会計で経営力を高めるシリーズ 売上債権

第2回会計で経営力を高めるシリーズ『売上債権』

 

1 売上債権とは受取手形と売掛金

 小売業などの現金商売を除けば、販売すれば「売掛金」が発生することになります。

その売掛金を請求書にして取引先に送り、期日までに入金されれば、ここで初めて『資金』

となります。

 また、受取手形で回収しているのであれば、さらにそれから2~3か月後に入金され、

ようやく『資金』となります。

相手方から見れば、手形支払のほうが資金繰りが楽になりますので、大きな運転資金が

必要な企業ほど、手形を使うことが多くなります。

その代表的な業種が建設業であり、建設業を中心に手形で取引する企業が多いわけですが、

その場合、回収までに4~6か月ほどかかることになりますから、資金繰りの関係から

「割引」をする場合があります。

 ただし、ここに注意が必要です。

手形割引はもし相手方が倒産すれば、自社が返済しなけばならないということです。

つまり、非常に危険な資金調達でもある、ということです。

倒産理由にはいろいろありますが、直接の原因は「銀行取引停止」であることを知って

おきましょう。

 

売上債権は「資金」ではなく「債権」である。

相手が支払わない限り、ただの紙きれである。

 

 

2 売上債権は100%回収できるとは限らない

(1) 売上債権は約定とおり回収することが重要

 売上債権はその状態ではただの紙きれなので、約定とおりに回収することが重要です。

例えば翌月25日支払という約定ならば、翌月の25日までに代金回収するということです。

「支払が遅れる」ということは、2ヵ月分溜まれば、支払額は2倍となります。

何かの事情で相手方の支払いが遅れているわけですから、溜まれば溜まるほど、相手先は

ますます支払うことが困難になるかもわかりません。

だから、約定とおりお支払いいただくことが大切なのです。

 

(2) 不良債権の始まりは”回収遅れ”

 実は「回収遅れ」が不良債権化の始まりであり、統計では6ヵ月分溜まるとその回収可能性は40%に下がり、1年分となれば30%を切ると言われています。

ですから入金がない場合には直ちに得意先に連絡を取り、支払日を確認し回収しましょう。

回収期日に入金がない場合に、得意先へ確認連絡する行為は「失礼な行為」ではなく、

自社の信用度を上げる行為です。

期日に入金がないので確認させていただくことは、相手先に「しっかり管理されている会社だな」と伝えることであり、さらには支払優先順位を上げていただく行為でもあります。

 また、期日までに入金がない場合、事務的にメールや督促状を出すことだけで済ます

企業が多いようですが、それは「回収する」という意味ではあまり効果はありません。

なぜなら書面で支払われるのであれば、請求書を送付することで支払われているはずです。

請求書を送付しても入金されないのですから、別の方法をとる必要があります。

別の方法とは、電話連絡又は訪問です。

 

督促行為は会社の信用を上げる行為です。

効果ある回収活動とは電話連絡又は訪問です。

 

 

3 売掛金の消滅時効

 決算書を見させていただくと、たまに何年も前の売掛金が残っている場合があります。

しかし、売掛金にも「時効」があることをご存知でしょうか?

時効にさせないためには、定期的に督促することが必要です。

 ・1年で消滅する売掛金  宿泊料、運送料、飲食代

 ・2年で消滅する売掛金  教育代、売掛金

 ・3年で消滅する売掛金  医療代、建築代、自動車修理代、工事代金

 ・5年で消滅する売掛金  上記以外

 

売掛金には時効があるので、定期的に督促する必要があります。

 

 

4 適正な売上債権額とは

 では、売上債権の適正な額とは、どの程度の額なのでしょうか。

それは各企業の回収サイトで、明確にあります。

 例えば、当月25日に締めて、当月末請求書発送、翌月末入金期限であれば、理論上は

 「当月末売上債権≒当月売上高」になります。

 例えば、当月25日に締めて、当月末請求書発行、翌月末手形回収、手形はその後3ヵ月後

 入金であれば、

 「当月末売上債権=(当月末売掛金≒当月売上高)+(当月末受取手形≒3カ月分売上高)

  ≒4カ月分売上高」となります。

このようにして、自社のあるべき売上債権額を把握しておくことは重要です。

もしそれ以上あれば、それはどこかに未回収債権があることを示しています。

 

売上債権額には”あるべき額”が明確にあります。

 売上債権が多すぎるのは安心材料ではなく、問題の表れです。

 

 

5 会計上の売上債権管理

 現代では多くの企業で、会計はパソコンで行われています。

それを前提に言えば、せっかくパソコンという情報機器で処理されているのですから、

会計上の受取手形と売掛金は得意先別に管理しましょう。

そうすることが「会計を経営に活かす」ためにも重要です。

 売掛金を得意先別に管理すれば、回収が滞っている得意先は一目瞭然となります。

また前年同月と比べることによって取引の増減もわかります。

 受取手形も得意先別に管理することで回収状況が把握できます。

このようにすれば当然、会計入力の手間もかかるようになりますが、それは会計を通して

経営を管理しているのですから、当たり前と言えば、当たり前のことと言えます。

 

 パソコンによる会計は経営力を高めるためのものであり、

経理事務の効率化が目的ではありません。

 

 

このようなことを考えると、会計は楽しいもので、経営に役立つものと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。

 会計業務を楽しんで、荒波に強い会社になるよう、取り組みましょう!


