経営技術を磨く イノベーションのジレンマ

■イノベーションのジレンマ -リーダー企業の凋落は避けられないのか-
 『イノベーションのジレンマ』はハーバードビジネススクールのクリスチャンセン教授による『強み伝い経営』に警鐘を鳴らした経営理論です。クリスチャンセンはいずれの企業も正しく行動するがゆえに、やがて市場のリーダシップを奪われてしまうのだといいます。
かのコダックも「フィルム技術を改善する」という正しい行動を続けた故、デジタルカメラ化の波に乗り遅れ、2012年1月に米連保破産法の適用を受けました。

 

1.持続的イノベーションと破壊的イノベーション
(1)持続的イノベーション
「持続的イノベーション」とは既存の製品・サービスの性能などを引き続き高める技術革新のことをいいます。企業は自社の強みである主要製品・サービスの性能や機能を引き上げるために惜しみなく努力します。また社員にとっても主要製品を改善することは大きな評価となりますので、社員は能動的に頑張り続けます。

(2)破壊的イノベーション
一方、「破壊的イノベーション」とは、重要な既存ヘビーユーザーではなく、一部の新しいユーザー(オーバースペックユーザー)に評価されることから始まる技術革新をいいます。したがって、亜流になりますので、企業も社員もあまり力が入りません。

しかしいま当たり前のように各企業で使われているパソコンはメインフレーマーユーザーの使用から始まったのではなく、ホビーユーザーが受け入れたことから始まったことは、記憶しておくべきことかもわかりません。

 

2.破壊的イノベーションがリーダー企業の交代をもたらす
リーダー企業は、既存の主要ユーザー層に対する持続的イノベーションを進行させなくてはならず、また、社内でも多くの人は日の当たる「持続的イノベーション」に従事することを志向するので、日が当っていない「破壊的イノベーション」に従事することを希望する人はいません。したがって、自ずと『強み伝いの経営』をしていくことになります。
するとどうなるのでしょうか? そうです、企業の硬直化とか保守化が始まります

つまり、「破壊的イノベーション」がリーダー企業の交代をもたらす結果となるのです。
破壊的イノベーションは、一部のユーザーだけに受け入れられるところから静かに進行し、始まっているのです。

 

3.リーダー企業にとっての破壊的イノベーションの脅威
このように、破壊的イノベーションはリーダー企業が知らないうちに始まっています。
コダックしかり、一時のIBMしかり、そして最近のシャープしかりです。
この破壊的イノベーションには二通りあるといわれています。

(1)ローエンド型破壊的イノベーション
ローエンド型破壊的イノベーションとは、オーバースペック顧客を対象に起こります。
オーバースペック顧客とは、使えきれない顧客という意味です。リモコンやスマートフォンあるいは高級家電製品などが挙げられます。多くの顧客ニーズに応えるあまり、一人一人のユーザーからみれば、なんと使わない機能が多いことか・・。それでも高いお金を支払って購入することになります。
そこで、ローエンド型破壊的イノベーションとは、従来品よりは性能などが低く、低価格な製品・サービスで参入することを起こすことになります。

(2)新市場型破壊的イノベーション
新市場型破壊的イノベーションとは、従来の製品・サービスにはない性能などを提供して、新たな需要を作り出すイノベーションのことをいいます。

(3)破壊的イノベーションが成立する条件・特徴
では、これら破壊的イノベーションが成立する条件・特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
①ニーズはあるが、スキルやお金がない顧客市場がある
②(このような顧客は従来品と比較しないため)従来品ほど性能が良くなくとも購入する
③だれにでも使えること
④新しい流通経路や利用シュチュエーションを創造する
たとえば、最近注目されるものに、クラウドコンピューティングがあります。もうサーバーを所有する必要はなく驚くほどの低料金で利用できるようになります。パソコンのスペックさえ、そこそこあれば快適です。さらにメーカーや量販店経由ではなくインターネット経由で利用ができます。ただ課題は、だれにでも使えるところにまだ少しネックがありますが、新市場型破壊的イノベーションとしてに成長していく可能性があります。

 

3.破壊的イノベーションは別組織で追求する
クリスチャンセンは最後にこの破壊的イノベーション追求の仕方について言及しています。それは企業には「不均等な意欲」があるので、破壊的イノベーションは別組織で追求すべきだといっています。
多くの企業は「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」を同じ組織の中で追求しようとしますが、それが失敗の原因だといっています。なぜなら持続的イノベーションは組織にとって花形ですが、破壊的イノベーションはその時点ではまだ組織の日陰であるからです。したがって、破壊的イノベーションを妨げることとなるとクリスチャンセンはいっています。

 

 

「イノベーションのジレンマ」は、あまり馴染みのない経営理論ではありますですが、強み伝いの経営というものに対して、強く警鐘を鳴らしています。強み伝いをしている以上は、いずれ市場から退場するしかないということです。
冷静に考えればそれはそうですよね。時間が経てば明白です。いまだ戦後直後の経営で良いと思われている経営者はいないはずです。
しかしながら現在に生きていると意外とそれがなかなか出来ないし、気づかないものです。コアコンピタンスでも「過去を忘れる」というフレーズがありましたが、常に革新し、永続的に続く企業経営をしていきましょう。


掲載日:2015年10月28日 |カテゴリー:マーケティング, 組織風土

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