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新型コロナ感染拡大・第2回目の緊急事態宣言と、
経営環境の変化は大きく、そして厳しくなっています。
そんなときに必要になるのが、経営状況の羅針盤である会計を読み解きながら
経営の舵取りをすることです。
実務的な会計の読み方を習得しましょう。
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『借入金』とは、普通に言えば「融資」と呼ばれる銀行借入金です。
事業には常に事業資金が必要ですが、いつも自己資本だけで賄えるわけではありません。
しかし現実はそうも行かないことも多く、そんな時に資金調達する方法が銀行借入です。
そのような借入金ですが、有効にかつ安全に活用したいものです。
今回はそんな『借入金』についての実務的な読み方です。
負債の中でも重要な資金の調達の一つが「借入金」です。
賞与支給や納税などで運転資金が足りないとき、設備投資を自己資金だけでできないとき
など、大変重宝する資金調達の一つです。
しかし借入金は長期間に渡って、元金に金利を加えて毎月返済しなければなりませんので、
その管理は経営において大変重要なのです。
また借入金は大企業が増資などで直接、市場から資金調達を行う「直接金融」に対して、
「間接金融」とも呼ばれます。
まず、管理すべき『借入金』の種類を勉強しましょう。
借入金は一般的には金融機関からの融資ですが、会計では「ワン・イヤー・ルール」に
則って、『短期借入金』と『長期借入金』に分けて管理するように仕組まれています。
この「短期」「長期」という言葉は、一般的に使用する短期・長期という意味だけはなく、
”企業経営のマネジメントに必要なため”、次のように、返済期間で厳格に分けるように
ルール付けされています。
1.返済期間が1年以内であれば「短期借入金」に区分します。
2.返済期間が1年超であれば「長期借入金」に区分します。
したがって、賞与支給や納税目的などの場合を除き、借入金のほとんどは『長期借入金』に
区分されると思われます。
しかし、長期借入金であっても、1年以内に返済する部分は必ずあります。
最近では経営マネジメントに資する観点から、長期借入金うち、1年以内に返済する部分を
「1年以内返済長期借入金」に分けるようにルール化されています。
*自社の試算表を見て、長期借入金はあるのに1年以内返済長期借入金がない場合は、
依頼している会計事務所に問題があるのかもわかりません。
上記の説明で、『借入金』には3種類あることはわかりました。
では、それぞれに標準的な運用目的の違いはあるのでしょうか?
それは次の表示区分がヒントになります。
仮に、短期借入金が900万円、長期借入金が2000万円(うち1年以内返済分が
400万円)だとすると、表示は次のとおりになります。
短期借入金900万円+1年以内返済長期借入金400万円+長期借入金1600万円
=借入金総額2900万円
流動負債 短期借入金900万円+1年以内返済長期借入金400万円=1300万円
固定負債 長期借入金1600万円=1600万円
つまり、ワン・イヤー・ルールに則って、流動負債と固定負債に分けられて表示されます。
そうすると、流動負債は返済期間が短い他人資本ですから、『短期借入金』は資金化が
早い流動資産で運用すべきこととが基本となります。
間違っても、短期借入金を固定資産に運用することがないように、マネジメントしなければ
なりません。
一方、『長期借入金』は固定負債ですから、固定資産(設備投資)に運用してもよいこと
になりますが、しかしそれにも限度というものがあります。限度を超えない範囲で、つまり
無理な設備投資とならないように、マネジメントしなければなりません。
さて、そんな『借入金』ですが、それをどのように読めばよいのでしょうか。
読むといっても「いま借入が2900万円ある」とか、「昨年よりは減った・増えた」では
読んだことになりません。 ただ計算しただけに過ぎません。
では、どのように読めばよいのでしょうか?
それは多角的に借入金を比較することです。多角的に比較して会社の借入状況を読み、
経営的な判断をすることです。
では、どんなものと比較して読めば良いのでしょうか?
