会計の視点 運転資金の意味

 

第9回の会計の視点は「運転資金の意味」です。

「運転資金」という言葉は皆さんもよくお使いかと思います。

しかし、意外と会計の運転資金を説明できる人はあまりいません。

会社経営をしていくうえで、自社の必要運転資金を知っておくことは大切です。

なぜなら、それによってより早く資金繰りの点滅信号に気が付くことができるからです。

資金繰りについては異常に早く気づけば気づくほど対応する時間も打ち手も多くなります。

それが二進も三進もいかなくなってから気づけば、

いけないことだとわかっていても、高利の借入に手を出すことにもなりかねません。

今回はそんな「運転資金の意味」についてわかりやすく考えてみましょう。

 

1 運転資金とは

 運転資金とは「日々の経営をしていくために必要な資金の額」と言えます。

 しかし、ひと口に「経営」と言っても、広義の経営から狭義の経営まで、

いろいろな概念がありますので、そこを押さえておく必要があります。

1.一番広い概念、会社全体を動かしていくための「運転資金」

 会社全体を動かしていくための運転資金とはいったい何でしょうか。

 会計で取り扱っている会社全体を動かしていくための運転資金とは、

「総資産ー現預金」のことです。

 現預金を除いたすべての資産は、資金を運用している姿です。

 まずこのことを理解しましょう。

 したがって、それらを運用できるだけの資金がなければ、会社は存続していけません。

 ただし、会計では人の勘定は入っていませんので、それ以外にも人件費が必要となって

きます。 このことは忘れないでください。

2.日常の会社活動を続けていくための「運転資金」

 次に広い概念は「日々の会社活動を続けていくための運転資金」です。

 日々の会社活動を続けていくための運転資金とは、「流動資産ー現預金」のことです。

 会計では日々の会社活動で運用している資産のことを「流動資産」と呼んでいます。

 (会計って、うまくできています!?)

 しかし、現預金だけは運用していない資金ですので、

 それを除いたものが日々の会社活動を続けていくための運転資金となります。

 ただし、これにも人件費は入っていませんのでそのことは別途考慮する必要があります。

3.商品売買活動を続けていくための「運転資金」

 これが一番狭義の概念です。商品の売買活動を続けていくために必要な運転資金です。

 具体的にはなんでしょうか?

 商品売買活動のために運用している資産とは、

 受取手形や売掛金などの「売上債権」と在庫である「棚卸資産」です。

 この売上債権と棚卸資産が商品売買活動を続けていくために運用している資産です。

 したがって、これを運用できるだけの運転資金が必要となります。

 今回はこの「商品売買活動を続けていくための運転資金」を中心に見ていきます。

 

2 運転資金の財源は何か

 広義から狭義までのそれぞれの必要運転資金に対する財源は、じつは決まっています。

1.商品売買活動を続けていくための運転資金の財源

 商品の売買活動を続けていくための運転資金の財源とは、

 流動負債の中の支払手形や買掛金などの「買入債務」となります。

 要はツケで仕入をしている間に債権回収ができれば、商品の売買活動を続けていくための資金繰りはラクになります。

 そんな商売はあるのかって?

 小売商店や飲食業あるいはクリーニング業などB2Cの事業です。

 しかしそれ以外のB2Bの事業は「支払が先で入金が後」というビジネススタイルです。

 したがって、支払額程度の資金は手元資金として持っておく必要があります。

2.日常の会社活動を続けていくための運転資金の財源

 日々の会社活動を続けていくための運転資金の財源とは「流動負債」となります。

 支払手形・買掛金・未払金・未払費用・預り金などです。

 これで不足する場合はやはり手元の現預金を取り崩すか、社外から資金を調達することに

なります。

 例えば、賞与資金が足りないので銀行に融資を申し込む、納税のためにやはり銀行融資を

申し込むなどがそれに当たります。

 そうならないためにも運用している資金を減らす努力が大事です。

 つまり、売上債権は期日までに回収するとか在庫は極力減らすなどのマネジメントが

重要となってきます。

3.会社全体を動かしていくための運転資金の財源

 会社全体を動かしていくための運転資金とは「負債・純資産の合計」です。

言い方を変えれば、他人資本と自己資本の合計です。

 これが会社活動を続けていくための運転資金の財源となります。

 この財源が足りない場合は、手元の現預金を取り崩すか、社外から資金を調達する必要があります。

 社外からの資金調達とは、さらに借入金を起こすとか、経営者の個人資産をつぎ込むなどになります。

 そうならないためにも、他人資本と自己資本の割合を確認したり、銀行借入金をチェックしたりすることが大切です。

 

