経営に役立つ会計 自社決算書評価

今回の経営に役立つ会計は『決算書の自己評価』です。
ほとんど場合、決算書は申告書の前処理のために作成され、会計事務所からは申告書と一緒に渡されるだけで、あまり見ずに仕舞われている場合が多いのではないのでしょうか。
しかしそれではあまりにも「もったいない!」と思いませんか?
なんといっても決算書は、1年間の成績表であり、高い対価も支払っているわけですから。 今回はそんな決算書の評価の仕方『自社の決算書評価』について説明します。

 

自社の決算書評価はどうするか

決算書は終えた事業年度の成績表であり、位置づけはこの一年間を振り返り、中期的な課題を見出すための資料です。
したがって、もっと短期的な課題を探る月次試算表の見方とは必然的に異なってきます。

 

中期的な課題を見出す【その1】 自社の事業成果を評価する

最初に決算書で見るべきところは「これまでの事業成果」です。振り返れば、創業当時には「この事業を成功させる!」という想いがあったはずです。
では、その事業の成功は決算書のどこに表示されていると思われますか?
それは意外と注目して見られることがあまりない「純資産」に集約されています。
純資産は創業以来の事業の結果、成果です。事業がうまく行っていれば、必ず当初資本金に加えて繰越利益が生じ、純資産は資本金より大きくなっています。
純資産とは、創業時の「資本金」と以後の事業活動で貯めた内部利益の「繰越利益」の合計です。
この二つを合わせて「自己資本」とも呼んでいるわけですが、その自己資本を伸ばしているか、そうでないのか、ということです。成長している会社は必ず、この自己資本を伸ばしています。

そのためには『自己資本成長率』として見ることができます。
  自己資本成長率(倍)= 純資産 ÷ (当初)資本金

順調に成長する会社は8年程度で資本金を2倍とするペースで事業を育成しています。

 

中期的な課題を見出す【その2】 手元資金を評価する

次に評価すべき項目は「現預金」の有り高です。
ご承知のとおり、事業は現預金がないと続けることができません。問題はその現預金の有り高をどのようにして評価をするか、です。
あくまでも事業が順調に成長しているという前提であれば、自己資本のうち、どの程度手元資金で保有しているのか、ということになります。たとえば、いくら自己資本割合が高くとも、手元資金がなければ経営は行き詰ってしまいます。

そのためには『自己資本現預金割合』として見ることができます。
  自己資本現預金割合(%)= 現預金 ÷ 自己資本 ×100

順調に成長している会社は自己資本以上の現預金を持っています。

もし自己資本が思うように成長していない場合には、その代用として『平均月商』と比べて見るようにします。こちらは最低でも、平均月商の1カ月分以上の手元資金が持てるように経営をコントロールします。

 

中期的な課題を見出す【その3】 借入金を評価する

事業の資金調達には「自己資本」と「他人資本」がありますが、『借入金』の返済は常に余裕をもってしたいところです。

そこで『実質無借金比率』として、借入金に対する現預金の状況を見ます。
  実質無借金比率(%)= 現預金 ÷ 借入金 ×100   

順調に成長している会社は、借入金はあっても借入金以上の現預金を持っています。
優良な大企業は「実質無借金経営」を目指していますが、それよりも財務体質が脆弱な企業である私たちこそ、それを志す経営をしたいところです。

 

中期的な課題を見出す【その4】 総資本を評価する

事業は最初に苦労して資本を集めることから始め、それを資産に投下し、営業を開始して収益を上げて利益を確保するという活動を、繰り返し行っています。したがって『総資本』は極力有効的に活用したいところです。同じ1000万円を投下するのであれば1000万円の収益を上げるより、2000万円・3000万円の収益をあげたいところです。

事業に投下している総資本の何倍の売上を上げているかという観点から『総資本回転率』で見ます。
  総資本回転率(回)= 売上高 ÷ 総資本

順調に成長する会社は低くても2回転以上、つまり、投下資本の2倍以上の売上高をあげています。そうするためには、いかに多くの売上を上げるかということばかりでなく、いかに少ない資本で現状の売上高をあげるかという経営マネジメントが重要です。

 

中期的な課題を見出す【その5】 売上債権を評価する

売上債権とは売上高の未回収債権であり、受取手形と売掛金という姿で決算書に表示されています。売上高は資金のおおもとではありますが、売り上げるだけではお金になりません。その債権である『売上債権』を回収して、初めて資金となります。

そこで『売上債権回転期間』として、債権回収状況を見ることができます。
  売上債権回転期間(日)= 売上債権 ÷ (年商÷365日)

業種によって違いもありますが、一般的に順調に成長している会社は、30日前後の回収期間を維持しています。

 

中期的な課題を見出す【その6】 固定資産を評価する

固定資産の本質は、事業を行うための設備です。事業はそれを活用して、収益をあげるわけです。もう一度言いますが『固定資産』とは、事業を行うための設備であり、稼働状況を高めることが大切となります。  

そこで『固定資産回転率』として、設備の稼働状況を見ることができます。
  固定資産回転率(回)= 売上高 ÷ 固定資産

順調に成長している会社は最低でも4回転以上、つまり設備投資額の4倍以上の売上高をあげています。それを考えずに設備投資をしたり、無駄な設備投資をしているようでは、順調に成長する会社にはなれません。

 

中期的な課題を見出す【その7】 営業利益を評価する

中小企業は節税対策の影響を強く受けている場合がありますので、決算書上、本当の営業利益を示さない場合があります。しかしそれでも、まずは本業ベースの『営業利益』で黒字経営を続けることが順調に成長する会社の基本条件です。

そこで『売上高営業利益率』として、本業ベースの利益状況を見ることができます。
  売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 ×100

中小企業の場合は節税対策の影響を受けると申し上げましたが、それでも順調に成長している会社は10%程度の売上高営業利益率を確保しています。

 

決算書は会社にとって1年に1回の企業成績です。それをこのような形で、半日から1日程度をかけて、じっくり見ることは無駄なことではないと思います。他にもいろいろな評価の仕方もあると思いますが、最後にお勧めしたいことは、当期の決算書を3年前と5年前の決算書と比べて見るということです。そうすることで会社の状況の方向性(ベクトル)が掴めます。
1年に1回は現状から過去を振り返り、3年から5年先の中期的な課題を見つけましょう。 必ず、貴社は強い会社に成れます。


掲載日:2016年6月29日 |カテゴリー:経営技術

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