第9回 B/S総資本「流動負債」の読み方・見方
流動負債とは、1年以内に返済しなければならない債務ですが、見方を変えれば、日々の
事業活動で得た他人資本という見方もできます。
その主な項目、勘定科目としては、支払手形や買掛金の買入債務や短期借入金、1年以内
返済長期借入金、それに未払金や預り金、仮受消費税(売上とともに預かった消費税)、割引
手形などがあります。
日々の事業活動で調達した他人資本ですから、日々の事業活動の中で返済しなければなり
ません。 だから、流動負債というのでです。
1 流動負債とは日常の事業活動を支える調達資金
流動負債は負債ですから、短期返済の借金などという表現もできます。また、短期借入金
を除けば、いわゆる無利子の借入金という言い方もできます。
本来、企業の日常経営は、有利子負債である短期借入金や割引手形を利用しなくても資金
繰りが続く経営をすることが、ノーマルな姿とも言えます。
ここに、流動負債の読み方・見方のヒントがあります。
つまり有利子負債を除く流動負債で日常の資金繰りが回っているのかどうか、その度合い
を見るということです。
(1)流動資産と流動負債を比べる -自社の資金繰りチェック-
日常の中で資金を投下しているものは何でしょうか?
そうです、流動資産です。つまり、流動資産が流動負債で回っていれば、資金繰りは正常と
いうことになります。
日常資金繰り比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
=(流動資産ー手元資金) ÷(流動負債ー有利子負債)
この日常資金繰り比率が100%未満であればあるほど、資金繰り状況は良いと言えます。
この日常資金繰り比率が100%に近くなればなるほど、企業は有利子負債に手を出さなく
てはなりません。
ここまで理解してくると、同じ有利子負債でも、流動負債のそれ(短期借入金・割引手形)
と固定負債のそれ(長期借入金)では、大きく意味が違ってくることに気付かれたかもわか
りません。
流動負債の有利子負債は「資金不足」という消極的な意味合いしかありませんが、固定負債
の有利子負債には「事業発展のための設備投資」という積極的な意味合いがあります。
但し、すでにご説明したように、固定負債の有利子負債を借りるときには、客観的に冷静に
判断しなければいけません。
(2)流動資産と流動負債を比べる -自社の安全性チェック-
流動負債は「負債」です。ですから、「短期返済しなけばならない借金」という表現も
できます。今度はこの方面からの流動負債のチェックです。
流動負債はざっくりした説明をすれば、常に向こう1年間で返済しなければならない負債
合計を示しています。逆に、流動資産は手元資金を含め、常に向こう1年間で手元資金化で
きる資産を示しています。
とすれば、この二つを比較すれば、事業の安全性がチェックできることになります。
会社の安全性(支払能力) = 流動資産 ÷ 流動負債
これが100%以上であれば、理屈では「流動資産で流動負債を返済できる」となります。
しかし、現実は流動資産がすべて回収できる保証はありません。また一般的には支払よりも
回収があとになります。
したがって、この比率は100%以上ではなく、安全を考えれば200%以上目指すように
経営します。
この比率のことを、専門的には「流動比率」と呼んでいます。
次に、さらにより固く、会社の安全性を見るには、流動資産を絞り込みます。
現預金は、そのまま100%支払手段として使えます。売上債権も100%支払手段として
使えると考えて良いでしょう。
しかし、棚卸資産はまず売れなければなりませんし、それ以外のその他流動資産もいろいろ
な事情がありそうです。
そこで次のようにして、事業の安全性について、手堅いチェックができます。
会社の安全性(手堅い支払能力) =(現預金+売上債権) ÷ 流動負債
※売上債権に回収見込みが立たないものがある場合はそれを除外します。
※現預金+売上債権のことを当座資産といいます。
これが100%以上であれば、まず、流動負債は返済できることになります。
しかしながら売上債権は100%回収できるとは限りません。
ですから、この比率は150%程度は目指して経営します。
この比率のことを、専門的には「当座比率」と呼んでいます。
このように月次試算表が読め出すと、自社の経営状況がいろいろ見え出し、試算表を見る
ことが楽しくなってきませんか? もし、そのようなことを感じ始めているあなたであれば
きっと会社を堅実に経営していけます。堅実に会社を経営していければ、会社は発展させら
れます。なぜなら、会社の発展は、堅実経営継続の結果だからです。
このように、月次試算表を日々の経営に活かすことによって、黒字経営と強い会社作りが
可能になることが、徐々におわかりいただけるようになって来たかと思います。
掲載日:2017年9月27日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術
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