第6回 簿記の基本「借入返済の仕訳」を知ろう
金融機関からの借り入れは、どの企業にもある普通の会計取引です。
しかし、多くの企業では、意外と正しい会計処理がされていません。
これから説明する会計処理をしなければ、正しい自社の財政状況を
判断することができません。 ぜひ、勉強しましょう。
1 借入処理に関係する3つの科目
①金融機関から融資を受ける場合、その目的は主に2つに分けられます。
ひとつは「運転資金」です。 もう一つは「設備資金」です。
・運転資金目的で受ける融資は、つなぎであったり、賞与支払いであったりすることが
多いので「短期借入金」といいます。
・設備資金目的で受ける融資は、機械購入や工場建設など長く使う場合が多いので
「長期借入金」といいます。
②会計ではそのような意味合いではなく、返済期間で分類しています。
つまり、1年以内の期間で返済する借入金を「短期借入金」といい、
それ以上の期間に渡って返済する借入金を「長期借入金」といいます。
③なぜ、返済期間で分類するのか
それは同じ負債でも、流動負債と固定負債に分けるためです。
なぜ、流動負債と固定負債に分けるか?
それによって企業の財政状況の読み方が変わるためです。
ここは重要なことなので、押さえてくださいね。
④しかし、長期借入金の中にも、この1年間で返済する部分はあります。
そこで会計では「1年以内返済長期借入金」という科目が設けられています。
この科目は、元の長期借入金が固定負債であっても流動負債に分類されます。
このことも押さえてくださいね。
この科目は比較的誕生が新しいことと多くの会計事務所では税務申告のための
会計処理を顧問先に求めているため、ほとんどの企業ではこの科目を使用されていない
というのが実態です。
さらには短期と長期すら分けていない、ひどい会計事務所もあるようですが、
これはもう論外です。 一度、自社の試算表なり、決算書を確認してみてください。
特に試算表は経営に活かすために作成しているわけですから、
これらのことは会計事務所の姿勢として大いに問題です。
これで借入処理をするためには、短期借入金・1年以内返済長期借入金・長期借入金の
3つの科目を使うことがわかりました。
2 借入返済の仕訳
(1)短期借入金の仕訳
①1年以内に返済する融資を受けた 預金 / 短期借入金
*短期借入金で預金が増えます
②短期借入金を口座引落で月次返済 短期借入金 / 預金
*短期借入金(元本)と預金が減ります
金利を計上します 支払利息 / 預金
*毎月の支払利息が営業外費用に計上されます
(2)長期借入金の仕訳
①1年超に渡って返済する融資を受けた 預金 / 長期借入金
*長期借入金で預金が増えます
1年以内に返済する部分を振り替える 長期借入金 / 1年以内返済長期借入金
*長期借入が減り1年以内長期借入が増えます
②長期借入金を口座引落で月次返済 1年以内返済長期借入金 / 預金
*1年以内返済長期借入金と預金が減ります
金利を計上します 支払利息 / 預金
*毎月の支払利息が営業外費用に計上されます
③決算時の仕訳 長期借入金 / 1年以内返済長期借入金
*新たに次の1年間の長期借入金返済額を
1年以内長期借入金に計上します
3 実務に即した応用
金融機関からの借入は1つだけでしょうか。
実務ではいくつかの借入をされている場合が、ごく普通にあります。
そんな場合、合計で短期借入金・1年以内返済長期借入金・長期借入金がわかるだけ
では、不便な時がままあります。
「あと、この借入金はどのくらい残っているのだろうか」という時です。
そんなとき、大いに役立つのが『口座別管理』です。
つまり、会計処理上の借入金管理を科目単位でするのではなく、
融資単位でするということです。 たとえば、次のようにします。
短期借入金Aは 〇×銀行 99年99月99日借入分
短期借入金Bは □△銀行 99年99月99日借入分
短期借入金Cは ●▲銀行 99年99月99日借入分
1年以内返済長期借入金と長期借入金についても同様です。
便利なことに、いまのパソコンはWindowsですから見たいときに明細が見られ、
閉じれば科目単位に見られるようになります。
ぜひ、そのような機能のある会計ソフトを利用され、実行されることをお勧めします。
これが、経営に役立つ会計、管理会計のスタートでもあります。
このように、会計を実態に即して正しく処理をするということの意義は、
単に決算書を作るためだけでなく、経営に役立つ会計に変身させるという大きな意味が
あります。
掲載日:2017年2月15日 |カテゴリー:会計処理, 会計識字率
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