財務諸表11 資金の見方

まず前回の「P/Lの見方」について復習しましょう。

 1.損益計算書の見方には3つありました。

  ①売上高との比率で見る方法 ②B/Sと比べて見る方法 ③損益分岐点を見る方法
  でしたね。

 2.売上高との比率で見れば、自社の収益構造がわかりましたね。

 3.B/Sと比べて見れば、資産・資本の運用状況が判断できましたね。

 4.損益分岐点を見れば、自社の営業活動の採算点などがわかりましたね。

 5.そして一番大切なことは、P/Lも含めて分析値名とか計算式を覚えることではなく、
  理屈を知ることでしたね。
  理屈がわかってくると、
自社独自の意味ある見方ができるようになります。

  ここが財務諸表を読む「真髄」です!
  この理屈さえ解ってくれば、目から鱗が落ちるように、財務諸表から自社の経営状況に  ついて、いろいろなことがわかり始めます。
 6.そのためにも正しい経理をしなくてはなりませんでした。
  そこから、「経理とは経営を管理する」ことであることが理解できるかと思います。
  
だから会計で強い会社が作れ、「会計は会社を強くする」のですね。

 

第11回目の今回は、このシリーズの最後となります。
最後は、事業の生命線ともいわれる「資金の見方」です。
資金が途切れてしまえば、事業は継続できなくなります。
そんな大事な「資金の見方・読み方」について一緒に勉強しましょう。

 

11 資金(Fund:ファンド)の見方

(1)資金とは

「資金を見る、読む」というと、難しく思われる方もおられるかもわかりませんが、
そんなことはありません、カンタンです。
まず、自社の有り高は、キャッシュフロー(CF)計算書で見ようと、資金繰り実績表で
見ようと、それは「現金と預金の合計」です。
現金が50万円、預金が300万円なら、350万円です。それ以上でもそれ以下でもありません。これが現在の資金の有り高です。
問題は、この「資金有り高」が自社にとって十分なものなのか、それとも不十分なものなのか、あるいは全く足りないものなのか、判断できることです。
CF計算書は「現在の資金有り高」に至るプロセスがわかるだけで、これからの対策は見えて来ません。資金繰り実績表も同じです。
CF計算書と資金繰り実績表の違いは現在資金有り高に至る計算プロセスが違うだけです。

大事なことは、いまの資金有り高で足りるのか、足りないのか、ということですが、
それはCF計算書でも資金繰り実績表でも判断できません。

また、現預金のことを「キャッシュ」とか「手元資金」とか「手元流動性」などといいますが、細かいことを除けば、意味は同じです。

 

(2)手元資金を読む

①平均月商と比べる
 手元資金÷平均月商=手元流動性比率(ヵ月分)

 家計で考えてみましょう。
 Aさんの家では現金が10万円、それと預金口座に140万円あります。
 つまり、手元資金は150万円です。
 Aさんの家では奥さんも働いており、毎月60万円の給料があります。
 これが平均月商にあたります。
 すると手元流動性比率は2.5ヵ月となり、突然、給料がゼロになることはないでしょう が、少々のことがあっても大丈夫と判断できます。
 企業経営も同じです。ただし、企業経営はもう少しダイナミックな変化が起こりえますの で、通常は「月商3~4ヵ月分程度の手元資金は必要」とされています。
 さて、あなたの会社はどうでしょうか?

②平均月費用と比べる
 手元資金÷(月原価+月販管費+月営業外費用)=費用基準手元流動性比率(ヵ月分)

 今度は給料ではなく、月間生活費で比べて見ようということです。
 先ほどの例で生活費は50万円で10万円は貯蓄しているならば、3.0ヵ月分となり、 手元流動性比率は少し上がります。
 しかし生活はボーナスを取り崩して70万円でしているということであれば、2.1ヵ月 分となり、下がります。
 前者の例は黒字経営をしている企業の場合に当たります。
 後者の例は赤字経営を続けている企業の場合に当たります。

③営業負債と比べる
 手元資金÷流動負債 ×100=手元資金比率(%)
 当座資産÷流動負債 ×100=当座比率(%)
 流動資産÷流動負債 ×100=流動比率(%)

 事業にとって、日々の経営のために調達している他人資本は何だと思いますか?
 もうお分かりの方も多いかと思いますが、それは流動負債です。
 買入債務や短期借入金、未払金、未払費用など、毎日の経営活動の中で調達している負債 です。これは借りたり、返済したり、さらにまた借りたりと常に変動していますが、常に 返済しなければならない他人資本といえます。
 経営の安全性を考える上では、常に、これぐらいの負債はいつでも返済できる状況にして おきたいものです。
 そこでこの手元資金比率です。手元資金がこれら流動負債を上回るだけあれば「安全」と 考えられます。
 同じような考え方で、「当座比率」や「流動比率」もあります。
 当座比率とは、返済原資を手元資金だけではなく、債権としてある売上債権も加えて考え る見方です。
 流動比率とは、さらに緩めて、返済原資を在庫やその他流動資産も加えて考える、ずいぶ んとラフな見方です。
 経営の安全性から考えれば、手元資金比率であれば100%前後、当座比率であれば売上 債権の中に不良債権も含まれているかもわからないので120%前後、流動比率であれば 売れ残りの在庫や回収できるかできないかわからないその他流動資産も含まれているので 200%前後あれば「安全性は高い」と言われています。

