会計の読み方 売上債権(受手+売掛)

第2回 売上債権(受取手形+売掛金)の読み方

 売上債権とは、販売はしたけれど、いまだ入金されていない債権のことをいいます。

売上債権は近く入金されて資金化できる資産ですので、経営的には非常に大事な資産です。

 

1.売上債権とは

 売上債権とは販売はしたけれど、いまだ入金されていない債権のことであり、受取手形と

売掛金のことをいいます。

これらは会社にとっては近く資金化される資産ですので、経営的にも資金的にも非常に大事

な資産です。

売上債権=受取手形400万円+売掛金800万円=1200万円

 売上債権があると、すでに販売しているので安心されている経営者を多く見かけますが、

それは少し早計です。

なぜなら、まだおカネにはなっていない資産だからです。売上債権は入金されて初めて資金

となります。

したがって、約束とおりに回収することが非常に大事です。企業同士の信用取引である以上

お互いに約束は守りたいものです。

売上債権とは受取手形と売掛金の合計です!

 

2.売掛金の時効

 ところで、売掛金回収を怠って、放置しておくとどうなるのでしょうか?

実はいつまでも債権とは認められず、「時効」となり回収する権利が消滅してしまいます。

商法では、売掛金の時効は「5年」と記載されていますが、民法で別の規定があり、民法に

規定がある場合は、民法の規定が優先されてしまいます。

 【売掛金の時効期間と根拠条文】

      債権の種類           時効期間     根拠条文

  1.診療代及び工事代金など        3年     民法170条

  2.弁護士報酬等、商品の売買代金など   2年     民法172条、173条

  3.運送代金・宿泊代金・飲食代金など   1年     民法174条

  4.上記以外               5年     商法522条

なんと通常の売掛金は「2年」、飲食代においては「1年」で時効が成立してしまいます。

但し、請求を繰り返ししていれば時効起算日は更新されていきますので、時効日はどんどん

先送りされていきます。

したがって、入金期限までに支払いがない債権に対しては督促するということが非常に大事

になってきます。

商品売買の代金である売掛金の時効は「2年」です!

 

3.期日後の売掛金回収率

 では、入金期日を過ぎた売掛金の回収率は、どのように変化していくのでしょうか。

グラフのとおり、回収期日が遅れれば遅れるほど、売掛金の回収率は悪くなっていきます。

期日から90日経った売掛金の回収率は7割まで落ち込みます。

それ以上になると急激に回収率は悪くなり、1年経ってしまうと2割程度しか回収できなく

なってしまいます。

 仮に、毎月取引があって、毎月同じ売上50万円がをある得意先があるとします。

そうすると期日から30日経つと売掛金残高は2倍の100万円となります。90日経つと

4倍の200万円になります。1年経つと650万円になってしまいます。

企業間取引の場合うっかりミスで支払期日を少し遅れることはあっても、忘れるということ

はありません。

つまり、支払いがないということは、その得意先の資金繰りが厳しいことを示しています。

そうではなくとも毎月50万円の支払いが100万円、200万円となると、ちょっと厳しいものがあります。

したがってお互いそうならないためにも、請求したものは入金日にはお支払いいただくとい

う姿勢を持つことが大事です。

 よく「得意先だから」といって督促を遠慮される場合がありますが、それは得意先の為に

も良いことではなく、不親切ともいえます。

必ずすぐに「お支払いをお忘れになっていませんか」と尋ねることが親切というものです。

 なお、そのようなときに郵送やメールで済まされる場合がありますが、それはほとんどの

場合、無駄なことです。

なぜなら、通知するだけで支払われるのであれば、請求書を送付すれば支払われているはず

です。まずは、電話連絡をしてお話をする、これが大切です。

期日を過ぎると売掛金回収率はとたんに下がる!

期日に入金なければすぐ電話連絡することが大事!

 

 では、そんな売掛債権残高をどのように読めばよいのでしょうか。 

読み方と言っても「いま1200万円ある」とか、「前月より増えた」では読んだことには

なりません。ただ残高を見ただけに過ぎません。

 では、どうすればよいのでしょうか?

それは手元資金のときと同様、売上債権も多角的に比較して読むことが大切です。

多角的に比較して、売上債権の状況を読み、経営的な判断することです。

売上債権を読むとは多角的に比較し

その状況の良い悪しを判断することです!

