『消費税10%』の第7回目は「消費税の納付資金」です。
消費税が10%に引き上げられたら消費税納付額はどのように変化するのでしょうか?
またインボイス制度が導入された際に課税事業者を選択した場合
納付資金はどうすれば良いのでしょうか?
などについて今回は考えます。
令和元年10月より消費税率は8%から10%へ上がり、その上げ幅は1.25倍と
なります。
それによって消費税の納付額はどう変わるのでしょうか。
年商が税別5000万円、原価率が50%の企業事例で考えてみましょう。
(1)現在消費税8%の場合
消費税率は8%ですから売上5000万円で仮受する消費税額は「5000万円×8%」
で、400万円となります。
一方、仕入で仮払した消費税額は仕入額が「売上高×原価率50%」ですから2500万円
となり、仕入時に仮払した消費税額は「2500万円×8%」で、200万円となります。
したがって、納付する消費税額は「仮受消費税ー仮払消費税」ですから、
200万円となります。
実際はこれに加え、経費でも消費税を仮払していますから、納付額はもうすこし少なくなり
ます。
(2)消費税10%になれば‥
同じ計算で仮受する消費税額は「5000万円×10%」ですから500万円となります。
仮払した消費税額は「2500万円×10%」ですから250万円となり、
納付額は250万円となります。
つまり、当然のことですが、消費税の納付額も1.25倍になることとになります。
(3)問題は‥
問題はこの消費税納付額は「手元資金である現預金から支払う」ということです。
一般的に中小企業の手元資金額を表す「手元流動比率」は、平均月商1ヵ月前後という
統計結果が出ています。
この事例で計算すると「年商5000万円÷12」ですから、400万円前後ということに
なります。
そのうちの半分以上を消費税納税時には消費税の支払いに当てなくてならないということで
あり、納税時には資金不足が予測できます。
実は「消費税率が上がるということは消費税納付額が増える」ことであり、経営手腕的には
手元流動性を高めるという経営力が求められるわけです。
この場合も消費税の納税資金的には同じような問題があります。
(1)経営難度が高い
しかし、その経営的難度はより高くなります。
例えば、企業の赤字経営割合です。
国税庁の発表では企業の赤字経営割合は62.6%となり、年々減少改善されてきています。
*これがアベノミクス効果といわれる一つの根拠となっています。
しかしこれを企業規模別にみて見てみますと、資本金500万円以下の中小企業では
赤字企業割合は66.1%に上がり、依然として3社に2社は赤字ということになります。
経営が赤字ということは「商売で手元資金を持ち出している」ということです。
商売で手元資金を持ち出しているわけですから、「消費税の納付額を納付する余裕はない」ということになります。
消費税の納付は法人税とは違い、経営状況に関係なく関係なく必ず発生しますので、これが
消費税未納の大きな理由となっています。
(2)対策
①経営を黒字化させる
では、対策は何か?
まず基本中の基本は、事業におけるおカネの出どころは商売自体にあるわけですから
「黒字経営」です。
それ以外では自分の資産をつぎ込むか、銀行からおカネを借りるか、それしかありません。
銀行からの借り入れは金利があるわけですから、ますます経営難度を高めます。
自分の資産をつぎ込みは会社と個人の混同です。いまの時代、そんなことはナンセンスです
し、やるべきではありません。
したがって、「黒字経営」しかありません。
これは「黒字になった」という結果論ではなく、経営を常に制御して「黒字にさせる」と
いう経営手腕です。
それをどうやって実現に導くのか‥、それは「会計」で経営を管理することです。
②資金繰り経営を実行する
資金繰り実績管理をすることも大事ですが、納税準備預金をするが大切です。
会計で経営を管理した結果、月々の仮受消費税相当の金額または仮払消費税との差額相当を
積み立てるということです。
今回の消費税改正は中小・小規模事業においては「過去の消費税改正とは違う」という認識
を持つべきだと思います。
そうでないと4年後にはとんでもない状況になりかねません。よく考えましょう。
掲載日:2019年8月28日 |カテゴリー:トピックス
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