科目の読み方⑤ 買入債務

今回の「科目の読み方」は『買入債務』です。

 

1 買入債務とは

 買入債務とは、仕入代金のことをいいます。

科目でいえば、「支払手形」と「買掛金」になります。

少し詳しく考えてみると、

買入債務とは、本来であれば代金を支払って仕入れ商品等を購入するわけですが、

それを後払いにして購入しているわけです。

つまり、買入債務とは、代金分を仕入先から資金を借りて事業に供しているといえます。

したがって、B/S上は資金調達を示す「負債」に、かつ通常は仕入月の翌月には支払い

ますので「流動負債」に記載されているわけです。

買入債務には「債務」という側面ばかりを認識しがちですが、同時に「資金調達」行為の

一つなのです。

買入債務とは資金調達の一つです!

 

したがって、前回ご紹介した「要調達運転資金」を計算する上では、

資金調達項目として減算することになるわけです。

要調達運転資金の計算では

運転資金として運用している売上債権と棚卸資産から

資金調達をしている買入債務を減算する!

 

このことは経営するうえで、よく理解しておく必要があります。

 

2 支払手形について

 支払手形は買掛金を手形で決済することで、支払期日をさらに1~2カ月先に延ばせる

という資金繰り上のメリットがあります。

 ※したがって、支払手形を使っている場合は、支払手形と買掛金の支払順は支払手形が先になるので、

  科目の並び順も買掛金の前に支払手形が来ることになっています。

しかし、支払手形には、期日は絶対守らなければならないという厳しいルール(リスク)が

生じます。

ありがちな「忘れていました」とか、「明日には支払います」というわけにはいきません。

 さらに、資金繰りが安定している企業が手形を使うことにはあまり問題はありませんが、

現実的には、手形を使う理由として、資金繰りが苦しいから利用している企業が多いという

ことです。

そのような企業ではリスクが常に高くなりますので、その意味では支払手形は使わない方が

無難ともいえます。

また本来的には、そのような状況で経営を続けること自体に問題があるわけで、

手形を使用して資金繰りの問題解決を図るより、根本的に資金繰り状況を改善して、

解決を図るべき問題です。

この解決は非常に困難だと思われていますが、

経営者にその意識が強くあるならば、多くの企業で改善できる問題でもあります。

支払手形は支払期日を延ばせるメリットはあるが

支払期日は待ったナシというリスクがある!

 

 

3 買入債務の読み方

(1)買入債務の実際の決済期間を知る

 「わざわざ計算して確認しなくてもわかっているよ」と言われることが多いのですが、

ほとんどが実態の決済期間を知らない経営者が多いことが現実です。

したがって、月次試算表から買入債務の決済期間を定期的に確認することが大事です。

買入債務÷1日当りの平均仕入高=〇×日 

→これを「買入債務回転期間(日数)」と呼ぶ

 

これが頭の中とほぼ同じであれば「OK」です。

あるいはまた、「売上債権回転期間」と比べておくことも重要です。

さらに「買入債務」というグロスではなく、「支払手形」「買掛金」としての回転期間も

確認することも大事です。

なお一般的には、平均日商で「買入債務回転期間」を求めると説明されている場合が多い

ですが、これだと売上には粗利が含まれているため、実際より「買入債務回転期間」は短く

計算されてしまいます。

したがって、1日当りの平均仕入高で計算したほうが、より実態に即した期間が計算される

ことになります。

 

(2)売買活動のための「要調達運転資金」を知る

  ※何度も掲載していますが、買入債務も関係ありますので、再度掲載します。

 売買活動に要する「要調達 運転資金」は次のように計算します。

(売上債権+棚卸資産)ー買入債務=〇×円 →「要調達運転資金」と呼ぶ

 

これは売買活動で運用している資金(売上債権と棚卸資産です)と、売買活動で調達して

いる資金(買入債務です)との差額を表しています。

この差額は、仕入での資金調達だけでは足りていないことを示しており、その不足分は

手元資金から用立てしなければなりません。

従って、この「要調達運転資金」が大きいければ大きいほど、資金繰りが厳しくなります。

「要調達運転資金」が大きいれば大きいほど、運転資金に大きな資金が要る!

 

 さらにこの「要調達運転資金」を年商と比較すれば「運転資金 要調達率」がわかります。

要調達運転資金÷年商×100=〇×% →「運転資金要調達率」と呼ぶ

 

たとえば、これが「20%」であれば、もし仮に次年度500万の売上を伸ばそうと考える

ならば、500万×20%=100万、約100万円の新たな運転資金が必要になるという

ことになります。

 この「要調達運転資金100万円」はどこから捻出するのでしょうか?

そう、それは手元資金からです。

 

 よって、手元資金から「要調達運転資金」を差引くことで「要調達運転資金不足額」が

わかります。

手元資金(現金+預金)ー要調達運転資金=〇×円

→「要調達運転資金不足額」と呼ぶ

 

もし、これがマイナスならば回収した売掛金を当てにした資金繰りをしていることになり、

「自転車操業」であることを示しています。

さらにひどくなってくると「黒字倒産」に結びつくことになります。

 

4 一般の買入債務状況

(1)業種別・資本金別の買入債務回転期間

製造・非製造に分けた「買入債務回転期間(月)」ですが、

大企業ほど長く、小規模な企業ほど短いというのが実態です。

中小企業では信用力の問題もありますので、日数換算すると、だいたい20日前後となって

いることがわかります。

 

(2)買入債務回転期間の動向

少しデータは古いですが、年々「買入債務回転期間」は短くなっていく傾向です。

 

こうやって見てみると、互いの資金繰り問題もあり、買入債務の支払も売上債権の回収も、

早く決済することが商取引のルールとなって来ていることがわかります。

 


掲載日:2022年2月2日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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