掲載日:2020年2月19日 |カテゴリー:会計識字率

会計で経営力を高めるシリーズ 手元資金

第1回会計で経営力を高めるシリーズ『手元資金』

 

1 手元資金とは何か?

それはご存知のとおり、現金と預金、そして売買目的の有価証券です。

会計学的にはそうですが、しかし実務では売買目的の有価証券を保有されている中小企業は

ほとんどありません。

したがって、「手元資金とは、現金と預金」と理解してください。

別名、キャッシュとも言われすが、また会計では手元流動資産とも言います。

この手元資金の特徴は、いつでも支払手段として使えることです。

 

書籍では、手元資金について次のように解説されています。

しかし、それは上場企業など大企業に対する解説でです。

中小企業では潤沢に手元資金を持てれば、それに越したことはないことを知りましょう。 -----------------------------------------

 手元資金とは、代金の支払いなどにいつでも使用できる流動性の高い資金の総称である。

 現金や普通預金がその代表だが、満期が3か月以内の有価証券や定期預金等を加える場合

 もある。

 手元資金を潤沢に保有することで不測の事態に対処しやすくなるが、利子がほぼ付かない

 ため、「必要以上の確保は資金効率の面で望ましくない」とされる。 -----------------------------------------

 

 

2 手元資金は多ければ多いほど良い

 上記の通り、書籍では「必要以上持っていることは資金効率の面から望ましくない」と

解説されています。

しかしそれは、一般市場から資金を調達している大企業に対するコメントです。

経営者自らが資金を提供をしている中小企業の場合はそうではありません。

そのことをよく理解しましょう。

 

中小企業においては、少しでも多くの手元資金を持つことが好ましい! 

 

 

3 手元資金の常識

(1) おカネの流れは、支払が先で入金は後になる

 事業では販売するために、まず仕入れをします。 そしてそれを販売します。

したがって、現金商売でない以上は、仕入代金の支払が必ず「先」になり、販売の入金は

必ず「後」になります。

経費の支払や給料の支給もまた同じです。その期間の販売代金の入金の前に支払わなくては

なりません。

 

この販売代金の回収前に必要な資金のことを「運転資金」といいます。

このことは、よく覚えておきましょう。

 

 ですから、手元資金は常に1カ月分程度の仕入代金や経費代金、給料支払分程度は、

最低でも持っておくようにしなければなりません。

その支払は本来、販売代金でできればいいのですが、その時にはまだ入金されていません。

ですから、少なくとも売上1カ月分程度の手元資金はあるようにしなければならないという

ことです。

 

しかし多くの中小企業ではなかなかそのようにはなっていません!

 このことは偶然にそうなってればよいというものではなく、経営者がそうなるように

経営の舵を切らなくてはならないということです。さらに「経営力を高める」う意味では、

2~3カ月分の手元資金はあるようにしたいものです

 会計に基づく経営をしていればそのことがわかります。

 

(2) 当期の初めの手元資金より、いまの手元資金のほうが少なければ、それは資金不足!

 資金管理といえば、何か難しい管理をしなければならないと思い込まれている経営者が

多いようです。 しかし、そんなことはありません。

 簡単に言えば、期首にあった手元資金より現在の手元資金を増やしていく管理・経営を

するということです。

もしも現在の手元資金が期首より減っているとすれば、それはこれまでの損益ではおカネを

持ち出している経営をしているということになり、つまり、資金不足であることを示しています。 期末に向けそれを解消できる経営に舵を切らなければいけません。

なぜなら、手元資金が無くなれば、経営が続けられないからです。

 

 そのためには月次決算をしていくことが大切です。

 月次決算を行えば前月までで手元資金が減っているかどうか、わかりますから早めの対策

が打てます。しかし、これを年一決算していると、勘に基づいたこれまでの経営を繰り返す

しかありません。

 現在は”勘”に基づく経営では経営を続けることは難しくなっています。こういうと誰しも

頷かれるわけですが、頷くだけではなく、考え方を変える必要があります。

 また月次決算していても、月次試算表を経営者が見ていなければ、それも同じことです。

 

