会計で経営力を高めるシリーズ 手元資金

第1回会計で経営力を高めるシリーズ『手元資金』

 

1 手元資金とは何か?

それはご存知のとおり、現金と預金、そして売買目的の有価証券です。

会計学的にはそうですが、しかし実務では売買目的の有価証券を保有されている中小企業は

ほとんどありません。

したがって、「手元資金とは、現金と預金」と理解してください。

別名、キャッシュとも言われすが、また会計では手元流動資産とも言います。

この手元資金の特徴は、いつでも支払手段として使えることです。

 

書籍では、手元資金について次のように解説されています。

しかし、それは上場企業など大企業に対する解説でです。

中小企業では潤沢に手元資金を持てれば、それに越したことはないことを知りましょう。 -----------------------------------------

 手元資金とは、代金の支払いなどにいつでも使用できる流動性の高い資金の総称である。

 現金や普通預金がその代表だが、満期が3か月以内の有価証券や定期預金等を加える場合

 もある。

 手元資金を潤沢に保有することで不測の事態に対処しやすくなるが、利子がほぼ付かない

 ため、「必要以上の確保は資金効率の面で望ましくない」とされる。 -----------------------------------------

 

 

2 手元資金は多ければ多いほど良い

 上記の通り、書籍では「必要以上持っていることは資金効率の面から望ましくない」と

解説されています。

しかしそれは、一般市場から資金を調達している大企業に対するコメントです。

経営者自らが資金を提供をしている中小企業の場合はそうではありません。

そのことをよく理解しましょう。

 

中小企業においては、少しでも多くの手元資金を持つことが好ましい! 

 

 

3 手元資金の常識

(1) おカネの流れは、支払が先で入金は後になる

 事業では販売するために、まず仕入れをします。 そしてそれを販売します。

したがって、現金商売でない以上は、仕入代金の支払が必ず「先」になり、販売の入金は

必ず「後」になります。

経費の支払や給料の支給もまた同じです。その期間の販売代金の入金の前に支払わなくては

なりません。

 

この販売代金の回収前に必要な資金のことを「運転資金」といいます。

このことは、よく覚えておきましょう。

 

 ですから、手元資金は常に1カ月分程度の仕入代金や経費代金、給料支払分程度は、

最低でも持っておくようにしなければなりません。

その支払は本来、販売代金でできればいいのですが、その時にはまだ入金されていません。

ですから、少なくとも売上1カ月分程度の手元資金はあるようにしなければならないという

ことです。

 

しかし多くの中小企業ではなかなかそのようにはなっていません!

 このことは偶然にそうなってればよいというものではなく、経営者がそうなるように

経営の舵を切らなくてはならないということです。さらに「経営力を高める」う意味では、

2~3カ月分の手元資金はあるようにしたいものです

 会計に基づく経営をしていればそのことがわかります。

 

(2) 当期の初めの手元資金より、いまの手元資金のほうが少なければ、それは資金不足!

 資金管理といえば、何か難しい管理をしなければならないと思い込まれている経営者が

多いようです。 しかし、そんなことはありません。

 簡単に言えば、期首にあった手元資金より現在の手元資金を増やしていく管理・経営を

するということです。

もしも現在の手元資金が期首より減っているとすれば、それはこれまでの損益ではおカネを

持ち出している経営をしているということになり、つまり、資金不足であることを示しています。 期末に向けそれを解消できる経営に舵を切らなければいけません。

なぜなら、手元資金が無くなれば、経営が続けられないからです。

 

 そのためには月次決算をしていくことが大切です。

 月次決算を行えば前月までで手元資金が減っているかどうか、わかりますから早めの対策

が打てます。しかし、これを年一決算していると、勘に基づいたこれまでの経営を繰り返す

しかありません。

 現在は”勘”に基づく経営では経営を続けることは難しくなっています。こういうと誰しも

頷かれるわけですが、頷くだけではなく、考え方を変える必要があります。

 また月次決算していても、月次試算表を経営者が見ていなければ、それも同じことです。

 

