経営計画(予算)の作り方 後編

 前回は大枠の経営計画の作り方について説明しました。

今回はその細部について、ポイントをご紹介します。

 

1 経営計画は「利益」から考え始める

 経営計画を売上高から考え始め、売上原価、経費、営業利益へと、

徐々に下を考える経営者が多いようですが、これの考え方には問題があります。

なぜなら、

経営計画の最終目的は「売上高」ではなく「利益」を達成することにあるからです。

したがって、次年度の必要利益から考え、徐々に遡っていく考え方を身につけましょう。

経営計画は「必要利益」からスタートする!

 

2 必要利益とは

 では、必要利益とは何でしょうか? それは「内部留保金額」と「借入返済額」です。

 内部留保金額とは、増加させたい資金額のことです。

仮に、現在の手元資金が500万で、目標内部留保金額を200万に設定した場合で、

来期がその経営計画通りになったとすれば、来期末の手元資金は700万となっています。

 借入返済額とは、来期1年間の借入金返済金額です。

仮に毎月30万返済しているのであれば、年間360万となります。

その借入金返済は売上高からしているのではなく、手元資金からしているのです。

ですからその分、目標内部留保金額に加えねばなりません。

 そしてそれで終わりかといえばそうではなく、「実効税率」を考えなければなりません。

実効税率とは、法人住民税・地方法人税・法人事業税をあわせた法人所得に課税される

税金の実質的な負担割合のことです。

実際の細かい計算は別にすれば、だいたい30%程度と考えておくとよいかと思います。

 たとえば、

目標内部留保金額を200万に設定し、借入金返済が360万ある場合の必要利益は

 必要利益=(200万+360万)÷(1-30%)=800万 となります。

そうすると、800万のうちの30%である240万を法人税等として納付し、

差引の560万が手元に残ることになりますので、

目標内部留保金額を200万と借入返済額360万の合計560万と一致します。

必要利益は(目標内部留保金額+借入金返済額)÷70%で求める!

 

3 次に来期の固定費を考える

 必要利益の前にあるものは何かといえば、それは「固定費」です。

固定費は「人件費」と「それ以外の固定費」に分けて考える必要があります。

来期の固定費は人件費とそれ以外の固定費に分けて考える!

 

 人件費はさらに役員報酬と従業員給与・賞与に分けて考えます。

役員報酬はともかく、従業員給与・賞与はできれば昇給させたいものです。

特に中小企業の場合には必要です。

やはりそこそこの給与処遇ができないと、いい人材を獲るにも獲れません。

また職場のモラールも上げる必要がありますから、従業員給与・賞与も昇給させる必要が

あります。

世間が2%、3%のアップというのであれば、もともと中小企業の賃金は低いので、

5%程度は上げたいものです。

 さらに人件費には社会保険料も含まれます。

だいたい、役員報酬・給与・賞与合計の15%程度を見込めばよいかと思います。

仮に、今年の役員報酬が年間1000万、従業員給与・賞与合計が1500万とすれば、

来期は役員報酬は同額としても、従業員給与・賞与は1500万×1.05=1575万

必要となり、会社が法定福利費として負担する社会保険料は、15%程度の386万ぐらい

必要となります。

したがって、来期の人件費合計は2961万となります。

来期の人件費は

役員報酬と昇給後の従業員給与・賞与そして社会保険料から考える!

 

 次に人件費以外の固定費を考えますが、

これまで削減努力をして来ているのであれば、多くとも同額か、あるいは少しでも削減を

考えたいところです。

ここでは仮に今年が1500万だとし、来期も最大、同額と考え、1500万とします。

 すると固定費計は、人件費+それ以外の固定費で4461万となります。

 

4 次に来期の限界利益率を考える

「限界利益率」とは、前回説明しましたように、売上総利益率ではありません。

あくまでも、直接原価だけを除外し、売上高と比較した比率です。

一般的には、製造業の場合は売上総利益率と限界利益率は大きく変わり、

それ以外の業種ではほぼ同額となると説明されますが、

実際は直接原価は管理会計の世界ですので、企業ごとの認識・定義によって微妙に違って

きます。

 ここでは仮に今年の限界利益率を70%と仮定し、付加価値をさらに高めるという考え方

で、来期は72%しようとします。

固定費は削減した分だけ利益が増えるだけですが、限界利益率は売上高に対する割合です

ので、たとえ1%上げるだけでも利益を大幅に増やすことになることを知りましょう。

限界利益率の改善は大幅な利益改善をもたらします!

