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新型コロナ感染拡大、第2回緊急事態宣言、そして延長に続く再延長など、
経営環境は大きく変化し、厳しくなっています。
そんなときに必要になるのが「経営の舵取り」です。
「経営の舵取り」とは、勘で行うのではなく、
羅針盤である「会計」を読み解き、行うべきものです。
ぜひ、実務的な会計の読み方を習得しましょう。
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前回は会計ルールに基づいたP/L(損益計算書)をしました。
今回はさらに「経営に役立つP/L」の説明をします。
いきなり「直接原価計算方式」という難しそうな言葉を使いましたが、実はそんなに
難しい話でもありません。
会計ルールに基づいたP/Lは「全部原価計算方式の損益計算書」ですので、実はそれでは
自社で付けた「付加価値」がハッキリしません。
自社が付けた「付加価値」とは、原価が20円、それを100円で売ったなら、80円が
自社が付けた付加価値となります。
しかし、会計ルールに基づいたP/Lの売上原価には、商品仕入高と材料費という「直接
原価」のほかに、労務費や外注加工費あるいはその他の製造原価という「間接原価」までが
含まれます。つまり、モノを作るにあたってのすべての原価要素が含まれています。
だから「全部原価計算方式」というわけです。
しかし、物事をシンプルに捉えると、モノを売ったり作ったりする上での真の原価とは、商品仕入と材料費の「直接原価」だけと考えられます。
したがって、それと売上高との差額が、本当の自社の「付加価値」なのです。
つまり、同じ材料であっても、それぞれ企業の技術力やブランド力などで売価は変わり、
付加価値は変わるわけです。
「直接原価計算方式」のP/Lはそこに着目し、企業の真の儲けである「付加価値額」が
わかるようになっています。
そのことを「限界利益」と呼び、企業の生産努力がわかるようになります。
全部原価計算方式のP/Lは会計ルールに基づいていますから、決算書や申告書は
この方式によってP/Lを作成しなければなりません。
ゆえに「制度会計P/L」という言い方もします。
一方、直接原価計算方式のP/Lは決算書・申告書作成には使えませんが、企業独自の
経営管理をするために作成することから「管理会計P/L」といいます。
管理会計P/Lは、各企業が自社独自の経営管理を行うために作成しているものなので、
制度会計のように「利益は5つ」と決まっていません。
各企業が自社独自のマネジメントに即して、独自の利益概念を設定します。
たとえば、その一例は下記のようなものです。
売上高 →売上高とは、企業にとっての『生活費』です。
△商品仕入高・材料費 →商品・材料は直接的な原価です。
売上に応じて変動しますので『変動費』ともいいます。
限界利益 →企業が産み出した『付加価値額』です。
△人件費 →付加価値を創るために投入した人件費合計(役員報酬・
給与・賞与・法定福利費)です。
人件費は売上の状況にかかわらず支給しますので、
『固定費』の一つです。
可処分利益 →人件費を除いた利益です。
ここから経費を支払い、利益を残すことになります。
△経費 →販売するためにかかった経費です。
これも販売状況にかかわらず、一定額発生しますので、
『固定費』といえます。
達成利益 →これが本業で得た利益です。
±営業外 →本業以外の金利負担や雑収入です。
貢献利益 →事業の経常的な最終利益です。
*これはあくまで一例であり、利益概念は任意に設定します。
(1)限界利益率が把握できる「限界利益÷売上高=限界利益率」
原価が直接原価だけですので、自社の付加価値率である『限界利益率』が掴めます。
(2)いつでも必要売上高が試算できる「必要固定費÷限界利益率=必要売上高」
たとえば、期の途中であれば、残りの必要固定費(人件費+経費)を限界利益率で
割れば、残りの必要売上高が試算できます。
期首であれば、1年間の必要固定費(人件費+経費)に目標の利益を加えて、予定する
限界利益率で割れば、この1年間に目標とすべき必要売上高が試算できます。
(3)いつでも労働分配率を把握、マネジメントできる「人件費÷限界利益=労働分配率」
これからは全体の労働分配率の管理ではなく、役員と従業員に分けて労働分配率を管理
しなければいけません。
従業員にも適切な給与・賞与を分配し、従業員の満足度を向上させることが大切です。
経営に役立つP/Lであればそのマネジメントがしやすくなります。
(4)人件費以外の固定費が把握できる
販売にかかっている経費がわかりますので、無駄がないか管理できるようになります。
この販売にかかる固定費は全員で削減することが大切です。
(5)損益分岐点売上高が把握できる「固定費÷限界利益率=損益分岐点売上高」
実績の固定費(人件費+経費)を実績の限界利益率で割れば、収支トントンとなる
損益分岐点売上高が試算できます。
(6)損益分岐点比率が把握できる「損益分岐点売上高÷実績売上高=損益分岐点比率」
損益分岐点売上高を実績の売上高で割ると、損益分岐点比率が試算できます。
常に80%以下となる経営判断をしていくことが重要です。
(7)経営安全率が把握できる「100-損益分岐点比率=経営安全率」
100から損益分岐点比率を引くと、経営安全率となります。
この経営安全率とは、どのくらい売上が減少すると採算割れとなるかという数値です。
たとえば、損益分岐点比率80.0%であれば、経営安全率は20.0%となり、
売上高が20%まで減少しても赤字経営には転落しないということです。
このコロナ禍で、経営安全率を50%にしようという動きが活発になっています。
これまでのことをまとめ、図示すると次のようになります。
■全部原価計算方式のP/L ■直接原価計算方式のP/L
*外注加工費を人件費に入れることは議論があるかと思いますが、ここでは社内従業員が
行うべきことを委託していると捉え、外注加工費は人件費に入れています。
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どうでしょうか、経営に役立つP/Lは理解できましたか。
残念ながら直接原価方式のP/Lを自動作成できる会計ソフトはありませんが、
普通の会計ソフトをもとにエクセルで入力すればかんたんに作成できます。
そのことを「面倒」とは考えず、自ら入力して作成することによって
自社の直接原価方式のP/Lが頭に入ると利点に考えればよいかと思います。
ぜひ、挑戦してみてください、予想以上の大きな効果を自社の経営にもたらします!
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何度も言いますが、会計は、決算・税務申告のためだけにしている事務ではありません。
会計は経営判断を行うために毎日行っている「経営管理(マネジメント)業務」なのです。
いまほど、経営に「手腕」が求められている時代はありません。
会計とマーケティングそしてITを駆使して、常に経営を革新し、永続的に続けられる
経営を実践しましょう。
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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いまである」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
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掲載日:2021年3月10日 |カテゴリー:会計識字率
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