380万中小企業の「試算表」読み方⑥

第6回 B/S総資産「営業資産」の読み方・見方

営業資産とは、営業活動を継続するうえで発生する資産をいいます。

受取手形売掛金などの「売上債権」と「たな卸資産」が中心です。

営業資産は売上高の増加に伴って増える傾向がありますが、

会社の資金繰りを圧迫しますので、適切な管理が必要です。

 

1 営業資産は資産というより資金の使途だ

(1)営業資産の勘違い

受取手形や売掛金など、ともすれば会社の財産と考えがちです。

確かに、期日が来れば、その請求額が預金口座などに振り込まれてきますので、

その感覚は間違いではありません。

しかし、少し観点を変えれば、商品などのモノを提供して支払いを受けていない状態なの

ですから、商品やサービスには原価がかかっていることを考えれば、その原価分を自社で

一時的に負担して顧客に貸しているとも考えられます。

そう考えると、会社の資金を使っている状況でもあるわけです。

ですから、棚卸資産も含め営業資産は、販売活動で使っている運転資金となります。

 

(2)仕入債務の勘違い

同様、仕入債務に関しても勘違いがあります。

仕入債務とは、商品や原材料などを手元にあるにもかかわらず、未だ支払いをしていない

ものをいいます。 会計上では、支払手形や買掛金として示されています。

これらは流動負債に表示されているのですから、借金(債務)であるわけですが、

観点を変えると、仕入を通じて、無利子でおカネを借りているとも言えます。

したがって、仕入債務は資金の調達でもあるわけです。

 

(3)営業資産と仕入債務を比べれば売買活動の要調達運転資金の額がわかる

上記の債権と債務を比較すれば、売買活動で用意しなければならない「運転資金」の額が

掴めます。

 営業資産(販売活動で使っている運転資金)-仕入債務(購買活動で得ている調達資金)

 =A(調達しないといけない運転資金)

理論的には、売買活動で必要な運転資金額はAとなります。

では、このAはどうやって集めているのでしょうか?

ひとつは営業債権の回収で手当てしているとも考えられます。

しかしこれでは「自転車操業」となってしまいます。

ですから基本的には手元資金(現金・預金)として、この程度の資金は余裕をもって

持っておきたいものです。

 手元資金÷A(運転資金要調達高)=X倍 ・・手元資金対運転資金倍率

このX倍が「1」であれば、手元資金と運転資金は同額ですので、余裕はありません。

余裕を持つためには6倍程度の手元資金は持ちたいものです。

実際のあなたの会社の「手元資金対運転資金倍率」は、貴社の経験則によって決められる

べきものです。

この経験則を持つためにも、月次試算表による経営管理は重要なのです。

さらには売上が増えればどのくらい運転資金を調達しなければならないのか? ということ

もわかります。

 A(運転資金要達高)÷年商(万円)=X率  ・・運転資金要調達率

このX%は、売上高100万円あたりの必要な運転資金要調達高を表しています。

たとえば、30%であれば年間で1000万円売り上げを伸ばしている場合は300万円の

運転資金を用意しなければなりません。

平常の経営であれば、基本的には10%前後に要調達率は収めたいところです。

 

(4)営業資産の保有高を管理することが重要

営業資産に関して重要な管理事項は「保有高」です。

何度も言いますが、「営業資産は財産である」という刷り込みが深いらしく、

多く持っていれば安心されているような経営者が多くおられます。

確かに無ければ無いで問題ですが、あり過ぎるのも問題です。

営業債権の保有高のチェックは、受取手形・売掛金・棚卸資産、それぞれに分けて

管理する必要があります。

1.受取手形の場合

もしあなたの会社では手形は受け取ってから3か月後に回収するというということを

ルールにされているのであれば、それ以上あることは問題です。

つまり、手形が期日とおりに回収できていないということになります。

具体的には次のようにチェックします。

 ①概算法 受取手形残高÷平均日商=B日分

      ⇒B日が約定以内であればOK、以上であれば未回収がある

 ②正確法 受取手形残高÷(平均日商×手形回収割合)=C日分

      ⇒C日が約定以内であればOK、以上であれば未回収がある

 ③個別法 受取手形残高÷平均手形売上日商=D日分

      ⇒D日が約定以内であればOK、以上であれば未回収がある

これら、B・C・Dのことを「受取手形回転期間(又回収日数)」と呼んでいます。

2.売掛金の場合

売掛金も同様です。

もしあなたの会社の売掛金回収ルール以上に売掛金があるのであれば、それは問題です。

売掛金が期日とおりに回収できていないことを示しており、不良債権化の温床ということに

なります。 具体的には次のようにチェックします。

 ①概算法 売掛金残高÷平均日商=E日分

      ⇒E日が約定以内であればOK、以上であれば未回収がある

 ②正確法 売掛金残高÷(平均日商×掛売上割合)=F日分

      ⇒F日が約定以内であればOK、以上であれば未回収がある

これら、E・Fのことを「売掛金回転期間(又回収日数)」と呼んでいます。

3.棚卸資産の場合

棚卸資産も同様ですが、より注意して管理することが大切です。

私どもの研究では「棚卸資産の保有高が、黒字経営企業と赤字経営企業では大きく違う」と

いう結果が出ています。

棚卸資産の保有高は一部特殊な場合を除き、一般的には在庫切れを起こさない程度に

少なければ少ないほど良いとされています。

在庫が多いと、不良在庫となったり、あるいは廃棄したり、さらには不正使用、保管場所の

問題など、必ず原価アップにつながり、資金繰りや売上総利益を圧迫します。

具体的には次のようにチェックします。

 ①概算法 棚卸資産残高÷平均日商=G日分

      ⇒業種によって違いますが、一般的には14日以内が妥当と思われます

 ②正確法 棚卸資産残高÷平均日原価=H日分

      ⇒同上

 ③詳細法 棚卸資産残高÷平均日直接原価=I日分

      ⇒同上

これら、G・H・Iのことを「棚卸資産回転期間」と呼んでいます。

※Hは原価基準、Iは直接原価基準ということもあります。

 

如何ですか、

営業資産だけでも意外と経営状況を深掘り出来ることがお分かりいただけたでしょうか。

このように月次試算表を日々の経営に活かすことによって、黒字経営と強い会社つくりが

可能となります。もちろんそのためには、社長自身が創意工夫を図り、従業員を引っ張って

いくことが必要です。

景気が悪い、優秀な社員がいない、いうことを聞かないなど、時には愚痴をこぼしながらも

経営者自身が変わることが重要です。

私たちはそんな社長さんの良きパートナーとして真摯に業務を展開しています。


掲載日:2017年9月6日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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