中小企業の経営承継③

Ⅲ 中小企業の経営実態

 

前回は中小企業の経営承継の方法とそれぞれの問題点を考え、いずれにせよ、その根底には多くの中小企業は継承させたくとも継承させることができない状況であることを説明させていただきました。
では、今回はそんな中小企業の経営実態を見てみます。

 

1.中小企業の経営実態

「中小企業の経営実態」と言っても、ほとんどの中小企業は決算公告をしていませんので、

その実態を掴むことはむずかしい状況です。

そこで参考になるのが、「TKC経営指標」です。

TKC経営指標は全国約1万のTKC会計事務所が関与している50数万社の中小企業から

しっかりした決算書を作成している20数万社に及ぶ、個別のデータはわからなく統計処理

されたデータベースです。

そのデータベースから、平成22年度に決算を終えた224,595社の平均要約決算書を

見てみます。

224千社の平均決算書(H22年2010年)

その平均の規模は、総資本・総資産が1億6千万円、年商2億円です。

その財務体質は自己資本が25%、換金性の高い当座資産は35%、経常利益率においては

僅か0.5%という状況です。また平均従業員は10名程度です。

利益率は低いですが、中小企業の7割が赤字経営の中においては、なかなかのハイレベルと

言えます。 しかし、それを時価評価するとどうなるのでしょうか・・。

 

2.実体の財政状況

もう一度確認しますと、224千社中小企業の平均決算書は次のとおりです。

                               (百万円未満四捨五入)

 ■総資産                 ■負債

  現預金    3000万円        買入債務      1700万円

  売上債権   2500万円        短期借入金     2000万円

  棚卸資産   1500万円        その他流動負債   1600万円

  その他     900万円        長期借入金     5300万円

  固定資産   8200万円        その他固定負債   1300万円

  総資産合計 16100万円        負債合計     11900万円

  ※固定資産内訳              自己資本      4200万円

   有形固定資産 6400万円       総資本合計    16100万円

   無形固定資産 1700万円

 

一般的に中小企業決算書の問題点は、総資本は自己資本を除くと、ほぼ正確に記載されてい

ますが、総資産は実質より膨れていると言われています。

 たとえば現預金であれば、預金は通帳があるので客観的に証明されますが、現金は本当に

それだけあるのかはわかりません。

 たとえば売上債権には、回収不能な売上債権が含まれていることが多々あると言われてい

 ます。

 また棚卸資産においては、多くの場合はその実数が把握されておらずすらわからず、多く

 の不良在庫が含まれているとも言われています。

 さらに固定資産においては、時価評価すると全く別の価額になってしまいます。

そこで、資産については実際価額に評価しなおし、実体の財政状況にする必要があります。

たとえば、上記の総資産を実体の状況に見直してみると次のようになります。

       決算書価額→ (見直し条件と資金化評価率)              →実体の価額

現預金    3000万円→現金も記載通りとして100%            →3000万円

売上債権   2500万円→不良債権は10%と見込み90%とする       →2250万円

棚卸資産   1500万円→売却してもそれほど資金化できないので20%とする →  300万円

その他     900万円→資金化できずと判断しゼロとする          →   0万円

有形固定資産6400万円→建物は取り壊すのでゼロ、土地は40%とする    →≒2000万円 

無形固定資産1700万円→評価できるものはないと考え、ゼロとする       →   0万円

 合 計  16100万円→       資金化評価合計            →7550万円

 

なんと、決算書上1億6100万円であった資産が、実は7550万円であり、

負債は1億1900万円は変わりませんので、本当は4350万円の債務超過という結果に

なってしまいました。(実際は1件1件評価しなければなりませんが・・)

これに平均従業員数10名に対する退職金や清算費用を考え合わせれば、軽く5000万円

以上の債務超過となってしまいます。

これが現代の中小企業の実体です。(それもかなりハイレベルな中小企業の実体です)

 

したがって、中小企業の経営承継したくともすることができず、現在の経営者が借入をしな

がら、経営を続けているということです。

そして最終的には、法的整理もできず、休廃業・解散が多くなることにつながっています。

 

 

これが、経営承継するためには『財務の健全化』することが大前提になるという意味です。

次回は、ではどうしたら財務の健全化ができるのか、そのヒントを考えてみましょう。


掲載日:2016年9月28日 |カテゴリー:トピックス, 経営技術

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