売する人やサービスを提供する人の人件費、広告宣伝費、保管費、あるいは
発送・配達費などです。
さらに、販売する従業員にかかる交通費や各種手数料なども含めることも可能です。
この販売費は、企業が販売活動をするために必要な経費であり、販売費が少ないほど
企業の営業利益が大きくなります。
他方「一般管理費」とは、企業全体の業務管理に必要な経費のことをいいます。
例えば、事務員人件費や減価償却費、水道光熱費や通信費など、直接、売上に関係のない
ところで発生する費用は一般管理費に分類されます。
この一般管理費も企業が活動するために必要な経費であり、一般管理費が少なければ少ない
ほど、企業の営業利益は大きくなります。
販管費が少ないほど、企業の営業利益は大きくなる!
これらは見方を変えれば、営業活動に要する費用のうち、売上原価を除いた総称でも
ありますので、「営業費」とも言えます。
「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を差し引いた金額が、本業で獲得した利益を
示す「営業利益」となります。
販売費には、販売員給与賞与・広告宣伝費・容器包装費・発送配達費などが該当し、
一般管理費には、役員報酬・事務員給与賞与・法定福利費・減価償却費・地代家賃・事務用
消耗品費・通信交通費・水道光熱費・租税公課・接待交際費・保険料・備品消耗品費など、
多くの経費科目が該当します。
販売費か、一般管理費か、認識することが経営改善するうえでは大切です!
では、そのような販管費ですが、どのように読めばよいのでしょうか?
2 販売比率を読む
販管費を読むうえで一般的なものとして「販売比率」があります。
販売比率とは、売上に対して、販売費や一般管理費がどれぐらいの割合になっているのか
読むことをいいます。
この読み方は販売費等の効率性を見ることが出来ます。
一般的に販売比率は「低いほど良い」と言われがちですが、決してそうではありません。
問題はそのパフォーマンスなのです。
特に、販売費に関してはその点を確認する必要があります。
管理費に関しては人件費を除き、低ければ低いほど良いと思われますので、
基本的には経費削減に努めます。
販売比率は「低いほど良い」と言われがちだが、一概にはそうとは言えない!
販売費比率の計算方法には、販売費のみを計算の対象にする場合と、販売費と一般管理費の両方を対象にする場合があります。
《販売費のみを計算の対象にする場合》
販売費比率=販売費÷売上高×100
《販売費と一般管理費両方を対象にする場合》
販売管理費比率=販売費及び一般管理費÷売上高×100
たとえば、販売費が100万円、一般管理費が200万円、売上高が1,000万円の場合
販売費比率は「販売費100万円÷売上高1,000万円×100=10%」になります。
販売管理費比率は「販売費及び一般管理費(100万円+200万円)÷売上高1,000万円×100
=30%」になります。
3 営業利益
さて、ここまでで得た利益のことを「営業利益」と言います。
損益計算書の頭から説明すると、売上高から売上原価を差引した利益が「売上総利益」、
そしてそこから、人件費、減価償却費、租税公課、その他販管費を差引した利益が
「営業利益」となります。
また、管理会計の損益計算書で説明すれば、売上高から直接原価を差引した利益が
「限界利益」、限界利益から給与賞与や役員報酬、法定福利費を差引した利益が
「可処分利益」とか「達成利益」などと呼ばれる利益になり、
そこから減価償却費や租税公課、その他販管費を差引した利益が「営業利益」となります。
つまり、通常の損益計算書であっても、管理会計の損益計算書であっても、
営業利益は一致することになります。
通常の損益計算書であっても、管理会計の損益計算書であっても、
営業利益は一致する!
要は、利益の区切りが違い、それによってより明確に企業の利益を評価しようということ
です。
この営業利益は「本業ベースの利益」とも呼ばれ、その意味では必ずプラスにする経営が
経営者に求められます。
経済産業省の企業活動基本調査によれば、少しデータは古いですが、
小売業と製造業の高営業利益率は次のようになっています。


小売業の営業利益率は3.0%程度、製造業の営業利益率は7.0%前後と、
小売業の営業利益率の低さが目を引きます。
これは業種柄、小売業は付加価値が付けにくいことに因りますが、
しかしそれでも商売をやるうえでは低すぎるようにも思います。
このように、会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させること
が出来ます。
このように会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
だから科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営への道筋が見えてくるようになります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。
管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。 会計はたのしい!
掲載日:2022年5月11日
|カテゴリー:会計識字率, 経営技術
今回の科目の読み方は『租税公課』です。
なにやら難しい科目ですが、「ソゼイ、コウカ」と読み、
国や地方に納める税金である「租税」と公共団体へ納める会費や罰金などである「公課」を
合わせた勘定科目名です。
あまり馴染みのない勘定科目ですが、今回はそんな租税公課の読み方を考えてみましょう。
租税公課とは租税と公課を合体させた科目です!
1 租税公課とは
租税公課とは、租税と公課を合体させた科目名ですが、
それでは「租税」には何かあるのでしょうか。
事業税、事業所税、固定資産税、自動車税、軽自動車税、印紙税のほか、
税込み方式の消費税、不動産取得税、登録免許税、地価税などがあります。
また「公課」には次のようなものがあります。
国や地方公共団体が発行する各種証明書の発行費用、行政サービスの手数料、
延滞税・不納付加算税、過怠税などの罰金、交通反則金、金商工会や同業者団体などの
会費などがあります。
これらの中で経費と認められないもの(損金不算入)があります。
それは「公課」の中の、延滞税・不納付加算税・過怠税などの罰金と交通反則金です。
これらは罰則的な税負担ですので、これを経費として認めてしまうと、
懲罰としての意味合いが薄れてしまいます。
よって、税法ではこれを経費として認めてはいません。
租税公課の中でも罰則的な税負担は税法上経費とは認められません!
2 租税公課の仕訳
(1)固定資産税の仕訳
たとえば、市役所から固定資産税(第1期分)90,000円が普通預金口座から
引き落としされた場合
租税公課 / 普通預金 90,000円
(2)印紙税の仕訳
たとえば、法務局へ行き、収入印紙10,000円を現金で購入した場合
租税公課 / 現金 10,000円
(3)法人税の場合
たとえば、法人税を申告をして、法人税100,000円を銀行で納付した場合
法人税は租税公課に該当しませんので、次のような仕訳となります。
法人税等 / 現金 100,000円
法人税等は租税公課ではありません!
3 租税公課科目の管理のポイント
租税公課は法人税の申告書を作成する場合、申告書にいろいろ転記することになります。
したがって「租税公課」という勘定科目だけでいろいろな租税や公課を処理するのではなく
次のように口座別管理すると便利です。
<租税公課の口座別管理イメージ>
租税公課 - 国税法人税
国税地方法人税
都税法人税割
都税均等割
都税所得割
都税地方法人特別税割
収入印紙代
自動車税
交付税 など
租税公課はそれぞれ口座別管理をすると便利です!
このように会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが
出来ると同時に、申告書作成の理解も深まります。
このように会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されています。
だから科目の読み方や意味の理解が深まれば、健全な経営をする道すじが見えてくるように
なります。
もうどんぶり勘定や勘ははるか過去のものであり、管理会計と会計で読む力がいま問われて
いるのです。 会計はたのしい!
掲載日:2022年4月27日
|カテゴリー:会計識字率, 経営技術