黒字企業と赤字企業 どこが違う⑤

第5回 黒字企業と赤字企業の「経営分析結果の違い」(その2)

さて、全企業・赤字企業・優良企業の経営分析結果をじっくりと見ていただきましたか。
黒字経営と赤字経営の「違い」は、掴めたでしょうか。

では今回は、その違いについて解説いたします。
経営分析の一覧表は前回のコラムを見てください。

 

1.資産の活かし方と資産効率が違う

 まず資産の活かし方にその違いが垣間見えます。
資産とは、事業を行っていくために購入したモノです。
したがって、同じ購入したモノであれば、有効的に活用したほうが価値があります。
そこでその総合的な指標である『No.6 総資本回転率』を見ます。
赤字企業はそれらを活用して1.2倍の売上を上げています。
それに対して優良企業は1.5倍の売上を上げています。
僅か0.3の違いと思われるかもしれませんが、1.25倍の違いです。
たとえば、1億円の資産を持っているとすれば、赤字企業の年商は1億2千万、優良企業の年商は1億5千万となり、年間2千5百万の違いは大きいです。
月ベースに換算すれば、2百万円以上違います。

 次に現預金を見てみましょう。
『No.9 現預金回転日数』を見ると赤字企業は43日分、優良企業は約2倍の83日分です。
赤字企業は月商1カ月分程度のキャッシュを持ち、優良企業は2カ月分程度のキャッシュを持っているということです。

 それ以外の当座資産を見てみましょう。
『No.10 売上債権回転日数』はあまり変わりません。ともにしっかり回収しており、両者とも売上40日分程度です。
しかし『No.12 棚卸資産原価基準回転日数』は大きな差があります。
棚卸資産、つまり在庫ですが、赤字企業は1ヶ月分以上の在庫を持ち、優良企業はその半分しか持っていません。
在庫を持ち過ぎるとデッドストックになりやすく、結果として無駄な仕入れとなります。

 設備の方に目を向ければ『No.13 固定資産回転日数』も大きく違います。
赤字企業は無駄な設備を持っている場合が多く、回転率が悪いことがひと目でわかります。
不要な設備は場所を取り、動線を鈍くし、作業効率を下げます。

<資産の活かし方まとめ>
(1)赤字企業は資産効率が悪い。
   その原因は棚卸資産と固定資産にある場合が多いと推測される。
(2)赤字企業は手元資金が少ない。
   在庫と固定資産管理をしっかり行うことで改善できる可能性がある。
(3)赤字企業は在庫が多い。
   減らすことで無駄な仕入れが抑えられ、その分キャッシュが増える。
(4)赤字企業は固定資産が多い。
   設備投資計画をしっかりすれば、それだけ資金繰りが改善できる可能性がある。
(5)赤字企業の資産運用の問題点は、棚卸資産と固定資産にある。

 

2.総資本の調達・他人資本の依存度が違う

 まず、総資本全体を眺めてみましょう。
それは『No.28 ギアリング比率』を見ればわかります。
名前に惑わされないでください。要は他人資本(負債)と自己資本(純資産)の比較です。
他人資本に依存していればギアリング比率は高くなり、依存していなければ低くなります。その前提で赤字企業と優良企業をみると、赤字企業のギアリング比率は1100%です。
つまり、自己資本と比べると他人資本は11倍だということです。赤字企業の総資産は1億円ですので、その9割以上が借金で購入しているということになります。
驚きだと思いませんか。確かに『No.25 自己資本比率』をみると8.3%です。
このように机上で考えてみると、赤字企業がいかに薄氷の上に成り立っているのかがわかります。その赤字企業が全体の7割と云われているわけですから、何としてでもその経営状況を改善をしなくてはなりません。
一方、優良企業のギアリング比率は60%ですので、他人資本に頼っている割合は40%弱です。したがって『No.25 自己資本比率』も63.2%です。

 では、他人資本の代表である借入金を確認しましょう。
『No.22 借入金対月商倍率』を見ると、赤字企業は平均月商の6倍に相当する借入金があり、優良企業は僅か1ヶ月分です。
その返済完了予測期間である『No.32 債務償還年数』を見ると、赤字企業は返済原資である営業利益ですでに損失ですので予測不能であり、優良企業は1年間という計算結果になっています。

 次に仕入負債である『No.16 買入債務支払基準回転日数』を見てみると、赤字企業は86日分、優良企業は66日分と、優良企業の仕入負債の少なさがわかります。
これは棚卸資産回転日数と相関の関係があります。
さらに営業全体の負債である『No.14 流動負債回転日数』を見てみると、さらにその差が大きくなっています。
つまり、短期借入金や未払金・未払費用なども優良企業はずっと少ないことがわかります。

 最後に固定負債に関して『No.17 固定負債回転日数』を見てみますと、赤字企業は163日分、優良企業は37日分と優良企業の少なさが際立ちます。これは長期借入金の少なさによるところが大ですが、あとは役員借り入れなども含めた長期未払金の少なさも影響していると思われます。

<総資本の調達まとめ>
(1)赤字企業は自己資本に比べて、圧倒的に他人資本に頼っている。
(2)赤字企業の他人資本の多くは金融機関などからの借入金である。
   その返済の目処すら立っていない。
(3)赤字企業はさらに買入債務など営業債務も多い。
   その原因の一つは過度の在庫にある。
(4)赤字企業は固定負債も多い。その原因は過剰設備にあると考えられる。
(5)赤字企業の資金調達の問題点は、営業利益ベースですでに赤字であることと、
   棚卸資産および固定資産にある。


掲載日:2016年8月17日 |カテゴリー:トピックス, 会計識字率, 経営技術

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