「主な戦略理論」第4回目は『凋落を避ける戦略』です。
言い方を変えると「成長続ける事業にするための戦略」ともいえます。
「企業の寿命は30年」という言われ方ありますが、この言葉の意味は「成功したと思って
いる経営者のやり方を変えていくことは難しい」ということを表しています。
ここまで事業を続けて来られてきたという自負が経営者あるわけですから、日常的には会社
全体がそれに追従して運営されていくわけです。そうすると、経営者も年を取っていくわけですし、どうしても30年も経ってくれば、時代や社会の変化との乖離が大きくなっていき
やがてその会社は衰退していくという歩を重ねていくことになります。
つまり、どの企業でもそれぞれなりの「強み伝いの経営」がなされていくことになり、必ず
限界が訪れることになります。
このことは、誰もが頭ではわかっていることです。
しかしそれを現実に避けることは難しく、そしてそうするには勇気も入りますし、さらには
抵抗する社内勢力に負けない意志の強さや貫徹力が必要となります。
そこで今回は、そうならないための戦略です。
原題は『イノベーションのジレンマ』といい、技術革新面から述べられていますが、技術革
新を『経営改革』に置き換えると、どの企業でも非常に参考になる戦略論でもあります。
この『凋落を避ける戦略』である「イノベーションのジレンマ」は、ハーバードMBAの
クリスチャンセンが「強み伝い経営」に警鐘を鳴らした経営理論です。
『イノベーション』とは「技術革新」のことを指しますが、私たち中小企業は、少し広く
考え、「改革」と理解した方が活用できる場面が多くなります。
どの企業も正しく行動(強み伝いの経営)をするために、やがては市場のリーダシップ性を
奪われてしまうということです。
たとえば、超一流企業であったコダックも、「フィルム技術を改善していく」という正しい
行動に終始したがために、デジタル化の波に乗り遅れ、2012年1月に米連保破産法の適用を
受けてしまったというのは記憶に新しいところです。
イノベーションは二つあります。
ひとつは「持続的」なものであり、ひとつは「根本的、破壊的」なイノベーションです。
(1)持続的イノベーション
持続的イノベーションとは、既存製品やサービスの性能や内容などを継続的に高めていく
技術革新のことをいいます。
ふつう、企業は自社の強みである主要製品やサービスの性能や内容を引き上げるために、
努力し続けます。従業員もまた、主要製品を改善していくことは大きな評価になります
ので、能動的に頑張ります。
これが『強み伝いの経営』ということです。
企業は自ずと『強み伝いの経営』に力を入れてしまいます。
(2)破壊的イノベーション
もう一つの破壊的イノベーションとは、持続的イノベーションとは違い、ほんの一部でしか
ないユーザーである『オーバースペックユーザー』に評価されることから始まる技術革新の
ことをいいます。
したがって、社内では本流ではなく亜流となりますから、会社も従業員もあまり力が入りません。
しかし振り返ってみると、
いま当たり前に使っているパソコンは、思い返せばメインフレーマーであるヘビーユーザー
の使用から始まったのではなく、ほんの一部の新しいホビーユーザーであるオーバースペッ
クユーザーに受け入れたことから始まったのです。
※これらのことは「イノベーション」を題材にして語られていますが、「経営」についても
同じことが言えます。
つまり、現経営者が続ける「持続的経営」・・。周囲には気づいている人もいますが、ここ
まで事業をけん引してきた経営者に意見を言うことができず、たとえ意見を求められたとしても「社長のおっしゃる通り、~と思います」と受け答えされるシーンはよく見かけます。
社内の主流派にあり続けようと社長に従順を示す組織風土は、企業規模を問わずどこにでも
起こっているのが現実です。
なかなか、現状をある意味否定する「破壊的経営」は出現しにくいものがあります。
それを無くするには、過剰と言えるぐらいまでの経営者の気づかいや配慮が必要であること
は経営者は知るべきです。
企業は既存ユーザーに対する『持続的イノベーション』を進行させなくてはならず、また、
多くの社内人間も日が当たる『持続的イノベーション』に従事することを希望するので、
日が当たらない『破壊的イノベーション』に従事することを希望する人はあまりいません。
したがって、どうしても、企業は自ずと『強み伝いの経営』をしていくことになります。
すると、どうなっていくのでしょうか?!
