図解 事業戦略策定の方法 35

昨今、働き方改革が問われている中で、いかに労働時間は短くし、生産性は落とさないかと

いう生産性向上が、企業マネジメントの大きな課題となっています。

生産性の向上とは本来、生産量を増やして生産コストを引き下げ、売上数量の増加と粗利益

を増やして、最終利益および利益率を高めるということです。

営業の現場でいえば、営業効率を高めながら営業スキルも磨き、受注件数を増やそうという

ことです。

そこで重要となってくるのが、この「エクスペリエンス・カーブ」と呼ばれる、『経験曲線効果』です。

 

1 エクスペリエンス・カーブとは

『エクスペリエンス・カーブ(経験曲線効果)』とは、生産の累積が増加していくと、

コストが一定の割合で低下していくことをいいます。

一般的には、累積生産量が2倍になるごとに、1個あたりのコストは10~30%ずつ、
減少するのだそうです。

大事なことは、この『経験曲線効果』は製造の現場だけに限らず、さまざまな業務において

も見られるということです。

特に、ヒトによる作業が多く含まれる業務では、製造現場よりも大きな『経験曲線効果』が

発揮されます。

つまり『経験曲線効果』を発揮させるためには人材育成と人材定着が前提条件となります。

だから以前ご紹介した 『ハーズバーグの要因理論 が大切だという話にもつながります。

 

2 エクスペリエンス・カーブの特長

では、『経験曲線効果』で、どのようなことが期待・予測できるのでしょうか?

(1)生産量が多ければ多いほど、コストが下がる

市場占有率が高い場合に、特にこの『経験曲線効果』が生まれやすくなります。

なぜなら、他の企業と比べて、生産量が多いためです。

だから「市場占有率」は企業経営にとって重要なファクターと言われているわけです。

(2)経験曲線効果が生まれるのは生産だけはない

『経験曲線効果』がもっとイメージしやすいのは生産場面ですが、しかし、技術や営業、

さらに事務など、すべてに当てはまります。

経験が豊富であれば、ヒトの技術力は上がります。職人世界をイメージすればわかります。

経験が豊富であれば、ヒトの営業力、折衝力は上がります。それは当然ですね。

経験が豊富であれば経理事務やあらゆる事務能力は上がり、スピードも速くなります。

だからこそ、大切な従業員の適材適所化のためには、各人の『経験曲線』を推し量ることが

大事なのです。

(3)マイナスの経験曲線効果もある

この『経験曲線効果』は+に機能するだけではなく、-に機能することもあります。

それが一番多く現れるのが、変革時における「抵抗」です。

何かやり方を変えようとする場合、抵抗を示すヒトは『経験曲線効果』が豊かなヒトほど

強く示すと言われます

慣れているのに、その手順を変えなければならないから、事務処理効率が下がるからです。

また当事者であればあるほど、別段、問題点を感じないということもあります。

だから「なぜ、変えなければならないのですか!?」という抵抗が生じるわけです。

しかし、それを肯定していれば「改善」はできません。

誤解を恐れず言えば、このような抵抗感を示す事例は、中小・小規模企業における

ベテラン女性に多く見られます。

長年その業務に勤しんでいるので、半ばブラックボックス化している部分もあり、経営者も

おいそれと強行するわけにはいかなくなります。

しかし意外と、そのブラックボックスと思っていたことも、いざ取上げてみると、

実はそうでもないとことが多いのも事実です。

だから、自社の『経営曲線』を生かすも殺すも、経営者の強いリーダシップに負うところが

大きく、どのような効果を生むかは経営者の手腕にかかっているといえます。

 

3 エクスペリエンス・カーブが発生する主な要因

(1)人材の習熟度

ヒトは特定の作業を繰り返し行うと、作業のコツを掴みますので、効率的に作業を行える

ようになります。

何事も「初めて」行うことよりも、「何度も」行うことの方が効率的に行えます。

それによって『経験曲線効果』が発生します。

「自信や技術力はつく」ものではなく、「経験によってつける」ものなのです。

(2)同一作業の繰り返し

繰り返し行う作業であれば、作業方法を標準化して、マニュアルにすることもできます。

それによって作業手順が標準化され、間違いが無くなってきますので、より効率的な作業が

可能となります。それによって歩留率も向上し、『経験曲線効果』が発生します。

間違いのない作業を行うには、要素の分析・分解とその分解要素だけを繰り返し行えるよう

に、作業工程を見直すことです。

(3)気をつけるべきこと 

しかし、これらのことは「諸刃の剣」と同じで、良いことをもたらすと同時に、

やがて悪いことももたらします。

それは、企業風土の「保守化、硬直化」です。

経験は確かに『経験曲線効果』を生む土台ですが、同時に年功序列化などを促進する可能性

もあります。

標準化やマニュアルは、確かに『経験曲線効果』を活かすテクニックですが、同時に組織の

停滞をもたらす可能性もあります。

そこで、必要なことは『飽くなき改善・改革』を続けるということです。

この「経験や繰り返し」と「飽くなき改善」のバランスが、企業の永続的な発展をもたらします。

 

4 規模の経済と経験曲線効果の違い

『経験曲線効果』とよく似たものに、『規模による経済効果』というものがあります。

その両者の違いは次のとおりです。

『規模の経済効果』とは、生産規模の拡大により、単位当たりの生産コストが低くなること

をいいます。

それに対し、『経験曲線効果』は、生産コストが低くなる点では同じですが、その要因が

「累積生産量」という積み上げられたものであるということです。

生産規模という「スケールの大きさ」と、累積生産量の「経験の積み上げ」という違いが

あります。

『規模の経済効果』は、比較的人材が若い企業でも採れる生産性向上策であり、

『経験曲線効果』は、比較的人材が高齢の経験値が高い企業で採れる生産性向上策です。

 

 

企業の生産活動や営業活動にとって『経験曲線効果』は大変重要なものです。

そのためには、研修や教育も大切ですが、それを体験させることがさらに大切です。

現代は人材の早期戦力化が重要ですが、それには、経験を積み重ねさせて、

『経験曲線効果』を得ることが重要です。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ」という

金言がありますが、まさにこの金言には人材育成のヒントが凝縮されています。

 

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。


掲載日:2019年7月3日 |カテゴリー:マーケティング

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