3 運転資金の見方

 では、商品売買活動を続けていくための運転資金はどのように見ればよいのでしょうか。 一緒に考えてみましょう。

1.売買活動を続けるために調達しなければならない運転資金不足額を知っておく

 必要な運転資金額は「売上債権+棚卸資産」でした。 例えば、300万円としましょう。

 それに対する財源は「買入債務」でした。 例えば、100万円としましょう。

 するとこの差額が不足している運転資金で、つまり調達しなければならない運転資金と

なります。

 この場合、300万円-100万円=200万円足りないわけですから、その分は手元資金で

持っていなくてはなりません。

 もし、手元資金になければ、回収してはそれで支払うといういわゆる「自転車操業」と

呼ばれる状態となります。

2.売上が増えた場合や増やそうとした場合にどのくらい追加資金が必要なのか知っておく

 常に不足している運転資金額は、200万円でした。

 この200万円と年商を比較すると、いまの売買モデルで調達しなければならない

「必要調達率」がわかります。

 仮に年商が2000万円だったなら、200万円÷年商2000万円×100で、10%となります。

 この「10%」が現行売買モデルでの必要調達率となります。

 ですから、売上が500万円増える、あるいは増やしたい場合は、500万円×10%=50万円の運転資金が追加で必要となります。

 

このように考えれば、事業を大きくしたい場合の追加資金額なども知ることができ、

事業拡張は可能なのか、少し無理があるのかなど判断ができるようになってきます。

 

このようなことを知って経営していれば、経営はすごく安定してきます。

会計は本来このようなことを経営者に伝えることが目的なのです。

 

 


掲載日:2019年11月13日 |カテゴリー:会計識字率

会計の視点 純資産の意味

 

第8回の会計の視点は「純資産の意味」です。

純資産はある意味、事業経営にとって一番重要な資産ですが、日頃あまり見ることはされ

ない、また会計事務所からもほとんど説明を受けない資産かもわかりません。

しかし、冒頭にも言ったとおり、事業経営にとって一番重要な財産、資産なのです。

今回はそんな「純資産の意味」について、わかりやすく考えてみましょう。

 

1 純資産とは

(1) 中小企業の純資産は資本金と繰越利益剰余金

 会計の参考書をみると、純資産には「なんとか差益」とか、「なんとか準備金」など、

むずかしい用語が出てきますが、しかし、中小企業にとっての純資産とは、「資本金」と「繰越利益剰余金(略して繰越利益)」の二つだと言えます

「資本金」とは、ご存じのとおり、設立した時の自己資金です。

「繰越利益」とは、それから事業を行って長年積み上げてきた利益の総額です。

 もしも、この繰越利益が少なかったり、あるいはマイナスの場合は、

事業がうまくいっていないことを示しています。

特に繰越利益の赤字が資本金を超している場合は『債務超過』と呼び、たとえ資金があった

としても、瀕死の状況だと認識しなくてはいけません。

(2) 債務超過であってもなぜ企業には資金があるのか

 では、なぜ、債務超過なのに手元資金がある場合があるのでしょうか?

それはB/Sをよく見るとわかります。手元資金の出どころはどこですか。

多くの場合は銀行借入金が手元資金して残っているか、あるいは経営者が個人資金を出して

(役員借入金)によって手元資金があるか、どちらかです。

(3) 純資産によってバランスが保たれている

 純資産は自社で積み上げてきた資金ですので「自己資本」とも呼びます。

 なお、純資産は「資本金+繰越利益」ではありますが、

 正しくは「総資産ー総負債=純資産」という計算をしていますから、総資産と総負債の

差額が純資産となっています。

 つまり、「総資産=負債+純資産」という関係が常に成り立ちますので、貸借対照表の

ことをバランスシートというわけです。

 

2 純資産割合でわかる会社の状況

 純資産の割合で、会社経営の安定度が読み取れます。

◆純資産の割合が50%以上の企業

 優良企業だと言われています。

 つまり、会社の資産(流動資産+固定資産)の半分以上を純資産で支えていますので、

安定した経営ができているということです。

 最近では経営の安定性をより増すために、それに加えて借入金がない企業、あるいは

借入金と同額以上の現預金を持つようにしている企業があります。

それらのことを「無借金経営」とか、「実質無借金経営」などと呼びます。

◆純資産の割合が30%前後の企業

 通常の安定した経営状況の企業です。

 会社経営をするなら、まずこの程度の経営状況を維持したいところです。

◆純資産の割合が10%前後の企業

 多くの企業にありがちな自己資本比率ですが、90%以上を他人資本に頼っているわけ

ですから、大変心もとない経営状況と言わざるを得ません。これを自己資本30%前後に

持っていくには毎期利益を出して、繰越利益を増やしていくしかありません。

◆純資産の割合がマイナスの企業

 割合がマイナスとということは、純資産自体がマイナスということです。

つまり「総資産ー総負債=純資産」という式で表現すれば、資産より負債の方が多いということです。平たく言えば「借金(他人資本)分の資産さえ無い状況」ということです。

これは由々しき経営状況であり、これまでの経営はすべて間違っているということです。

しかし、改めない経営者が多く見られます。

 

3 純資産の見方

では、そのような純資産をどのように見ればよいのでしょうか・・、考えてみましょう。

 まず、すでにご紹介した、「総資産」と比べるという見方があります。

 もう一つ大事な見方は、「現預金」と比べてみるということです。

純資産と資金繰りの関係は基本的に正の関係がありますが、しかし「純資産があるから

資金がある」とは言えません。

したがって、現預金と純資産を比べておくことは大事な経営マネジメントです。

できれば、純資産と同額程度の現預金があるように経営することが大事です。

 例えば、資本金が300万円、繰越利益が500万円であるならば、1000万円前後の現預金があるように経営するということです。

 

※それぞれの見方にもちろん名称がついていますが、そんなことを覚えることは重要では

 ありません。それよりも見方を考えることのほうがずっと重要です!

