中小企業の経営承継⑤

Ⅴ 中小企業「財務改善」の具体策

前回は、経営承継できる企業となるためには、優良企業から学んで、

BSに関しては、少なくとも自己資本を高め、固定資産と棚卸資産の運用を減らすことが、

PLに関しては、原価を抑えて経費を削減し、適切な納税をして、繰越利益を貯めなければ

ならないことがわかりました。

今回はその具体的な処方箋を考えてみましょう。

 

1.棚卸資産を減らすためには・・

棚卸資産を適正にするためには「実地棚卸」をすることが大事です。

それも、決算のための期末実地棚卸だけではなく、最低でも毎月末の実地棚卸が大切です

さらに、できれば毎週末するぐらいが本当は望ましいと思います。

そうすることで、過剰在庫や不良在庫を減らすことができるからです。

過剰在庫や不良在庫が減るということは、売上原価率が下がるということです。

さらに商品仕入や材料仕入も減り、手元資金を少しでも増やすことにつながります。

できれば、業種にもよりますが、こういうことを通じて、棚卸資産回転期間は14日以下に

したいものです。

 

2.固定資産を適正にする・・

すでに過剰にある固定資産に関しては、不要なものを処分するしかありません。

処分をすれば、いくらか手元資金が増えることとにもなるからです。

大切なことは、以後、必要以上に設備投資をしないことです

そのためには、新たな設備投資をする場合には必ず「設備投資の採算」を検討することが

大事です。新しい設備を導入する目的は収益を増やすためです。このことを常に認識する

ことが大事だと思います。

決して、補助金が出るからなどの理由で設備投資を考えてはいけません。

設備投資はその設備で収益を増やして稼ぎ、そこから設備投資借入金の返済をして、

かつ利益を残さなければなりません。

それができないようであれば、新しい設備投資は見送る決断が大切です。

そのような習慣が社内に根付けば、過剰な設備投資・固定資産にはなりません。

同様に、設備ではありませんが、人材採用も同じです。

 

3.収益構造の改善・・

収益構造改善の原理原則は、売上高増だけに頼るのではなく、売上が現状と同じでも、

いままでより利益率を高めることです

そう考えることで、そこに売上高が増えれば、さらに大きな収益改善ができます。

そのためには、まずは売上原価の抑制と経費の削減が重要となります。

売上原価の仕入・材料は棚卸資産のところで説明したとおりです。

あとは外注費と製造経費です。

 外注費は内製化ができないかではなく、内製化するためにはどうすればよいのか

という方向で考えてみることが大切です。

「できないか」の発想では、できないという前提がすでに存在しています。

そうではなく、するにはどうするかという発想で考えることが大切です。

 製造経費については、販管費の経費と同様、削減すべき金額目標を持って、削減金額に

達するまで経費を削ることが重要です。

そして、どうしても売上原価の抑制と経費の削減だけでは目標利益に達せない場合には、

その分だけ増収することが必要になります。

 

4.経営計画(予算)を作る・・

最後にそれらのことを「経営計画書」に落とし込み、周知徹底することが大切です。

周知徹底するためには、形式にこだわる必要はありませんので、経営計画発表会を開催し、

全員に説明しましょう。 さらに大事なことは作成した経営計画書を活かすことです

つまり、PDCAを回し、月次または四半期で業績検討(進捗管理と対策)会を実施する

ことです。月次か、四半期かについては、年4回の確認と修正だけで計画を達成するより、

年12回の確認と修正で計画を達成する方がやさしくなりますので、一般的には、毎月、

会議を実施されることをお勧めします。

もちろん、自信がおありになる場合は四半期でも良いかと思います。

会議は多いより少ないに越したことはありません。

 

5.最終的には高付加価値経営にチャレンジする

高付加価値経営とは、より儲かる仕組みを作ることです(儲ける、ではありません)。

3で説明しました収益体質の改善は、費用を減らした分だけ利益を増やすという初歩的な

処方箋です。かんたんに言えば、固定費を減らして利益を増やすという戦略です。

しかしこの処方箋には限界がありますので、いずれは高付加価値経営に脱皮しなければ

なりません。 

では、高付加価値経営の「要諦」は何でしょうか?

それは、「やりがい」と「待遇」と「給料」です。

もう少し体裁のいい言葉で申し上げれば、「理念」と「福利厚生」と「人件費」ということ

になります。 それらを一言でいえば「おもしろい仕事」ということでしょうか。

それらが新しい製品開発や素晴らしいサービスに繋がっていき、やがて顧客満足度を上げる

ことになるわけです。

つまり、固定費削減戦略から高固定費化戦略が「高付加価値経営」ということになります。

 

財務改善の処方箋はこのほかにもいろいろとあると思います。

しかし、この棚卸資産と固定資産及び収益構造の改善は、その中でも外せない全企業に

共通する改善策です。ぜひ、自社の棚卸資産回転期間(平均日商の何日分を持っている

のか)と固定資産回転率(何倍の売上を上げているのか)、収益構造(結論は売上高営業

利益率)を確認されることをお勧めします。

なお、標準的な評価基準は、棚卸資産回転期間は14日以内、固定資産回転率は4倍以上、

売上高営業利益率は10%以上と考えられたらいいと思います。


掲載日:2016年10月12日 |カテゴリー:トピックス, 会計識字率, 経営技術

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