Ⅳ 中小企業「財務改善策」のヒント
前回は、TKCの経営指標による中小企業224千社におよぶ『平均財務諸表』から、
中小企業の財政状況の実体を見てみました。
多くの中小企業は、実質的に債務超過に陥っている可能性があり、
経営承継したくともできない状態であることが確認できました。
そこで今回は、経営承継できるように、その「財務改善策」を探ってみましょう。
1.健全な企業と普通の中小企業は財政状況がどう違うのか
経営の財務改善策を探るために、普通の中小企業と優れた中小企業の財政状況を
比べて見ましょう。 下図がその比較表です。
財政状況でどこが大きく違うのか、見てみましょう。
(1)事業資金の出所「総資本」の違い ☞自己資本の割合と借入金に対する依存が違う!
まず気づくことは、総資本の構成の状況です。
優良な中小企業はその63%が自己資本であり、それに対し平均の中小企業は26%です。
そのため平均の中小企業は借入金に頼らざるを得なくなり、銀行借入金は長短合わせて、
総資本の45%を占めています。
私たちの家計財源の半分が借金だったら、どう思われますか?
これは結局、赤字経営を続けていることに原因があるわけですが、つまり、問題は「損益」
ということになります。 損益についてはあとで見てみましょう。
(2)事業資金の使い方「総資産」の違い ☞固定資産と棚卸資産が違う!
事業資金の使い方は経営者の手腕そのものです。
ですから、総資本と違って「損益」は関係ありません。
その使い方・運用についても平均の中小企業と優良な中小企業では大きな違いがあります。
特に「固定資産」に大きな違いがあります。
優良な中小企業は固定資産に総資本の37%しか使っていませんが、平均の中小企業は
50%を超えています。同じ財産を持っていたとして、半分以上が住宅の評価であるという
ことです。つまり、固定資産が多く、流動資産が少ないということです。
ここが経営のポイントです! 固定資産は40%以下に押さえる経営を志向すべきです。
すでに50%以上を固定資産に運用している場合、(あるから)仕方がないで済ますのでは
なく、不要な資産は処分して、40%に近づけるべき行動が大事ですで。
つまり、事業における『断捨離』です。
不要なモノを減らし、事業に調和をもたらすことが大切だと思います。
次の違いは「棚卸資産」です。
優良企業は6.5%だけを在庫に充てていますが、平均企業は9.4%も充てています。
パーセントでは3%ですが、比べますと1.5倍にもなります。
棚卸資産である在庫を早急に整理して、それ以後は増やさないことが大事です。
在庫が減れば不良在庫もなくなりますので、原価の抑制につながります。
さらに仕入も減りますので、資金繰りにも好影響を与えることになります。
2.健全な企業と普通の中小企業の損益状況はどう違うのか
次に損益を見てみてみましょう。
優良企業になると平均企業の2倍の売上規模となりますが、
これは粘り強く理念(社会貢献意識など)を持って経営されて来た成果かと思います。
最近ではそのような経営姿勢のことを「グリッド経営」というらしいですが、
そのことはさておき、収益構造を見てみたいと思います。
(1)粗利益の違い ☞在庫と商品・材料仕入がポイント!
まず、売上原価が違います。
売上原価に差がありますので、当然、売上総利益率に大きな差(6%の差)となって
表れてきます。
商品仕入だけで3.4%違いますので、製造原価では2.6%と違うということになります。
先ほどの棚卸資産と考え合わせてみますと、商品仕入あるいは材料仕入の不良在庫化が
想像できます。加えて、外注費や製造経費などもチェックする必要があろうかと思います。
また、安易に価格競争に陥らない販売価格戦略を採ることも大切なことかもわかりません。
(2)営業利益の違い ☞赤字から黒字にするには経費節約がまず大事!
営業利益では、優良企業と平均企業の営業利益率が6.9%違いますので、
販管費では1%違うということになります。
優良企業の方が、割合として1%節約していることになります。
平均企業の多くは赤字企業でもありますので、理屈無く、まず販管費は減らさなくては
ならないのではないのでしょうか。販管費を減らした分だけ、黒字化へ近づけることに
なります。
家計でいえば、いまの収入では今の生活を続けていればお金が足りないわけですから、
生活費を切り詰めるしかありません。収入と見合うまで我慢をしなくてはなりません。
昔風でいえば、会社全体で「臥薪嘗胆」の精神を持つことが大切ということになります。
(3)経常利益の違い ☞納税をしないと自己資本を増やすことができません!
経常利益では平均企業には多額の銀行借入がありますので、支払金利の影響があり、
さらに優良企業と差が開き、7.5%差となってしまいます。
これは仕方がないと思われますが、ここでの問題は「節税意識」です。
節税の意識が強すぎますと、法人税などを減らすために、節税指導という名の下に、
保険やさまざまなモノを決算が近づくと購入されることがよくあります。
しかし、これでは「自己資本」という事業にとっての貯金を増やすことはできません。
自己資本を増やすためには適切な納税をしないと、「内部繰越利益」を貯めることが
できないのです。 このようなことを続けている限り、自己資本は増やせません。
ここで「損益」と「総資本」が繋がっているのです。
次回は、具体的な財務の健全化策を考えてみます。 お楽しみに・・。
掲載日:2016年10月5日 |カテゴリー:トピックス, 経営技術
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