月に一度、月初にはじっくりと月次試算表を見る習慣をつけましょう。

それを繰り返せば、不思議に経営の状況が徐々に見えてくるようになります。

 

(3) 順調な経営であれば必ず手元資金は増えてくる

 自社の事業が順調なのか、そうでないのか、それを判断することは簡単です。

 

手元資金が増加傾向にあれば順調ですし、減少傾向にあればそうではない。

 順調にかつ無理のない販売をして、約束とおりに販売代金が回収できていれば、必ず手元資金は増加してきます。もしもそうでないならば、いくつかのことが想像できますので対処

しなければなりません。

①売れでも、販売代金の回収ができていない

②仕入が多すぎて、在庫が多く、ロスになっている

③経費の無駄遣いが多い

④安易な値引きが多い

⑤そもそも事業規模に対して売上が少なすぎる 等々

 

(4) 手元資金は自由に使っていいということではない

 手元資金が豊富にあるから自由に使っていいかといえば、そうではありません。

この中には、これから支払うべき運転資金や賞与資金、納税資金、設備投資資金などなどが

入っていると考えなければなりません。

したがってそれらに備えて、手元資金を管理することが、安定した強い経営を実現すること

になります。

 

預金を目的別に分けることが重要です。

 例えば、納税準備預金、設備投資準備預金、賞与準備預金など、資金使途別に預金を口座

別に管理をすることが大切です。 そのような考え方の会計は「管理会計」と呼ばれます。

 

4 手元資金のチェックのしかた

(1) 平均月商と比べて見る

 平均月商には赤字でなければ、仕入や経費、人件費、それに利益など全て入っていること

になります。ですから、それと手元資金を比べることで、現在の手元資金額の適正性度合が

わかります。

 自社の場合、どのくらいあればいいのか、は各経営者が決めることですが、一般的には

平均月商2~3ヵ月分の手元資金は持っておくことが大切です。

 

大事なことは、そうなるように「経営の舵を経営者として切る」ことです。

 

(2) 総資産と比べて見る

 総資産とは、資金(資本)で運用している会社の資産です。

健全な経営を続けていくためには「総資産の黄金比」なるものがあります。

①設備である固定資産は、総資産の50%以下に抑える

②在庫である棚卸資産は、総資産の5%前後に抑える

③売上債権は、総資産の15%前後に抑える

④残りである手元資金は、総資産の30%前後は持つ

 総資産の黄金比は、業種業態によって違いますので、自社の黄金比を考えてみましょう。

それに基づく経営をすれば、少々の環境の変化にも負けない強い会社にできます。

 

総資産には黄金比がある。 

 

(3) 純資産と比べて見る

 純資産とは、自己資本ことです。その自己資本をどのくらい手元資金で持っているのか、

知ることは大切です。

理屈を言えば、自己資本は現預金に入ってきます。したがって、もし何も運用しなければ

「自己資本=手元資金」となります。

しかし、現実的にはそこから設備投資に運用したり、在庫として運用したり、売掛金に運用

したりしますので、「自己資本=手元資金」とはなりません。

 ですから、決算を終えた時ぐらいは、純資産の額と手元資金の額を比べて、その状況を

確かめましょう。

それがあまりにも少なければ、内部留保に回っておらず(つまり預金できず)、何かしらに

消えているわけですから、そのことに気づくだけでも、抑制力につながります。

 

自己資本の50%程度は手元資金にあるように経営したいものです。

 

 

このようなことを考えると、会計は意外と楽しいものだし経営に役立つと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。 会計業務を楽しんで、積極的な姿勢で取り組みましょう!


掲載日:2020年2月12日 |カテゴリー:会計識字率

会計で経営力を高めるシリーズ

厳しくなる中小企業経営環境

 

 1.消費税率の引き上げによる消費税納税額の増加 (実質今年2020年から)

 2.インボイス制度の開始            (2023年10月から)

 3.時間外労働の上限規制の開始         (2020年4月から)

 4.同一労働同一賃金制度の導入開始       (2021年4月から)

 5.時間外割増率の猶予措置廃止         (2023年4月から)

 

 こうやって見てますと、この4~5年で随分と中小企業を取り巻く経営環境がきびしく

なってくることがわかります。

これらの経営環境を乗り越えるためには様々な打ち手が考えられますが、その根本として

「経営力を高める」必要があると思われます。

「経営力を高める」というと抽象的な表現になりますがが、それを具体的に言えば

「会計をもって経営力を高める」ということです。

 

 多くの中小企業ではまだ決算・申告のために会計をされていますが、

これからは「経営力を高めるために」という意識を持って会計をすることが

中小企業には必要だと思います。

 

 そこで、今回から「会計で経営力を高めるシリーズ」でコラムを執筆します。

おたのしみにしてください・・。


掲載日:2020年2月5日 |カテゴリー:会計識字率

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