「引当金」って、なんだか難しそうな言葉ですし、
現に引当金勘定を利用されている中小企業は多くないかもわかりません。
しかし、家計でもこんな心配や備えをしませんか?
将来、子供たちが学校に入るので教育資金を貯めよう・・
将来、一戸建てを立てるために住宅資金を貯めるよう・・ など
引当金はそんな性格にも似た勘定科目ですが「強い会社」にするためには重要な科目です。
引当金とは、将来生じるかもわからない”リスク”や”資金需要”に備えて準備をするための
科目なのです。
そもそも強い会社とは、営業に強い、人材力があるなどのことを取り上げて言われますが、
究極的には「資金力がある会社」が強い会社です。
現在の新型コロナウイルスの企業経営に対する影響を見ればよく理解できると思います。
会社はおカネがないと事業を継続することはできません。
中小企業の経営安全性のバロメーターは、大企業とは違い「手元資金の豊富さ」です。
今回はそんな「引当金」について説明します。
そもそも中小企業で「引当金」を使用されている企業はあまり多くないと思われます。
それは中小企業の会計を指導する立場である税理士事務所に依頼されている場合でも、
多くの場合は、(何度も言いますが)会計をほとんど「決算・申告」のためだけに
位置付けて会計を指導されている場合が多いからです。
会計は本来「事業の経営状況を正しく捉える」ために行うものです。
そのことを、経営のための会計である「管理会計」といいますが、
この引当金はその真骨頂の一つです。 では、引当金とは何でしょうか?
(1)引当金とは
かんたんに言えば、万一のときに備えて、そのとき必要になると思われる金額を
負債として捉え、管理しておくことです。
経営を続ける上でのリスクを金額に換算し直し、
その資金額を日々の経営の「資金調達」と見立てて管理しているということです。
したがって引当金は、「負債勘定」の「流動負債」として分類されているわけです。
しかし本来の意味では、引当金を設けるだけでは不十分です。
いざというときは、そのお金を支出できないと意味がありませんから、
それに見合う現金又は預金を持って置かねばなりません。
ですから、引当金とその準備資金(おカネ)があって
初めて「リスク管理ができている」ということになります。
ここで「引当金」の会計的な定義を確認しておきますと、
「企業会計原則」の注解18に次のように定義されています。
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将来の特定の費用又は損失であって、
その発生が当期以前の事象に起因し、
発生の可能性が高く、
かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、
(注釈:この4つが引当金に計上できる条件です)
当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰り入れ、
(注釈:金額の見積)
当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
(注釈:会計上の管理の仕方)
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(1)貸倒引当金
貸倒引当金とは、売掛金などの売上債権が回収できなくなる(「貸し倒れ」といいます)
リスクに備えて、その見込額を費用または損失として計上する科目です。
〔具体的な仕訳例〕
①貸倒引当金を見積もって計上します
借方:(費用)貸倒引当金繰入 200万円 貸方:(資産△)貸倒引当金 200万円
摘要:当期末貸倒引当金計上
②貸し倒れが発生しなかった場合は貸倒引当金を取り崩します
借方:(資産△)貸倒引当金 200万円 貸方:(費用)貸倒引当金繰入 200万円
摘要:前期分取崩し
③貸倒れ500万円が発生した場合(引当金より300万円も多かった・・)
貸方:(資産△)貸倒引当金 200万円 貸方:(資産)売掛金 500万円
摘要:○○会社売掛金貸倒れ
(費用)貸倒損失 300万円
摘要:○○会社売掛金貸倒れ
(2)賞与引当金
賞与引当金とは、翌期に支給される賞与のうち、本来は今期負担分となる部分を
見積計上する科目です。
たとえば、3月決算で、賞与は7月と12月という場合で
7月の賞与はその対象期間が12月~5月、12月の賞与は6月~11月であったとします。
この場合、翌期7月に支給する賞与は、12月~3月分は本来今期負担分ですから、
12月~3月分にあたる賞与額を、月数案分などして、賞与引当金を計上します。
〔具体的な仕訳例〕
①来期に支給しますが今期分にあたる賞与額を賞与引当金を計上します
借方:(費用)賞与引当金繰入 400万円 貸方:(負債)賞与引当金 400万円
摘要:当期末賞与引当金計上
②7月に賞与を支給しました
貸方:(負債)賞与引当金 400万円 貸方:(資産)現預金 600万円
摘要:7月賞与支給
(費用)賞与 200万円
摘要:7月賞与支給 ※注釈:この200万は今期の4月・5月分ということです。
(3)そのほかの主な引当金
上記の2つの引当金のほかに、退職給与引当金・修繕引当金・役員賞与引当金など
数多くの引当金があります。
自社に関係がありそうな引当金については、ぜひ、お調べになることをお勧めします。
詳しい説明はしませんが、実は引当金は税法と密接な関係がありますので、
それぞれの企業が必要に応じて好き勝手に引当金を設けることはできません。
そこでよく似ている考え方で経営管理に応用できる考え方が『準備預金』です。
企業経営には貸し倒れや賞与支給の他にさまざまな備えておくべきおカネがあります。
例えば、法人税等の納税資金、消費税の納税資金、あるいは設備投資資金、そして万一
の余裕資金などなど。
それらは本来、引当金と同様に備えておくべき資金なのですが、税法上の規制で引当金
としては計上できませんので、預金科目を口座別管理にして管理することをおススメし
ます。
〔口座別管理イメージ〕
普通預金残高 620万円
A:運転資金 300万円
B:賞与資金 200万円
C:法人税資金 20万円
D:消費税資金 100万円
このようなことを考えながら会計をすると、会計で会社を徐々に強くできます。
いかがでしょうか、会計は意外と楽しいもので、経営に役立つものだと思われませんか。
少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを
示しています。
会計を楽しみながら、荒波に強い会社になるよう取り組みませんか!?
掲載日:2020年4月15日 |カテゴリー:会計識字率
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