資金に強い財務体質・経営をする

6月も終わりに近づき、ジメジメした梅雨の真っ盛り。

決算・申告も終えてひと段落ですが、経営環境は不透明感を増すばかりです。

今回からはそんなタイミングを捉えて、資金に強い財務体質・経営をするをテーマに、

決算書をどう読めばよいのか、また改善はどのような方向で考えればよいのかについて

考えたいと思います。

 

1 そもそも決算書とは何ぞや?

決算書は法人税や消費税の申告のためだけに作成している資料ではないということです。

もちろん、金融機関に提出するために作成している資料でもありません。

本来の目的は自社のためなのです。

少なくとも1年に1回は自社の財政状況や経営状況を確認し、来る次期の経営のために

作成している資料です。

ですから、税務署に提出した、金融機関にも提出したので「やれやれ」ではないのです。

じっくり数値で表現された経営の現状を読み解く必要があるのです。

 

特に最近は長引くコロナ過に加え、ウクライナ情勢によっていっそう経営環境は混沌として

います。そんな状況に備えておくべきことは「手元資金」です。

そこで、手元資金に焦点を当てた読み方で、資金に強い財務体質にする対策を考えます。

 

 

2 資金に強い財務体質・経営とは

では、資金に強い財務体質・経営とは、どのようなことを指すのでしょうか。

それはスバリ、手元資金を豊富にし、黒字決算を続ける経営です。

具体的には

 1.黒字決算を続けることを根底に、

 2.資金の運用と資金の調達のバランスを改善し、

 3.なるべく多くの手元資金を持てる型にする経営です。

 

その意味では借入金を増やすこともあながち悪いことではありません。ひとつの対策です。

そこで資金に強い財務体質・経営をするためには、現状の手元資金の読み方とその改善策、

そして、P/Lの読み方と改善策が大事になってきます。

今回は、手元資金の読み方とその改善策に的を絞って考えてみます。

 

 

3 手元資金の読み方

上場企業や上場をめざしている企業であれば、手元資金を置いているだけでは何も活かしていないので、いわゆる利害関係者から批判を受けます。

したがって、積極的に手元資金を活かさなければなりません。

 

しかし、普通の中小企業は、手元資金は多ければ多いほど、経営の安全性が増しますので、

「それで良し」と考えて、まったく差し支えありません。

ここに実務と机上の理論差がありますので、いろいろな経営書を読む場合には気を付けたい

ところです。

では、普通の中小企業であれば、

手元資金の現状をどのようにして評価すればよいのでしょうか?

 

(1)手元流動性比率

その一つが、平均月商何倍の手元資金があるのかを表す『手元流動性比率』です。

平均月商とは、企業にとって、1カ月間の平均生活費といえます。

この平均月商の中で、原価を支払い、給料を出し、その他の経費代も支払います。

赤字経営とは毎月の生活費が足らないことを言っているわけですから、

なんとか平均月商の中で黒字になるように、企業も生活しなくてはなりません。

こう考えると「赤字経営」が如何に危ういものかということが実感できます。

 

そこで、手元資金が平均月商(1カ月の生活費)何か月分あるのかを見るわけです。

 手元流動性比率(カ月分)=手元資金÷平均月商

あたなの企業はいくらですか?

 1ヵ月前後? それでは、まったく不安です。

 3カ月前後? 普通とも言えますが、コロナ禍のことを思い返せば、まだ不安です。

 6カ月程度? この程度は目標として捉えたいものです。

 1年分程度? これだけあれば大企業の優良法人にも負けていません。

        最終的にはここまで手元資金が持てるよう経営の舵を取りたいものです。

 

(2)手元資金比率

次は、近々返済しなくてはならない『負債』と比べましょう。

近々返済しなくはならない負債とは、流動負債のことです。

 手元資金比率(%)=手元資金÷流動負債×100

この手元資金比率は常に2倍の余裕、つまり200%程度は維持していきたいものです。

もう少し緩く読みたいのであれば、『当座比率』や『流動比率』を見るとよいでしょう。

 

ただし、気をつけなければならないのは、

当座比率・流動比率となればなるほど、徐々に財源を拡大解釈しているということです。

つまり、負債は常に正味を表していますが、資産はどうしても膨らむ傾向があるということ

です。

「膨らむ」とは、もう回収できないものが混じっているということです。

たとえば、回収できない売掛金が売掛金として計上されていたり、売れない在庫が棚卸資産

として計上されていたりすることをいいます。

これらのことは非常に多くの企業で、ごく普通に見られる現象です。

 

