380万中小企業の「試算表」読み方⑤

第5回 B/S総資産「手元資金」の読み方・見方

今回からの「380万の中小・小規模企業にとってのT/B(試算表)の読み方」は

詳細に入ります。 その最初は事業経営にとって最も大事な『手元資金』についてです。

 

1 手元資金は「自社の資金状況」を示す

(1)『手元資金』とは自社の現金残高と預金残高の合計

もう少し広く解釈すれば、手元資金に受取手形や売掛金のうち、回収できる売上債権まで

入れて判断してもいいかとも思います。

しかし、この場合の注意事項は「回収できる売上債権”だけで判断する」ということです。

試算表上の売上債権には明らかに回収できないと思われる債権なのに、微かな回収可能性の

希望を持って計上されたままになっている場合があります。

もしそのような場合には、その金額を除外して経営状況を判断する必要があります。

<ノート>

①手元資金とは現金残高と預金残高である。

②拡大解釈して回収できる売上債権を加えても良い(これを『当座資産』と云います)。

 

(2)手元資金とは「自社の資金残高」

資金繰りと云えば、何故か改めて『経常収入』とか『経常支出』などを計算し直さないと、

自社の資金有り高はわからないと思い込んでいる経営者が多いようです。

しかし、結局は、現金と預金残高の合計です。

ですから「自社の資金状況」といえば、それは現金と預金の合計です。

これで、これから生じる支払いをしなければならないわけです。

 

(3)「これから生じる支払い」とは

これから生じる支払いとは、仕入代金、給与の支払、水道光熱費や電話代など経費の支払、

さらには支払利息、借入金の返済などです。

では、それはどうすれわかるのでしょうか・・? それは試算表に表示されています。

 

(4)これから生じる支払い「流動負債」

それは『負債』です。それも『流動負債』です。

負債は『他人資本』でしたね。つまり、借りているお金(資金)です。

なかでも流動負債は、1年以内には返済しなければならない他人資本でしたね。

ですから、便宜上、手元資金と流動負債を比べれば、資金繰り状況が把握できます。

しかし、この見方はあくまで「便宜上」であって、実態がわからない他社の資金繰り状況を

判断する場合の見方です。

他社の実情は詳しくわかりませんから、便宜上、こうして資金繰り状況を判断するしかない

わけです。しかし、自社のことならもっと詳しくハッキリとわかります。

ですから、自社の場合はもっと明確に資金繰り状況が判断できます。

 

(5)1~3カ月先の自社の資金繰り状況を判断する

自社のことであれば、1年以内の資金繰り状況ではなく、1~3カ月先先の資金繰り状況が

ハッキリと判断できます。

なぜなら、1年以内に返済する『流動負債』の中でも、1か月以内又は2~3カ月以内に

支払いしなければならない流動負債が具体的にわかるからです。

それは、支払手形であり、買掛金であり、未払費用であり、短期借入金および1年以内返済

長期借入金のうちの1カ月の返済額です。 自分の会社のことですからわかります。

それと手元資金を比べれば、自社の資金繰り状況がより明確に判断できます。

ここでまハッキリと資金繰り状況が掴めれば、たとえば、いま設備投資をするために、

借入をしてもその借入返済することに無理がないのかあるのか、しっかりした判断できます

ので、安定した経営ができることになります。

 手元資金÷(支払手形+買掛金+未払費用+短期借入金と1年以内返済長借1カ月返済額)

 =1倍未満  要改善

 手元資金÷(支払手形+買掛金+未払費用+短期借入金・1年以内返済長借1カ月返済額)

 =1倍以上  健 全

 手元資金÷(支払手形+買掛金+未払費用+短期借入金・1年以内返済長借1カ月返済額)

 =2倍以上  優 良

ただ単に、手元資金がいくらある、多いだの少ないだの、あるいは昨年と比べて多いだの

少ないだの、それらのことが全く無駄とは言いませんが、それでは資金繰りが安心かどうか

はわかりません。

しかし、いま説明したように詳細に詰めて見ることができるようになれば、会計があるいは

経理が会社を強くしてくれて、事務業務を経営管理業務へ高めていくことになります。

 

(6)もう少しカンタンにザックリと判断したい場合

問題を感じている場合は、以上のように詳しく見るとして、もう少しカンタンに概況を見る

方法がないのでしょうか?

それが「便宜上の見方」であり、いわゆる教科書にある「経営分析」です。

それには次のような見方があります。

①会社の生活費と比べる『手元流動性比率』

 私たちは毎日、給料を糧に生活しています。つまり、給料が生活費です。

 それを会社に当てはめて考えてみると、会社の生活費は「売上高」となります。

 売上高以上の生活を送るから「赤字」になるわけです。

 したがって、資金繰り状況をざっくりと判断する一つの方法として、

 手元資金と月商を比べれば、資金繰りの余裕度が判断できます。

  手元資金÷平均月商 =1倍未満  要改善

  手元資金÷平均月商 =1倍以上  健 全

  手元資金÷平均月商 =3倍以上  優 良

②1年以内の返済額と比べる『当座比率』

 当座の資金が1年以内の返済額以上のあれば、とりあえず安心です。

 ただし、「当座の資金は必ず資金化できる」という前提です。

  (現金+預金+売上債権)÷流動負債 =100%未満  要改善

  (現金+預金+売上債権)÷流動負債 =100%以上  健 全

  (現金+預金+売上債権)÷流動負債 =200%以上  優 良

③もっと大まかに1年以内の返済額と比べる『流動比率』

 もっと大まかに見る方法が『流動比率』です。

 1年以内に資金化できるであろう流動資産を、1年以内に返済する流動負債で

 チェックします。

  流動資産 ÷ 流動負債 =100%未満  要改善

  流動資産 ÷ 流動負債 =200%前後  健 全

  流動資産 ÷ 流動負債 =300%以上  優 良

④『実質無借金経営割合』

 借入金があっても、それ以上の手元資金が常にあれば安心です。

 大手企業では、いまこの指数で経営の安全性を計っています。  

  手元資金÷(短期借入金+1年以内返済長借+長期借入金)=30%未満  要改善

  手元資金÷(短期借入金+1年以内返済長借+長期借入金)=60%前後  健 全

  手元資金÷(短期借入金+1年以内返済長借+長期借入金)=100%以上 優 良

 

これらを改善する手立てはたった一つです。 それは「黒字経営の継続」です。

そのためには社長自身が創意工夫を図り、従業員を引っ張っていくことが大切です。

景気が悪い、優秀な社員がいない、言うことを聞かないなど、ときには愚痴をこぼしながら

も、経営者自身が変わることが一番の改善事項だと思います。

私たちはそんな社長さんの良きパートナーとして真摯に業務を展開しています。


掲載日:2017年8月30日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

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