『正統会計学』第16回は貸借対照表の作成に関する説明です。
ⅩⅥ 財務諸表「貸借対照表」の作成
1 貸借対照表とは
(1)会社の財政状態を表す
貸借対照表とは、決算日あるいは月末現在の「事業の財政状態に関する報告書」です。
これによって、自社の経営状態が掴めます。
但し、「正しい会計処理をしていれば」という前提のもとです。
多くの企業の場合、負債の状況と資本金は比較的正しく記載されていますが、
資産の状況は正しくない場合が散見されます。
たとえば現金残高、売上債権残高、棚卸資産残高、貸付け等の公私混同、固定資産の金額など、恣意的な場合が多くみられます。
そうすると、「事業の財政状態に関する報告書」である貸借対照表はどうなるでしょうか。
貸借対照表等式の原型を思い浮かべてください・・。 「資産ー負債=純資産」でした。
負債が正しく、資産が恣意的なのですから、純資産が変動することになります。
実際以上に資産を大きくしていれば、負債は変わりませんから、純資産は大きくなります。
しかも資本金は正しく記載されていますから、結果的に繰越利益剰余金が多くなります。
つまり「粉飾」となります。
これでは正しく「事業の財政状態」を把握することができませんので、経営管理もできなくなります。
そこへ至る事情はいろいろあるのかと思いますが、資産状況は正しく記載したいものです。
(2)財政状態とは
財政状態とは、
1.自己資本と他人資本のどのような源泉から資金を調達し
2.これをどのような資産に投下して運用しているか
を示すことをいいます。
平易に言えば、事業資金をどこから調達し、その死事業資金を何に使っているのか、ということです。
資金の調達は他人資本と自己資本に分けられ、他人資本は負債に、自己資本は純資産に表示されています。
資金の使途は比較的早く資金化できる流動資産と長くかかる固定資産に分けて、表示されています。
(3)流動項目と固定項目
それを会計的に説明すれば、次のようになります。
流動項目(流動資産と流動負債)は、
営業循環基準「仕入(商品・原材料)→生産(仕掛品・製品)→販売(売掛・受手)→
回収(現預金)」を適用して区分し、
営業循環基準で分類しえなかった項目について、1年基準を適用して区分します。
固定項目(固定資産)は、形のあるもの有形と形のないもの無形、それと投資等に区分します。
2 貸借対照表の区分表示
貸借対照表の表示は次のルールに基づいて配置されています。
(1)流動性配列法
流動性配列とは、早く資金化あるいは支払する配列です。
たとえば資産は、現金から始まり、預金関係、売上債権関係、棚卸関係というような順番になっています。
負債は、支払手形などの買入債務から始まり、短期の借り入れ、未払い、預り等という順番になっています。
(2)勘定式と報告式
①勘定式とは
勘定式とは複式簿記の原理に従い、「資産」を左に、「負債・純資産」を右に表示して作成する方法です。 有価証券報告書は「勘定式」で作成されています。
また「資産を左に」「負債・純資産を右に」は、貸借対照表等式から導くことができます。
資産-負債=純資産 ⇒ 資産=負債+純資産 となり、
左は資産、右は負債・純資産になります。
②報告式とは
報告式とは、資産・負債・純資産の順で、上から下へ配列して作成する方法です。
会社法では「報告式」を求めています。
3 その他の財務諸表
最後に、損益計算書、貸借対照表以外の財務諸表もご紹介しておきます。
(1)株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書とは、純資産について求められる報告です。
株主資本等の変動を明らかにする報告書です。
(2)会計方針の注記
会計方針の注記は次の3点について報告が求められます。
①継続企業の前提や重要な会計方針など、財務諸表作成の基本となる事項
「継続企業の前提」とは、企業が倒産することなく、将来にわたって事業を継続するという仮定のことです。
②貸借対照表や損益計算書など個々の財務諸表に記載された重要項目の内容・内訳、その他関連情報
③重要な後発事象
たとえば、決算日後に生じた多額の増資や災害損失などに関する記載です。
以上で16回に分けて説明した『会計学』を終了します。
ぜひ、日常の会計を活かして強い会社にしましょう。
次回からの新シリーズにお楽しみに。
今回のキーワード
貸借対照表 事業の財政状態に関する報告書
資産が恣意的であれば結果的に純資産が実態を表さなくなる
財政状態とは資金をどこから調達しその資金を何に使っているのか
流動性配列法
株主資本等計算書
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