会計の読み方 たな卸資産(在庫)

第3回 たな卸資産(在庫)の読み方

 たな卸資産とはこれから売れる商品か、売れ残った商品かのどちらかのことです。

またたな卸資産は、「黒字経営」と「赤字経営」の分岐路でもあります。

黒字経営の企業はたな卸資産が少なく、赤字経営の企業はたな卸資産は多いという統計が

あります。

その意味で、たな卸資産(在庫)をマネジメントすることは、経営において大変重要なこと

です。

 

1.たな卸資産とは

 たな卸資産とは、これから版売する商品と、販売時期を終えた売れ残り商品の総称です。

できればうまく売り切って、極力売れ残り商品は少なくし、これから売れる商品ばかりに

したいものです。

なお、ここでは、説明の便宜上「たな卸資産は商品」であるかのように説明しますが、

製造業等においてはそのほかにも、製品・半製品・原材料・仕掛品・貯蔵品があります。

 たな卸資産=商品200万円+製品200万円+半製品50万円+原材料50万円

       +仕掛品50万円+貯蔵品10万円=560万円

 たな卸資産の多寡が「黒字経営と赤字経営の分岐路」と言いましたが、もう少し詳しく

説明すれば、優良な黒字企業のたな卸資産は売上高に対して15日分程度だそうです。

それに対し、赤字企業においてはそれが30日分程度と2倍もあるそうです。

たな卸資産(在庫)の多寡が、黒字経営と赤字経営の分岐路です!

 

2.なぜ、たな卸資産が増えてしまうのか

 では、なぜ、たな卸資産は増えてしまうのでしょうか?

それは企業体質が、売上至上主義であることを示していると言われます。

 たとえば、どんどん売れるモノがあって、だからどんどん仕入れるという経営判断は

正しいのでしょうか?そこが問題です。

どんどん売れるから、どんどん仕入する。するとその後はどうなっていくのでしょうか。

 ①どんどん仕入をするために「運転資金」が増えます。

 ②商品在庫が増えるので、新たな保管場所が必要になります。

 ③どんどん販売するためには新たな人手も必要になります。

 ④どんどん仕入れして、どんどん出荷するために、商品の扱い方も荒くなってきます。

 ⑤現場はどんどん売れて多忙になるため、どうしても顧客対応がぞんざいになります。

そして、そんなときにブームが突然終わるとどうなるのでしょうか。

商品が余り、人手が余り、保管料がかさみ、顧客は遠退き、運転資金が回らなくなり借入をして、そして赤字経営に陥るようになってしまうということです。

 最近ではマスク販売に多く見られた現象です。

どうでしょうか? あれほど品切れで、価格を高くして販売しても飛ぶように売れ、

それ、商機だと思い大量仕入れしたとたん、在庫の山となり、いまでは原価割れの販売合戦

となっています。

このようなことはマスク販売の現場だけではなく、マスク製造の現場でも起こっています。

ブームに乗った販売は、

必ず過剰在庫や過剰設備投資、過剰人員などの問題を引き起こす!

 

3.正しい在庫管理は売り切れを起こすぐらいが丁度いい

 では、正しい経営判断はどうすれば良いのでしょうか?

それは売り切れを起こすぐらいの在庫管理が正しいということです。

もう少し正確に言えば、計画在庫以上の需要があれば次の入荷まで客様にはお待ちいただく

ということです。

企業としては計画した売上は達成したわけですから、まずはそれで「良し」と考えるという

ことです。それ以上の需要に対しては、需要に振り回されることなく、自社のコントロール

下で供給を続けるということです。

それでお客様が他で求めることになっても、仕方がないと腹を括ることが大切です。

それをまだ売れるから、どんどん仕入してどんどん売るという「欲」を出すので、最後には

大きな痛手を負うということです。

このことは、以前から同じ過ちが何度も繰り返されているので、既に知っていることです。

確かに中にはその商機を逃さないで大きな成果を得る企業もあるのかもわりませんが、それ

はそれででいいではありませんか。

売り抜ける企業は一握りの企業であり、その陰で多くの企業は煮え湯を飲まされています。

在庫管理の秘訣はブームを追わず、自社の計画に基づいて判断すること!