(3)将来必要な資金分の手元資金があるのか

3番目は「将来、確実に必要な資金分の手元資金があるのか?」ということです。

将来、確実に必要な資金とは何だと思いますか。

消費税の納付額であったり、法人税の納付額、賞与の支給額、設備資金等々です。

それぞれ、次のような考え方でその概算額を求めることが出来ます。

 消費税納付額=仮受消費税-仮払消費税

 法人税納付額=予定当期純利益×実効税率(約30%)

 賞与支給額 =賞与支給見込み額

 設備投資資金=累計減価償却費

これらの合計金額よりも多くの手元資金があるかどうか、ということです。

このように実際に確認してみると、ほとんどの場合、手元資金が不足しています。

 

特に、消費税納付額は、必ずお客様から預かったのですから、あるはずです。

それなのにそれがないということは、預かった消費税を運転資金で使っている証左です。

この事実認識をすることが経営する上で大切です。

 

また、減価償却費は、将来の設備投資資金として考えるべき項目だと理解しましょう。

設備は時間の経過とともに古くなっていくわけですから、いずれ買替え時期が来ます。

そのときの資金が減価償却費なのですから、減価償却費はそのときに備えて貯蓄しておく

べきものなのです。

 

(4)運転資金不足額

最後に、運転資金の不足額と比べてみましょう。

運転資金は、理想からいえば、買入債務で回せれば一番ラクです。

しかし、普通はそうもいきませんので、不足分は手元資金で補うことになります。

さらに不足する場合は、金融機関に運転資金として融資を申込むこととなります。

では、この運転資金の不足額をどのように読めばよいのでしょうか。

それが次の算式です。

 運転資金不足額(要調達高)=(売上債権+棚卸資産)-買入債務

売上債権と棚卸資産とは、いま運用している運転資金の総額です。

それに対し、買入債務(支払手形と買掛金)が、いま調達している運転資金の総額です。

したがって、その差額が運転資金の不足額となります。

その不足額を手元資金で補っているわけです。

 

 

4 資金に強い財務体質・経営の対策

具体的な対策は企業ごとに違いますので、ここではその考え方を紹介します。

そして、そうするためには、自社の場合はどうするべきなのかを考えください。

ポイントは「総資産の下半身はスリムに、上半身は厚くする」という逆三角形の資産体型に

することです。

 

総資産というものは手元資金以外を少なくすれば、その分だけ手元資金が増えていくという

構造になっています。

たとえば、

1.固定資産を必要なものだけにすれば、それ以外は資金化できて手元資金が厚くなる。

2.その他流動資産も少なくすれば(つまり回収する)、手元資金が厚くなる。

3.棚卸資産も必要最小限にすれば、その分、仕入が減り、手元資金が残る。

  棚卸資産の削減は、さらに商品や材料などのデッドストックが無くなることにつながる

  ので、売上原価がさがることになり、利益が出やすい経営体質に変えます。

  そのためには、いままで以上に実地棚卸の回数を増やすし、精度を上げ、それに応じて

  1回あたりの仕入を少なくすることが大事になります。

4.売上債権も減らすというより、期日通りに回収すれば、手元資金が厚くなる。

  また同時に、不良債権化を防ぐという大きな利点も生じます。

  さらにきちんとした回収行動というものは得意先から信用を厚くしますので、

  良好な関係が構築できます。

  ※実はここを誤解している企業が多くあり、回収についてはうるさく言えないと

   思い込んでいる企業が多いようです。

 

 

5 手元資金の現状

最後に「手元資金」に関する現状をお伝えします。

まず、『現金残高の推移』です。

下図のとおり、コロナ感染拡大が始まった2020年から急激に現金残は増えています。

飲食業や宿泊業をはじめ、多くのサービス業やそれらに接する業界で売上高がゼロになって

しまった企業が続出したことはまだ記憶に新しいところです。

図表

次に、『資本金階級別の現預金残価の増加』です。

大法人と小規模法人で、大きく現預金残高が増加したことがわかります。

前者は将来リスクに備えて、後者は現状リスクを乗り越えるためにと、その目的に違いは

ありますが、ある意味、一番資金リスクを感じた企業規模とも言えます。

図表

次の図3は『業種別現預金の増加率』です。

前表と同様、コロナ禍で厳しい環境におかれた業種ほど、現預金の増加率が大きいことが

わかります。

図表

 

これらの3表がさらに示していることは「やればできる!」ということです。

現在はウクライナ情勢も加わり「資金に強い財務体質・経営」に舵を切るべきときだと

思われます。

 

 

 

このように、会計の理解が深まれば、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。

会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているからです。

したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるように

なります。

もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。

いまは、管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。 会計はたのしい!


掲載日:2022年6月22日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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