今回は経営改善計画や経営力向上計画などに関係のある「ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)についてご紹介します。
ローカルベンチマークとは、経済産業省が公表した企業の経営状態の「健康診断」を行うツールのことです。当ツールを利用して自社の経営状態を把握し、金融機関などの支援者と同じ目線で円滑なコミュニケーションを行うことを期待して作成されたツールです。
一般的にはあまり知られていないかもわかりませんが、自社の経営改善や経営力を高めるうえでも大変有効なツールですので、ぜひ理解し、活用しましょう。
これからの時代は経営規模を問わず、事業経営にはこの程度の経営力が求められます。
ローカルベンチマークは次の「6つの指標」と「4つの視点」から構成されています。
(1)6つの指標
①売上持続性を示す「売上高増加率」
②収益性を示す「営業利益率」
③生産性を示す「労働生産性」
④健全性を示す「EBITDA 有利子負債倍率」
⑤資産運用効率性を示す「営業運転資本回転期間」
⑥安全性を示す「自己資本比率」
(2)4つの視点
①経営者に着目
②関係者に着目
③事業に着目
④内部管理体制に着目
なんか難しそうと思われたかもわかりませんが、落ち着いてよく見てみるとそんなことはありません。経営を担う以上理解しておくべき、ごく当たり前のやさしい内容です。
(1)売上高増加率
自社の売上持続性を見るには、前年の売上高と比べて見ることを推奨しています。
増加していればまず安心ですし、減少していれば少し詳しく調査する必要があります。
そんな見方は次のとおりです。
売上高増加率=(今期売上高÷前期売上高)×100-100 ☚たんに売上の増加率ですね
(2)営業利益率
自社の収益性を示す指標には売上高総利益率や経常利益率など、いろいろとありますが、
現代いちばん重要視されているのが本業の収益性を示す「営業利益率」です。
そんな見方は次のとおりです。
営業利益率=(営業利益÷売上高)×100 ☚たんに売上高に対する営業利益の割合ですね
(3)労働生産性
自社の生産性を示す指標は1時間当たりの正味付加価値額です。
いま、働き方改革でもっとも問われていることの一つでもあります。
そんな見方は次のとおりです。
労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷
労働投入量(労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間)
計算式にするとすいぶん難しい思われるかもしれませんが、落ち着いて見てみましょう。
前段の部分は正味付加価値額で、営業利益と人件費と減価償却費の合計です。
後段の部分は会社全体の総労働時間です。これで正味付加価値額を割れば、1時間当たりの
正味付加価値額が計算できます。 よく見れば単純なことですね。
(4)EBITDA 有利子負債倍率
自社の健全性を示す指標は、借りている借入金を何年ぐらいで返済できるか、ということです。 そんな見方は次のとおりです。
EBITDA 有利子負債倍率≒有利子負債÷(営業利益+減価償却費)
チョッと難しい名前が付けられていますが、名前に惑わされないようにしましょう。
まず、有利子負債とは、金利を支払って借りている借入金です。具体的には、金融機関から
受けている融資であり、短期借入金と長期借入金ですね。
次に営業利益と減価償却費は、借入金返済の「最大返済原資」です。
ここはよく理解しておくことが大事です。
これが少ないと、手持ちの現預金から返済することになります。商売で稼ぐためにお金を
借りて、返済するのに手持ちのお金から返済するぐらいなら、最初から借りなかった方が
ましですよね。いわゆる本末転倒です。
その最大返済原資で借入金を割れば、最短の返済期間が計算できます。
なお、EBITDAは「イービットディーエー」もしくは「イービットダー」と読みますが、
無理してこの分析値の頭に付ける必要はありません。
有利子負債倍率とか債務償還年数という言葉で十分通じます。
(5)営業運転資本回転期間
資産はただ保有しているだけではなく、活用した方が良いわけですね。
その活用度が効率性ですが、次のような見方をします。
営業運転資本回転期間=(売掛金 + 棚卸資産-支払手形及び買掛金) ÷売上高×12ヶ月
これもなんだか、難しそうですね。しかしよく見てみましょう。
売掛金と棚卸資産(在庫)とは、見方を変えれば、営業活動のために使用している資産です。
このことを「資金運用」とか「資金使途」といいます。
一方、支払手形と買掛金は、営業で得ている無利子の資金とも考えられます。
なぜなら、仕入してお金を払っていないのですから。
ですから、使っている資産を無利子の資金で調達できていれば、運転資金としてはラクに
なり、効率的ですね。
その度合いを年間売上高を尺度して見ると、それぞれの営業活動の効率性の一面が読める
ことになります。
この指標は「(営業)運転資金要調達率」とも呼ばれています。
(6)自己資本比率
自己資本比率とは会社の全資産をどれだけ自己資本で賄っているかという指標です。
これが高ければ高いほど、全ての資産を自社のお金だけで持っていることになりますから、会社経営の安全性は高くなります。
そんな見方は次のとおりです。
自己資本比率=(他人資本+自己資本)÷自己資本×100 ☚全資産を自己資本で
まかなっている割合です
(3)(4)(5)は少しややこしそうに見えても、このように噛み砕いて見てみると簡単です。
会計はそもそも足し算と引き算だけで出来るわけですから、四則演算だけですべての分析はできます。 会計は恐れるに足りず! デス。
4つの視点は会計数値では表れてこないことに対する視点です。そのことを非財務指標と呼んでいます。
(1)経営者への着目
経営者である社長自身を分析します。
①経営者自身について、ビジョン、経営理念
②後継者の有無
(2)事業への着目
事業の状況あるいは将来性(ビジョン)・可能性(ポテンシャル)について分析します。
ビジョンとかポテンシャルというと、もっともらしく聞こえますが、要は経営者として放漫経営や成り行き経営ではなく事業のことを考えていますか、考えましょうということです。
①企業及び事業沿革
②技術力、販売力の強み
③技術力、販売力の弱み
④ITの能力、イノベーションを生み出せているか
(3)業を取り巻く環境、関係者への着目
3つ目の観点は環境です。内部・外部の環境を見てみましょうということです。
これもそれらしく表現すれば、SWOT(スウォット)分析やPEST(ペスト)分析をしましょうということです。
①市場規模・シェア、競合他社との比較
②顧客リピート率、主力取引先企業の推移
③従業員定着率、勤続日数、平均給与
④取引金融機関とその推移
(4)内部管理体制への着目
最後は企業内部を見てみましょうということです。従業員のことを嘆く前に経営者として教育やヤル気や意思統一、さらには将来を託して働ける環境を努力していますか、あるいは考えましょうということです。
小さな事業ほど人が財産であり、魅力や競争力の源泉です。
従業員さんをもっと想い入れ持って処遇しましょう。
①組織体制
②経営目標の有無、共有状況
③社内会議の実施状況
④人事育成のやり方、システム
そうですか、結構、自社の経営状況全般について振り返れますね。
ときにはこの程度、経営について考えてみることも大切なことなのではないのでしょうか。
4月からは多くの企業で新年度に入られるかと思います。
心機一転、気分一新、早期経営改善計画や経営力向上計画に取り組むいい時期かと
思います。
ぜひ、ご検討されれば如何でしょうか・・
掲載日:2018年3月21日 |カテゴリー:トピックス
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