会計の読み方 買入債務(仕手+買掛)

 さて、今回からの「経営助言コラム」は負債項目の具体的な読み方に入ります。

負債というと、マイナスイメージを持ちがちになりますが、しかし事業をするためには

必ずおカネが必要になるわけですし、そのために借りたおカネが「負債」というわけです。

したがって、事業にとって負債はとてもポジティブな資金でもあるわけです。

負債をポジティブに運用するためにもしっかりとしたマネジメントを会計を介して行うこと

が大切です。それをないがしろにすると、一般的に思われているような常に追いかけられる

ネガティブなものとなってしまいます。

今回はそんな負債の中から「買入債務」について勉強します。

 

第8回 買入債務(支払手形+買掛金)の読み方

 負債の中でも、事業で日常的に一番調達しているおカネが『買入債務』です。

「借りている」という意識はあまり持たないかもわかりませんが、仕入した商品や材料は

手元に届いているのに代金は支払っていないわけですから、「金利ナシで仕入代金を調達

している」といえます。

 

1.買入債務とは

 買入債務とは、下記のとおり、支払手形と買掛金の合計です。

支払手形120万円+買掛金360万円=買入債務480万円

 *買入債務は仕入債務とか支払債務などと呼ばれる場合もありますが、意味は同じです。

 

上記計算式の中で『支払手形』を入れていますが、これは支払手形を使うことが当たり前と

言っているわけではありません。

支払手形は経営の安全のためにも、なるべく使うのはやめたほうよいと思われます。

確かに支払手形を使うと、支払時期をさらに先延ばしできますので、資金繰りがラクになる

というメリットはありますが、しかし何かの事情で2回続けて決済できなければ銀行取引が

停止となりますので、事実上、事業はストップしてしまいます。つまり、倒産です。

ですから、できれば支払手形は使わないほうが良いとうわけです。

支払手形は使わない

使わなくても資金繰りができる方法を考えるほうが得策である!

 

 では、そんな『買入債務』をどのように読めばよいのでしょうか。 

読むといっても「いま買入債務が480万円ある」とか「少し減った・増えた」では読んだ

ことになりません。 ただ計算しただけに過ぎません。

 では、どうすればよいのでしょうか?

それは、多角的に買入債務を比較することです。多角的に比較して、会社の買入債務状況を

読み、経営的な判断をすることです。

買入債務を読むとは、多角的に比較し残高の良し悪しを判断することです!

では、どんなものと比較をすれば良いのでしょうか?

 

2.「手元資金」と「買入債務」を比較する

 買入債務は仕入代金ですから、基本的に、翌月に支払うことが多い代金です。

そこで支払いの原資である「手元資金」と比べます。

手元資金510万円÷買入債務480万円=手元資金対買入債務倍率1.06倍 

 買入債務に対し手元キャッシュは1.06倍あるということですが、どう判断しますか?買入債務を支払うぐらいのキャッシュはあるということですから、まずは安心とも考えられますが、しかし手元キャッシュの用途は仕入代金だけではありませんね。

そう考えるともう少し、せめて2倍以上はあって欲しいとも考えられます。

 実際にどのくらいあれば良いのかはそれぞれの会社状況で違いますから、よく考えてみて

ください。

仕入債務の少なくとも2倍以上は手元資金があることを確認する!

 

3.「買入債務」と「売上債権」とを比較する

 次に、買入債務は前月の仕入代金とも見做せます。

それに対する前月の売上代金は何なのでしょうか? それは売上債権ですね。

ということは、買入債務と売上債権を比べてみることも意味がありそうです。

買入債務480万円÷売上債権1200万円=買入債務売上債権比率40.0%

 買入債務は売上債権の40%か・・。この40%という意味は何でしょうか?

そうです、この40.0%というのは、いわば資金ベースの原価率のようなものです。

もし、自社の原価率を30%と考えている場合であれば、少しこの40%は高すぎるという

判断ができます。一番の原因は売上に対して仕入が多すぎるということになります。

もちろん、買入債務に対する債権要素には「たな卸資産」も考慮すべきとも考えられますが

この「たな卸資産」の中には、これまでの売れ残りも含まれていることもありますので、

買入債務と売上債権だけで比較したほうがより固い見方ができます。

買入債務と売上債権を比較して資金ベースの実質原価率を把握する!

