第2回 総資本の見方
1 総資本とは
『総資本』とは、事業で調達している「資本の出どころ」です。
「資本の出どころ」は大きく2つに分けられます。
1.借りてきた資本、『負債』です。 「他人資本」ともいいます。
2.自社で稼いだ資本、『純資産』です。「自己資本」ともいいます。
では、それぞれの見方を考えましょう。
2 負債の見方
『負債』も2つに分けられています。
1.『流動負債』です。
2.『固定負債』です。
では、その2つはどう違い、どう見ればよいのでしょうか?
(1)流動負債の意味と見方
『流動負債』とは流動的な負債と書きますので、原則1年以内に返済する負債を指します。
また原則1年以内に返済する負債とは、主に「日々の経営をするための運転資金的な資本」
でもあります。 このことは重要なことですので、押さえておいてください。
流動負債は、日々の経営をするための運転資金的な資本でもある。
従いまして、日々の経営をするための運転的な使途と比べることが見方のポイントです。
(2)運転的な使途と比べてみよう
「日々の経営をするための運転的な使途」は『流動資産』です。
したがって日々の経営運転資金『流動負債』が、日々の経営運転的な使途『流動資産』だけ
に使われていて、流動負債が常に返済できる目処が立っているのかどうかを見ることは大事
なことです。
①その一番大局的な見方「流動比率」(流動資産÷流動負債)
この比率が100%以上であれば、流動負債は常に返済目処がある使い方をされていること
になります。
しかし、100%であればギリギリですので、ふつうはもう少し余裕をもって、
最低でも120%以上、安心したいなら200%以上が、一つの管理基準となります。
②もう少しシビアな見方「当座比率」(当座資産÷流動負債)
当座資産である現金や預金、売上債権は、キャッシュあるいはそれに準ずるものであり、
また確実にキャッシュにできる「使途」ですから、これが流動負債以上あれば安心です。
通常は基準をもう少し緩めて、80%であれば安心とされていますが、より堅実な経営を
目指すのであれば、やはり100%以上を目指すべき指標ととなります。
③営業活動に絞った見方「運転資金要調高」(売上債権+棚卸資産ー支払債務)
支払債務とは、営業活動で得た「無利子の負債」です。
つまり、支払手形と買掛金の合計です。
そして売上債権と棚卸資産は、営業活動のために運用使途している資産です。
したがって、売上債権と棚卸資産の合計と、支払債務との差額を『運転資金要調達高』と
いいます。この要調達高が小さければ小さいほど、営業活動の運転資金は少なくて済むと
いうことになります。(ここのところは大事なところなので、よく理解してください。)
④運転資金要調達高の穴埋めの見方「手元資金要調達高倍率」((現金+預金)÷要調達高)
では、この要調達高をどうやって穴埋めしているのでしょうか?
そうで、それは『現金』と『預金』です。 別名、『手元資金』ともいいます。
この手元資金が常に運転資金要調達高以上あれば安心ですが、ギリギリであれば、
俗にいう「自転車操業」になります。
できれば、この手元資金要調達高倍率は、2倍~3倍程度は、常に維持したいところです、
⑤この応用で日常の経営運転資金要調達状況をマネジメントする
手元資金要調達高倍率の考え方で、日常の経営運転資金の要調達状況を管理することも
できます。
まず、『日常経営運転資金要調達高』を算出しましょう。
どう考えればいいのですか・・。
そう、そのとおり、「(流動資産ー現預金)-流動負債」で、日常経営運転資金の要調達高が
算出できます。
それで手元資金を割れば(手元資金÷日常経営運転資金要調達高)、日常経営運転資金の
要調達状況を把握することができます。
これが100%以上あればまずまず安心、なければ自転車操業の色合いがある、ということ
です。
☆ちょっと余談・・
ちなみにここまでくれば、もうお気付きかもわかりませんが、「要調達高」とは不足額の
ことなのです。
会計って、このようにやさしいことを権威づけの為か、むずしく表現しているところが
あります。
そこを嚙み砕いて理解するとカンタンなのです。 何しろ、足し算・引き算の世界なのです
から。
今回は負債のうちの『流動負債』の意味と見方を勉強しました。
その要点は 1.流動負債とは、日々の経営運転資金的な資本である。
2.流動負債の見方には5つある。
(1)流動比率
(2)当座比率
(3)運転資金要調達高
(4)手元資金運転資金要調達高倍率
(5)手元資金経営資金要調達高倍率 以上です。
次回はもう一つの負債、固定負債の意味と見方をご紹介します。 おたのしみに!
(次回へつづく)
掲載日:2016年10月26日 |カテゴリー:会計識字率, 経営技術
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