会計のエッセンス(7)

第7回 「営業債務」の読み方・見方

今回は「営業債務」の読み方です。

一般的には支払債務とか仕入債務あるいはもう少し概念を拡げて流動負債などといいますが、チョッと言葉がむずかしいですよね。

そこで、よくよくその中身を見てみると、流動負債とはそのほとんどが営業活動で生じる可能性のある債務なんです。

それであれば、「営業債務」と表現した方が理解しやすくなりますよね。
ですからここでは営業債務と呼び、その読み方・見方をご紹介します。

 

1 営業債務の中身を知ろう

 営業債務(流動負債)をよく見ると、3つに分けられることに気付きます。

一つは仕入に係わる債務です。支払手形とか買掛金です。これは「買入債務」と言います。

次に経費などの未払費用です。これは「経費未支払債務」です。これと仕入債務を加えて「支払債務」とも呼びます。

そして最後が借入金です。短期借入金と1年以内返済長期借入金が該当します。

その他にも仮受消費税や預り金、未払金、引当金などがあるかと思います。

いずれにせよ、1年以内あるいは翌月には支払わなければならない短期返済債務が営業債務です。

 

2 買入債務に対する支払能力を読む

 仕入代金は現金商売を除いて、仕入れた商品の売上代金で仕入代金を支払うことはできません。ですから、飲食店やクリーニング店、小売店などの現金商売は売上で仕入代金を支払うことができますが、一般的にはできません。

 では、どこから支払うことになるのでしょうか?
そうです、手元資金で支払うこととなります。

したがって、手元資金と買入債務を比べれば、一つの支払能力、資金繰り状況が読めることとなります。

 手元資金 ÷ 買入債務 ×100 =X%  ☚買入支払能力

Xが100%以上あれば支払能力「アリ」ですが、手元資金は他にも使いますので、少なくとも150%以上、できれば200%程度の手元資金は持っておきたいところです。

 

3 売買活動の運転資金を読む

 次にもう一歩進めて、売買活動に必要な運転資金についても読みましょう。

チョッと思い出してください。売買に運用している資産は何だったでしょうか?
そうです、受取手形・売掛金・棚卸資産など、売上資産とも呼べる資産でしたね。

では逆に売買で得ている資金は何ですか? そうです、支払手形や買掛金の買入債務です。

理想的なことを言えば、買入債務で売上資産が回れば、手元資金は使わずに資金繰りが回ることになります。

 そこで次のような読み方をして、その状況を判断します。

 売上資産 - 買入負債     =X円      ☚(売買活動)運転資金要調達高

 手元資金 - 運転資金要調達高 =Y円      ☚運転資金余裕高

 運転資金要調達高 ÷ 平均年商 ×100 =Z%  ☚運転資金要調達率

Xは少なければ少ないほど、資金繰りが楽になります。どのくらいであれば「楽か」という判断は業種や取引形態、規模などで違いますので一概には言えません。

Yは多ければ多いほど、運転資金に余裕があることになります。しかしこれもどの程度あれば「余裕があるか」という判断は一概にできません。

そこで運転資金要調達率です。このZ%は平均年商を基準に考えますので、これであればどの程度であれば運転資金が比較的楽かということは言えます。
通常、10%台であれば運転資金に無理はないと言われています。

このZ%はあなたの会社が100万円売上増えれば必要となる資金額を示しています。10%であれば10万円、30%であれば30万円必要ということです。

一般的に、粗利の高い事業や売上単価の高い事業ほど高くなりますので、そのような事業をしている場合は、多くの手元資金が必要となります。

 

4 流動負債を読む

(1)日常の資金繰り状況

 本来、毎日の経営は、有利子負債である短期借入金や割引手形を利用しなくとも、資金が回る経営が普通の姿だとも言えます。

ここに「流動負債」の読み方のヒントがあります。

 つまり、有利子負債を除く「流動負債」で日常の資金繰りが回るかどうかを読めば、日々の資金繰り状況が掴めます。

 (流動資産ー手元資金)÷(流動負債ー有利子負債)×100 =X%  ☚日常資金繰り比率

このXが100%未満であればあるほど、資金繰り状況は楽な状況と言えます。

このXが100%に近くなればなるほど、あるいはオーバーすれば、企業は有利子負債に手を出さなくてはなりません。

つまり、手元資金を除く流動資産は、有利子負債を除く流動負債以下にすることが「経営の鉄則」です。

(2)自社の安全性を読む

 流動負債とは、簡単に言えば、常に向こう1年間に返済しなければならない債務の合計を示しています。

一方、流動資産は手元資金を含め、常に向こう1年間でキャッシュ(資金)にできる資産を示しています。

 したがってこの2つを比較すれば「自社の安全性」が読めることになります。

 流動資産 ÷ 流動負債 ×100% =Y%  ☚流動比率 

Yが100%以上であれば、計算上「流動資産で流動負債を返済できる」ことになります。しかし現実的は、全ての流動資産が期限通り回収できるという保証はありませんので、このYは100%以上ではなく、余裕と安全性を考えれば200%以上目指す経営をします。

 次に、より自社の安全性を手堅く読み方法です。

流動資産の中の現預金はそのまま100%「支払手段」として使えます。売上債権も通常100%「支払手段」として使えると考えて良さそうです。しかし棚卸資産は、まず売れなければなりません。それ以外のその他流動資産もいろいろと事情がありそうです。

 そこで次のように、自社の安全性について手堅く読みます。

 (現預金+売上債権) ÷ 流動負債 ×100% =Z%  ☚当座比率

  *売上債権に回収見込みが立たないものがある場合はそれを除外します。

  *現預金+売上債権のことを当座資産といいます。

Zが100%以上であれば、まず、流動負債は返済できることになります。しかし、売上債権は100%回収できるとは限りませんから、この比率も150%程度を目指して経営するとより安全性は増します。

 

 こうやって考えてみると、経営という形ない概念も、意外と科学的にコントロールできるものであることに気づかされます。それがいわゆる「経営技術」なのです。

毎月の試算表を日々の経営に活かすことによって、営業活動を「黒字経営」にし、資金繰りが安定したなる「強い会社」つくりが可能となります。

もちろん、そのためには社長ご自身が創意工夫を図り、従業員を引張って行かれることが必要です。景気が悪いとか優秀な社員がいないとかなど、ときには愚痴をこぼしたとしても、経営者自身が変わることが重要です。


掲載日:2017年12月27日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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