会計で経営力を高めるシリーズ 純資産

第12回会計で経営力を高めるシリーズ『純資産』

さて、ここまで、資産から負債へと説明をしてきましたが、「貸借対照表」最後の説明は

「純資産」です。少し以前までは「資本」と呼ばれていましたが、それだと自己資本も他人

資本もありますので、現在では「純資産」という呼び方に統一されています。

今回は、そんな「純資産」について説明します。

 

1 純資産とは

純資産とは「自己資本」のことですが、その算出の仕方は資産と負債の差額、つまり「純資

産=資産ー負債」で求められます。決して、自己資本を加算して計算されたものではありませんから、必ず、資産と負債・純資産は一致し(資産=負債+純資産)、よって、貸借対照

表のことをバランスシート(Balace Sheet)と呼びます。

では、純資産にはどのような項目があるのでしょうか。

 

2 純資産の項目

純資産は「株主資本」と「評価・換算差額金」及び「新株予約権」の3つに大別されます。

(1)株主資本とは

株主資本とは、株主からの出資金です。

上場企業や大企業であればいろいろな人や組織が株主になりますが、中小企業の場合は一般

的に経営者のみですつまり、中小企業には投資家などの利害関係者はいません。ですから上場企業・大企業の会計資料の読み方と中小企業の会計資料の読み方は大きく異なります

一般の会計書籍は、上場企業や大企業の経営者・社員に向けて書かれていますので、中小企

業者にとってはあまりピンとこないし、やたら難しいし、「煙に巻かれたようであまり実務には役に立たない」という理由がここにあります。

株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式などから構成され、「繰越利益剰

余金」は利益剰余金の中の一部です。

 

(2)評価・換算差額金とは

評価・換算差額金とは、株式などの有価証券について、購入した時の価値と現在の価値の差

額です。中小企業ではほとんど使いません。

 

(3)新株予約券とは

新株予約権とは、あらかじめ決められた価格で株式を取得できる権利のことをいいます。

これも中小企業ではほとんど使いません。

 

中小企業で必要な純資産項目は
基本的に株主資本の「資本金」と「繰越利益剰余金」だけ!

 

 

3 純資産の読み方

純資産は、会社の資産の中でも最も大事な資産なのですが、それにしてはあまり見られるこ

とのない資産です。しかし、会社は総資産が多いからよいのではありません。

確かに総資産は会社の規模や大きさを示す一つの指標ではあるわけですが、企業経営体質的

な良さを示すものではありません。企業経営体質的な良さや安全性は、「純資産の多さ」と

「手元資金の豊富さ」に依存することを忘れないようにしましょう。

 

企業経営体質の良さと安全性は
「純資産の多さ」と「手元資金の豊富さ」!

 

 

そこで「純資産」をどう読むべきか?! それは次の3点にまとめられます。

(1)純資産が多いか、少ないか

純資産は先ほど説明したとおり「資本金」と「繰越利益剰余金」です。

資本金は基本的に会社設立以来不動ですので、純資産の増減は繰越利益剰余金によってもた

らされます。繰越利益剰余金とは、毎期毎期の当期純利益の積み重ねです。つまり、毎期毎

期、黒字経営を続けることが、純資産を多くする秘訣です。

ごく平凡な結論ですが、なかなかこれを続けられる会社は意外と少ないのです。

 

会社の健全性は「黒字経営」という凡事徹底を続けること!

 

 

なお、繰越利益剰余金がマイナスとなり、資本金を超えた状況を「債務超過」といいます。

債務超過とは、総資産より負債が多いこと状態を指しており、仮に総資産も負債も同じ価値

基準で評価すれば「借金分さえの財産もない!」という状況です。

 

(2)純資産をどのくらい手元資金で持っているのか

いくら純資産が豊富にあっても、それがすべて設備などに回り、手元資金がなければ非常に

安定性のない経営と言えます。今回のコロナ感染拡大の影響による中小企業の状況を考える

と、よく理解できます。

したがって、純資産のある程度は手元資金として持ちたいものです。理想的には自己資本比

率を50%確保したうえで、純資産額の50%程度は手元資金として持ちたいものです。

 

(3)純資産の利益率(ROE)はどれくらいか

「ROE」はよく一般の会計書に出てくる用語です。それによく似た用語として「ROA」

という用語もあります。ROEとは、Return On Equityの略で、自己資本の効率「自己資本

利益率」という意味です。

この指標はもともと株式投資をしている利害関係者がいる場合に株式投資家にとっては重要

な指標ですので、その関係で経営者にとっても関心を持つべき重要な指標になっています。

しかし先ほども述べたとおり、中小企業には投資家などの利害関係者はいませんので、その

ような関心は不要です。またあまりにも自己資本額が少ないですから、それによって利益率

を測ったところであまり意味はありません。それよりも関心を持つべきはROAです。

ROAは、Return On Assetsの略で、資産の効率「総資産利益率」という意味です。

事業は、雇用と納税が究極的な目的といえますが、そのためにも稼がなくてはなりません。

その意味でROAに関心を持つことは重要です。ROAは理想としては20%程度は維持したいものです。

 

 

 

このようなことを考えながら会計をすると、会計で会社を徐々に強くできます。

いかがでしょうか、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものだと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを示しています。

会計を楽しみながら、現代の荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?


掲載日:2020年5月6日 |カテゴリー:会計識字率

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