 

4.「売上債権」と「毎月の売上高」を比較する

 まず考えられることは「毎月の売上高」と比較することです。

売上債権1200万円÷平均月商800万円=回収サイト1.5カ月 

このように比較することで、自社の実質回収サイトが把握できます。

この場合、1.5カ月後にすべての売上債権は回収できるということです。

この計算をする前に社長さんにお聞きすると、「当社は翌月回収です」など、実際と違うこ

とをおっしゃる社長が実に多いです。

これは、どこかの取引先と社長が思い込んでいる約定とは違った条件で取引をしているか、

あるいは支払いが遅れている取引先があることを示しています。

その場合は、1件1件確認をして、その取引先を特定する必要があります。

売掛債権の読み方の基本は平均月商と比較することです!

 

5.「買入債務」と「売掛債権」を比較する

 売上債権とは売った商品代金でした。買入債務はそのために仕入した仕入代金です。

この二つを比較することで、売買バランスの良し悪しを読むことができます。

買入債務480万円÷売上債権1200万円=買入売上債権比率40.0%

これは売上債権に占める買入債務の割合ですから「債権債務ベースの原価率」といえます。

これが異常に高い場合は、仕入が多すぎるか、仕入単価が高すぎる(又は売価が安すぎる)

か、どちらかということになります。

買入債務と売上債権を比較することで売買のバランスが判断できる!

 

6.売上債権状況を改善する方法

(1)回収は期日を守る

 売上債権の改善は、ともかく期日を取引先に守っていただくということです。

いつも贔屓にしていただいているから、少々ルーズに支払うことを容認するとか、請求書を

出しているので、ともかく相手がお支払いになるまで待つとかは避けるということです。

期日までに入金が無ければ、翌日には必ず電話で状況を確認する習慣をつけましょう。

 そうはしても、相手は決してうるさいなどとは思いません。むしろしっかり管理している

会社だということで信用が増します。

さらに、相手に対して期日までにお支払いただく習慣をつけさせることになります。

またさらには、相手先の当社支払順位を上げることにもつながります。

(2)受取手形はなるべく受け取らない

 手形取引には下記のように、必ず一定のリスクが伴います。

したがって、なるべく受取手形を受け取らないように交渉しましょう。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 手形取引とは、手形の振出人、手形の受取人、手形を決済する銀行の3者間で取引される

「約束手形」が一般的で、約束手形には受取手形と支払手形があります。

受取手形とは、期日が到来したら相手方から代金を受け取ることができる手形のことです。

支払手形とは、期日が到来したら相手方に代金を支払わなければならない手形のことです。

 どちらも現金化までの期間が長いので、一定のリスクを抱えています。

受取手形は販売代金の現金化に時間がかかりますから、資金繰り悪化のリスクがあります。

支払手形は支払いを先延ばしできるので資金調達の性格を帯びていますが、不渡りのリスク

が常にあります。

 1回でも不渡りを出すと、すべての金融機関にそのことが周知されてしまいます。

さらに1回目から6カ月以内に2回目の不渡りを出せば、銀行取引停止報告への掲載ととも

に、やはりすべての金融機関に通知され、融資を受けることができなくなります。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 

7.まとめ

 以上をまとめますと、下図のようなイメージとなります。

なお、売掛金の時効は2年であること、また支払期日を過ぎると売掛金の回収率は低くなることから、売上債権の回収はしっかり行うことが求められます。

ぜひ、自社の売上債権の状況を判断し、必要な経営判断を意思決定をして、経営環境の変化を乗り越える経営をしましょう。

 

 

 

何度も言っていますが、会計は決算・税務申告のためにしている「事務」ではありません。

会計は経営に資するために日々行っている「経営管理(マネジメント)業務」なのです。

いまほど経営手腕が問われているときはありません。

会計とマーケティングを駆使して常にに経営を革新し、永続的に続く企業経営目指しましょう。

 

-----------------------------------------

戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

-----------------------------------------

 


掲載日:2020年11月25日 |カテゴリー:会計識字率

本店:〒355-0062 東松山市西本宿1968-1
坂戸:〒350-0233 坂戸市南町35-20
0120-634-154
営業時間 8:30~17:30 定休日 土・日・祭日