2回に渡って、『(全部原価計算方式)損益計算書』、『直接原価計算方式損益計算書』
と説明してきました。
今回はそのまとめをお届けします。
損益計算書には『6段階の収益』と『5つの費用』が示されていると説明しました。
<6段階の収益> <5つの費用>
①売上高 ①売上原価
②売上総利益 ②販売費及び一般管理費
③営業利益 ③営業外収益と営業外費用
④経常利益 ④特別利益と特別損失
⑤税引前当期純利益 ⑤法人税等
⑥当期純利益
収益について大事なのは営業利益までです。
費用について大事なのは販売費及び一般管理費までです。
(1)損益計算書の見方
①売上高の基本は「前年と比較して見る」ということです。
そして大事なことは「変化に対して敏感な反応を示す」です。
「機敏な反応」とはよく言われる「ともかくやってみようよ」という、闇雲に思いついた
行動を勧めているのではなく、よく考えて、出した仮説のある戦術を素早く展開するとい
う意味です。つまり、熟慮と今の政府に足りないスピード感です。
さらにこれからは計画と比較するということが非常に大事です。
この計画と比較するということは、もはや常識化していることに気づきましょう。
②売上総利益は「利益率と利益額を見る」ことです。
一昔前までは利益率が重要と言われていましたが、社会は成熟化していますので、
利益の増減にも敏感な感性を持たねばなりません。
③営業利益は「利益率を重視」しなければなりません。
今回の新型コロナ感染拡大の影響で、つくづくと営業利益が赤字のようでは、
商売は続けていけないと強く実感された事業者は多くおられると思います。
これからの事業はこの営業利益率を、如何にして『10%』以上を確保するかが
大事になっています。
ここまでが大変大事なことであり、経常利益以下は営業利益をそこそこ残せれば、それなり
の利益が確保できます。もし、そうでないならば、それはどこかで無茶な事業をしていると
いうことですから、それを改めましょう。
(2)読み方・考え方
①売上高は、事業資金の源泉「水源」であることをよく認識しましょう。
従って、前年より減少しているならば、それは死活問題に向かっているという感覚で
対処しなければなりません。
売上は「単価×数量」で成り立っていますから、改善するには単価を上げるのか、
数量を増やすのかのどちらかということです。
自社にとって、単価とは、数量とは、をよく考え、対策を練り、そして大事なことは
「実行・実践」です。
②『売上総利益』は会社が努力をしてつけた「付加価値」です。
従って、原価を抑える努力と、訴求方法や機能などの創意工夫によって付加価値を
より大きくすることが可能だという考え方も併せて持ちましょう。
③『営業利益』は「本業の利益」です。
ですから「営業赤字は本業として失格」という厳しい見方をする必要があります。
従って、何が何でも、経費節約などの社内努力によって黒字化する必要があります。
ただ、費用は削減一辺倒ではなく、「活かす」という考え方がさらに大事です。
削減だけでは組織風土は縮まります。
活かそうというプラス思考が組織風土に活力を与え、その効果は削減と比べれば、
無限の大きさとなります。
④『経常利益』は「本業による最終利益」です。
しかし、この段階でどうのこうのするというより、営業利益までで経営は決まります。
ただ唯一、リスケなどにより営業外費用を抑え、経常利益を改善するということもでき
ますが、それはもう既に「事業は緊急事態ステージにある」ということを示しています。
この他にも、『税引前当期純利益(損失)』、『当期純利益(損失)』がありますが、
これらに対する読み方、考え方というのはありません。
いま一度、通常の損益計算と直接原価計算の損益計算の違いを図で確認してみましょう。
《通常の損益計算書》 《直接原価計算の損益計算書》
図では最終利益(営業利益と貢献利益)は同じ大きさに見えますが、
実際は「棚卸資産の増減」分だけが違ってきます。
通常の損益計算書では期末棚卸資産が多くなれば利益が増えて、
期末棚卸資産が少なくなれば利益は減りますが、
直接原価計算の損益計算書では当期の仕入で考えますので影響を受けません。
このように直接原価計算による損益計算書は、その事業年度単位で事業の付加価値である
限界利益がクリアに掴め、創出した付加価値をどのように分配したかが明確になります。
したがって「期間損益」とも呼ばれますが、いろいろな利益概念を設定すれば、
業績評価などにも使えますので、活力ある組織作りにも活用できます。
なお直接原価のことを聞かれた方もあると思いますが「ダイレクトコスト」といいます。
今回の新型コロナの影響で事業をこれまでの延長線上だけで考えていてはダメだと思われた方は多くおられると思います。それが一番貴重な「今回の教訓だ」と思います。
その意味ではこの戦略的な直接原価損益計算書を活かして自社損益の真実を知るとともに、業績責任体制を構築し、組織に活力をチューンアップされてはどうでしょうか。
ともかく、自社の損益についてこれまでの「既成の壁」を突き破り、新たな発想かどうかは別にしても、「ちがう発想」で考えることが、業種業態を問わず、これからの時代に対応していくためにもっとも大事なことだと思われます。
このようなことを考えながら会計をすると、会計で会社を徐々に強くできます。
いかがでしょうか、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものだと思われませんか。
少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを示しています。
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