420万の経営者の為の会計の見方⑦

第7回 総資産の見方 -その3ー

 3 運転資金の見方

総資産の見方3回目は「運転資金の見方」です。

少し難しいかもわかりませんが、非常に実務的な見方の一つですので、

ぜひ、じっくり読んでご理解ください。 

(1)運転資金とは

運転資金とは何か、運転資金とは「日常の会社運営に必要な資金」という意味です。

では、その日常の会社運営に必要な運転資金とは、財務諸表のどこに示されているので

しょうか? それはB/Sの『負債』に示されています。

 

(2)広義の運転資金

そのひとつの運転資金は、負債の『流動負債』です。

流動負債とは、1年以内に支払う(返済する)他人から調達している資金でした。

会社はこの流動負債をもとにして、「日常の会社運営に必要なさまざまな資金使途を賄って

いる」とも言えます。

このことを「広義の運転資金」といい、『流動負債』のことを指しています

では、他方、日常の会社運営に必要な資金使途とは何なのでしょうか?

それは『現預金を除く流動資産』です。

現預金を除く流動資産は、1年以内で運用して、現預金化できる資金使途と言えます。

したがって「現預金を除く流動資産」と「流動負債」を比べることによって、

調達しなければならない、不足している「広義の運転資金額」を掴むことができます。

計算式化すると次のとおりです。

 広義の運転資金要調達額 = 現預金を除く流動資産 - 流動負債

◆この数値がマイナスであれば、自社の広義の運転資金に余裕があります

◆逆にこの数値がプラスであれば、使っている方が多いので、要調達高が発生します。

◆この要調達高が手元の現預金で賄えているのであれば、自社で資金繰りはできますが、

 賄えなければ外部から資金調達をしなければなりません。

大企業であれば市場から直接資金調達することも可能なのでしょうが、中小企業はそういう

わけにもいきませんので、金融機関に融資を申込み、運転資金を調達することになります。

したがって、経営者である私たちは、毎月この『広義の運転資金要調達高』を確認して、

自社の資金需要を予測しなければなりません。

事前に資金不足を予測することで、逼迫した状態ではなく金融機関に融資申込ができます

ので、借入も起こしやすくなります。

 

(3)狭義の運転資金

もうひとつの運転資金は、流動負債の中の『買入債務』です。

買入債務は金利を支払う必要がない、日々の売買活動で他社から調達している資金とも

言えます。この買入債務をもとに、会社は「日々の売買活動に必要な資金使途を賄って

いる」とも言えます。

このことを「狭義の運転資金」といい、『支払債務』のことを指します。

では一方、「日々の売買活動に必要な資金使途」とは何なのでしょうか?

そうです、それは『売上債権』と『棚卸資産』です。

売上債権と棚卸資産は、売買活動で現預金を得ていくための資金使途です。

したがって、「売上債権+棚卸資産」と「買入債務」を比べることによって、

売買活動を行うために調達しなければならない狭義の運転資金額がわかります。

計算式化すると次のとおりです。

 狭義の運転資金要調達額 = (売上債権+棚卸資産) - 買入債務債

◆この数値がマイナスであれば、売買に関する運転資金には余裕があります。

◆逆にこの数値がプラスであれば、使っている方が多いということですので、
 要調達高が発生します。

◆この要調達高が手元の現預金で賄えるのであれば自社で資金繰りはできますが、

 賄えなければ先ほどの説明と同じで、外部から資金調達をしなければなりません。

たとえば、売上が急激に伸びている会社があるとします。

当然のことながら仕入等が増えて行きますので『買入債務』は増加していきますが、

売上債権の回収期間が長かったり、そのために多くの在庫を持ったりすると

どうなるでしょうか?

『売上債権』と『棚卸資産』がますます多くなり、「狭義の運転資金要調達高」が急激に

大きくなっていき、手元の現預金だけではまったく賄えなくなってしまいます。

これが「黒字倒産」の構図です。

したがって、経営者である私たちは毎月この『狭義の運転資金要調達高』を確認しなければ

なりません。

事前に売買活動の「運転資金要調達高の増加を察知」することで、対応策も十分に検討する

ことができます。

 

(4)自社の売上100万円当たりの要調達率を知る

では、運転資金が苦しくならないように、自社のその体質を知る方法はあるのでしょうか?

それが「運転資金要調達率」というバロメーターです。

要するに「うちの会社は100万円売上が増えると、どのくらい運転資金を増やさなければ

ならないのか」という指標です。 

これは、先ほどの運転資金要調達高を年商で割ればわかります。

 売買活動の運転資金要調達率 = 狭義の運転資金要調達高 ÷ 年間売上高

 経常活動の運転資金要調達率 = 広義の運転資金要調達高 ÷ 年間売上高

◆この値が大きければ大きいほど要調達高は大きくなります。

たとえば、売買活動の運転資金要調達率30%ということは「売上が100万円増えれば、

運転資金は30万円必要です」ということです。

◆ここから学べることは「現預金を除く資産は、極力小さくせよ」ということです。

会社や事業を大きくすることは経営者の夢でもあるかもわかりませんが、

しかし、それは決して必要以上に資産(外見)を大きくすることではありません。

資産(外見)を大きくするということは、「それだけ大きなリスクも抱えている」という

言い方もできます。

 

 

今回は自社の『運転資金』の見方を勉強しました。

その要点は

 1.運転資金には「広義」と「狭義」の2つがある。

 2.広義の運転資金とは「流動負債」であり、狭義の運転資金とは「買入債務」である。

 3.運転資金使途にも2つあり、

   広義の運転資金使途が「現預金を除く流動資産」であり、

   狭義の運転資金使途が「売上債権+棚卸資産」である。

 4.その両者を比較することで、運転資金の不足額(要調達高)が把握できる。

 5.要調達高と手元の現預金と比較することで「自社の運転資金状況」が把握できる。

 6.自社の運転資金のバロメーターは「運転資金要調達率」である。

 7.安全な経営とは、現預金を除く資産を極力少なくすることである。   以上です。

 

次回は、総資産の見方 その4 固定資産の見方 をご紹介します。 おたのしみに!

                                                   (次回へつづく)


掲載日:2016年11月30日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術

本店:〒355-0062 東松山市西本宿1968-1
坂戸:〒350-0233 坂戸市南町35-20
0120-634-154
営業時間 8:30~17:30 定休日 土・日・祭日