今回から「会計で経営力を高めるシリーズ」は、他人資本へテーマを移します。
他人資本とは、会社が自社以外から調達している「資金」のことを指し、
会計では『負債』といいます。
今回はその中で、『買入債務』について説明をします。
なお、ここからは簿記形式の説明も加えることにします。
(1)買掛金とは
多くの事業では仕入れした際、その都度代金を支払うのではなく、
「掛け」で仕入を行います。
⇒(借方)商品仕入 / (貸方)買掛金
仕入先では取引先ごとにまとめ、月末なり、翌月月初なりに「請求書」という形で
支払代金をまとめて取引先へ請求します。
その代金を支払うまでの間の仕入で発生した債務を『買掛金』といいます。
仕入をした会社から見れば、仕入れ商品を受領しているにも関わらず代金を支払っていない
のですから、仕入代金分を無利子で仕入先から借りているのと同じ状況です。
(2)支払手形とは
会社は仕入先から届いた請求書に対して
(a)現金で支払う (b)銀行振込する (c)手形で支払う のいずれかの方法で決済します。
⇒(a)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)現金
(b)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)預金
(c)の場合 (借方)買掛金 / (貸方)支払手形
現金支払ならびに銀行振込の場合は、支払った時点で「手元資金」は減ります。
それに対して手形で支払った場合は、手形期日までは手元資金は減らず、手形期日になって
初めて預金が減ることになります。
つまり、請求書が届いてからさらに無利子で仕入先から借りる期間が延びることに
なりますので、手形を使えば「資金繰り」はラクになります。
■ここに注意!
支払手形による決済は、無利子による借入期間が延びることになりますが、
良いことばかりかといえば「そうではない!」ということです。
なぜなら、手形期日が到来すると、有無を言わせず銀行口座からその金額が引き落とされ
ますので、もし口座にそれを引き落せるだけの残高がなければ『不渡り』になるからです。
この不渡りが6ヵ月間に2度あると『銀行取引停止』となります。
銀行取引停止になると、当然、会社は倒産に追い込まれます。
「うちはそんなことはないよ」と言われるかもわかりませんが、
多くの倒産の直接原因は『銀行取引停止』なのです。
現金支払や銀行振込であれば「チョッと忘れていた、すぐに払います!」とか「少し待って
くださいますか」で済みますが、支払手形は『待ったナシ!』です。
不注意でも2回続けば、それで「倒産」です。
この『手形取引』という商慣行は日本独自のものなので、海外との取引が普通になって
いる中で『手形取引』は少なくなっていることも事実です。
ここで大事なことをご紹介しましょう。
それは月次試算表で自社の経営を読む『3つのポイント』です。
ポイント1 過去と比べる ⇒もっともらしく表現すると「時系列比較」です。
ポイント2 計画と比べる ⇒「目標値比較」です。
ポイント3 関連する項目と比べる ⇒「経営分析」といいます。
特に自社の経営状況やバランスを読むにはポイント3「経営分析」が大切になります。
そのために用意されているのが標準的な経営分析体系ですが、覚えられたら覚えた方がよいのでしょうが、実務では覚える必要はありません。
考えればいいのです・・「この項目(科目)に関係のある他の項目(科目)はどれか?」ということです。自社に意味ある見方ができればそれでいいのです。
それがノウハウになっていきます。
チョット横道にそれましたので戻ります。
(ただそのことを頭においてお読みください・・)
(1)買入債務から仕入の状況を読む
仕入について再検討が必要かどうかは、買入債務の残高から読み取れます。
具体的には売上高と比べるとその判断ができます。それが『買入債務回転期間』と呼ばれる
ものです。
⇒ 買入債務回転期間 = (支払手形+買掛金) ÷ 1日あたりの売上高
又は 支払基準の買入債務回転期間 = (支払手形+買掛金) ÷ 1日あたりの仕入高
1日あたりの売上何日分に相当する買入債務があるのかを確認することで、
仕入に関する検討できます。
また、売上には粗利が含まれていますから、1日あたり仕入で比べると
より正確に判断できるようになります。
あまりにもこの期間が長すぎると、仕入先からの「信頼」に問題を生じさせているかも?
という疑念もありますし、また仕入自体が多すぎるのではということもあるのかもわかり
ません。
なお「経営に活かす」という観点から考えれば、仮に複数の仕入先があると仮定した場合
全体で検討してもあまり具体的な対策は見えて来ません。
各仕入先ごとの買入債務や1日あたりの仕入高などがわかるようになると、かなり明確な
対策を立てることができます。
(2)買入債務の決済分析
買入債務は仕入よる債務ですが、その対照的なものとしては売上債権が挙げられます。
売上債権は買入債務が発生した後に生じるものであり、また粗利益も含まれていますので、単純化するとその関係は買入債務1に対して売上債権は2程度の関係となります。
⇒ 売買比率 = 売上債権 ÷ 買入債務
さらに買入債務の支払に関して考えれば、手元資金はそれ以上あることが必要です。
⇒ 手元資金買入債務比率 = 手元資金 ÷ 買入債務
このように、買入債務を売上債権や手元資金などと比べてみると、さまざまな検討が
できます。
ただその判断尺度に関しては、企業によって取引条件や経営状況による保有すべき手元資金の額も違いますので、各社で考える必要があります。
このようなことを考えながら会計資料を見ていると会計で会社が徐々に強くなってきます。
どうでしょうか、会計は意外と楽しいもので経営に役立つものだと思われませんか。
少しでもそのように思われてきたのならそれだけ貴社の経営力が高まって来ていることを
示しています。
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掲載日:2020年3月18日 |カテゴリー:会計識字率
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