戦略論の第10回は、ジェフリー・ムーアの「キャズム(Chasm)理論」です。
キャズムとは「割れ目、溝」などという意味ですが『キャズム理論』は導入期で成功した
商品やサービスを、如何にして成長期にも普及促進させていくのかというマーケティング
理論です。
キャズム理論では「普及過程ごとに攻め方は変わる」といいます。
商品あるいはサービスを普及させるには大変興味深い理論ですので、知っておいて損はない
考え方です。
キャズム理論は1991年、アメリカの経営コンサルタント、ジェフリー・ムーアが提唱した
「商品やサービスの普及に関する考え方」です。
当時、パソコンやOSなどのハイテク製品がなかなか一般コンシューマまで普及せず、
その原因と対策として、理論構築された理論です。
ムーアは、コンシューマを次の5つに分類しました。
(1)イノベーター(革新的採用者)
イノベーターとは、ともかく新しいものをすぐ欲しがる消費者層です。
新しいiPhonやOSの販売開始日に早朝から列を成して並んでいる人々の風景が
よく見られますが、そのような消費者のことを指し、すぐ購入してくれる客層です。
この客層は「2.5%」いると言われます。
(2)アーリーアダプター(初期採用者)
アーリーアダプターとは、革新的採用者(イノベーター)の様子や反応を見てから、判断して
購入を検討する人々です。つまり、積極的に検討してくれる客層です。
この客層は「13.5%」いると言われています。
(3)アーリーマジョリティ(初期多数派)
アーリーマジョリティとは、第2陣の利用者です。
つまり、様子見はするけれど、基本的には前向きに検討をし、購入を検討する客層です。
この客層は、消費者の「34%」を占めると言われています。
しかし、ここに至るには『大きな溝(キャズム)』を乗り越えなければならないと
言われています。
ここまでが比較的積極的な消費者層です。この3つを合わせると「50%」となります。
(4)レイトマジョリティ(後期多数派)
レイトマジョリティとは、周りの普及状況などを見て追随する保守的な消費者層です。
発表当初はあまり興味を示さず、状況を見て検討する客層です。
この客層も「34%」いると言われています。
このレイトマジョリティとアーリーマジョリティの間にも『キャズム』が存在すると
言われています。
(5)ラガード(採用遅滞者)
最後の客層はラガードと呼ばれ、世間の流行にはあまり関心がなく、なかなか採用しない
消費者層です。
この客層は「16%」を占めると考えられています。
この5つの消費者層の中でももっとも重要な客層は『13.5%のアーリーアダプター』です。
なぜなら、普及の先導的役割を担うからです。
ですから、まず、普通の消費者への橋渡しをする、この早期接続者を掴むことがもっとも
大事なこととなります。
一般市場に普及させるには、このアーリーアダプターからアーリーマジョリティへ移行させる
ことが重要ですが、その間に大きく深い溝『キャズム』があると言われています。
商品やサービスが普及しない要因は、この『キャズム』を乗り越えられないからだと
ムーアは言っており、その原因は企業がアーリーマジョリティの特性を理解しないからだと
指摘しています。
(1)最初の実質的な客層である13.5%のアーリーマジョリティの実利的な評価に応える
ただし、ポイントはアーリーマジョリティ全体を相手にしないことだと言います。
(2)全力を1ヶ所に集中する
1ヶ所に集中するとは、ある特定のアーリーマジョリティに向けて完全な製品を
作り上げることです。
そのためには、
①小さくてもよいので手がかりを早く掴む
②特定のアーリーマジョリティ市場を掴んだなら、それを標準品として広く普及させる
ことです。
(3)他のアーリーマジョリティを順次掴んでいくために、そのアーリーマジョリティに合わせて
カスタマイズしていく
カスタマイズとは、言い換えれば『付加価値』をつけていくということです。
今回の「キャズム理論」をまとめると、
まず、客層を絞り、そこに傾注して期待に応えられる商品やサービスを提供し、
それをもとに、他の客層にも応えられる商品やサービスにカスタマイズしていく
ということです。
私たちはともすれば、総花的に事業を進めがちです。
「御社はいったいどこに的を絞って商売をしているのですか?」と問われると、
答えに窮ずることが多くありませんか。
キャズム理論はそんな考え方を是正することを勧めているように思われます。
戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。
その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
掲載日:2019年4月10日 |カテゴリー:マーケティング
本店:〒355-0062 東松山市西本宿1968-1 坂戸:〒350-0233 坂戸市南町35-20 |
![]() |
0120-634-154 営業時間 8:30~17:30 定休日 土・日・祭日 |