会計の視点 手元資金の意味

第11回の会計の視点は「手元資金の意味」です。

手元資金とは現金と預金のことであり、現預金という言い方もします。

この手元資金がないと企業は生きていけません。

したがって、経営における最重要管理項目といっても過言ではありません。

しかしその割には重要に扱われている企業は少ないようです。

ひどい場合には現預金出納帳さえ無い企業もあるようです。

企業の現預金というものはお小遣いではないのですから、しっかり管理したいものです。

今回はそんな現預金である「手元資金の意味」についてわかりやすく考えてみましょう。

 

1 手元資金にまつわる常識

1.ビジネスでは常に支払いが先になり、入金は後になる!

 事業というものは売るために、まず仕入れをします。それから販売するわけです。

 したがって、仕入れ代金の支払いが必ず先となり、売上の入金は後になります。

 そのほかにも売上入金の前に、経費や人件費なども支払わなくてはなりません。

 だから「運転資金」というものが必要になります。

 したがって、手元には1カ月分程度の仕入れ代金や経費支払い代金あるいは給料支払い分

 程度の現預金は最低でも持っておきたいものです。

2.期首現預金残高より期末現預金残高が減っていれば、資金が不足していたことを示す!

 資金管理は何か、特別の手法で管理しなければできないものと思われているかも

 しれませんが、案外簡単にできます。

 それが期首と期末の現預金残高を比較するということです。

 そして期末現預金残高が期首より少なければ、その事業年度は損益から得た資金だけでは

 不足していたことを示しており、手元にあった資金も使ったということです。

 これを月次単位で行えば、さらに緻密に行えます。

 月初の現預金残高が月末より減っていれば、前月は損益から得た資金だけでは足りずに

 手元資金にも手を付けたということです。

 このようなことをマネジメントするためにも月次試算表を早く作成することが

 重要であり、そのためには会計ソフトを利用して会計事務所に頼らない

 自社で経理ををすること、すなわち「自計化」が重要です。

3.順調な経営は必ず手元資金は増える!

 自社の事業が順調か、そうでないのかを判断することは簡単です。

 それは現預金残高の推移を見ればわかります。

 順調に販売ができて約定とおりに債権を回収できていれば必ず手元資金は増えてきます。

 もし、そうでないとすればいろいろなことが想定できます。

  ・債権回収ができていない

  ・仕入ロスが多い

  ・冗費が多い

  ・安易な値引きが多い

  ・そもそも売上が少ない などなど、いろいろ考えて経営改善しなければなりません。

 

2 手元資金はすべて自由に使っていいということではない

 手元にある現預金はいつでも支払手段に使えるので、手元資金が豊富な会社は安心した

 経営ができます。

 しかし、豊富に手元資金があるからといって、自由に使っていいものかといえば、

 そうではありません。

 その中にはこれから支払うべき給与や賞与、あるいは納税や設備投資などの資金が

 入っていると考えなければなりません。

 それに備えて手元資金を管理する経営が安定した経営を実現することになります。

 したがって、手元資金を管理するマネジメントが大変重要になります。

 

3 手元資金のマネジメント・見方

 すでに紹介したように期首と期末あるいは月初と月末の手元資金残高を確認することが、

 一番基本的な見方です。

 その他にもどのようなマネジメント・見方をすればよいのかを、一緒に考えましょう。

1.平均月商の何カ月分程度の手元資金があるのかを見る

 ビジネスでは「常に支払いが先になり、入金は後になる」という話を紹介しましたが、

 そこから考えると、支払いが先になる金額と手元資金を比べることが適正性度合いを

 見る方法になります。

 先に支払いが必要になる金額を計算するのは大変そうですが、便宜上簡単な方法が

 あります。 それは『平均月商』と比べるということです。

 平均月商とは、(赤字でなければ)仕入額や経費・人件費、それに利益(内部留保金額)も

 必ず入っています。

 したがって、それと手元資金を比較することで、手元資金有り高の適正度がザックリと

 把握できます。

 では、どのくらいあればいいのでしょうか?

 平均月商1カ月分だけではやはりチョッと心許ないですね。

 やはり最低でも平均月商の2カ月分、できれば平均月商の3カ月分程度の手元資金は持って

 おきたいものです。

 で、大事なことは、そうなるように「経営の舵を切る」ということです。

2.総資産に対する手元資金の割合を見る

 健全な経営を続けていくためには、「総資産の黄金比」というものがあります。

 それは、まず設備である固定資産を、総資産の50%以下に抑えることです。

 次に、在庫である棚卸資産は、総資産の5%前後に抑えることです。

 そして売上債権は、総資産の15%前後に抑えることです。

 そして残りが現預金となり、総資産の30%前後は持ちたいものです。

 書籍等では「現預金を多く持つ企業は資金を活用していない」と書かれていますが、

 それは上場して多くの投資家を抱える企業での話であり、中小企業に限定すれば、

 投資家はいませんので現預金を多く持つ経営が安心した経営ができる条件です。

 惑わされないようにしましょう。

 また「総資産の黄金比」は業種業態によってもちろん違いますので、自社の黄金比を

 考えてみましょう。

 それに基づく経営をすれば、少々の環境の変化には負けない強い会社にできます。 

3.繰越利益剰余金と手元資金の割合を見る

 理屈では繰越利益余剰金は最終的に現預金に入ってきます。

 したがって、繰越利益剰余金と手元資金はイコールになるはずです。

 しかし現実的にはそこから設備投資に運用したり、賞与に回ったり、税金に回ったり

 しますのでイコールにはなりません。

 ですがせめて決算の時ぐらいは、繰越利益剰余金と手元資金を比較して確認しましょう。

 あまりにも少ないと利益のほとんどが内部留保に回らず(つまり預金できず)に、

 何かしらに消えていることになっているわけですから、それに気づくだけで、

 その抑制につながります。

 できれば繰越利益剰余金の50%程度は手元資金にあるように経営したいものです。 

4.手元資金を分けて管理する

 一番おススメは、「手元資金を分けて管理する」ということです。

 現金は日常の細かい支払手段用の資産なので分ける必要はありません。

 しかし、預金はそうではありませんので、目的別に分けて管理することがベターです。

 1つめは運転資金用です。

 月次売上高の1カ月分から2カ月分程度あれば良いと思われます。

 2つめは賞与用です。

 大体の支給賞与総額はわかっているはずですから、その程度は毎月積み立てましょう。

 3つめは消費税納税用です。

 これも大体掴めるはずですから、その程度を積み立てるようにします。

 4つめは法人税用です。

 これも大体掴めるわけですから、その程度を積み立てるようにします。

 5つ目は設備投資用です。

 これは少なくとも毎月の減価償却費程度は積み立てるようにします。

 これらを口座別に管理にして、預金を管理するようにすれば、堅実な経営ができます。

 

今回で「会計の視点」は最後となります。

このコラムを通じてお伝えしたいことは「意味ある比べ方」を考えましょうということす。

実はそれが立派な経営分析なのです。

一つ一つの会計の意味を知り、強い会社にマネジメントする方法なのです。

 

 

このようなことを知って経営していれば、経営はすごく安定してきます。

会計は本来このようなことを経営者に伝えることが目的なのです。

 

 


掲載日:2019年11月27日 |カテゴリー:会計識字率

本店:〒355-0062 東松山市西本宿1968-1
坂戸:〒350-0233 坂戸市南町35-20
0120-634-154
営業時間 8:30~17:30 定休日 土・日・祭日