会計によるリスク管理⑧ 借入金

リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ第8回 借入金

 

 ワクチン接種もようやくどんどん進み出し、オリンピック・パラリンピック開催に向けて

まっしぐらの様相ですが、オリパラ・アフターの状況は誰も明言せず、不透明な状況です。

人流による影響やウイルス変容による影響は、その時になってみないとわからず、

このことを「リスク」と言わなけれれば、何を「リスク」と呼ぶのでしょうか。

いずれにせよ、生活や経営に対してどのような悪影響をもたらすのか予測することが

難しく、いま「守りの経営」への舵取りが重要となっています。

 「リスク管理観点から会計を捉えるシリーズ」の今回は、リスク管理の中でも特に重要といわれている『借入金のリスク管理』です。

 

 

1 借入金とは

(1)一般的には金融機関から受けている「融資」のこと

 返済期間が1年以内であれば「短期借入金」として分類され、流動負債に記載されます。

返済期間が1年を超える場合は「長期借入金」として分類され、固定負債に記載されます。

 ただし、そのうち1年以内に返済する金額は、経営管理(マネジメント)上、流動負債に

「1年以内返済長期借入金」として記載するよう、会計規則で求められています。

 

 なお、役員借入金は、この短期借入金・長期借入金には含まれません。

固定負債に表示はされますが、好意的に見れば自己資本的に評価されます。

しかし、自己資本的に評価されても、オーナー自らが資金提供をしないといけないほど

経営が苦しいのかと思われ、あまりいい評価には結びつかない場合もあります。

そんな勘繰りを避けるために「役員借入金」という勘定科目は使用せず、「長期未払金」と

表記される場合もありますが、しかし本質は同じです。

 

(2)借入金の運用目的

 借入金はいろいろな目的で借り入れられるわけですが、大きくは2つに分けられます。

1.運転資金

 ひとつは賞与資金や納税資金など、日頃の経営資金として借入することが考えられます。

このような目的のことを「運転資金」といい、このような使用目的は半年に一度あるいは

年に一度あるわけですから、返済もそれまでにすることが求められます。

したがって、1年以内に返済することを条件に、融資を受けることが多くなりますから、

「短期借入金」に分類される場合が多いと思われます。

また、借入期間が短い関係から、支払利息も高くなります。

2.設備資金

 もうひとつは固定資産の購入など、設備投資用資金として借入することが考えられます。

このような目的のことを「設備資金」といいますが、設備の運用期間は長く、また借入額も

大きくなる場合が多いので、長期にわたる返済期間となります。

したがって、1年を超える返済期間で融資を受けることが多くなりますので「長期借入金」

になる場合が多いと思われます。

 

(3)「借入金」はマイナスイメージばかりではなく、プラスイメージの側面もある

 一般的に借入金は資金繰りが立たなくなるとするイメージがあるため、多くの場合は

「負」のイメージとして捉えがちですが、本来は、ビジネスのチャンスがそこにあるのに、

それに対する資金がないという、もっと前向きでプラスイメージのものでもあります。

したがって、しっかりしたマネジメントのもとでの借入金は「事業に積極的である」という

プラス評価を受けることもあります。

 

 しかし、いずれにしても返済できないと、銀行との関係がギクシャクとしますので、

経営リスクを招く元にもなり、その管理はしっかりしなくてなりません。

 

 

2 「借入金」のリスク管理

 では、そんな「借入金のリスク管理」をどのように考えればよいのでしょうか?

それは大きく分けて、返済の状況と借入自体の額に分けて、考えられます。

 

(1)借入金の返済状況に余裕があるのか?

 借入金の返済はどこからするのでしょうか?

普通はその都度、借入返済額を現金で持参するのではなく、銀行口座を通じて引落される

ことになります。

 

 余談になりますが、とある金融機関から融資を受けると、その融資は必ずその金融機関

口座に振り込まれることになります。

仮にそれまで付き合いがなく口座を持っていない場合でも、口座を開設してそこに振り込

まれることになります。

 なぜだか、わかりますか?

それは金融機関にとって、「新しい取引先を増やす」という意味もありますが、その重大な

意味は「融資先企業の返済の様子が見える」ということなのです。

 

 そのことから考えると、融資を受けた金融機関の口座にどれだけの預金残高があるのかと

いうことは、重要なリスク管理となります。

それは次のように、預金残高と月間返済金額を比較して見ます。

 返済余裕係数 = 融資金融機関の預金高 ÷ 月間返済金額

できれば、この「返済余裕係数」が最低でも返済3回分以上あり、その後徐々に増えていく

ことが望ましいといえます。

 

(2)借入金のボリューム ー借入依存企業体質の有無ー

 次のリスク管理は、企業としての借入金に対する「依存体質度」です。

これには次のふたつの観点からチェックします。

 

1.借入金対平均月商倍率 = 借入金(短期+長期) ÷ 平均月商

コロナ以前は「3か月分までが適正」ともいわれていましたが、いまはずいぶん緩く

なっているようです。

とはいっても、年商と同程度の借入金は、立派な「借入金依存体質」です。

 

〔ここでひと言!〕

 では、なぜ「3か月分」までが適正といわれていたのでしょうか?

その考え方は以下のとおりです。

事業を営む以上、経常利益率は売上に対して10%以上確保することが望ましいとされて

います。そして、その半分は納税と内部留保へ回すと考えると、借入金返済に回せるのは

最大で売上高の5%ということになります。

一方、借入金の平均返済回数は5年間60回といわれています。

そうすると、1回あたり返済に回せるのは最大売上高の5%ですから、

60倍すると300%となり、つまり「借入金の限度額は平均月商の3ヵ月分まで」となる

わけです。

 

 現在は、コロナ禍で返済期間は伸びていますので、借入金の限度額は大きくなったと

言われていますが、それでもMAX12カ月程度であろうと思われます。

 

2.借入金返済期間予測(債務償還年数)

     = 借入金(短期+長期) ÷ (経常利益+減価償却費)

 借入金の返済はどこからするのでしょうか?

借入利息は損益計算書の中で計算されていますが、返済は損益計算書の中では計算されて

いません。返済は預金から引落しされ、借入金残高もその分、減少することになります。

 では、その預金の元は何でしょうか? そうです、「利益」なのです。

ただ、利益は減価償却費分を引いていますが、おカネ的には減価償却費は支払ません。

ですから、最大の返済原資は、「利益+減価償却費」となります。

 そして、返済期間予測は最大の返済原資で考えます。

つまり、利益で得たおカネ全額で借入金を返済するという考え方です。

実際には、先ほども説明したとおり、納税や留保も必要ですが、それは考えません。

これで借入金残高を割れば、「今年の利益であれば、何年間で返済できる」という

最短の返済期間が試算できます。

これが10年以上となれば、借入過剰、立派な「借入金依存体質の経営」です。

なぜなら、10年以上先のことは、企業の存続自体がわからない、読めないからです。

ですから、この借入返済期間予測は5~6年程度には収めたいものです。

 

 この算式からもわかりますように、経常利益が赤字なんていうことが、借入金企業にあってはならないということがよくわかると思います。

 

 

つづく・・

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戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いの外、『思い込み』に囚われて生活や仕事をしています。

そしてその結果が「いまである」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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掲載日:2021年6月16日 |カテゴリー:会計識字率

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