 

このようなことを意識して経営していれば、経営はすごく安定してきます。

会計は本来このようなことを経営者に伝えることが目的なのです。

 

 


掲載日:2019年11月6日 |カテゴリー:会計識字率

会計の視点 借入金の意味

 

第7回の会計の視点は「借入金の意味」です。

借入金は手形と並んで、会社が倒産する場合の直接の引き金となります。

ですから、その本来的意味をよく理解しておく必要があります。

また一方、借入金は自分の資金だけではできない設備投資や事業チャンスを逃さずに

事業展開できるメリットもあります。要は使い方次第です。

今回はそんな「借入金についての意味」を考えてみましょう。

 

1 借入金とは

 自社以外から借り入れを起こす方法は、クラウドファンディングや補助金など

 いろいろあります。

 しかし、一番現実的な方法は「借入金」です。

 具体的には、それは『銀行借入金』と考えてよいと思われます。

 

2 「借入したなら、返すだけでよい」は間違い

 多くの経営者は銀行借入を起こしたら、それが返済ができればよいと考えているところが

 あるようです。

 それは確かにそうですが、ただそれには『最低限』という注釈がつきます。

 事業の目的の一つとして「利潤」にあるわけですから、その観点から考えれば、

 実はそれだけであってはいけないわけです。

 好きで事業を起こす場合もありますが、やはり趣味とは違います。

 ですから事業で借入する以上はそれをテコにして利潤を生みだすことが求められます。

 事業は「儲けて納税してそして雇用を増やす」ことが社会から求められている要請です。

 その前提で考えれば、1000万円を借りて、1000万円と金利を支払いさえすれば「良し」

 とするのは、やはり問題と言わざるを得ません。

 したがって、やはり返済ずるだけでは最低限となります。

 本来は1000万円借りたなら、1000万円と金利とそして『利益』を生み出すべきと

 いうことです。

 では、それくらい利益を生み出せばよいのか?といえば、元本が1000万円ですから、

 事業ですからその10%程度は利益を生み出したいものです。

 とすれば、100万円ということになります。

 多くの経営者に抜けている思考は、「借りて利益を出す」と言われています。

 だから、多くの中小企業では借り入れを起こせば起こすほど、徐々に経営が苦しくなって

 くる場合が多いようです。

 

3 借りたおカネの見方

 では、借入金はどのように見ればよいのでしょうか・・。 考えてみましょう。

 ◇まず借りている額について「多い」のか、そうでもないのか、という問題・・

  借入金額を平均売上高で割ってみます ⇒借入金合計÷平均月商

   >>>借入金は平均月商3カ月分以内に治めるように経営しましょう

     これには重要な道理が隠されています。

     借入金には短期も長期もありますので、その平均返済期間は5年、

     つまり60ヵ月と一般には言われてます。

     売上経常利益率は10%あるとして(そんな企業はなかなか見当たりませんが)、

     その半分を借入返済の原資として考えるわけです。

     半分ということは、売上高の5%ということです。

     すると平均返済期間が60ヵ月ですから、5%×60ヵ月=300%

     つまり、売上高に換算しなおすと3カ月分となります。

     しかしさきほどもつぶやきましたが、現実には売上経常利益率10%の中小企業は

     そうありませんので、これでも借り過ぎなのかもわかりません。

 ◇次に、何年ぐらいで今の借入金が返済できるのか、という問題・・

  今の借入金を今の最大返済可能額で割ってみます

                  ⇒借入金合計÷(年間営業利益+年間減価償却費)

   >>>5~6年で返済できるように経営しましょう

     これにも重要な道理があります。

     それは、「借入金の返済は利益からすべきものである」ということです。

     もし利益から返せないのであれば、手元資金かあるいは経営者の個人資金も

     加えて返済しなければなりません。

     では、最大の利益とはなんでしょうか?

     それは、営業利益と減価償却を合わせた額です。

     これを全部使って借入金を返済すれば、最短で何年で返済できるかが読めます。

     一般には10年以内であればよいとも言われていますが、

     10年間も利益と償却費を全部使って返済していれば、全く内部留保もできず、

     そして法人税や消費税の支払はどうするのでしょうか?

     そう考えると、できれば5~6年で返済できる借入額でないといけないと

     いうことが理解できます。

 ※それぞれの見方に分析値名がついていますが、そんなことを覚えることが重要なのでは  ありません。それよりも見方を考えることのほうが重要なのです!

 

このようなことを意識して経営していれば、経営はすごく安定してきます。

会計は本来このようなことを経営者の皆さまに伝えることが目的なのです。

 

 


掲載日:2019年10月30日 |カテゴリー:会計識字率

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