『フェルミ推定』なんていう用語を聞いたこともない方も多いでしょうし、また聞いた方は
数学の話と思われていたかもわかりませんが、『フェルミ推定』はれっきとした経営に関係
がある用語です。
たとえば経営計画などを作成するとき、マーケットシェアを意識して策定することが重要で
すが、必ずしもマーケット規模がわかるとは限りません。
そんなときにこの『フェルミ推定』を知っていれば、「あたらずと雖も遠からず」およその
全体数値を掴むことができます。
またこの『フェルミ推定』は、思考を論理的にしてくれる訓練にもなるのです。
したがって経営そのものが、非常に論理的になってくるという利点もあります。
『フェルミ推定』とは、実際には調査することがむずかしく、捉えられない数値をいくつか
の推論のうえに論理的に展開し、その数値を推し量ることです。
この名称は英国物理学者であり、1938年ノーベル物理学賞を受賞したエンリコ・フェルミ
博士に由来しています。
この『フェルミ推定』は、コンサル企業や外資系企業の面接などで用いられていることは
有名な話ですが、欧米では学校教育で科学的な思考を鍛えるために用いられていることも
あります。
経営とは確かに感性に基づくものでもありますが、私たち人間も社会心理学的に考えれば、あるメカニズムに基づいて行動しているところもありますので、科学的に判断して制御でき
る側面も多くあります。
この『フェルミ推定』はそんなトレーニングにも通じるということです。
何はともあれ、よく紹介される具体例で『フェルミ推定』を理解しましょう。
(1)米国シカゴには何人のピアノ調律師がいるの?
まず、この問いに対して次のような仮説を置きます。 ※これが論理的な思考を鍛える
トレーニングになるのです。
仮説1.シカゴには300万人の人がいるとする
仮説2.シカゴの1世帯当たりの人数は平均3人であるとする
仮説3.10世帯に1台の割合でピアノがあるとする
仮説4.ピアノ調律は平均して1年に1回行われるものとする
仮説5.調律師が1日にできるピアノの調律は3台であるとする
仮説6.調律師は週休二日で、平均年間250日働くものと考える
すると、次のような推定ができます。
1.シカゴの世帯数は、300万人÷3人=100万世帯
2.シカゴのピアノ台数は、100万世帯÷10世帯=10万台
3.ピアノの調律は年1回なので、年間10万件行われる
4.一人のピアノ調律師は1日3台調律するので、1日3台×250日=年間750台行う
5.よってシカゴのピアノ調律師は、10万件÷750台≒130名と推定される
(2)東京にマンホールはいくつあるのか?
まず、この問いに対する仮説をピアノの調律師と同じように考えましょう。
仮説1.東京の人口は1300万人程度である
仮説2.1世帯当たりの平均人数は2.5人とする
仮説3.上下水道の普及率は100%である
仮説4.マンホールは10世帯に1個必要とする
すると、次のような推定ができます。
1.東京の世帯数は、1300万人÷2.5人=520万世帯
2.東京で上下水道が普及している世帯数は、520万世帯×100%=520万世帯
3.よって東京のマンホールの数は、520万世帯÷10世帯≒52万個ほどある
ちなみに「東京都下水道2018」によれば、東京のマンホール数は486,931個です。
『フェルミ推定』は、確かに正しい解を導き出せる考え方ではありません。
しかし、漠然としていたマーケット規模などを、より明確させる考え方です。
生じる誤差は、推定した人が持っている「勘違い」や「論理的思考の矛盾」の大きさを示す
ものであり、『フェルミ推定』の問題点を指摘するものではありません。
だからこそ、論理的な思考を鍛えるトレーニングになるわけです。
いずれにせよ、人それぞれの状況に応じて、戦略・戦術といわれる方策をより具体的に考え
られる方策であることに変わりありません。
事業戦略を考えるうえで、マーケット規模を推し量ることは重要です。
それによって、戦略・戦術をより具体化にさせるからです。
環境の変化が激しい中、すばやく、論理的に、戦略を展開できる能力は重要です。
ぜひ、皆さまの経営の中にもフェルミ推定を取り入れてみませんか。
必ず、経営はより論理的になり、これまでとは違う結果をもたらすことになります。
戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。
その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
掲載日:2019年7月10日 |カテゴリー:マーケティング
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