 

 では、そんなたな卸資産をどのように読めばよいのでしょうか。 

読み方と言っても、「いま560万円ある」とか「先月より増えている、減っている」では

読んだことになりません。 それはただ残高を見ているに過ぎません。

 では、どうすればよいのでしょうか?

それはこれまで説明した来たように、たな卸資産を多角的に比較することです。

多角的に比較して会社のたな卸資産の状況を読み、経営的な判断することです。

たな卸資産を読むとは多角的に比較しその状況で良い悪しを判断すること!

 

4.「たな卸資産」と「日々の売上高」を比較する

 まず考えられることは「日々の売上高」と比較することです。

たな卸資産560万円÷平均日商40万円=たな卸回転期間14日 

このように比較することで、自社の在庫がだいたい何日で入れ替えられているのかがわかり

ます。この場合、14日間、約2週間で在庫は一掃できているということです。

なお、各産業別の平均たな卸資産回転率/回転期間は下記のとおりです。

たな卸資産読み方の基本は平均日商と比較することです!

 

5.「たな卸資産」と「売上原価」を比較する

 もう少し、たな卸資産の有り高を正確に読むには、売上高ではなく売上原価と比べること

です。

たな卸資産の計上は原価でしていますので、粗利を含んだ売上高と比較した回転期間はどう

しても実態よりも短く計算されます。

それを補正するには、たな卸資産を売上原価で比較することがおススメです。

         たな卸資産560万円÷1日あたり売上原価16万円

        =たな卸資産回転期間(原価基準)35日

これだとより正確にたな卸資産の有り高を判断できます。

たな卸資産と1日あたりの売上原価を比較すれば

より正確に在庫の有り高を判断ですることができる!

 

6.在庫の状況を改善する方法

(1)実地たな卸を年1回より毎月、毎月より毎週実施する

 製造業や卸売業・小売業など、在庫が非常に重要な業種というものがあります。

そういう業種においては、実施たな卸を年1回しているのであれば毎月、毎月であったなら

毎週実施することが大切です。やはり「目」で数量や状況を確認することが大事です。

パソコンで在庫管理を行っていても実際と大きく乖離している場合もありますし、また個数

は合っていても実際には使えなくなっている在庫もあります。

改善の一丁目一番地は「実地たな卸」です。

(2)適正在庫量を設定する

 数量的に在庫を管理するためには「適正在庫量」を設定することが重要です。

それによって過剰在庫が防げます。

(3)一度の仕入れ量を減らし、仕入回数を増やす

 一度の仕入れ量を減らすことも大切です。それによってスリム化経営が実現できます。

仮に少々仕入単価上がろうとも先の需要が読めないモノは、デッドストック化による原価増

よりも抑えられるかもわかりません。

(4)いつも、いつでも、需要に応えようとはしない

 自社が大型量販店ならば別ですが、一般的な業態であれば「いつも在庫を切らさず、いつ

でも販売できるようにする」とあまり考えすぎないことです。

それよりも常にしっかりした顧客対応を心がけ、もし品切れの場合はいつ入荷するのかを明

確にし「少しお待ちいただけるでしょうか、いつ頃入荷する予定ですので、入荷し次第、取り置きし、ご連絡させていただきます(またはお届けします)。」とした方が、きっと固定

客化に結びつきます。

 

7.まとめ

 以上をまとめますと、次のようなイメージとなります。

ぜひ、自社のたな卸資産状況を判断し、必要な経営判断を意思決定をして、経営環境の変化を乗り越える経営をしましょう。

 

 

何度もいいますが、会計は決算・税務申告のためだけにしている「事務」ではありません。

経営に資するために日々行っている「経営管理(マネジメント)業務」なのです。

いまほど経営手腕が問われているときはありません。

会計・マーケティングを駆使し、常に経営を革新し、永続的に続く企業経営を目指しましょ

う。

 

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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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掲載日:2020年12月2日 |カテゴリー:会計識字率

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