第3回 簿記の基本「引当金の仕訳」を知ろう
1.引当金とは
「引当金」という用語は、あまり耳慣れない言葉ですし、また大層な響きもあるので
いかにも難しそうに聞こえますが、実はなんていうことはありません。
引当金とは「抵当」や「担保」あるいは「将来の何かに備えてお金を準備する」という
だけのことです。
そうだわかると、たちまち難しく感じていた「賞与引当金」や「退職給付(退職金のこと)引当金」のこともカンタンです。
会計は、カンタンな意味のことも専門的な用語を使って表現していますので、
難しく聞こえるだけで、実はカンタンなのです。
会計・経理はお金の計算をしているだけですから、難しい筈はないのです。
では、引当金に話を戻します。
①引当金とは、抵当・担保・備えでありますので、預り金的な性質のものです。
②したがって、本来は他人のお金であるのに預かっていることとなりです。
③つまり、他人のお金ということは「負債」ということです。
④したがって、負債は右側、引当金は貸方の科目です。
⑤よって仕訳の基本は「(左)相手科目/(右)引当金 」となります。
2.賞与引当金の仕訳
賞与の仕訳は本来、賞与を支給したときに仕訳を起こせば良いわけです。
但し、賞与という科目は製造原価と販管費の両方にありますから、それぞれ仕訳します。
《支給月》 労務費の賞与 / 現預金 XXXXX円
販管費の賞与 / 現預金 XXXXX円
しかしこれでは少し問題があります。
なぜならば、夏季と冬季の2回賞与を出している場合、支給時期は確かに年2回ですが、その賞与考課期間はそれぞれ半年間ずつあるわけです。
その半年間の考課の結果、夏は6月に、冬は12月に賞与として支給しているわけです。
会計ではよく「発生主義で」といわれますが、その観点からと、より正確な月次損益を
計算するという観点からも、毎月発生しているものは、毎月計上していくという考え方が
本来の考え方となります。
つまり、毎月概算の賞与金額を引当てておくということです。
そうすると先ほどの仕訳は次のようになります。
《月 次》 労務費の賞与 / 賞与引当金 XXXXX円
※金額は概算賞与額の6分の1となります。
販管費の賞与 / 賞与引当金 XXXXX円
※同上
そして支給月になると
《賞与月》 賞与引当金 / 労務費の賞与 XXXXX円
※引当てた賞与を戻します。
賞与引当金 / 販管費の賞与 XXXXX円
※同上
という仕訳で、概算計上したものを一旦、取り消して、改めて正式な金額を計上します。
労務費の賞与 / 現預金 XXXXX円
※最終賞与額を再計上します。
販管費の賞与 / 現預金 XXXXX円
※同上
こうすれば本来の月次損益が毎月把握でき、かつ賞与月に確定させることができます。
3.退職給付引当金の仕訳
賞与引当金の仕訳が理解できれば、退職給付引当金の仕訳も同様です。
ただし、そもそも退職金制度がない企業には退職給付引当金は関係ありません。
この退職給付引当金の計上は、『就業規則』に基づいた退職金制度がある企業だけが
対象となります。
《月 次》 労務費の退職金 / 退職給付引当金 XXXXX円
販管費の退職金 / 退職給付引当金 XXXXX円
《支給月》 退職給付引当金 / 労務費の退職金 XXXXX円
※引当てた退職給付を戻します。
退職給付引当金 / 販管費の退職金 XXXXX円
※同上
労務費の退職金 / 現預金 XXXXX円
※支給した退職金を再計上します。
販管費の退職金 / 現預金 XXXXX円
※同上
賞与引当金と退職給付引当金はもっともポピュラーな引当金ですが、
その他にもいろいろな引当金科目はあります。 それは必要に応じて調べてください。
4.引当処理でもっと大事なこと
上記のように引当処理をすることで、より正しい月次損益が把握できますが、
もっと大事なことは「引当てた金額は近い将来必ず支出する」ということです。
たとえば、賞与として毎月100万円引当てたとします。
すると6か月後には少なくとも600万円を賞与として支出することを意味しています。
ですから、それに見合った金額が預金にないといけないわけです。
一般的にはそれができずに、賞与資金として金融機関に融資申込をし、
四苦八苦して賞与を支給している中小企業が散見されます。
本来はそんなことにならないように経営しなければなりません。
金利を負担してまで賞与を支給するなんて、おかしな話だと思われませんか?
ということは、引当金を計上したなら、必ず、それに見合うだけの預金を別建てに
用意しておく必要があるということです。
たとえば、納税用に「納税準備預金」を積み立てている優秀な中小企業も少なからず
あります。
同様に、「賞与支給準備預金」あるいは「退職金支払準備預金」なるものを併せて
準備しておくことが、引当でもっとも大事なマネジメントであることをご認識ください。
どうでしょうか、このように簿記会計が少しわかってくると、
意外と会計も楽しくなりませんか。
本来、会計は税務署や銀行のためにではなく、このように経営に活かしていくために
あるだと思います。
掲載日:2017年1月25日 |カテゴリー:会計処理, 会計識字率
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