月に一度、月初にはじっくりと月次試算表を見る習慣をつけましょう。

それを繰り返せば、不思議に経営の状況が徐々に見えてくるようになります。

 

(3) 順調な経営であれば必ず手元資金は増えてくる

 自社の事業が順調なのか、そうでないのか、それを判断することは簡単です。

 

手元資金が増加傾向にあれば順調ですし、減少傾向にあればそうではない。

 順調にかつ無理のない販売をして、約束とおりに販売代金が回収できていれば、必ず手元資金は増加してきます。もしもそうでないならば、いくつかのことが想像できますので対処

しなければなりません。

①売れでも、販売代金の回収ができていない

②仕入が多すぎて、在庫が多く、ロスになっている

③経費の無駄遣いが多い

④安易な値引きが多い

⑤そもそも事業規模に対して売上が少なすぎる 等々

 

(4) 手元資金は自由に使っていいということではない

 手元資金が豊富にあるから自由に使っていいかといえば、そうではありません。

この中には、これから支払うべき運転資金や賞与資金、納税資金、設備投資資金などなどが

入っていると考えなければなりません。

したがってそれらに備えて、手元資金を管理することが、安定した強い経営を実現すること

になります。

 

預金を目的別に分けることが重要です。

 例えば、納税準備預金、設備投資準備預金、賞与準備預金など、資金使途別に預金を口座

別に管理をすることが大切です。 そのような考え方の会計は「管理会計」と呼ばれます。

 

4 手元資金のチェックのしかた

(1) 平均月商と比べて見る

 平均月商には赤字でなければ、仕入や経費、人件費、それに利益など全て入っていること

になります。ですから、それと手元資金を比べることで、現在の手元資金額の適正性度合が

わかります。

 自社の場合、どのくらいあればいいのか、は各経営者が決めることですが、一般的には

平均月商2~3ヵ月分の手元資金は持っておくことが大切です。

 

大事なことは、そうなるように「経営の舵を経営者として切る」ことです。

 

(2) 総資産と比べて見る

 総資産とは、資金(資本)で運用している会社の資産です。

健全な経営を続けていくためには「総資産の黄金比」なるものがあります。

①設備である固定資産は、総資産の50%以下に抑える

②在庫である棚卸資産は、総資産の5%前後に抑える

③売上債権は、総資産の15%前後に抑える

④残りである手元資金は、総資産の30%前後は持つ

 総資産の黄金比は、業種業態によって違いますので、自社の黄金比を考えてみましょう。

それに基づく経営をすれば、少々の環境の変化にも負けない強い会社にできます。

 

総資産には黄金比がある。 

 

(3) 純資産と比べて見る

 純資産とは、自己資本ことです。その自己資本をどのくらい手元資金で持っているのか、

知ることは大切です。

理屈を言えば、自己資本は現預金に入ってきます。したがって、もし何も運用しなければ

「自己資本=手元資金」となります。

しかし、現実的にはそこから設備投資に運用したり、在庫として運用したり、売掛金に運用

したりしますので、「自己資本=手元資金」とはなりません。

 ですから、決算を終えた時ぐらいは、純資産の額と手元資金の額を比べて、その状況を

確かめましょう。

それがあまりにも少なければ、内部留保に回っておらず(つまり預金できず)、何かしらに

消えているわけですから、そのことに気づくだけでも、抑制力につながります。

 

自己資本の50%程度は手元資金にあるように経営したいものです。

 

 

このようなことを考えると、会計は意外と楽しいものだし経営に役立つと思われませんか。

少しでもそのように思われてきたのなら、それだけ貴社の経営力が高まって来ていることを

示しています。 会計業務を楽しんで、積極的な姿勢で取り組みましょう!


掲載日:2020年2月12日 |カテゴリー:会計識字率

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