そうです、「企業の硬直化や保守化」というものが始まり出すのです。
そして、『破壊的イノベーション』というものが企業の交代を促し、やがて既存のリーダー
企業は衰退していくことになります。
『破壊的イノベーション』は一部のユーザーだけに受け入れられるところから静かに進行し
そしてどこかで始まっているのです。
※経営も同じです。
経営者がたとえ退いたとしても、心配からついつい現場に口出しすると、いつまでも組織が
旧経営者に吸引されることになり、経営の刷新は形ばかりで旧態依然とした経営が続くこと
になります。
このように『破壊的イノベーション』は、リーダー企業が知らないうちに始まっています。
コダックも然り、一時のIBMも然り、そして台湾・鴻海に買収されたシャープなども然り
です。そして、この『破壊的イノベーション』には、二通りあります。
(1)ローエンド型破壊的イノベーション
ひとつは、ローエンド型破壊的イノベーションです。
ローエンド型とは、オーバースペック顧客を対象に起こります。
オーバースペック顧客とは「使えきれない顧客」という意味です。
リモコンやスマートフォンあるいは高級家電製品などに見られる顧客のアノ模様です。
多くのニーズに応えたあまり、製品には一人一人のユーザーからみれば使わない機能が多く
あり、それを高いお金を出して顧客は購入しています。
そこで『ローエンド型破壊的イノベーション』とは、従来品より性能などを低くして低価格
な製品サービスで参入することを指す技術革新をいいます。
(2)新市場型破壊的イノベーション
もう一つは、新市場型破壊的イノベーションです。
新市場型とは、従来の製品やサービスには無い性能などを提供して、新たな需要を作り出す
技術革新のことをいいます。
これは似て非なる製品であり、従来商品とは全く違った市場を狙うことが目的です。
たとえば、カメラのチェキなどです。
これまでカメラといえば、どちらかといえばヘビーユーザーを対象にどんどん性能をアップ
させ、なかなか素人では扱えなくなっていました。
ところがチェキはそんな概念を払拭して、若い女性のインスタ向きに、可愛く、手軽で、簡素で安価というコンセプトで開発されました。
※経営も同じで、その道を見極めれば見極めるほど、オーバースペック顧客を生み出しがちとなり、社会と解離していくようになります。
特に現代は人口も大きく減少し出しており、人口構成も大きく変化しています。
いままでの「人口増加」を前提とした経営モデルではうまく行かなくなっています。
(3)破壊的イノベーションが成立する条件・特徴
では、これら『破壊的イノベーション』が成立する条件や特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
≪破壊的イノベーションが成立する条件・特徴≫
1.ニーズはあるが、スキルやお金がない顧客市場がある
2.このような顧客は従来品と比較しないので、従来品ほど性能が良くなくとも購入する
3.だれでも使える
4.新しい流通経路や利用状態を創造する など、あげられます。
たとえば、最近注目されるものとして『クラウドコンピューティング』があります。
1.の条件
→もう、サーバーを自社で持つ必要はなく、驚くほどの低価格で利用できます。
2.の条件
→パソコンのスペックもそこそこあれば、それでOKです。
3.の条件
→メーカーや量販店経由ではなく、インターネット環境さえあれば誰でも利用できます。
4.の条件
→インターネット経由でインストールや設定ができます。
見事に破壊的イノベーションが成立する条件が揃っていますが、ただ問題は私たちのリテラシーです。だれにでも簡単に使えるか?というところに少々ネックがあるようにも思えますが、『新市場型破壊的イノベーション』として成長していくと思われます。
クリスチャンセンはこの『破壊的イノベーション』の追求には、「企業には不均等な意欲が
あるので、破壊的イノベーションは別組織で追求すべきだ」とアドバイスしています。
多くの企業は、『持続的イノベーション』と『破壊的イノベーション』を、同じ組織の中で
追求しようとしますが、それが失敗の原因だということです。
なぜなら『持続的イノベーション』は組織にとって花形ですが『破壊的イノベーション』は
まだその時点では、日陰の組織だからです。
したがって、従来の組織が『破壊的イノベーション』を妨げるので、別組織にせよということです。
『イノベーションのジレンマ』はあまり馴染みのない経営理論かもわかりませんが、私たちが犯しがちな「強み伝いの経営」に対し
強い警鐘を鳴らしています。強み伝いの経営だけをしている以上は、いずれ市場から退場する日が来るということです。
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戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。
その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
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