 

 この場合だと、目標とする固定費総額は4461万であり、目標とする限界利益率は

72%ですから、来期の目標固定費総額4461万÷目標限界利益率72%=目標売上高

6195万 となります。

 もし目標限界利益率が今年と同じ70%としたなら、

来期の目標固定費総額4461万÷目標限界利益率70%=目標売上高6372万となり、

目標売上高が177万も違うことになります!

 

5 想定した売上高と比べてみる

 これで「必要利益」から考えた経営計画ができたことになりますが、

ここで想定していた売上高と比べてみます。

もし、想定していた売上高よりもかなり高い場合はその実現可能性を考えて、

無理と判断するなら、固定費や限界利益あるいは最終の内部留保金額を見直し、

実現可能性の高い経営計画に修正していきます。

 

6 どうやってこの経営計画を実現させるのか、戦略戦術を考える

 経営計画は数値を作って終わりではありません。

それを実現させる戦略戦術を考えねばなりません。

 売上高をどうやって伸ばすのか?

 限界利益率をどうやって高めるのか?

 固定費をどのようにして同額とするのか、あるいは減らすのか?

この3点を経営者として考え、従業員に説明し、意見を聞きながら徐々にその戦略戦術に

全員の意思を入れていかねばなければなりません。

まず戦略戦術を経営者として考え、

従業員の意見も取り入れながら、全社一丸の方策とする!

 

7 予実管理は月1回でよいと考えない

 いよいよ来期に入ると計画の進捗度合いを確認するために予実管理を行うわけですが、

なぜか、予実管理は「月次」という考え方に凝り固まっているようです。

もちろん、月次でもいいわけですが、それだと年12回の軌道修正しか出来ません。

なかなか経営計画が達成できない企業の場合は、それだけ現実が厳しいわけですから、

活動修正の機会を年12回と固定的に考えるよりも、年24回とか活動修正の機会を増やした方が

それだけ達成できる可能性は高くなります。

予実管理は「月次」と思い込まない!

目標達成が困難な場合ほど予実管理の機会を増しましょう!

 

8 実績管理の考え方

 予実管理は勘定科目ごとにすればよいのかといえば、それでは大雑把すぎます。

予実管理はPCで行うのが当たり前になっていますので、細部まで原因解明ができるように

しておきたいものです。

 たとえば、

売上高は既存売上高と新規売上高に大別し、それぞれ得意先別とか商品別に把握します。

直接原価も主要商品ごとや主要材料費ごとに集計管理します。

人件費は役員報酬、従業員給与、従業員賞与に分け、社会保険料も役員法定福利費と従業員

法定福利費に分けて集計します。

そうすることで、全体の労働分配率、役員労働分配率、従業員労働分配率が把握できます。

その他固定費も同様に、各科目は費目ごとに集計管理し、何が固定費増加の要因になって

いるのか、原因解明できるようにします。

 このようにすると、経理に費やす時間は増えますが、それでよいと思います。

なぜなら、経理とは「経営管理」の略だからです。

経営の状況を明らかにし、打ち手が打てるようにすべきだと思われませんか?

経理とは経営管理であり、

経営の状況を明らかにして打ち手が講じられることをいう!

 

9 経営計画の変更

 経営計画と実績の乖離が大きくなると、経営計画を修正する企業があります。

しかし、それは明らかに外部環境要因でない限り、やってはならないことです。

なぜなら、その乖離の大きさが、見通しの違いや自社の経営技術の稚拙さを表すからです。

それは数年かけて大きな乖離が生じないように、経営技術を高める必要があることを示して

いるのです。

経営計画乖離の大きさは、

数年かけで経営技術を高める必要があることを示しています!

 

 

このようにして行けば、経営は楽しいものであり、

さまざまな環境を乗り越えられる経営技術が身につけられると思われませんか?

 


掲載日:2021年12月22日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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