前回は試算表は3つの部分からなっているとご説明し、それぞれの概要をご紹介しました。
今回からは具体的に説明して行きましょう。その最初は「手元資金」です。
手元資金とは何でしょうか?
手元にある資金と書きますから現金のことでしょうか?
正解は現金と預金のことです。また、キャッシュともいいますね。
会計では手元流動性資金とか、もう少し概念を広めて現預金同等物という言い方もします
が、実務的には一般企業では現金と預金であり、手元資金またはキャッシュといいます。
資金といえば、キャッシュフロー計算書などで確認しなければならないと思い込んでおら
れる方もいるようですが、何で確認しても、結論は「現預金の合計」です。
キャッシュフロー計算書はその現預金が残ったプロセスも説明していますが、営業活動、
投資活動、財務活動に分けて資金収支を集計し、結論は同じ「現預金の合計」です。
資金管理表であればプロセスが経常収入、経常支出、財務等収入、財務等支出と変わり、
結論は同じ「現預金の合計」です。
キャッシュフロー計算書や資金管理表では過去の資金分析ができますが、中小企業にとっ
て大事なことは過去分析ではなく、これからの未来分析、未来予想です。
●いまの現預金で資金繰りは大丈夫なのか?
●問題であればどのくらいの手元資金高を持たないといけないのか?
●そしてそのための処方箋はどのようなものかあり、具体的なプランはどうするのか
ということです。
現在の現預金残高である手元資金チェックの主な方法として次の4つがあります。
(1)1カ月の企業生活費と比べる
1カ月の企業生活費とは「1カ月の売上高」です。
会社は1カ月の売上高の中で生活することが大前提です。
そうすれば、赤字経営にはなりません。
但し、その残った利益の中から借入れがあれば借入返済しなくてははなりませんので、
そのことさえ忘れなければ、いわゆる資金ショートによる黒字倒産にもなりません。
したがって、手元資金が月次売上高の1カ月以上あれば何とか資金は回る見込みはたちま
すが、あまり余裕はあるとは言えませんね。できれば売上高2~3カ月分の手元資金は常
に持ちたいですね。
(2)1カ月の支払額と比べる
もう少し手元資金と支払いをシビアに見る方法として、1カ月の支払額と比べる方法もあ
ります。では、1カ月の支払額はどこに表示されているのでしょうか?
よく試算表なり決算書を見てみましょう。
●まずは「支払手形」と「買掛金」の仕入債務です。
●次に「未払金」や「未払費用」ですね。
●さらに社会保険料等の預りである「預り金」もあります。
●それからもうひとつ、「短期借入金」と「長期借入金」の月次返済額。
この7つを加えた額がおおよその月次支払額となります。
この月次支払額と手元資金を比べれば資金繰りの目処はたちます。
(3)売買活動の必要運転資金と比べる
3つめは売買活動のための「営業資金」と手元資金を比べましょう。
売買で必要な運用資金は「受取手形」「売掛金」の売上債権と「棚卸資産」です。
これらは「資産」とは呼んではいますが、見方を変えれば、資金を使っている資産です。
これだけ販売活動をするためには必要な資金なのです。
それに対して売買で得ている調達資金は仕入債務です。
本来ではあれば、仕入した時点で支払わなければならないのに、一時的に待ってもらって
います。つまり資金調達をしているという見方ができます。
そしてこの二つの差額(売上債権+棚卸資産ー仕入債務)が、売買活動における「必要運
転資金」なのです。
この必要運転資金以上に手元資金があれば安心して売買活動ができます。
(4)借入金残高と比べる
最後に借入金残高と比べるということです。
借入金は今後のことも考えなくとも、きちんと返済しなければならない債務です。
これ、当たり前ですよね。
借入れ当初は借入目的に融資金額を使いますので、借入したお金は大きく減り、手元資金
は減ります。しかし、月日が経てば、徐々に借入金残高と手元資金のバランスがとれるよ
うにしたいものです。
これら4つの指標の中で自社の管理に必要なものを選び出し、手元資金を管理すると安定
した経営になっていきます。
管理とは、状況を知るということだけでなく、「状況を知って『行動する』」ということ
ですから、それをお忘れなく。
掲載日:2017年12月6日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術
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