Ⅱ 経営承継の方法とその問題点
前回は中小企業経営者の高齢化は「後継者難」にあるのではなく、後継させることが
できない「後継難」にあるのではないかと申し上げました。
今回はそのような中で、経営承継する方法にはどのようなものがあり、それぞれの問題点を考えてみましょう。
1.経営承継の方法
経営承継の方法は普通に考えると、次のような方法が考えられます。
第1は、親族に承継するということです。息子さん等に経営を譲ること言うことです。
第2は、親族以外の社員に承継することが考えられます。
第3は、よく新聞などにも出ています、第三者への譲渡、M&Aです。
第4は、実現可能性は低いですが、株式を公開することです。
第5は、継承ではありませんが、会社を清算するということも考えられます。
では、これらそれぞれには、どのような問題があるのでしょうか。
2.それぞれの問題点
(1)親族に経営承継する場合の問題点
一番の問題点は「親族に後継社長になる能力があるのか」ということです。
成熟社会となったいま、二世経営者にも創業者以上の経営能力と資質が求められます。
また時代が早く変わる現代は、第2創業とも言える、創造力も必要になります。
ソフトバンクやユニクロなど、事業が成功している多くの大企業でも、創業者が一旦退きな
がら創業者が復活している例が数多くあります。中には、大塚家具のように創業者と二世が
争うこともあります。
これらはすべて、創業者から見れば「親族に後継社長になる能力があるのか」という問題を
表しています。
(2)親族以外の社員に経営承継する場合の問題点
社員が継承する場合は「社員に後継社長になれる能力があるのか」ということです。
後継社長になれる能力とは親族後継者と同様に経営能力・資質・創造力が挙げられますが、
それに加えて親族以外の場合は、会社を買い取る資金力や会社の負債に対する担保力、個人
保証に対する決意など、ある程度の財力・担保力・胆力とも言える度胸も必要となります。
(3)第三者へ譲渡(M&A)する場合の問題点
この場合の問題点は、一部の中小企業を除いて普通の中小企業の場合は、果たして買い取っ
てくれる事業者が現れるのかということです。
普通の中小企業は、資産も技術もノウハウもほとんど無いのが実情です。そんな会社を買い
取ってくる奇特な会社は現実的には少ないと思われることです。
(4)株式を公開する場合の問題点
これは考え方としてはありますが、多くの中小創業者にとっては、M&Aよりも「夢のまた
夢」、夢物語に近いのが実情です。何といっても、日本の法人企業のうち、株式公開してい
る企業は、わずか0.13%なのですから。
(5)会社を清算する場合の問題点
最後に、会社を清算するにも、社員の解雇や退職金、そして再就職の斡旋など、そのハード
ルはかなり高いものがあります。また清算費用もバカになりません。さらに多くの場合は、
清算しようとすると借金だけが残ってしまうというのが実情です。なんといっても7割の中
小企業が赤字経営であり、債務超過も少なくありません。したがって、休廃業・解散が多く
なるというのが実情です。
こうして見てみると、いずれにせよ、その根底には、経営承継のためには『財務の健全化』
が、経営承継の大前提になることがわかります。継がせる前に、継がせられる会社にする
必要があります。 次回はそんな中小企業の経営実態を具体的に考えてみます。
掲載日:2016年9月21日 |カテゴリー:トピックス, 経営技術
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