自社の借入金総額の適正をチェックする尺度は何だと思いますか?
それは資金の源泉である売上高です。
この資金源泉の量と借入の量を比較すれば、借入金総額をチェックする適正な指標と
なりそうです。
借入金総額2900万円÷平均月商800万円=借入金月商倍率3.63カ月分
借入金が平均月商の3.63カ月分とはどういうことでしょうか?
たとえば理想的な経常利益率が10%として、半分は納税と内部留保へ回すと考えると、
借入金返済には最大毎月の売上高の5%が回せるということになります。
3.63カ月をこの5%で返済すると(363÷5=)72.6カ月、つまり、約6年間
返済にかかると計算できます。
現在の長期借入金の返済期間は最大7年間程度ですから、その枠の中に入っていますから
「なんとか適正の範疇にある」と判断できます。
これまで売上高3カ月分から4カ月分程度の借入金額が適正と言われてきました、
現在はコロナ禍で返済期限が伸びていますから、12カ月分程度でも適正と考えられます。
次に自社の現状で、借入金返済期間を考えてみましょう。
借入金の返済原資は何ですか?
それは「営業利益」です。借入返済は利益からするからです。
しかし営業利益には「減価償却費」が差し引かれていますので、それを戻して考えます。
なぜなら減価償却は現預金支出を伴わないからです。
したがって、最大の自社の返済原資は「営業利益+減価償却費」となります。
営業利益480万円+減価償却費100万円=償却前営業利益580万円
*営業利益ではなく、経常利益でも良いのですが、正確には経常利益は支払利息が
差引かれていますので、正しくは営業利益となります。
それを極論ですが、「全額返済に充てる」と考えます。そうするとどうなりますか?
借入金総額2900万円÷償却前営業利益580万円=債務償還年数5.0年
これは極論の試算ですが、「1年間の儲けた利益をすべて返済に充当する」と考えると
5年間で返済できることになります。
実際は「1年間に儲けた利益の半分で返済する」と考えると、10年間となります。
現在、金融機関では極論の試算で債務償還年数を見てくれていますので、
5年間であれば、まだ借入の枠はあると判定されます。
しかし、これが10年を超えてしまうと、10年先はもう企業存続自体が不透明ですので、
追加融資は厳しくなります。
現在はコロナ禍のため、その判断基準は緩んでいますが、しかし企業の健全性から考え
れば、債務償還年数は5年程度がMAXとして判断したほうが良いと思います。
最後に、借り入れ状況を改善する方法について簡単に触れます。
(1)経営の黒字化、黒字化の拡大
やはり、ここでも経営の「黒字経営化」、あるいは「黒字幅の拡大」になります。
黒字経営を続けていればそもそも借入をすることも少なくなり、また仮に借入したとしても
その額は小さくなります。
そうすると『月商倍率』や『債務償還年数』も当然のことながら低くなります。
ただし同じ黒字経営でも、「適正な黒字経営」がこれからは大きな課題となってきます。
適正な黒字経営とは、従業員の人件費もしっかり上げて、それできちんとした営業利益率を
確保するということです。
(2)リスケジュール
略して「リスケ」と呼びますが、現在の返済状況を改善(楽に)するには、
金融機関に相談して、返済期間を延ばすことが有効です。
以上をまとめますと、次のようなイメージとなります。
ぜひ、借入金をコントロールし、経営の安全性を高めるとともに、荒波に強い経営を
しましょう。
これまでも申しあげて来ているとおり、会計は決算や税務申告のためだけにしている
「事務」では、決してありません。
むしろ会計は会社経営の判断をするために日々行っている「経営管理、マネジメント業務」
なのです。いまほど、経営者の『経営手腕』が問われているときはありません。
会計とそしてマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続けられる企業経営を
目指しましょう。
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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
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掲載日:2021年1月20日 |カテゴリー:会計識字率
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