図解 事業戦略策定の方法 28

戦略論の第14回は『イノベーションのジレンマ』です。

この『イノベーションのジレンマ』は、製造企業はもちろんのこと、食品・飲食など含め、ものづくり系の企業経営者にとっては、是非、学んでいただきたい戦略理論の一つです。

 

■イノベーションのジレンマ -リーダー企業の凋落は避けられないのか

『イノベーションのジレンマ』とは、ハーバードビジネススクール教授クリスチャンセンによる『強み伝い経営』に警鐘を鳴らした経営理論です。

クリスチャンセンはいずれの企業も、正しく行動するがためにやがては市場のリーダシップ性を奪われてしまうと言っています。

そういえば、あのコダック社も「フィルム技術を改善する」という正しい行動に終始したがためにデジタルカメラ化の波に乗り遅れ、2012年1月に米連保破産法の適用を受けてしまいました。

 

1 持続的イノベーションと破壊的イノベーション

クリスチャンセンはまた、イノベーションは二つに分けられると言います。

ひとつは「持続的」なものであり、もう一つは「根本的、破壊的」なイノベーションです。

(1)持続的イノベーションとは

『持続的イノベーション』とは、既存製品サービスの性能などを継続的に高める技術革新のことを指します。

企業というものは、自社の強みである主要製品やサービスの性能あるいは機能を引き上げるために、惜しみなく努力をします。

社員も、主要製品を改善することは大きな評価となりますので、能動的に頑張ります。

いわゆる、『強み伝いの経営』に自ずと力を入れてしまうということです。

(2)破壊的イノベーションとは

一方『破壊的イノベーション』とは大変重要な既存ヘビーユーザーではなく、ほんの一部の新しいユーザー(オーバースペックユーザー)に評価されることから始まる技術革新をいいます。

したがって社内では本流ではなく亜流となりますので会社も社員もあまり力が入りません。

しかし、いま当たり前に使われているパソコンはメインフレーマーのヘビーユーザーの使用から始まったのではなく、ホビーユーザーが受け入れたことから始まったことは記憶すべきことです。

 

2 破壊的イノベーションがリーダー企業の交代をもたらす

リーダー企業は、既存主要ユーザー層に対する『持続的イノベーション』を進行させなくてはならず、また社内でも多くの人は、日の当たる『持続的イノベーション』に従事することを志向しますので、日が当っていない『破壊的イノベーション』に従事することを希望する人はあまりいません。

したがって、自ずと『強み伝いの経営』をしていくことになります。

すると、どうなっていくのでしょうか?

そうです、企業の硬直化や保守化が始まり出し『破壊的イノベーション』がリーダー企業の交代をもたらすことになるのです。

『破壊的イノベーション』は、一部のユーザーだけに受け入れられるところから静かに進行し、始まるのです。

 

3 リーダー企業にとっての「破壊的イノベーション」の脅威

このように『破壊的イノベーション』は、リーダー企業が知らないうちに始まっています。

コダックしかり、一時のIBMもしかり、そして台湾・鴻海に買収されたシャープもしかりです。

この『破壊的イノベーション』には2通りあるといわれています。

(1)ローエンド型 破壊的イノベーション

『ローエンド型 破壊的イノベーション』とはオーバースペック顧客を対象に起こります。

オーバースペック顧客とは使えきれない顧客です。リモコンやスマートフォンあるいは高級家電製品などが挙げられます。

多くの顧客ニーズに応えようとするにあまり、一人一人のユーザーからみれば何と使わない機能が多いことか!それで高いお金を支払っています。

そこで『ローエンド型 破壊的イノベーション』は、従来品より性能などが低くて、そして低価格な製品サービスで参入することを指すわけです。

(2)新市場型 破壊的イノベーション

『新市場型 破壊的イノベーション』とは従来の製品サービスにはない性能などを提供し、新たな需要を作り出すイノベーションをいいます。

(3)破壊的イノベーションが成立する条件・特徴

では、これら『破壊的イノベーション』が成立する条件・特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。それは、

 ①ニーズはあるが、スキルやお金がない顧客市場がある。

 ②このような顧客は従来品と比較しないため、従来品ほど性能が良くなくとも購入する。

 ③だれにでも使える。

 ④新しい流通経路や利用シュチュエーションを創造する。

たとえば、最近注目されるものに『クラウドコンピューティング』があります。

もうサーバーを自社で持つ必要はなく、驚くほどの低価格で利用できます。

また、パソコンのスペックさえそこそこあれば、快適です。

さらにメーカーや量販店経由ではなく、インターネット経由で利用ができます。

課題は、だれにでも使えるかというところに少々ネックがありますが、『新市場型 破壊的イノベーション』としてに成長していく可能性は十分あります。

 

4 破壊的イノベーションは別組織で追求する

クリスチャンセンは最後に、この『破壊的イノベーション』の追求の仕方について言及しています。

それは「企業には不均等な意欲があるので破壊的イノベーションは別組織で追求すべきだ」ということです。

多くの企業は『持続的イノベーション』と『破壊的イノベーション』を、同じ組織の中で、追求しようとしがちです。 それが失敗の原因だといっています。

なぜなら『持続的イノベーション』は組織にとって花形ですが『破壊的イノベーション』はまだその時点では組織の日陰であるからです。

したがって、『破壊的イノベーション』を妨げることとなると、クリスチャンセンは言っています。

 

 

『イノベーションのジレンマ』はあまり馴染みのない経営理論かと思います。
しかし、
私たちが犯しがちな「強み伝いの経営」に対して強い警鐘を鳴らしています。
強み伝いの経営をしている以上は、いずれ、市場から退場する日が来るということです。

冷静に考えればそれはそうですよね、時間が経てば明白です。

いまだ「戦後直後の経営でよい」と思われている経営者は少ない筈です。
しかしながら、現在というものにあまり問題もなく生きていると、そのことを自覚し、
微かに起こっている変化に対して『破壊的イノベーション』に取り掛かることはなかなか
できないものです。

『コアコンピタンス・マネジメント』でも、「過去を忘れる」というフレーズがありましたが、常に革新し、永続的に続く企業経営を目指したいものです。

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。

その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。


掲載日:2019年5月15日 |カテゴリー:マーケティング

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