会計の視点 売上高の意味

 

第4回の会計の視点は「売上高の意味」です。

売上がないと事業は継続できない、だから多くの経営者は経営の管理は二の次にして、

営業活動に力を入れます。

しかし一方、倒産させている経営者の多くは、売上を増やすことだけに関心を持ち、

経営の管理は放棄しているという報告も数多くあります。

ここに、経営が破綻する大きな落とし穴があるようです。

 

1 売り上げただけでは会社は続かない

 確かに、売上は事業を継続させていくうえで無くてはならないものです。

売上が減り続ければ、やがて会社は倒産してしまいます。

しかし、売上が上がれば会社は続くのかといえば、実はそうではありません。

売上とは債権が発生しただけの状態であり、取引先がその代金を支払ってくれないと

事業資金にはなりません。

なのに売上債権さえあれば、安心している経営者が多く見られます。

売上は、①売り上げて ②請求書を出して ③代金を回収して、始めて事業を継続させる

「資金」となるのです。

 こう書けば、当たり前だと思われますが、意外と債権回収に無頓着な経営者が多いよう

です。少々売上債権額が増えても「あれはすぐ振り込まれるよ」と思っている経営者が多く

います。そこに大きな落とし穴があります。

 経営者がそのように杜撰な姿勢であれば、取引先からも杜撰な会社だと見られ、

また営業担当がいれば、営業担当者もそういう姿勢となり、それがやがて「企業体質」に

なってしまいます。

 

2 売上高と売上債権の関係

 当月の売上代金は翌月に回収するという「翌月回収」の場合は、次のようになります。

毎月50万円の取引があるA社・・

 今月も50万円の売上があれば、先月の50万円は今月に回収されているので、

 今月末の売上債権残高は50万円となります。

 これを毎月繰り返すこととなります。

しかし、1回支払が滞ると、月末の売掛債権残高は100万円となります。

 このように一番多いと言われる「翌月回収」の場合は、当月売上高と月末売上債権残高と

ほぼ同額となります。

2か月後の代金回収しているのであれば、

 月末売掛債権残高=前々月売上高+前月売上高 と月次売上高の2倍となります。

この法則性をよく理解しましょう。

 もちろん回収サイトが取引先によって違う場合があるでしょうが、ざっくりと「あるべき売上債権残高」は掴めます。

それと比べて、自社の売掛債権残高はどうなのかは、経営者が管理すべき事項です。

実際、管理といってもそんなに難しいことではなく、支払期日までに入金があったか、

ないのか、を知るということです。

入金がない場合は、直ちにアクションを起こすということが非常に大事なポイントです。

 

3 「入金がない」とはどういうことなのか

 さてところで、入金がない、支払がないとは、一体どういうことなのでしょうか?

ひょっとしたら、ただ忘れただけなのかもわかりません。これだと幸いですが、すいぶん

ルーズな得意先ですね。

しかしこれが常態化すると、いつの間にか、回収は翌月末から翌々月末に変更されてしまう

ことになりかねません。

 次にひょっとしたら、資金繰りが苦しくて支払をされていないのかもわかりません。

これだと大問題です。

ともかく、相手がどのような状況なのかは、連絡をしないことにはわかりません。

 だから、「直ちにアクションを取ることが非常に大事なポイント」なのです。

私たちはそのような行動をとると、取引先に対して信頼を損ねるような気がして、

ついつい遠慮しがちなり、いつまでも待ってしまいます。

 しかし、それは大きな間違いです!

連絡をすることで、相手にうっかりミスを気付かせることになります。

さらに、相手に「しっかり管理している会社だな」と印象付けることにもなります。

そう印象付けられたら支払順位が上がります。

このことが今後のスムーズな入金を促すことにもなり、ひいては信頼感に変わります。

それに対し放置しておくと、不良債権になる恐れがあります。

 いずれにせよ、直ちに連絡をして入金予定日を確認し、再度その入金予定に確認をし、

もしまた支払がない場合には再度連絡して、入金予定日を改めて確認する必要があります。

このことを繰り返さないと、本当に不良債権になってしまいます。

またこのことが繰り返されるようであれば、今後の取引について言及する必要があります。

少なくとも、支払が済むまでは、次の取引は控えることがビジネスの基本対応です。

 

4 売上が増えるということはどういうことなのか

 次におかげさまで売上が増えているとします。

さて、それはどのようなことを招いているのでしょうか。

 売上が増えるということは、値上げや価格改定による売上増以外は、仕入も増えていると

いうことになります。

 仕入が増えているということは、現金販売でない限り、先に、その増えた仕入代金を支払わなくてはなりません。

 また売上が増えれば、残業代や新しい従業員の採用など人件費が増えることになります。これも先に支払わなくてはなりません。

 そのほかに、目に見えにくい色々な経費も増える可能性があり、これも先に支払わなくてはなりません。

 ここまででわかりますか?

ビジネスの基本は「支払が先となり、おカネは後でいただく」ということです。

売上が増えると、仕入も人件費も経費も増えて、それらの代金を先に支払わなくてはならないということです。

つまり「売上代金が入るまでは資金繰りは厳しくなる」ということです。

 

 ここに業績低迷している経営者がよく嵌まる「落とし穴」があります。

経営状況が厳しいから売上を増やさなければいけないと考える経営者が多くいます。

しかし、今売れないのだから、やるべきことは売上を伸ばすことではなく、体制の立て直し

です。売れるように体制を変えることです。

 会計事務所など身近な助言者に「社長、売上が減っていますから、売上を増やさないと

いけませんね」と言われその気になるのではなく、なぜ売上が減っているのか?その本当の原因を確かめ、その対策を講じることが売上を増やすことより先です。

 

5 売上に必要な資金を知る

 最後に売上活動に必要な資金について考えてみましょう。

 売上活動で運用している資金は「売上債権」と「棚卸資産」です。

これだけが「資金」として必要ということです。

 逆に売上で調達している資金は「買入債務」です。

これだけ仕入先から資金として調達しているということです。

 その差額が「必要資金」です。つまり、「(売上債権+棚卸資産)-買入債務」です。

その差額程度の「現預金」がないと、何とか回収代金をしてそれに回すとか、自らのお金を

持ち出すなどという自転車操業に陥り、場合によっては銀行借入返済も滞り、倒産することになってしまいます。

一度、自社の売買活動に関する必要資金を計算し、それだけ現預金が十分あるか確認して

みてください。

 さらにその必要資金を自社の年商で割れば、売上に対する必要資金体質がわかります。

例えば、それが10%であれば、その会社は「売上100万円増やすのに10%に当たる

10万円ほどの資金が余分に必要になる」ということになります。

 

 

このほかにも売上高に関してさまざまな意味があります。

それらのことを理解して作成した会計資料を見れば、会計を経営に活かすことができます。

勘ももちろん大切ですが、そのうえに客観性を重ねて経営判断をし、経営課題を見つける

ことが、今の時代には大切です。

その意味では帳簿作りとして会計を会計事務所に丸投げしていることは大問題ですし、

機会損失だとも言えます。

 


掲載日:2019年10月9日 |カテゴリー:会計識字率

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