 

4.もう少しマクロ的な債権状況と債務状況を把握する

 3つ目の見方は「買入債務」だけというテーマから少し外れますが、マクロ的に「債権・

債務状況を見よう」とする考え方です。

広義の債務は、前回の負債で説明したように「流動負債」です。

逆に広義の債権は「流動資産」です。またその中でも確実に当てになるのは「当座資産」と

呼ばれるものです。

この二つの資産と流動負債を比較することで、マクロ的な自社の『安全性』を見ることが

できます。

なお、流動資産・当座資産・流動負債の設例は下記のとおりで、括弧の中がその残高と

します。

  流動資産=手元資金(510万)+売上債権(1200万)+たな卸資産(560万)

       +その他流動資産(0万)=2270万円

  当座資産=手元資金(510万)+売上債権(1200万)=1710万円

  流動負債=買入債務(480万)+短期借入金(900万)+未払金(90万)

       +預り金(100万)+その他流動負債(0万)=1570万円

そうすると次のように計算できます。

流動資産2270万円÷流動負債1570万円=流動比率144.6%

当座資産1710万円÷流動負債1570万円=当座比率108.9%

流動資産とは不良債権がなければ、基本的に1年以内のキャッシュ化できる総額です。

 当座資産とは、基本的に1~2カ月でキャッシュ化できる総額ともいえます。

 流動負債とは、基本的に1年以内に返済しなければならない他人資本です。

*流動と固定とは「ワン・イヤー・ルール」で分けられていることを思い出してください。

このように1年以内にキャッシュ化できる財源と1年以内に返済しなければならない負債を比較する『流動比率』を見ると、財源が1.5倍ほど上回っていますから、余裕があるよう

に見えますが、いまはキャッシュを高めて経営することが求められている時代です。

もう少し高める必要があると、経営判断できます。

さらにもっと固く、確実にキャッシュ化できる財源と1年以内に返済しなければならない

負債を比較する『当座比率』を見ると、財源が1倍以上ありますから、やはり余裕がある

ように思われますが、いまは取引先がいつ倒産してもおかしくない時代です。

ですからやはりもう少し高めておく必要があると、経営判断ができます。

当座のマクロ的な支払能力を見るには

流動比率・当座比率でマネジメントする!

 

 なお、このようなことを間違わないで経営判断するためには、「正確な会計処理を行う」ことが前提となります。決して、決算申告や税務署・金融機関のためでけに会計処理をして

いるわけではありません。

 

5.買入債務を改善する方法

 最後に支払債務や会社の安全性、支払能力などを改善する方法について簡単に触れます。

(1)買入債務の改善

 これは「必要以上の仕入れをしない!」ということに尽きます。

原則は、在庫の把握を高めることと仕入を小分けにする、仕入回数を増やすことです。

 さらに最近はコロナ感染の影響で、売上が減少する企業が増える一方で、一部、ブームと

もいえる需要の高まりで業績を上げている企業もあります。この中で警戒すべきは、業績を

上げている企業です。ブームに乗った売り上げ増には、必ず終焉が来ます。

そのときには、過剰在庫・過剰設備・過剰人員の『トリプル引き潮』が必ず起こります。

ブームに乗り過ぎない、計画的な経営が重要です。

(2)黒字経営

 支払能力を高めるには、なんといっても「黒字経営」がやはり絶対的な基本条件です。

黒字経営無くして、キャッシュを高める経営はありません。

 

6.まとめ

 以上をまとめますと、次のようなイメージとなります。

ぜひ、買入債務をコントロールして経営の安全性を高めるとともに、荒波に強い経営を

しましょう。

 

 

これまでも何度か申しあげてきましたが、会計は決算や税務申告のためだけの事務ではあり

ません。むしろ、会計は会社経営の判断をするために日々行っている経営管理であり、マネジメント業務なのです。

いまほど、経営者の『経営手腕』が問われているときはありません。

会計とマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続けられる企業経営を目指しましょう。

 

 

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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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掲載日:2021年1月13日 |カテゴリー:会計識字率

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