第2回目の戦術論のタイトルは「3密を避ける」です。
3密を避けるって、どこかで聞いたようなフレーズです。
そうです、新型コロナ対策で盛んに「密閉」「密集」「密接」の3つの密を避けるようにと
いわれていますね。
実はそれと同じように、マーケティングでも「3密を避けよ」という考え方があるのです。
ただし、マーケティングの3密とは、「自社」「お客さま」「同業者」の3つです。
つまり、どんな業界でも、顧客の同じニーズに、同質モノを提供しているということはよく
あります。実際に、同じような製品やサービスが、巷には溢れ返っています。
そこに、企業間の激しい競争が起こる原因があるのであり、弱い立場の事業者は「価格」で
勝負をせざるを得なくなるわけです。
そこで、マーケティングでは3密を避ける『バリュープロポジション』というコンセプトが
あります。
バリュープロポジションとは、3つの密を避けて、自社にしかできないモノ(価値)を提供しようというコンセプトなのです。
バリュー(value)とは、「価値」「値打ち」などという意味です。
また、プロポジション(proposition)とは、「提案」「主張」という意味です。
つまりバリュープロポジションとは、お客さまに価値がある提案や値打ちある主張を行い、
同業者との競い合いを避けて、高付加価値な事業を続けて行くという考え方なのです。
私たちはどんな商売を始めるにも、その同業者を観察して、「よし、この商売をやろう」と
自然に考えています。
そしてあまり意識はしないのかもわかりませんが、ほとんどの場合が『後発新規参入者』に
なってしまっているわけなのです。
ということは同じことを提供しているので、後発新規参入者はハンディキャップを背負って
スタートを切っているということになります。
したがって価格などを安くして、低付加価値な事業を続けて行くことになってしまいます。
そこでそうではなく、後発である以上お客様に対する『価値の軸』を少し変えて、いままで
とは違うことをお客さまに感じていただこうという考え方です。
どうしても『顧客の価値』というものを固定的に捉えてしまい、企業それぞれぞれには、
たとえ同業者といえどもそれぞれの個性があり、提供できる価値は変えられるはずなのに、
結局、同じモノを提供しています。
たとえば会計事務所の場合であれば、顧客が期待している価値を『税務』だけだと固定的に
考え、同じような決算・申告業務を行い、多くの同業者と競い合うのではなく、価値の中心
軸は「税務」だとしても、少し『価値観』を変えるということです。
いまではそのような考え方で、贈与税に特化したり、事業承継に特化したりしている会計事
務所も見られます。
今後は『黒字経営』に特化するのもいいのかもわかりません。
またたとえば、空気清浄機をレンタルしている企業は数多くありますが、どこも同じ価値観
を持って事業を行っているため、品揃えやレンタル料などで競い合い、やはり低付加価値な
事業を展開しています。
しかし、レンタルに価値を置くのではなく、空気清浄機を空気を清浄する機器として捉え、
その機能を向上させるために『フィルター交換』に価値を置いてレンタルをし、好調な空気
清浄機レンタル事業を行っている企業もあります。
このように発想すると、顧客と自社と同業者の三つ巴の争いではなく、顧客と自社だけの
独壇場になります。
一般的にお客さまが望んでいること『価値』に対して、だれでも提供できる価値の中で争いあうから『過当競争』が生まれます。
そこでバリュープロポジションは、そこを外して自社だけが提供できるところ(価値)で、
勝負に挑もうという考え方です。
したがって、少し勇気がいる戦術となりますが、そのポイントは次の3点です。
1.「顧客の視点」から考える できれば、顧客さえ気づいていないような価値感が
見出されればサイコーです。
2.その顧客ニーズを絞り込む 従来のサービスとの違いを、具体的に、明確にする
ことが大切です。
3.同業者と同じことはやらない 顧客に違いがわかるサービス(形)にする。
ほとんどの企業は、お互いに時間と費用をかけて同業者と同じことをやろうとします。
だからどうしても、過当競争や低価格競争に陥ることとなります。
このように考えてみると、バリュープロポジションはトライする価値は大いにあると思われます。
家電といえば、大型家電量販店やネット通販で購入するのが常識になりつつあります。
その量販店やネット通販が提供している『価値』とは、廉価販売とか、豊富な品揃えです。
ネット通販にはさらに、店員さん等とのわずらわしさからの解放もあります。
ただ両者とも、大量販売がカギとなっていますので、広い商圏と幅広い顧客層というものが
前提に、成り立っています。
他方、商店街にある家電店ではそれほどの廉価販売もできませんし、品揃えもできません。
そこに競争軸を置いては、大型家電量販店やネット通販とは勝負になりません。
しかし「地域密着のサービス」という点では、量販店やネット通販に勝ることができます。
この価値観で、狭い商圏とシニア層のうえで成り立っているということです。
シニア層が望んでいる価値とは、購入後のアフターサービスであったり、チョッとしたことでも気軽に聞ける、来てくれる利便性であり、ものすごい低価格は望んではいません。
こう観察すると、みごとに顧客が望み、大型家電量販店やネット通販では実現ができない、
地域密着型の地元商店街の家電店だからこそできる『価値』で勝ち残っていることがわかり
ます。
バリュープロポジションは、赤字経営が多いといわれる中小企業に対して、大いなるヒントを与えてくれます。
私たちはあまりにも横並びの経営をし過ぎているのではないのでしょうか。
それを「常識」とか「固定観念」といいます。
常識や固定観念という枠の外に出ることによって、初めて「バリュー・プロポジション」は実現可能となります。
どんな仕事や事業にも、このようなことがあるのではないのでしょうか。
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戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
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掲載日:2020年9月30日 |カテゴリー:マーケティング
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