 

(3)有利子負債の残高を読む、判断する

いま多くの中小企業・小規模企業が借入金まみれになっています。
赤字経営が続くので資金が不足し、中小・小規模企業は間接金融から資金調達をする方法しかなく、なんとか銀行融資で経営を続けているのが珍しくない状況です。
そこでいま、冷静に有利子負債の状況を読み、適切な経営判断をすることが求められています。

①売上高と比べる
 有利子負債÷平均月商=借入金対月商倍率(ヵ月分)

 有利子負債とは「支払利息が付いている負債」という意味ですから、短期借入金と長期借 入金の合計となります。
 これが平均月商3ヵ月分を超えると「黄色ランプ」の点滅状況です。6ヵ月分を超えると 「赤ランプ」点灯です。
 そうのように言われる理由はどこにあるのでしょうか?
 借りると当然、金利を支払い、そして返済しなくてはなりません。支払利息はP/L上に 表記されていますが、返済金はどこに表記されているのでしょうか?
 それはB/Sです。返済していけば、短期借入なり長期借入がその返済額分、減っていき ます。つまり、P/Lで利益を出して、税金を支払い、残った当期純利益がB/Sへ繰入 れされ、その中から返済するということです。
 そこでこのように考えられています。
 利益を売上の10%を出して、税金を納付し、残りから売上の5%に当たる金額を借入返 済に充てる。
 そうすると、平均借入金返済期間を5年と考えると、5%×60ヵ月=300%=売上3 カ月分となります。
 したがって、借入金対月商倍率は平均月商3ヵ月分を超えないように注意する必要がある ということになります。
 この理屈はぜひ理解しておきましょう。 

②借入金返済期間を予測する
 有利子負債÷(年間営業利益+年間減価償却費)=債務償還年数(ヵ年)
 有利子負債÷(当期純利益+年間減価償却費) =実債務償還年数(ヵ年)
 
まず、返済原資に「年間減価償却費」を加える意味は、損益計算書上は減算されています が、おカネとしては外へ支払っているわけではありません。
 いわゆる、減価償却費は他の経費とは違い、社外流出していません。だから、支払原資に
 加えるわけです。
 また、先ほどの当期純利益に年間減価償却費を加えた返済原資が一番正確な債務償還年数 ではあります。だから「実債務償還年数」といいます。
 しかし金融機関ではそこまでシビアな見方はしません。最大限の返済原資をもとに計算を
 します。したがって、当期純利益ではなく営業利益をもとに計算します。
 この債務償還年数が5ヵ年分を超えると、「黄色ランプ」の点滅状況です。10ヵ年分を
 超えると「赤ランプ」点灯です。 と言われています。

 

(4)販売に必要な運転資金を読む

販売に必要な運転資金とは、販売のために運用している売上債権と棚卸資産です(ここのところをよく理解してください)。
売上債権と棚卸資産は販売するためにおカネを運用している状況です。
一方、販売で調達している資金とは買入債務です。現金取引であれば支払わなくてはない仕入代金を掛で仕入しているわけです。
それによって販売に必要な運転資金を読むことができます。

①運転資金要調達高
 (売上債権+棚卸資産)-買入債務=運転資金要調達高(円)
 これがマイナスだと、買入債務で、売上債権と棚卸資産の運用資金を調達していることに なります。
 プラスだと、その金額分が不足していることになり、手元資金から用立てしていることに なります。

②運転資金要調達率
 運転資金要調達高÷年商 ×100=運転資金要調達率(%)
 
 年間売上高に対する運転資金要調達高の割合ですから、この運転資金要調達率で、売上を 伸ばす場合にどの程度運転資金を用意しておかねばならないのか、予測することができま す。
 例えば、要調達率が「20%」で売上を「2000万円」伸ばしたいときは、400万円 の運転資金を準備する必要があることがわかります。

 

 

今回は次のことを覚えておきましょう。

1.手元資金を読みたい場合は、平均月商、平均月費用、流動負債などと比べる。

2.銀行借入金を読みたいときは、売上高、償却前営業利益、償却前当期純利益などと
 比べる。

3.販売に必要な運転資金を読みたいときは、売上債権と棚卸資産の合計から買入債務を
 引く。
 またそれを売上高で割れば、運転資金要調達率が求められる。


経理は「経営を管理する」ことであり、正しい経理処理は会計資料に会社の経営状況を
ハッキリ表します。
ですから、早期に対策を講じることが可能となり、だから会計で強い会社が作れ、
「会計は会社を強くする」のです。


掲載日:2018年10月10日 |カテゴリー:会計処理, 会計識字率, 経営技術

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