会計のエッセンス(11)

第11回 「損益」の読み方・見方

今回で会計活用のエッセンスは最終回となります。
最後は「損益」の読み方です。

 

はじめに 事業経営は「黒字経営」が基本

「そんなことは言われなくてもわかっている!」という声が聞こえてきそうですが、
あらためて考えてみましょう。

 

損益が赤字ということは・・

第1に 売上より売上原価や販管費などの方が多いということです。
つまり、100万円売上げて、120万円費用がかかったということです。

第2に それ以上キャッシュは出てしまうということです。
つまり、120万円の費用は100万円の売上回収より早く支払わなくてはならないので、一時的には20万以上のキャッシュがでていきます。
あるいは売上100万円は必ず全額回収できるとは限りませんので、
ひょっとしたらそれ以上キャッシュは出てしまうかもわかりません。

第3に なのに手元資金から銀行借入金は返済しなければならないということです。
ほとんどの事業者は事業を行うにあたり銀行から融資を受けています。
先ほどの売上100万円に費用120万円という中には借入金の返済額は入っていません。
商売で利益がないのですから、借入金の返済は手元資金からしなくてはなりません。

第4に 来期の資金運用は自己資本では出来ないということです。
黒字であれば税金を納付した残りが純資産の繰越利益に入り、
売上回収できれば現預金のキャッシュが増えることになります。
しかし赤字であれば、赤字分が純資産の繰越利益から引かれ、
繰越利益がなければ資本金から引かれることになります。
さらに資本金も食い尽くしてしまったなら「債務超過」という世界に入ってしまいます。
つまり、自己資本である純資産が減っていきますので、
来期の資金運用はすべて他人資本に頼るしかなく、新しい金利負担と借入金返済が増えて「経営悪化のスパイラル」に突入してしまうことになります。
(いまそのような企業が大変多くあります。)

 

このように「赤字」には大変な大きな問題を含んでいます。

経営する以上、経営手腕をもって黒字経営にすることが経営者としての責任です。

*㈱てるみくらぶや㈱ハレノヒの経営者は経営悪化のスパイラルを前にして
 何もできなかった経営者だったわけです。

では、そんな損益計算書をどのように読めばよいのでしょうか。

 

1 売上高を読む

売上高とは資金の源泉であり、おおもとです。
売上なくして経営は成り立ちません。

仕入も人件費も経費も必ず上がっていきます。
デフレ、デフレと言われても、会社の費用は下がりません。

それを吸収するためにも売上は増収させることが基本です。

  今期売上高 ÷ 前期売上高   ×100 =X%        ☚前年対比

  当月売上高 ÷ 前年同月売上高 ×100 =Y%        ☚前年同月対比

  今期移動合計売上高 ÷ 前期移動合計売上高 ×100 =Z%  ☚移動合計対比

これらはすべて100%以上が基本です。
前年を割るようであれば、早急に対策を考える必要があります。

大事なことは「すぐ対策を考える」ということです。
放置して傷口を大きくしておいたあとで「V字回復」させる!というような夢の話は
現実にはありません。
すぐ手を打つことが大切です。

常に少しでも増収させていくには「常に地道な努力を続ける」が金言です。

なお、このXYZを折れ線グラフにすると「Z文字」のようになります。
Zチャートと呼ばれますが、右肩上がりのZが描かれれば増収企業、平行のZが描かれれば現状維持企業、右肩下がりのZが描かれれば減収企業であることを示しています。

 

2 売上原価を読む

売上原価は「原価率」で読むことが基本です。

できれば、原価率はたとえ少しでも下げることが大切です。
下げることが難しくても、少なくとも維持させたいものです。

原価率が上がれば売上総利益率が下がるということですから、事業としての収益力は落ちるということです。

なかなか増収は難しい現代ですから、社長の経営力で収益力は落とさないようにしたいものです。

 

3 売上総利益を読む

売上総利益は「利益率」と「金額」で読むようにします。

売上総利益率が落ちたということは、事業の収益力が落ちて来たということです。

収益力が落ちると、固定費の支払や利益の確保が難しくなってきます。

もうひとつは金額でも読みます。前年対比で金額ベースでどうなのか?

利益率は落ちても金額ベースでは上がる場合もあります。薄利多売傾向ということです。

これまでは競争が厳しいということで薄利多売の経営志向が多かったように思いますが、
これからは付加価値経営に舵を切り換えることが大事です。

徐々に市場は縮小しています。一般の事業にとっては付加価値を上げることが重要です。

知恵を出して価値をつくる、知価経営への切り替えが重要です。

 

4 販売費および一般管理費を読む

販管費とも呼びますが、その多くは固定費です。
固定費は削減すれば削減した分だけ、利益が増えます。

大事なことは科目単位で管理するのではなく、細目で管理することです。

水道光熱費であれば、電気代・ガス代・水道代に分けて管理します。

事務用品であれば、コピー用紙代・筆記具代などに分けて管理します。

すると削減できる費用が全員でわかるようになり、かつ削減目標額も明確になります。

それを経費予算にしてPDCAサイクルにつなげることが大切です。

削減した費用は人件費と利益に配分します。

 

5 営業利益を読む

営業利益は黒字化が絶対です。そうなるようにするのが経営手腕です。

営業利益の目標は、一般的には売上高に対して10%超です。

中小企業であればあるほど、高くないと経営的に成り立ちません。

なにしろ売上が少ないのですから、営業利益率が大企業と同じというわけには行きません。

これが事業資金の源泉となります。
ここから借入利息を支払い、残ったものが経常利益となります。

そして経常利益から税金を支払い、最終である当期純利益が借入金の返済と事業資金の貯蓄(繰越利益)に回ることになります。

したがって営業利益を確保すること、増やすことがいかに重要なことであるか、
お分かりいただけるかと思います。

 

6 自社の収益構造を読む

収益構造とは「利益が出やすい体質か、そうでないか」ということです。

具体的には自社の損益分岐点を確認します。

  (固定費 ÷ 限界利益率)÷ 実績売上高 ×100 =Z%  ☚損益分岐点比率

   ※固定費=総費用-変動費

   ※変動費=商品仕入高+材料費+外注加工費

   ※変動費比率=変動費÷売上高×100

   ※限界利益率=100-変動費比率

損益分岐点比率は80%未満を目指しましょう。

損益分岐点が80%未満ということは、売上高が20%落ちても赤字にならないということです。

この考え方を応用して来期の必要売上高も試算できます。

まず、必要経常利益を考えます。

  (目標内部留保+借入金年間返済額)÷(1-実効税率) =Y円 ☚必要経常利益

   ※目標内部留保とは残したい利益です。

   ※1-実効税率は、実効税率が30%ぐらいなので70%と考えて良いか思います。

これをもとに来期の必要売上高を求めます。

  (来期の固定費+必要経常利益) ÷ 目標限界利益率 =Z円 ☚来期の必要売上高

思ったより必要売上高が高いことに驚かれるかもわかりません。

しかし、これが損益の利益の中から借入金を返済し、必要な利益を残すために必要な売上高なのです。それを目指して何を工夫して実行すべきなのか、戦略戦術を考えます。

 

 

このように損益計算書が読めるようになって打ち手が講じられるようになると、経営の安全性が急速に高まり、安定した会社経営が実現します。 それがいわゆる「経営技術」です。

経理・会計は決算申告のためにあるという古い考え方ではなく、経営に活かすためにあると捉え直して、黒字経営と資金繰りが楽になる強い会社をつくりましょう。


掲載日:2018年1月31日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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