380万中小企業の「試算表」読み方⑫

第12回 B/S総資本「純資産」の読み方・見方

 

1 純資産の概要

 純資産とは会計上は「総資産と負債の差額(純資産=総資産ー負債)」ことを云います。

だから、皆さんがよくお聞きになっている『総資産=負債+純資産』という等式が、必ず、

成り立ちます。

そんな純資産の中身は、一般的には設立時の「資本金」と損益で貯めて来た「繰越利益」です

 なお、繰越利益は正しくは「繰越利益剰余金」と呼ばれていますが、そういう用語自体が

会計を難しいそうにさせていますので、ここでは単に「繰越利益」と呼ぶことにします。

 

2 法人企業の実状

 国税庁の発表によれば、ここ3年間の法人企業の現状は次のとおりです。

         利益計上法人    欠損法人    合計法人数   欠損割合

  平成25年度  823,136社   1,762,596社   2,585,732社   68.2%
  平成26年度  876,402社   1,729,372社   2,605,774社   66.4%
  平成27年度  939,577社   1,690,859社   2,630,436社   64.3%

欠損法人とは、所得金額が損失かゼロ、あるいは黒字でも繰越欠損の方が大きかった法人の

ことを云います。

その欠損割合は平成21年、22年の72.8%をピークにして下がっては来ましたが、それでも

「法人企業の3分の2が欠損企業」とは異常な状況だと思われませんか。

 これを試算表で見れば、繰越利益はマイナスで、設立当初の資本金の額が目減りしている

状況です。本来、会社を起こす方は儲けるために会社を起こします。なのに、ふたを開けて

見れば、100社中64社までが創業当初より自己資金を少なくなっている状況です。

これでは「起業」に夢が持てません。だから起業が増えません。起業が増えない国は経済が

活性しません。

 ですから私どもT&Tマネジメントは、中小企業の黒字経営化に力を入れています。

 ぜひ、経営者のみなさま、この現状を打開しましょう!

 

3 ふたつの背景 

 しかし、この現状には「2つの背景がある」と言われています。

 ひとつは経営環境や景気と言われるものです。

経営環境の変化に対応していけない、また景気が良くないので赤字経営を続けている企業が

数多くあるということです。

 もう一つは節税とか公私混同と言われるものです

少しでも税金を減らしたいということで、過度の節税対策を行って事業の所得を減らし、

プラスマイナスゼロぐらいの所得にしようという企業があります。

しかし、この場合は繰越利益は貯まりませんので、設備投資などをする際には金融機関から

融資を受けるか、あるいは役員借入金として会社に資金を入れるかのどちらかとなります。

だから役員借入金のある会社は「会社の信用度が下がる」と言われる所以となっています。

 

4 債務超過

 欠損金がさらに増えていくと、やがて「債務超過」と言われる状況に陥ってしまいます。

欠損法人は純資産が資本金より少なくなっている状況ですが、債務超過は欠損金が資本金を

超えてしまっている状況です。つまり、負債が資産を上回っている状況になっています。

負債を「借金」、資産を「財産」と言い換えれば、財産よりも借金の方が多い状況です。

この状態では、事業を整理するには経営者が個人財産を投げ出す必要があります。

従って、債務超過は経営者としては絶対避けなければなりません。

 

5 純資産の読み方・見方

 以上のことを基本知識として、月次試算表から純資産に関する状況を読みましょう。

(1)自己資本割合をチェックする

 安定した経営を行うためには、自己資本で設備投資も行い、売買活動も自己資金で行うと

いうことになります。これが「石橋経営」です。

ですから、事業で費やしている資金はなるべく自己資本が多いことが望ましいということに

なります。

  自己資本割合 = 自己資本 ÷ 総資本又は総資産

一般的に、中小・小規模企業は自己資本割合が低いことが多いのですが、だから低くても

仕方がないということにはなりません。

中小・小規模企業は弱い立場なのですから、だからこそ、この「自己資本割合」はできれば

50%を超えるようにしたいものです。

このことを専門的には『自己資本比率』と呼んでいます。

(2)起業した事業の成長状況をチェックする

 中小企業のそのほとんどはオーナー企業です。その意味では実質的な成長状況を掴みたい

ものです。その指標がこれです。

  事業の成長状況 = 繰越利益 ÷ 資本金

事業の規模は売上高や総資産などで測りますが、事業の成長度というのはある意味、投資の

見方と同じです。当初の投資金額が資本金です。この資本金が、事業を通じて何倍になって

いるのかということです。

判断基準はそれぞれの経営者の当初目論見によりますから、一般的にどうのこうのとは言え

ませんが、しかし、事業を始めた以上は5年程度で倍々にはしていきたいところです。

このことを専門的には『自己資本成長率』と呼んでいます。

(3)無借金経営度合をチェックする

 安全な経営とは、債務に頼らない経営です。大手企業では「無借金経営」を目指す企業が

多くありますが、それは中小・小規模企業も同じことです。

それは次のように見ます。

  無借金経営の実状 = 手元資金 ÷(短期借入金+長期借入金)

手元資金(現金・預金)が借入金以上あれば、実質的に無借金経営と言えます。

ですから100%以上が理想的ですが、そこまでは求めなくとも、常に50%程度には維持

させたいところです。

このことを専門的には『実質無借金比率』と呼んでいます。

 

 

 このように「純資産」を月次試算表から読めるようになりますと、経営の安全度が急速に

高まり、安定した会社経営が実現できます。もし、少しでもそのようなことを始めたあなた

であれば、きっと会社をもっとインプルーブ(良く)していけます。

 さらに、堅実に会社を経営していけば、会社は必ず発展します。なぜなら、会社の発展は

堅実継続の結果だからです。

 このように月次試算表を毎日の経営に活かすことで、黒字経営と強い会社つくりが可能と

なることがご理解いただけるようになったかと思います。


掲載日:2017年10月18日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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